628:陣龍:2022/11/02(水) 20:09:51 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

ゴーストウィニングのヒミツ…実は、キャンプファイヤーの様な音の大きい火、そして大型バスの様な車両に一人で乗るのは大の苦手。


【消えぬ悪夢の魂魄刻印、埋まりし時は何時ぞ来たらん】


「~♪」
「機嫌良さそうだねーゴースト」
「うん、そりゃね。ドバイワールドカップでアラブ首長国連邦の馬と同着とは言え一位になっての久し振りの再開だしね」
「騎手の方がメインと言っても、トレーナー兼業と言う立場で世界で活躍とかホント凄いよねー、竹内さんって」
「このゴーストウィニングは鞍上によって育ったのだー」


 東京の府中はトレセン学園、その広大な敷地内にある中庭。幾多のウマ娘がそれぞれ思い思いに行き交う中で、
とある三人のウマ娘がベンチに座って会話を楽しんでいた。最近トリオ編成が専らみられる事の多い、
ゴーストウィニングとセイウンスカイ、そしてナイスネイチャの何時もの三人組である。


「と言っても、武勇さんの講演の手伝いとかトレーナー業での細かい雑務とかやってからになるだろうし、
実際に会えるのは放課後になってからかなぁ」
「そう言えば今日やるんだったけ講演。……何話すんだろうね?」
「あの人の騎手人生は競馬界の生き字引見たいなもんだしね、本とか読んだ限りだと。海外でのレース経験の事とかじゃない?」


 そうして他愛の無い、学生としては良くある類の会話をしている中。


「オーッスそこの三人揃って五本槍ーズなスカイにネイチャとあと一名!今からコースで面白い事起きるから忘れずに来るんだゼェェー?
んじゃコッチはちょっくら知恵の宝物庫に眠るガーディアンと戦ってくるからよ、健闘を祈っててくれ……!」


「……はい?」
「……えっと、ゴールドシップ?」
「ん……今の、【別人】……【別馬】……?……ただの、思い違い?」


 何か変なのが行き成り出て来て嵐の如く一方的に言うだけ言って消えて行った。

629:陣龍:2022/11/02(水) 20:10:55 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

「なんか……凄い事になってるね」
「うん……学園中のウマ娘が集まってるんじゃないかな、これ」
「レジェンドホース杯での観客席ってこんな感じだったのかな?」


 そして言われたがままにトレセン学園が誇るウマ娘向けにして競走馬にも普通に使えるコースに向かった三人は、
既に人混みでごった返しているコース近辺から少し離れた高台で眺めていた。セイウンスカイのサボり、
もとい隠れたお休みポイントで、コースを意外と近くで眺められつつも一歩引いた隠れ場所と言う、
良く見つけたなと言わんばかりの好条件である。


「あー……多分、今走っているのは【トウカイテイオー】と【メジロマックイーン】だね」
「えっ?いや、今走っているのって馬でしょ?確かに、何故か何となく走りがその二人に似ている気はするけどさ」
「だからその馬が【トウカイテイオー】と【メジロマックイーン】。多分別の世界のが来たんじゃないかな」
「いやいやいや、別世界のって、そんな簡単に…」
「でも実際、この学園とかも別世界からこっちに来たよね」
「そう言われると、何も言えないねぇ……って、なんでゴーストはそう正確に言い切れるの?」
「勘と言うか何と言うか……雰囲気的に【違う空気】が感じられた気がする?」
「いや疑問形かい」



 行き成りスピリチュアルかSFな事をゴーストウィニングが言いながら、コース上で併せ馬をしている二頭を見る三人。
女性進出が進みつつあると言っても極めて希少種であるはずの女性騎手が乗る二頭の走りは、
少なくとも素人の手綱捌きでない事は遠目から見ても明白だった。桃色髪の少女もだが一方の茶髪少女が
明らかに未成年に見える小柄さだが。


