199:奥羽人:2022/11/06(日) 21:41:43 HOST:sp49-98-219-141.msd.spmode.ne.jp
近似世界 2022年 IF
日本による直接的軍事介入 3




日本連邦 埼玉県
入間空軍基地

現在地球上で最もホットなスポットとなっている東欧より遠く離れた西太平洋は日本本土。
日本空軍における首都圏最大の航空基地であるここ入間基地は、連日連夜、様々な空軍機が行ったり来たりしていく、ちょっとしたお祭り騒ぎとなっていた。
そして今また、1機の輸送機が滑走路から飛び立っていった。
機体にはロービジな日の丸の国籍マークが描かれている。
日本空軍の主力長距離輸送機であり、150トン級の最大積載量を誇る4発機「二式輸送機」だ。
C-17並みの取り回しやすさを維持しながらAn-124ルスラーン並みのデカブツに仕上げた末に、大陸パワーで生産数が300機を超えている大陸日本面全開な輸送機である。
その他にも、地上には二式を超える超大型輸送機……最大積載量が250トン超の6発機「三式戦略輸送機」が複数鎮座していた。尚、こちらも各型合わせて100機超生産されている。

しかし、今この基地において、それら巨人輸送機達は脇役に過ぎない。

「……それで、“機関”の連中は北辺の地に冥府の扉を開く決断をした、と」

輸送機の脇を走り抜ける軍用の四輪車の助手席で、黒髪の少女が独りごちる。

彼女の「今の」名は、富永響。

前世の異世界にて水葬戦記の引き金を引き、今世を超高性能美少女アンドロイド兵士として過ごす平成中期系のオタクだ。
今は中国方面での仕事が一段落つき、政府のチャーター便で日本に帰ってきた所である。
現在はとある事情から、東京へと向かっている最中であった。

「“汝らは獣のごとく生くるためつくられたものにあらず、徳と知識を求めんがためなり”《ダンテ 「神曲-地獄編二六曲」》」

彼女の目は車窓から基地の一角を見渡す。

「されど、徳と知識を求めた末に獣を産み出す……か」

視線の先では、牛の後脚に装甲車の砲塔が組み合わさったようなシルエットの兵器が鎮座している。それも、数えきれない程に。
それは、自律型機動兵器だった。
全高数mほどのそれは、戦車のようなキャタピラではなく、両脚による走行機構を備えている。
人型の上半身や腕部のようなものはなく、代わりに肩部あたりから機関砲の砲身やヘリ用のロケットポッドが伸びていた。
更に、腰にあたる部分には小さな何かの発射機のような物も備えている。

……09式無人装脚装甲戦闘車 “蛭(ヒルコ)” 。
日本の技術の粋を集めて開発された、多目的無人戦闘兵器である。
現在、それらは日本各地の基地に集結しつつあった。

その脇には、数十機を纏めてコンテナに収容されている、人間型の下半身にそのまま銃座を搭載したような無人機“飛脚(ヒキャク)”が、そのコンテナごと輸送機に運ばれていく。

幾らか、四足の“土蜘蛛(ツチグモ)”も存在している。

これらの無人兵器群は、今後起こるかもしれない大規模な動乱に対応するため、日本軍によって開発されたものだった。
これらは、ただの歩兵支援用無人機ではなく、高度なAIによって自律した戦闘行動が可能な性能を有していた。

200:奥羽人:2022/11/06(日) 21:43:22 HOST:sp49-98-219-141.msd.spmode.ne.jp
都内
政府機関某所

「で、“連邦”は本当にやるつもりだ……と上は判断した、って訳?」

「ああ、そうだ。“連邦”は本気で核を使うつもりらしい」

そこは東京都内にある政府省庁の一つ。
その中の会議室の一つで、複数人が話し合っていた。

改めて部屋の中の者達を見渡してみれば、それらは全てが政府機関や軍の上層部であり、尚且つ「夢幻会」のメンバーでもあることに気がつくだろう。
その中で、ひとり女子高生姿の響は、ある意味異様と言えた。

「……そうか。遂にそこまで追い込まれたか……」

響はそう呟く。

東欧で続くU国と連邦の戦争は、遂に分岐点を迎えていた。今までは見かけ上連邦が優勢だったが、ここに来て戦況が大きく変わったのだ。
U国の反攻作戦が始まったのである。
日本空軍の到着を待ってから始まった反転攻勢は、日本側の当初の予定通りにU国軍の快進撃という形で進んでいた。
まぁ、当たり前といえば当たり前である。
限定戦とはいえ、あの日本空軍が本腰を入れて爆撃しているのだ。
これに耐える事ができる国といったら、日本に次ぐ空軍力を持つアメリカがギリギリ候補に入るかといった位だ。

相次ぐ日本軍機による制空戦と、ピンポイント爆撃による連続した高価値目標狙撃の前に連邦地上軍の戦線は崩壊。
潰走一歩手前の状態で後退を繰り返しており、元の国境に……それも2014年以前に戻るのは時間の問題と考えられた。

