978:トゥ!ヘァ!:2022/10/03(月) 19:11:28 HOST:FL1-122-133-164-39.kng.mesh.ad.jp
オリジナルGジェネ物語 水星のガンダム それは神か悪魔かそれとも


目の前で機械の巨人を使った決闘モドキが繰り広げられている。
始めは紫の巨人の一方的な戦いかと思ったが、終わってみれば白と青のカラーを持つ巨人の圧勝であった。

そんな凄まじい戦闘を見ながらも男はつぶやく。

「やはりあれは…ガンダム…この星系にも存在していたとは」

「先生。ガンダムとは?」

男の呟きに反応した教え子である少女は問う。ガンダムとは何か?


「ガンダム…それは我々にとって悪魔の名であり、救世主の名でもあるものです」

外から来た男は語りだす。その様子はまるで歴史の授業を行う教師のような口調であった。

「我々の歴史は幾度かの戦争に分けられます。その一番最初。地球連邦からのコロニー独立戦争」

「確か連邦の圧政に耐えかねた幾つかのコロニー自治政府が独立を求めて始まった戦争だっけ?」

「そうです。よく覚えてましたね。ではその後のことも覚えていますか?」

「確か太陽系統一戦争だっけ。ここも太陽系なのに何だか不思議」

少女の答えに満足気に頷いた男は優し気な口調で話し始める。

「まあ今の世の中は幾つもの太陽系が隣り合う時代ですからね。
話を戻しますが、地球連邦からの独立を掲げたコロニー独立戦争。その後太陽系の統一を賭けた太陽系統一戦争。
その二つの戦争で連邦側のフラッグシップ機として活躍した機体の名前がガンダムでした」

男の語りは続く。まるで物語を紡ぐかのように、まるで苦行を行うかのように、まるでそれを経験したことがあるかのように。

「ガンダム。我々コロニーの民はそれを悪魔と呼びました。単独で多くのエースを、多くの艦隊を、多くの貴人を屠った白い悪魔として。
正直あのまま戦争が続けば我々はたった一機のMS相手に負けていたでしょう。
かの独立戦争を勝ち得たのは半ば政治的な部分によります。

そしてその後の太陽系統一戦争。独立戦争時と違い戦力的にも国力的にも我々が圧倒的に有利なはずでした。
我々独立コロニー群、火星自治政府、木星企業、土星公社、月面都市群。最初から圧倒し、短時間でケリがつくだけの戦力差だったのです。

それを覆し泥沼の戦いにもつれ込ませたのが、再びガンダムの名を持つMSたちでした。
ただ少数のガンダムに我々は翻弄され続けました。
独立コロニー群の指揮系統麻痺、月面都市群の脱落。火星自治政府の半壊。あり得ない戦果、戦況でしたね。正に地獄です。ガンダムと出会って生きて帰ったものは非常に稀です。

しかしこの戦争も最終的には我々が連邦側の大統領及び大臣たちを捕らえたことにより終結しました。
地球圏は宇宙同盟側の主導で統一されました」

男の語りを少女は黙って聞き続けた。好奇心の強い少女からすれば男の語る未知の物語は同級生たちが好むライトノベルよりもずっと魅力的に見えた。


「統一後に起きた第一次外星系戦争。当時太陽系統一戦争より時が経っていた我々の戦力は更に洗練されていましたが、外宇宙から来る脅威の前には大きな意味はありませんでした。

下がり続ける防衛線に対して政府はかつて悪魔と恐れた…ガンダムの名を持つ兵器を復活させました。

そこからは快進撃の連続です。アステロイドベルト防衛線。火星奪還戦。木星決戦。
そのすべてに打ち勝ちました。

この頃から我々宇宙の民におけるガンダムの認識は悪魔から救世主に変わっていきました。

その後も度々やってくる外宇宙の脅威に対してガンダムの名を持つ兵器は多大な戦果をあげました」

979:トゥ!ヘァ!:2022/10/03(月) 19:12:27 HOST:FL1-122-133-164-39.kng.mesh.ad.jp
「暴走機械が攻めてきた第一次外星系戦争。金属生命体と和解した第二次外星系戦争。宇宙クジラと称される生物群を撃退した第三次外星系戦争ですね」

「よく学んでますね。満点です」

男は少女を褒め、少女は褒め慣れていないのかほほを赤らめた。
語り口は男が継ぎ、話は続く。

「三度の外星系戦争によりガンダムという救世主の名は不動のものとなりました。
その後我々は改めて外宇宙への進出を加速させ、今に至ります」

「先生たちジオン連邦の各地球系星系の到達ですよね!ここ以外にも地球や太陽系の名を持つ星系があったなんて驚きです!!」

少女は歌うように弾んだ口調で答える。
先生と呼ばれる男は仮面の下でそれを微笑ましく思う。

この星系に来たのは間違いではなかった。当初はプライドの高い支配者たちに呆れていたが、彼女のような素晴らしい生徒と出会えたのだから。


男はその後も少女とあれこれ話しながらも担当の教室に向かう。
彼の受け持つ教室だ。そこに彼女のように外の世界に興味を持つ将来有望な子供たちが集っている。
そんな彼女たちへ外の世界や自分の故郷を教えるのが彼の仕事だ。