「あ、武勇さんに、ゴーストのトレーナーさんだ」
「ホントだ…手綱を持って居るって事は、あの真っ黒な馬に乗るのかな?」


 そんな中、今は引退して今日はトレセン学園へ講演に来ている予定だった某伝説騎手が栗毛の馬を前に茫然自失とし、
一方のトレーナー兼業騎手は黒の鹿毛の馬の手綱を引いている。何だか騎手側に対して少女達側の対応にごちゃついているようだが。


「ゴースト、あの二頭は誰に当た……ゴースト?」

 臨時に作られた馬係留場を見ながら話を振ろうとしたセイウンスカイ。だが、当のゴーストウィニングは全く反応以前に
微動だにして居なかった。

630:陣龍:2022/11/02(水) 20:12:43 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

「ちょ……うぇええ!?どどど、どうしたのさゴースト!?」
「ちょっとちょっと!思いっ切り泣き出してる!?どうしたの、お腹痛いの!?」
「いや間違ってエルのデスソースフード一気食いする様なスぺちゃんでも無いんだし、
ゴーストに限ってそれは無いんじゃない!?」


 無反応だったゴーストウィニングの顔を見遣ると、明らかに様相がおかしい有様で、
無言の大号泣をしている友人を前にして、訳も分からず慌てるしかないウマ娘二名。
尚スペシャルウィークのデスソース料理誤食事件は、単純に注文した大盛スパゲッティ皿の
取り違えとスペシャルウィークの一気食いが原因の為、昨今の謎のハラキリウマ娘ネットミームとは違って、
スペシャルウィークの方がトレーナーと共にグラスワンダーにやんわりと??られた。
そして何も悪い事はしていないのに、デスソース発注品の受け取り前日で、当日最後の一瓶を使い切った
デスソースが全部スペシャルウィークに食べられてしまい、結局極普通のスパゲッティミートソースを
食べる事になったエルコンドルパサーは何とも不幸である。


「……ッ!!」
「ゴースト!何処に行くの!?ねぇちょっと!!」
「これは……放って置いたらダメな感じですね……っと!!」


 そして、突如弾かれたかの如く一心不乱に駆けだすゴーストウィニングと、それを追いかけるナイスネイチャと
セイウンスカイ。ゴールドシップならば兎も角、割と良くボケボケ行動はすれど、
それ以外は別段変わった所の少ないウマ娘の、唐突な謎の行動は、明らかに普通では無かった。





――――いやさ、一体なにやってるんだろうね、うん

かしこいわたしが、なにかかんがえている


――――全部自分であるはずなのに、思考と感情が分かれている感覚。あ、書類は事後承諾で置いて行こう

わからない


――――こっちも良く分かって無いから、御相子?

そうかも


――――それで、なんでこんな事をやるんだろうか

『あのヒト』が、『タケウチ』が、いなくなる


――――もう居なくならないよ、竹内鞍上

『ごーすと』だけになりたくない


――――どうしてそう思ったの

『まっくろなひかり』と、『しらないこえ』で、『タケウチ』がいなくなった。『ごーすと』も、『あついひかり』で【わからなくなった】


――――あの馬運車の事故は、もう終わった事だよ

もういやだ。『ごーすと』は、いなくなりたくない。『タケウチ』と、みんなといたい。みんなと、ずっと、ずっと、ずっと……

631:陣龍:2022/11/02(水) 20:14:47 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

「……こう言う事、のようです」
「そうですか……ありがとうございます、マンハッタンカフェさん。殆ど面識もないのに、
行き成り助け求めたのに来てくれて」
「いえ……『お友達』も、ゴーストウィニングさんの事は……それなりに、気になっていた様なので」
「あ、あはは……そ、ソウデスカ」



 学園内のとある倉庫の外。そこには倒れ伏しているのを介抱されているゴーストウィニングと、
このウマ娘を追いかけて来たセイウンスカイとナイスネイチャ。そしてマンハッタンカフェがいた。
全くプリティじゃない方のウマ娘が如き気迫で、少し前に理事長のバグ発注で届いた100台のカメラの使用許可を
事後承諾で強引にもぎ取った途端に返す刀で倉庫へ疾走して行く姿に悪霊でも取り付かれたかと思ったセイウンスカイが、
偶然出会い頭に遭遇したマンハッタンカフェに協力を求めたのだ。

