299:奥羽人:2022/11/13(日) 16:05:55 HOST:sp49-98-218-254.msd.spmode.ne.jp
近似世界 2022年 IF
日本による直接的軍事介入 4
「あぁ、やっぱり、始まったか……」
『臨時ニュースです。現地時間未明、連邦よりU国に対して核攻撃が行われたとの発表が、先程日本政府より成されました。繰り返します、現地時間未明────』
2022年初秋、“連邦”南部、黒海東岸付近より発生した高赤外線反応を、日本の早期警戒衛星が捕捉する。
即座に、その反応は“連邦”軍の保有する9K720「イスカンデル」戦域弾道ミサイルと判別された。
事前に傍受した情報も併せて考慮した場合、弾頭は400kt級の核弾頭であると推定され、射程距離からU国南部の奪還地域の都市が標的と割り出される。
その情報は即座に協力体制を築いている現地U国軍迎撃部隊へと共有された。
核攻撃前に発生した連邦軍の活発化を受けて警戒体勢を敷いていたU国軍は、日本より情報支援を受けつつ供与された弾道弾迎撃ミサイルを発射。
大気圏上層部で目標を捕捉した迎撃ミサイルは、軌道調整スラスタによって、突入してくる核弾頭の再突入軌道の前方に割り込む形で衝突。両者は空中で爆散した。
同時刻、同じく警戒衛星で弾道ミサイルを捕捉した米国政府からも日本に連絡が入る。
迎撃成功の報を聞いて一段落着いた日本政府は、米英等との情報共有および対応協議へと取り掛かる。
現地では、核攻撃と同時に連邦軍による攻勢が開始された。
しかし、恐らく連邦軍が目論んでいたであろう核爆発によるU国軍の混乱は、迎撃成功によって文字通りの不発と終わり、事前情報によって警戒待機を実行していたU国軍前線部隊との正面衝突へと至ってしまう。
これを支援するために急遽作戦行動を開始した日本海空軍U国派遣部隊は、前線への支援攻撃と並行して、連邦領内に対する長距離巡航ミサイルおよび艦載レールガンによる攻撃を実行。
目標は、連邦軍弾道ミサイルとその発射機である。
この戦闘は、核攻撃の不発という事態に見舞われた連邦軍が逆に混乱しはじめたことで、明け方までには自然に終息。
作戦失敗を悟った連邦軍部隊は、徐々に撤退を開始する。
しかし、その後方。連邦の奥地では、動員によって新たに200万にも達する陸上兵力が編成されており、これらは比較的旧式の保管兵器で武装している。
しかしその人数は、10万に届くか届かないかの欧州諸国や40万人前後の日米陸軍、多いと有名な中国陸軍80万人と比較しても尚多く、圧倒的なものであると言えた。
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300:奥羽人:2022/11/13(日) 16:07:35 HOST:sp49-98-218-254.msd.spmode.ne.jp
「今回の攻撃は、我が連邦に対する西側諸国による侵略的行為への自衛であり、必要とあらば今後も同等の措置をとる準備がある」
「連邦は禁忌を犯した。我々は即座のU国からの連邦軍撤兵と動員解除を求める。最早猶予は認められない」
翌日、緊急の国連安保理会議が開催され、連邦による核攻撃の事実が世界に広く周知されることとなった。
突然の核攻撃によって各国からやり玉に上げられた連邦の大使は、自衛の為の核攻撃と強弁し続けており、更には次なる核攻撃も仄めかしている状態だった。
最早、軍事的手段による連邦本土への直接攻撃を以て制裁とする他は無い。
日米の個別会談で、遂に日本側がその意思表明を行う。
米国側は、下手をしなくとも全面熱核戦争へと至るそれに一瞬躊躇の表情を見せたものの、日本の確固たる意思を見て最早この流れは止められないと判断。
日本の軍事行動に賛意を表明し、協力して事に当たることを約束した。
欧州諸国、特にドイツやフランスは、大規模な地上戦の惨禍が自国にも及ぶかもしれないという懸念から全面戦争に及び腰であった。
しかし、連邦による核使用という所業を前にして、状況は既に妥協した判断で済むような段階にはないという結論を出さざるおえず、一週間を過ぎる辺りには軍事行動への賛意を表すこととなった。
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攻撃から1ヶ月程、核攻撃の衝撃の反動からか、お互いに行動を起こさない奇妙な睨み合いが続く。
この時、“連邦”政府内でも、核弾頭を迎撃されたことに大きなショックを受けているところだった。
戦域弾道ミサイルは、比較的短射程であり、尚且つ連邦目線では十分な奇襲攻撃であった為、対処時間の短さから考えて迎撃される事態はあり得ないと考えていたからだ。
弾道ミサイルが有効打とならない場合、取れる手段は迎撃を突破できるだけの飽和攻撃であるが、現在、連邦軍核戦力は新STARTに代表される複数回の核軍縮条約によって、即座に攻撃可能な弾道ミサイルの本数は精々450発前後まで減少していた。
仮に450発の弾道ミサイルを日、米、欧州、先制的自衛攻撃としての中国に振り分けた場合、U国で見せた迎撃能力から考察するに、その振り分けられた数十発程度では日本が保有する防衛システムを突破して十全な打撃を与えるのは極めて難しいのではないかと考えられた。