そしてこの事実は、この戦争が既に最終局面に入ったことを示していた。
理想を言えば、連邦軍をU国から叩き出し、後は外交の舞台で決着をつける……という流れが望ましいが、そのような穏やかな幕引きは最早、望むべきではなかった。

あらゆるプロパガンダで国内を盛り上げていた連邦には最早後が無い。
故に、彼らはもう、どんな手段を用いてでも勝利しなければならないのである。
それが不可能なことだとしても。

「それで、限定核攻撃による恫喝と。さしずめ、人類文明が人質かな?」

響の言葉に、室内は静まり返る。
どうやら、日本政府は全員が全員同じ結論に至っていたようだ。

つまり、連邦による全世界を巻き込んだ脅しである。
我々は核を使う。このまま進めば、大国間の全面核戦争で人類は滅ぶぞ、と。

「で、上は? どうするつもりだい?」

「U国には中間/終末段階迎撃用の地対空ミサイルシステムを供与している……とはいえ、迎撃に成功したとて連邦が核を行使した事実は消せない」

「なら、どうするのかね。まさか、我々も同罪になる覚悟で」

「いや、違う。我々はそんなものは求めていない」

「ならば、つまり……」

「我々が今の連邦を解体することになるだろう。故に、君には先んじて連邦領内に飛んで貰う」

201:奥羽人:2022/11/06(日) 21:46:33 HOST:sp49-98-219-141.msd.spmode.ne.jp
【09式無人装脚装甲戦闘車 “蛭(ヒルコ)” 】
無人二足歩行戦闘車両。
いわゆるメタ◯ギア月光が微妙に重装甲大火力になった雰囲気。
元ネタのように柔軟な運動能力と、高性能AIによる高い自律判断能力を併せ持つ。
火器運用能力にも優れており、マウントを介することができれば従来のあらゆる兵器を搭載することが可能だとされている。
事実、デモンストレーションの際には、専用マウントと補助マニピュレーターを介してマッチロック式マスケット……つまり火縄銃の装填と発射も行われていた。
12.7㎜~30㎜の自動火砲、自動擲弾銃、無反動砲、後装式迫撃砲、ロケット、ミサイル等々……装甲車に搭載できるものなら大体何でも載せられる。


【02式無人装脚戦闘車 “飛脚(ヒキャク)” 】
無人二足歩行戦闘車両その2
蛭が装甲車だとしたらこちらは歩兵。
現在はソフトウェア周りがアップデートされた2型が主力。
デス◯トの自動配送ロボに銃座を搭載したような見た目の、文字通り歩く銃座。
こちらも火器運用能力に優れており、歩兵火器なら大体なんでも扱える。
こんなナリでも、搭載されているAIはアンドロイドさん達と同等であり、つまり、単純な撃ち合いなら何ら劣る所は無い。
何より割と安い。


日米枢軸出身者
「これからの時代は自動人形だ!我が春よ再び!!」

日米枢軸出身者(元自動人形部隊指揮官/PTSD経験済)
「おのれ!!させるか!!!!!(各方面を巻き込んだ阻止作戦)」

日蘭世界出身者
「どうせ軍用限定ならうちのPSの構造参考にしたら?アンドロイドほど人型に近付けなくてもいいから簡単だし信頼性もあるよ」

漆黒世界出身者
「この要求仕様ならもっと割りきった設計で良くない?あと、制御システムにこういう脆弱性があると丸ごと乗っ取られたりするよ。というか前世で大変なことになった」

孤立世界出身者
「どうせ走って撃つだけなら、弾の続く限り殲滅戦が続行できるように行動可能時間はできる限り伸ばそうぜ!」

汚英世界出身者(BB)
「うちの前世での調査と、貴殿方の対セクト、対米合戦の知見を組み合わせれば効果的な市街戦用行動プリセットが構築できそうですね」

無幻世界出身者
「はえーすっごい」

とかいう開発陣のやり取りがあったとか無かったとか。



【11式無人装甲火力プラットフォーム “土蜘蛛(ツチグモ)” 】
四足歩行型無人自走砲。
ゴツいビッグドッグをストライカー装甲車並みの体躯まで巨大化させたような見た目をしている。
120㎜後装式迫撃砲や多連装ロケット、短SAMシステム等の蛭では運用できない大型火器を搭載し、火力支援を行うことができる。
また、物資/人員輸送コンテナを搭載した前線輸送型も存在している。

202:奥羽人:2022/11/06(日) 21:53:54 HOST:sp49-98-219-141.msd.spmode.ne.jp
以上となります。
近似世界日本は、無人機ドクトリン構築の為に、連邦が実験台の大規模正規戦デモンストレーションを行うつもりですね。
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最終更新:2023年08月28日 22:42