639:モントゴメリー:2022/09/28(水) 23:58:00 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
FFRの社会インフラ③-1——石油代替燃料①——
「石油の一滴は血の一滴」
これは、第一次世界大戦時のフランス首相ジョルジュ・クレマンソーの言葉である。
そして産業革命以降、この言葉を否定できた国家は存在しない。
クレマンソーが奮闘した第三共和政から『鉄人』ジョルジュ・ビドーが率いるフランス連邦共和国(FFR)へと政体が移り変わってもその原則は変わらなかった。
そして、発足時のFFRはこの「血液」が非常に不足していた。
戦前の一大産油地帯であった北米は不俱戴天の敵その2になってしまったし(その1は海峡の向こうの腹黒紳士)
戦後急速に産油量を伸ばし続けている中東はオスマンやペルシャ領、すなわちOCU勢力圏である。
そしてFFRの領域には満足な油田は存在しなかった。
よって、黎明期のFFRは国家の命運を他国に委ねてしまうということを承知の上でOCUから石油を輸入しなければならなかった。
(BC勢力圏のサウジアラビアだけは絶対に頼らなかったが)
そのような状況であったので、1950年代末期にアルジェリアで油田が発見された時のFFRの狂喜乱舞の様は一言では言い表せない。
しかし喜びもつかの間、アルジェの石油だけではFFRの必要量を賄えるかわからなかった。
そのため、FFRはクレマンソーの上記の言葉を胸に国民一丸となって石油依存度の低減に邁進することになる。
——暗黒の30年の間、リシュリューの燃料タンクが満たされたことは無かった。
21世紀のFFR初等教育において、暗黒の30年がどれだけ辛く暗い時代であったかを教える際に必ず出される逸話である。
もっとも、これは「作られた伝説」である。
リシュリューほどの艦ならば定数の半分ほどでもそれなり以上の航海が可能である。まして当時は「平時」だ。
平時の通常業務で航続距離の全力を発揮しなければならない状況など果たしてあるだろうか。
更に言うなら、北米動乱時などの際には定数の8割以上の燃料を搭載して出撃したし、補給艦も伴っていた。
こういった事実を大人たちは語らないが、子供たちも成長していくにつれ自ずと知っていくのがFFR国民の青春である。
640:モントゴメリー:2022/09/28(水) 23:58:37 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
そのような流れの中で推進されたものがいくつかある。
今回取り上げる「代替燃料」の開発もその一つだ。
当初は実績のある穀物由来のエタノールが研究されたが、これは食料自給率を圧迫するとして別の道が模索されることになる。
(農業大国であるフランスでも、暗黒の30年期は1ギリギリであった)
次に注目されたのが、海藻である。
FFRでは海水の淡水化技術を戦後から磨き上げてきたが、海水の取水口に海藻が詰まるのが悩みの種だった。
たかが海藻と侮るなかれ、淡水化工場一基につき年間で300トン以上も発生するのである。
当然、回収して廃棄するにも時間と予算がかかる。何とか有効利用できないかと様々な案が出ては消えていった。
フランス(というよりブリテン島を除く西欧)には海藻を食する習慣は無い。ブルターニュ地方ではバターに混ぜる場合もあるがそんなことでは消費しきれない。
日本に輸出しようという話も出たが、海藻なら何でもいいわけじゃない、と至極ごもっともな一言で頓挫した。
そこで燃料資源としての活用方法が模索された。
研究の結果、暗黒の30年末期には一つの到達点として、
褐藻類(乾燥)1キロから約200ミリリットルのエタノール、もしくは
100キロ(水分90%)から約2立方メートルのメタンの精製が可能となった。
エタノールはそのまま燃料になるし、メタンは火力発電に利用できる。
ただし、問題もあった。生産コストが高すぎるのである(ガソリンのおよそ5~10倍)
戦時ならなりふり構っていられないだろうが、平時では到底採用できない。
しかし、FFR科学陣たちはある対処法を思いついた。
——高すぎて売れないならば、「高くても買われる」ものと一緒に生産すればいい。
藻類特有の糖質である「マンニトール」や「アルギン酸」は、油糧微生物であるラビリンチュラの株で発酵させると、「EPA(エイコサペンタエン酸)」や「DHA(ドコサヘキサエン酸)」、「アスタキサンチン」や「スクアレン」といった物質を回収・精製することができる。
高付加価値物質を高く販売し、エネルギー生産分の赤字を補えば、経済的課題は解決できる。
試算では原料である海藻の約半分をそちらに回せば採算は取れる。
この試算結果を見たFFR政府は事業開始を指示した。
暗黒の30年が終わった後の高度経済成長期「暁の20年」ではこの海藻由来燃料が広く流通することになる。
また、副産物である各物質は、人体の健康面に非常に有効であるものであるためそちらも大いに活用されることになる。
(FFRの特長である「不老化技術」への貢献など、後世への影響ではこちらの方が大きいほどだ)
642:モントゴメリー:2022/09/29(木) 00:00:13 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
以上です
ウィキ掲載は自由です。
社会インフラ
シリーズ第三弾です。
…石油がね、無いのよ(勢力図を見つつ)
詳しくは明日でご容赦を。
最終更新:2022年11月19日 00:24