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日蘭ネタ 剣継ぎの大剣
新天下五剣、大日本帝国にてそう呼ばれる剣が世界には五振り存在する。
列強五カ国それぞれが保有し同時に同国の象徴となる剣である。
一振りは大日本帝国の王権の象徴、天叢雲剣こと草薙の剣。
近年では聖杯探求というゲームにて因果断ちの神器として描かれ世界的に有名になった。
もう一振りはFFRの約束の剣、こちらも近年同ゲームにて星見の天文台のマスターに助力した彼の国の神霊の神器として有名になった。
残りはCIS、BCにも存在するがここでは蘭帝…オランダ海上帝国の剣について語ろう。
その名は【剣継ぎの大剣】若しくは【忘れじの剣】と呼ばれるが銘というものは存在しない。
所謂両手剣と呼称されるサイズの大剣であるがその形は異様と言う他ない。
柄は至ってシンプルであり茎に目釘を通すことで柄に固定されている。
そして茎には銘や製作者の名の代わりに一文『我、汝らを忘れじ』と蘭帝語で刻まれておりこれが名の一つ『忘れじの剣』の名の由来となっている。
そして刀身であるが…これが異様という他ない要因となっている。
本体は通常の刀身であるのだが…その本体に多くの折れた刀剣の先が接合されているのである、それこそ接ぎ木の様に。
その為に刀身よりさらに多くの刀身がそれこそ枝葉が如く伸び樹木の様にすら見える。
無論この為に武器としての実用性は皆無、が、かといってこの剣は天叢雲剣の様に祭器としての性格があるのではない。
この剣は蘭帝にとって己が弱さという罪の象徴であり墓標であり、呪いと祝福でもある。
この剣の刀身を形成する剣は全て十八世紀の蘭帝本土防衛戦において玉砕したある部隊の名も残されぬ日蘭の兵士のもの、
つまりは彼らの墓標として製作されたのがこの剣なのだ。
そしてこの剣はその部隊の唯一生き残った日本の武士により時のオランダ総督へと献上された。
献上の際に余りにも異様過ぎる形の大剣に場はざわめいたと記録には残っている。
しかしこの剣の生まれを聞いた総督は涙を流したという。
オランダという国が弱さ故に守れなかった国民と彼らが握り砕けた鉄の剣ががこの剣なのだ。
オランダという国が弱さ故に死なせた友人とその血がこの剣なのだ。
オランダという国を守った者らがこの剣なのだ。
故にオランダという国を強くしようと総督は決意したと武士の回顧録には記されている。
そして時のオランダ総督が皇帝となる時、この剣に誓ったという。
『我ら汝らを忘れじ、我ら汝らの剣を継ごう。』
故に【忘れじ剣】、故に【剣継ぎの大剣】、鉄と血の誓い。
それ以降歴代蘭帝皇帝はこの剣に鉄血を誓うという。
それは蘭帝に掛けられた呪いでもあったのだ。
そしてこの剣には伝説がある。
とある戦線にて日蘭合同部隊が玉砕した。
全体として戦争はは日蘭側有利であったがやはり戦争において絶対はなくそういった被害を受けた部隊も少なくなかった。
生き残った気絶していた日本人の武士一人残し、仲間が全て殺され狂乱となったオランダ兵士二人のみ。
狂乱となったオランダ兵残し正気であった武士は仲間らを住民のいなくなった近くの集落の墓地へ埋葬した。
しかし困ったことがあった。
日本人は石を置き、オランダ人は十字架を立てたが刻むべき名も言葉も知らなかった。
そこへ通りかかったのはレナと名乗る青い肌の奇っ怪な女であったという。
その女は武士の話を聞くと自分が彼らの墓標を生きた証を残そうと言った。
訝しげな武士を他所に女は仲間が事切れた場を聞き出すと一晩待てと言いその場を後にした。
翌朝、武士が集落に待っていると女がやってきた。その手に異様としか言えぬ大剣を携えて。
剣を寄せ集め接ぎ木の如く束ねた剣の樹、そう表するしかない大剣。
それらの剣に見覚えがあった。仲間らの剣だ。
これを墓標にすると良いと女は言い武士はその大剣を受け取った。
どうすればこんな剣が出来るのか、しかも女が…武士は分からず女をもう一度見てみる。
人成らざる青い肌、黒い肌もいるのだからと思ったが異様といえば異様、そして何よりももう一度見て気づいた。
女の腕は四本ある…それを見て武士はハッとする。
天竺においては大自在天の后に青き肌に四つの腕を持つ神女がいることを思い出したからだ。
武士が気づくと青い肌の女、いや神女は三鈷戟を持ち牛に乗った姿になると紫雲に乗り天へと去っていった。
異教なれど神の贈り物、この剣はある種信仰を守らんとするオランダへの祝福でもあったのだ。
なお余談だがその武士は緑の粒子に侵された邪気眼使いで刀鍛冶技能持ちな武士()であったのだったという。
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最終更新:2022年11月19日 00:29