その為、一度の攻撃で十分以上の打撃を与えられるだけの核攻撃力を持たねばならず、それを可能とするためには保管状態にある核兵器を改めて実戦配備しなければならなかった。
しかし、そんな大規模な準備を日米が見逃すとは思えない。
既に、大人しく負けを認めることができる段階ではない。もしそうなれば、現政権は解体され、連邦は分断され西側の傀儡と成り果てる。少なくとも、連邦政府とその首領は、そう判断していた。
故に、連邦が生き残る術といえば西側諸国と日本軍を、連邦の広大な大地に引き込み地上戦の泥沼にて食い止めている間に核兵器を大量配備し、相互確証破壊を成立させる。
かのフランスやドイツも、母なる連邦の大地に沈み、疲弊し、やがて滅びた。今回も同じようにできる筈だ……視野狭窄に陥った末に出された結論は、それしか無かった。
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301:奥羽人:2022/11/13(日) 16:10:28 HOST:sp49-98-218-254.msd.spmode.ne.jp
国連安全保障理事会
常任理事国:日本、
アメリカ、“連邦”、イギリス、フランス
非常任理事国:アルバニア、UAE、ブラジル、マオリ、ガーナ、インド、アイルランド、ケニア、メキシコ、ノルウェー
国際連合安全保障理事会決議2656(S/RES/2656)
安全保障理事会は、文書 S/Agenda/■■■■に含まれる第■■■■回会議の議題項目を検討し、
第■■■■回会合における常任理事国の全会一致の欠如が、国際の平和と安全の維持に対するその主要な責任を行使することを妨げたことを考慮し、
文書S/Agenda/■■■■に含まれる問題を検討するために、総会の緊急特別会合を招集することを決定する。
賛成:14
反対:1
棄権:0
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国連総会
第12回緊急特別総会回
国際連合総会決議 ES-12/1
総会は、国家間の法の支配の促進における国際連合憲章の最も重要な点を再確認し、
全ての国の義務は憲章第2条に基づき、その国際関係において、武力による威嚇または武力の行使を、いかなる国の領土保全または政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎み、かつ、その国際紛争を平和的手段により解決することであることを想起し、
また、憲章第2条に基づく義務として、全ての加盟国は、加盟国の地位から生ずる権利及び利益を加盟国の全てに保障するために、憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならないことを想起し、
常任理事国が紛争当事国となったことによる全会一致の欠如により、安全保障理事会が国際平和と安全の維持に対する主要な責任を行使できないことを考慮し、
また、2022年■月■日の決議2656において、国際連合憲章に従った諸国間の友好関係及び協力についての国際法の原則に関する宣言を承認し、その中で、国の領域は武力の威嚇または使用の結果により他国が取得する対象としてはならないこと、ならびに国または地域の統一及び領土保全またはその政治的独立の全部または一部の破壊を目的とするいかなる試みも、この憲章の目的および原則と相容れないことを想起し、
1. 安全保障理事会理事国が侵略国となった場合、国連総会による2/3以上の賛成を以て当該国の理事国資格を一時停止することを可能とする事を決定する。
賛成:163
反対:5
棄権:15
302:奥羽人:2022/11/13(日) 16:12:25 HOST:sp49-98-218-254.msd.spmode.ne.jp
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国際連合総会決議 ES-12/2
1. 紛争当事国かつ侵略国である“連邦”の安全保障理事常任会理事国資格を一時停止する
賛成:163
反対:5
棄権:15
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国際連合安全保障理事会決議2657(S/RES/2657)
連邦のU国侵攻は国際平和と安全に対する違反行為であることを認定し、
国連憲章第39条及び第40条に基づいて行動することを決定し、
連邦に対しU国侵攻を非難し、
連邦に対し2014年2月1日の配備地点まで同国部隊を即時に無条件で撤退することを要求し、
連邦及びU国両国に対し、事態打開のための真摯な協議の開始を要請し、
理事会はこのための努力を全面的に支援することを約束し、
本決議の履行を確保するに質するその他手段を講じるため、必要に応じて理事会を招集することを決定する。
賛成:14
反対:0
棄権:0
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国際連合安全保障理事会決議2658(S/RES/2658)
連邦政府に対し、2022年の国連安保理決議2657及びすべての後続決議の完全な履行を要求し、当理事会の最後の善意の行動として全ての決定を留保しつつ、同国がこれを行うための最後の機会を与える。