 そして倉庫内で物品を一心不乱に引きずり出して横断幕を書き出しているゴーストウィニングを発見するなり、
マンハッタンカフェの『お友達』が強引かつ一撃で意識を喪失させ、『お友達』の力でゴーストウィニングの『理性』を通して
『感情』への事情聴取を行ったのだった。最近は超大陸化が関係しているのか、マンハッタンカフェの善き『お友達』が
何だか何処ぞのスタンドの様な強さを発揮し始めていると言う噂だが、実際はどうなんだろうか。
少なくとも悪戯なポルターガイスト程度なら兎も角、心や身体を傷付けさせようとする悪霊の類は
学園近辺から消え去ったようだが。尚アグネスタキオンの研究書類の選別焼却や奪取はある種の習慣であるので
変わっていないらしい。



「……あ……」
「お、気が付いた。……やれやれ、行き成り走りだすから大変だったんだよー?」
「ホントだよ。これは後で皆に埋め合わせして貰わないと」


 そして先程『お友達』によって落とされた眠り姫が目を覚ます。くしゃくしゃになった顔は、
ナイスネイチャがハンカチで拭いはしたが、涙の痕はそれなりに残ったままである。



「……え……」
「まー、お祭り騒ぎが好きなウマ娘は多いからねぇ。ゴーストが色々やらかしたのに便乗して、カメラ撮影とかし出すのは当然と言うか」
「良く言うねー。さっき私がカノープスの皆にメールで頼んでいるのに隠れて、キングに電話でカメラの設置する様に頼んでたくせに。
後会長への説明と説得」
「……セイちゃんちょっとカメラの様子見て来ますね……」
「田圃見て来るノリは止めなさい、意味無いから」



 意識外から唐突に落とされた事で状況が全く分かっていないゴーストウィニングの眼前には、
何故かワイのワイのとウマ娘が複数集まって横断幕作成して運んでいってたり、学園祭の応援で使う小道具を持ちだしていっていた。
全ての始まりはゴーストウィニングの独走行為であったが、セイウンスカイとナイスネイチャの手回しとそれとは全く以て無関係な
その場の雰囲気のノリで、パリピ勢筆頭の一部のウマ娘がカメラの設置や臨時の応援班として活動していた。
真面目な副会長殿はこんな騒ぎに頭を抱えていたが、それなりに統制が取れている上にセイウンスカイから簡易ながらも
ゴーストウィニングの事情を教えられた会長の方が全て事後承諾でも許可を出して居たのも有り、
セイウンスカイに応援班に対する諸々の対応を経験者と言う事で全部ぶん投げられたキングヘイローが何時もの苦労をしている他は、
カノープスのメンバーがトレーナーの指示の元効率的にカメラの設置を行えており、混乱も特に起きていなかった。

632:陣龍:2022/11/02(水) 20:16:37 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp


「ま、まぁ、その事は脇に置いておくとして」
「後で感謝の言葉を忘れないようにねー」
「分かってますってば……それよりもゴースト、早く行きなよ。そろそろレース始まるんじゃない?」
「!」


 脳の処理が追い付いていないゴーストウィニングであったが、セイウンスカイのその一言に
電撃を受けたかの如く飛び跳ね、セイウンスカイが持って居た横断幕に纏めた鉄パイプで作った
巨大な旗を奪う様に受け取り、先程と大差ない速さでレースコースに向けて疾走して行った。
何十キロも有る旗を持ちながらも空恐ろしい速度の全力疾走は、全く以てあのウマ娘が
『ターフの亡霊』で有る事を証明していた。



「……半年にすら届かない、たった数ヵ月」
「えっ?」
「……『ゴーストウィニング』という存在が、競走馬からウマ娘となり、過ごした時間です。
あの子には、私達『普通のウマ娘』とは違って……『幼少期』は、有りません」
「あ……」


