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憂鬱SRW ファンタジールートSS 「スカイズ・センチネル」5.5
- F世界 ストライクウィッチーズ世界 主観1944年9月 大西洋上 エネラン戦略要塞 演習空域
ティル・ナ・ローグは教育組織である。
だが、それに限らず、開発・研究機関としての側面も持ち合わせている。
そもそも、ティル・ナ・ローグの構成員には扶桑皇国に設置されていたシティシスの人員が一部移籍しているのである。
当然ながら、扶桑皇国とこのエネラン戦略要塞の両方で研究は並行して進められており、その分野は多岐にわたる。
その中には、ウィッチやウォーザード、魔導士の用いる兵装の研究も当然含まれており、それは継続されているのである。
そして、今ひかりが訓練の合間の、経験値を稼ぐという目的で装備している武装もその研究の中において開発されたものであった。
「クロスボウ、ですか」
それは、とても銃とも言えないものであった。
何しろ外見的には大型拳銃のようなものでしかないのだ。
そして上部には不釣り合いなほどに大きな弾倉が取り付けられており、さらには照準器がアンバランスさを加速させている。
『そう、クロスボウ。魔導式のクロスボウよ。ブリーフィングで伝えた通り、射出のための機構はすべてウィッチの魔力で構築される』
僚機であり監督を務める伊井の言葉に、ひかりはほえーと言いながらも手でもってあちらこちらから眺めてみる。
『ウィッチの魔力もそうだし、内部機構によって弾くシールドを形成して、その反発力で射出するものね。
下手な火薬式のそれを遥かにしのぐ威力と射程を実現している。まあ、魔力がないと使えないけれどね』
撃ってみなさい、と伊井に促されてひかりはそのクロスボウを構えた。
ストックを肩に当て、トリガーとフォアグリップでしっかりと支え、見かけは少々間抜けだが準備を終える。
「えっと、魔力を流せばいいんですよね」
『そう、あとは内部機構が自動で弓の部分を形成してくれるわ。
あとは安全装置を解除し、装填を終えたらトリガー。それで射出される』
光学サイトを覗き込んで、標的のドローンへと照準を合わせる。
そして、マニュアルでも確認した通り、内部に埋め込まれた演算宝珠へとひかりは魔力を流し込む。
あとは、反応と動作の連続だ。光を放つ魔力で構築された弓が花開き、弦が形成、弾倉からレール部に装填された矢をつがえる。
「……!」
そして、トリガー。
発射と着弾はまさしく一瞬だった。激しい音と残光を残し、射出された矢はドローンを貫通し、その先の海の中へ突き刺さる。
海水を単純な速度だけでかなり切り裂いたのは、それだけの威力を秘めているということを如実に表していた。
とどめに、時限信管で設定された矢じりが爆発、水柱が立ち上がるほどの爆圧を水中で生み出していた。
そういうものと聞かされていたが、実際に見るのとではだいぶ違う。
「うわぁ……」
ひかりは呆然とした。構えていたにもかかわらず、強烈な反動が体を襲ったこともそうだが、その威力に。
これを実際に使う前に、通常のクロスボウを実際に使い、どういうものかを学んではいた。だからこそ、それとのギャップの大きさに驚いたのだ。
下手をしなくとも、大口径砲の一撃に匹敵するのではというものだ。貫通力も爆発による破壊力もとんでもなくすぐれていたのだし。
134:弥次郎:2022/11/05(土) 22:18:11 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
『ウィッチのシールドを攻撃に合わせるだけで、これだけの威力。防ぐのではなくて反発させる……ここまで応用が利くなんてね」
「うわわあ……ちょっと、こんなのが簡単に撃てちゃうなんて」
『セミオート設定だけど、フルオートでも打てるわね』
「あ、危ないじゃないですか!」
そうね、と遠方のひかりに伊井は告げた。
『フレンドリーファイアなんかしたら大惨事よ。扱うものが危険だ、ということを踏まえて戦うことも重要なの』
「そうです、けど……」
『それだけネウロイが恐ろしいということでもある。味方に当てないのは当然よ。
向ける相手を間違えないことね』
半ば呆然としているひかりを伊井は促した。
『じゃあ、行ってみましょうか。
標的ドローンが飛んでいるから、コースを飛びながら撃墜してみなさい。
徹甲弾と炸裂弾を選択してうまく標的を破壊するのよ』
「は、はい」
そして、合図とともにひかりはクロスボウを手にしてコースへと突入していった。
初めて扱うタイプの武器ではあるが、性能自体はいいのだ、あとは扱いに慣れれば楽なものである。
実際、コースに飛び込んでいったひかりは、出現した大型ネウロイを模したドローンに対して的確に射撃を行い、撃破していっている。
(射出する矢自体にウィッチのシールドを圧縮してエンチャント、そしてそれを別のシールドで弾いて射出。
なんというか、想像力が違うって奴よねー……)
伊井は、シティシスでシールドについて研究する際に被検体となったウィッチの一人だった。
単純な防御だけでない、他の用途に転用できないかと可能性を探る中で、あらゆる実験が行われたのだ。
そこに、固有魔法でシールドを圧縮して相手を攻撃するというウィッチの情報が手に入り、線が繋がったのだ。
(即ちこれは、魔力さえあれば誰もが固有魔法クラスの一撃を放てると、そういうことよね)
考えればゾッとする話でもある。
個人が固有の技能としていることを、機構として再現し、誰もが使えるようにすると。
まだ自分達さえも見知らぬ領域へと踏み込み、その謎を暴き立てるということ。
シティシスで何度となく経験したことではあっても、慣れるものではなかった。
(やっぱり、地球連合は隠してはいても魔法を知っていた。私たちが魔法と呼ぶエーテル技術以外にも……)
決して表には出せない確信が、そこにあった。
けど、それは言えない。口に出せない。そう口を噤むことが最善と理解している。
これは軍事上の都合もある。一軍人には、そうしなくてはならない義務がある。
そうだとしても、未知のモノへの恐怖は、何食わぬ顔で自分達の傍にいる組織が裏の顔を持つことへの恐怖は、ぬぐい切れなかった。
味方であるという幸運を最大限に噛みしめ、不用意に手を突っ込まないこと。それが、いま彼女にできる対処だった。
135:弥次郎:2022/11/05(土) 22:18:44 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
どこぞのデストロイヤーの固有魔法が応用されたクロスボウでした。
そんなわけで、502に行ったひかりちゃん、デストロイヤーの固有魔法を見て「あれ?」となりますね。
139:弥次郎:2022/11/05(土) 22:39:26 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
修正を
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ストックを肩に当て、トリガーとフォアグリップでしっかりと支え、
〇
ストックを肩に当て、トリガーとフォアグリップでしっかりと支え、見かけは少々間抜けだが準備を終える。
最終更新:2023年08月23日 22:38