連邦政府が2022年11月1日当日あるいはそれまでに上述の全ての決議を履行しない限り、U国政府と協力するすべての加盟国に対し、2022年の決議2657及び後続のすべての関連決議を執行し、かつ地域内の国際平和と安定を回復するため、必要とされるあらゆる措置をとることを認める。
賛成:14
反対:0
棄権:0
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303:奥羽人:2022/11/13(日) 16:14:36 HOST:sp49-98-218-254.msd.spmode.ne.jp
新須賀海(ベーリング海)
荒戸諸島(アリューシャン列島)近海
衝撃波、轟音。
全長240メートルに達する長大な砲身より、直径188cm、重量50トン超という巨大な弾体が、第一宇宙速度に手が届く勢いで放たれた。
その威力たるや凄まじく、発射直後、砲口付近に満ちていた空気が一瞬にして“炸裂”。
軌道上に存在する大気を切り裂きながら直進した弾頭は、やがてカーマンラインを容易に突破し定義上の宇宙空間に到達。
地球と宇宙の狭間で緩やかな周回軌道を描き始める。
同高度には、他地点の同型艦2隻より発射された弾が各々25発。合計75発の砲弾が軌道上で“待機”している。
運が良ければロスコスモスのレーダーでもその様子が見れたかもしれない。
もっとも、見えたところでどうしようもないのだが。
やがて、それらは再突入信号を受けとると、サイドスラスターによる強制突入軌道への変更によってICBMに匹敵する速度で落下を開始した。
それは、大気圏への再突入速度が毎秒7000m程度(マッハ21)にもなることを意味しており、この砲弾が地表に到達した時、そこには想像を絶する破壊的な衝撃とエネルギーが発生することになるだろう。
とはいえ、それだけならまだマシな方であると言える。
何故ならば────その再突入体の弾頭に搭載されているのは通常爆薬やKEM(運動エネルギー弾)ではなく、「特殊高エネルギー爆薬」を満載した大規模爆風兵器だったのだから。
周回軌道を経由した砲弾は、およそ数分後、“連邦”各地に存在する軍事施設や軍事的重要目標にほぼ同タイミングで着弾。
幾つかの砲弾は落下の運動エネルギーにてそのまま地表を容易く貫通して地下深くへと貫入。
その瞬間、高い破壊力を持つ爆薬が一斉に炸裂し、理想的条件下においてはキロメートル単位の範囲を加害するだけの威力を持ったエネルギーが標的を蹂躙した。
松島型SGV(戦略砲艦)ネームシップ、松島。
全長450メートルの艦全長の半分を占める240メートル超の砲身……電磁式マスドライバーから投射される飛翔体は、その名の通り衛星軌道へ到達するだけの能力を持つ。
これは、その能力を長距離同時攻撃に転用した「部分軌道同時弾着射撃」とも言うべきものだ。
軌道に乗るだけの速度とは、つまり、地球を周回することが可能な速度と言える。
地球を一周出来るが故に、砲弾を運動エネルギーを保ったまま待機させておくことも、そして、その場から動かずに対蹠地を直接攻撃することも容易…………要するに、地球上である限り松島型の射程内なのである。
同時刻 衛星軌道上
漆黒の宇宙を背景にして青い地球の上に浮かぶのは、巨大な太陽光発電パネルを多数搭載している巨大な人工衛星。
その中心には、地表に向かって伸びるタワー状の施設があり、タワーの先端は、俗に言うフェーズドアレイレーダーのような構造となっている。
これは、太陽電池パネルにより生み出される電力を変換し、マイクロ波として発射する装置である。
太陽光によって発電された電気は全てマイクロ波へと変えられて、大気圏を突き抜け地表へと到達する。
地表の受信施設は、受け取ったマイクロ派のエネルギーを再度電力へと変換、消費地へと送電する。
……所謂、宇宙太陽光発電。その検証実験の為の発電・送電衛星である。
次世代の発電として核融合研究の傍ら、それを補助する目的で研究されていたこれは、その名の通り強力なマイクロ波を地表まで到達させる能力を持つ。
エネルギー密度的には、普通であれば十分に送電できる程度であるが……照射出力を上げればその限りではない。尚且つ、複数の衛星のマイクロ波照射を同一地点に集中させたら……
目標となった“連邦”軍の施設に降り注いだ高強度のマイクロ派は、先ず最初に防護されていない電子機器が破壊され、無線通信端末やドローン兵器が無力化される。
次にある程度防護されている筈の大型機器もダメージを受け、最後に、複数方向から照射されたことによって発生した共振によるマイクロ波加熱が、平積みされていた弾薬類に襲い掛かり……
こうして、第二次世界大戦以降初めての、列強国同士による全面戦争が始まった。
304:奥羽人:2022/11/13(日) 16:18:39 HOST:sp49-98-218-254.msd.spmode.ne.jp
以上となります。
国際社会の平和と安定に責任ある理事国として、武力を行使する際には国際社会の賛同を得て正しく行わなければなりません。
え、国力を背景にした根回し外交(パワープレイ)?……ははは、まさか……
最終更新:2023年08月28日 22:43