 マンハッタンカフェの指摘に、言葉が詰まる二人。衝撃的な経歴から殆ど自覚や理解が無く、
また当人も受け答えや反応が自分達『普通に生きて来たウマ娘』と似たようなモノで有る事も有り、
『ゴーストウィニングと言うウマ娘』の『ヒト』としての生きている時間が余りにも短く拙い事は、
全く意識した事は無かった。恐らく、殆どのウマ娘も同じような物だろう。



「……拭えない、強すぎる過去の【死】の記憶。サラブレッドの最期の記憶が、余りにも凄惨で鮮烈。
『ウマ娘』と言う、高い知性を持つ『ヒト』でも、心が壊れてしまう様な【悪夢】が、
あの子に何時蘇るか分からないでしょう。……生きていた『記憶の時間』が、違うのですから」



 『…守ってあげて下さい』の一言を最後に居なくなったマンハッタンカフェを見送ったセイウンスカイとナイスネイチャは、
暫くして自然とコースに向かって歩みを始める。



「……ネイチャさんは、経験有ります?子育て」
「いやぁー、商店街の人達の手伝い位はした事有るけど」
「私も、猫の相手位しか無いですねぇ」



 そうして暫くすると、コースの外側で盛り上がりまくっているパリピ型ウマ娘や群衆のどよめき、
委員長たちを言い包めて横断幕を掲げたりしているウマ娘、そして自分の騎手兼トレーナーを
巨大な応援旗を振り回しているゴーストウィニングの姿が見えて来る。相変わらず感情の制御が出来ずに
泣き続けて応援しているが。

633:陣龍:2022/11/02(水) 20:18:12 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

「……まぁ、どうせならみんなを巻き込んじゃいましょうか!私達だけで全部如何にかしなきゃ、
駄目って訳じゃ無いですし!」
「それ言っちゃう?でも……まぁ、その通りだね」


 一方的な自己満足の正義と言う棍棒を掲げた愚かな人間の為に、自身の騎手をすぐ傍で失った挙句に
生きたまま焼死と言う最期を迎えさせられ、神の気紛れにてこの世へ『ウマ娘』として再臨し、
そして『神の奇跡』と言う強引な辻褄合わせで有るが故に、生物として、ウマ娘と言う『ヒト』としては
アンバランスな存在となってしまった『ゴーストウィニング』。歯抜けの生涯から始まる事を強制された
このウマ娘であったが、この世界はこんなウマ娘に優しい世界。当人が善き人、
善きウマ娘で有ろうと頑張り続けるならば、多くの人々が手助けしてくれるであろう。



ゴーストウィニング「フ"レ"ー"ッ”!!フ"レ"ー"!!竹"内"ィ"ィ"ィ"ィ"ィ"!!」
モブウマ娘1「むうあれこそは…!!」
モブウマ娘2「何、知っているのか、ライデンリーダーっ!」
モブウマ娘1「左様…。」
タマモクロス「男塾かいっ!?」
オグリキャップ「タマ、トレセン学園は女子校だから女塾じゃないか?」


「……なにこのカオス」
「まぁ……シリアスなのよりかは、良いんじゃ無いです?」


 そもそもこの世界、割とシリアスでは無くシリアルの方をご所望である。

634:陣龍:2022/11/02(水) 20:20:02 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
|д゚) 以上、ゴーストウィニング大暴走の原因でした

|д゚) ライス(異)に取っては理不尽と言うか交通事故でしたが、トラウマとか何が切欠で爆発するのか、
    当人にも分からんもんですからね、多分

|д゚) しかしまぁ、自分が生み出しといてなんですが、湿度モリモリ闇有り存在になったもんだ、このゴーストウィニング

635:陣龍:2022/11/02(水) 20:22:59 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
|д゚) ……

|д゚) オグリのタマモクロスの呼び方『タマ』だ、記載する場合そこだけ修正願います、最後の所

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最終更新:2022年11月14日 23:17