494 :第三帝国:2012/02/21(火) 20:32:41

ネタSS~世界線変動率200%の世界

「はぁ・・・」

質素ながら上品な一室で、黒と銀の礼装で身を固めた男たちに混じり、
白に金ボタンの礼装に身を包んだ少女(?)こと嶋田××元帥が憂鬱なため息をつく。

その姿は毎度毎度おちょこって来る変態どもに対して疲れたものでもなく、
また第二次世界大戦、そして銀河をめぐる戦争を指導してきた人物には似合わない、深刻なものであった。

「しっかり気を保て、嶋田。
 この程度のことなんて書類仕事よりもたやすいだろう」

落ち込む嶋田に励ますように述べる親友の山本大将。

「いや、ヤマモト閣下。
 シマダ閣下がああなるのは無理もない。
 我々だとて今日起こるであろうイベントが未だ悪い夢でも見ているのではないかと信じたい程だからな」

夢幻会内では「リアルインチキおじさん」
と言われている芸術提督ことメックリンガー上級大将が冷や汗をかきながら答える。
その言葉にウンウン、と幾人かが頷き同意を示した。

「メックリンガー提督、卿はまだそんな風に捉えているのか?
 これは両国の平和を象徴する重要な出来事ゆえに、この奇跡を祝福すべきではないか」

どんよりした空気を払うべく、
前向きな新人社員気質なミュラー提督が先輩方にいい加減現実を直視しろと促す。
だが、「へんじがない、ただのしかばねのようだ」と呟きたくなるような静けさを以て彼の問いかけに答えた。

「ほう、それはこの俺に対しても言えることなのか?」

「ろ、ロイエンタール元帥」

女を誑しては止まない美貌を持つ帝国の元帥閣下こと、
ロイエンタール元帥はいつもの冷静な態度ななく、ゲンナリとした空気を纏っていた。
しかも眼の下にはクマがあり、せっかくの色男が台無しである。

「卿はいいだろうな、自前の艦隊の世話だけを考えればいいのだから。
 だが俺やミッターマイヤーは元帥なんて称号をもらって以来、
 全宇宙艦隊の管理から始まり連日連夜の政策会議、果てはニホンとの外交交渉でタンクベットを往復する日々だからな」

憂鬱な空気を吐き出すロイエンタールにミュラーは思わず後退してしまう。
余談ながら、某種なしは現在タンクベットで休養中である。

「だが、それはいい。
 その程度のことは後でカイザーに文句を言うくらいで俺の矜持は我慢できる
 だが、だがなぜこの俺がツジとオーベルシュタインの結婚式で祝辞を読まなければならないのだ!!!」

そう吐き捨てるように叫んでから、
この世を恨むように再度大きくため息をついた。

「くそ、こんなことなら叛乱でもすべきだったか?
 いや、だめだこの程度で叛乱を起こすなど俺の器が疑われる上に、それを計算した奴らの手のひらで踊るようなものだ
 あの男と女の葬儀でもっともらしい事をいいながら内心で舌を出すのが俺の夢であったのだが・・・マインカイザーは・・・」

「げ、元帥」

嗚咽と共に流れ出した男涙にミュラーはドン引きである。
しかしミュラーのような一般的な反応は少数派のようで周囲の人間、
特に帝国側はロンエンタールに同調するように涙を流し出す人間が後を絶たず部屋はさながら葬儀会場のようになった。
なお司会役を押し付けられ、同じく祝辞を言わなければならないオフレッサーとビッテンフェルトの脳筋コンビに至っては号泣している。

495 :第三帝国:2012/02/21(火) 20:34:38

「えらい嫌われているな、おい」
「あーうんそうだな」

あの義眼がそこまで嫌なのかよ、と山本、嶋田の2人は絶句する。
とはいえ、嘆きはしなかったが辻の辞職と電撃結婚は日本政府内でパニックをもたらし、
そのさいに、周囲から「親友であるおまえが真意を確認しろ」等と訳のわからない事を言われ、なおかつ厄介事を押し付けられて、
あの辻が、あの辻が(大事なので2度いいました)それこそ乙女な反応をしてしばらく幽体離脱状態(電脳的に)になったものだ、
と嶋田は帝国側の惨場を遠くを見るような眼で観察した。

「時間よ!!・・・てっ、何をしているのかしら?」

ツンデレ至上主義者だったせいか黒髪ル○ズとして転生を果たした富永中将が部屋の惨場に顔面を引きつらせる。
まあ、結婚式だと言うのにむさい男どもが揃いもそろって葬式かのごとく男涙を流す状況を理解しろという方が無理かもしれない。

「ロイエンタール・・・」
「遅いじゃないか、ミッターマイヤー・・・」

富永中将の後ろにいる親友の言葉にロイエンタールは力なく答える。
ミッターマイヤーは親友の状態に気付いており、できれば自らの口で言いたくはなかったが残酷な現実を告げる。

「そろそろ、オーベルシュタインの結婚式が始まるぞ」
「・・・ああ、そうか。では逝くとしよう」

よろけながらロイエンタール、
ならびに帝国側陣営は幽霊のごとく立ちあがり、日本と戦争をした時以上の覚悟をもって会場へと足を運んだ。


その後、帝国将官たちは新婦と新郎を呪いながら酒を飲んだそうだ。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年02月24日 23:46