アドステラ星系文明への友好的関係の構築。その一環で男は教師として赴任してきたのだ。

そんな彼は先ほどの戦いを思い出していた。

あの機体…私の知るガンダムに非常に近い…
そして何よりもあの機体から感じる感覚は…

「ふふ…」

「先生どうしたの?」

思わず笑い声が出てしまっていたようだ。男は少女へと優し気に何でもないですよと言う。

ああ。あの機体から感じたもの…あのMSそのものから感じたものは命の…魂の形!
あれに乗っていた少女への強い思い。正にその感情は…

「愛…愛ですね。スレッタ・マーキュリー」

今度は少女にも聞こえないように仮面の下の口だけを動かし呟いた。

意思を持つガンダム。それに愛された少女。そんな彼女と婚約した仇の娘…
どう上司に報告した物か…彼の脳裏には今後起こるであろう出来事をどう報告書に書くべきかという思いに満たされていた。

980:トゥ!ヘァ!:2022/10/03(月) 19:13:02 HOST:FL1-122-133-164-39.kng.mesh.ad.jp
〇説明

  • 世界観
同じように太陽系や地球の名を持つ星系が複数存在している宇宙。
星系規模まで拡大したGジェネ宇宙と言うべき世界である。

ガンダム作品を放り込んでいる関係上同じ暦や似たような歴史を持つ星系が多数に存在しているのが特徴。

例としては宇宙世紀星系だけでもTV版、劇場版、小説版、オリジン、サンボルなどが別々に存在している。

しかし外宇宙にまで足を広げている勢力は非常に少ない。
ジオン連邦は数少ない外宇宙進出勢力。

しかし引きこもりがちな各地の人類と反して、外宇宙に生きる存在は割と多い。
雑食性を持つ宇宙クジラ(seed)の群れ、人を見れば無差別に襲いだす無人MA軍団(鉄血MS)、宇宙を旅する金属生命体(00のELS)など様々な外敵が存在している。

これらに襲われ外宇宙進出がとん挫した文明や滅ぼされた文明も少なくないと推測されている。




  • ジオン連邦
現在太陽系(彼らの認識)を統治し、その周辺宙域の開拓(支配)も行っている巨大勢力。
使用している暦は宇宙世紀。宇宙世紀系世界に分類される。

およそ100年前に地球連邦から同じ志を持つ国々と共に独立。
コロニー独立戦争、太陽系統一戦争を通じて太陽系を掌握。
コロニー側の盟主であり、かつてコロニー民独立を掲げた活動家の名前であるジオンの名を関したジオン連邦を設立した。

その後は三度度重なる外宇宙勢力との戦争を経験。その後本格的に外宇宙に進出しだし、今の巨大な勢力圏を築く。

現在は水星の魔女の舞台であるアド・ステラ(A.S.)星系を始め、幾つかの文明を持つ星系と交流を持つ。

AS星系以外にもPD(ポストディザスター)星系やCE(コズミックイラ)星系などと交流を持っており、他にも同じように外宇宙進出を行い出会った西暦(ガンダム00)星系政府などとは友好関係を築いている。

981:トゥ!ヘァ!:2022/10/03(月) 19:13:35 HOST:FL1-122-133-164-39.kng.mesh.ad.jp
  • ガンダム
それは悪魔であり救世主でもある。

コロニー独立戦争時に地球連邦側が投入した高性能フラグシップ機。
性能だけで言えば高性能であるが、ジオンを始めとしたコロニー側も対抗できる程度であったが、後に白い悪魔の名を関するとあるエースパイロットの手に渡ったことからコロニー側の悪夢が始まる。

コロニー側の名立たる名将やエースがガンダムに撃たれ、あわや敗戦一歩手前まで追い詰められる羽目となった。

この際には最終的には地球連邦政府との政治的妥協によりコロニー側の独立達成は成功することとなる。

その数十年後に行われた太陽系統一戦争においても劣勢側であった連邦がガンダムの名を持つ兵器を投入。

国力的には圧倒していたはずの宇宙同盟側を散々かき回し、コロニー軍の主力艦隊壊滅、月面都市連合の脱落、火星戦線の半壊など恐ろしいまでに活躍した。

とは言え国力で圧倒していたのは変わらず、最終的には戦線は地上にまでもつれ込み、宇宙同盟側の主力部隊がガンダム部隊を拘束している間に連邦首都に奇襲をかけ大統領を始めとする閣僚陣を確保。

そのまま連邦側の降伏で戦争は終結した。
戦後はガンダムの名を恐れ、関連兵器一式は封印されることとなる。

その更に数十年後に外宇宙から襲来した無人兵器軍団。命名セフィロトによる第一外星系戦争が勃発。

当初は戦争名の通り太陽系外防衛線での戦闘であったが、宇宙を渡り歩き進化してきたセフィロト軍団に敵わず徐々に戦線が後退。

一時期は敵部隊がアステロイドベルト防衛線にまでやってくるほどの劣勢となった。

ジオン連邦側はこの劣勢を挽回するべく、持てる技術の全てをつぎ込んだ決戦兵器を開発。
願掛けの意味も込めてかつて宇宙民たちが恐れたガンダムの名前を敢えて命名した。

願掛けが成功したのかガンダムを始めとする新兵器の活躍により戦局は挽回。
太陽系内のセフィロト軍団を撃滅し、外宇宙へ追い出すことに成功した。

この時からジオン連邦においてガンダムの名は悪魔から救世主に変わった。


以降金属生命体ELSへの対話となる第二次外星系戦争、生命のある星々を餌場として喰らう宇宙クジラの群れとの戦いの第三次外星系戦争でもガンダムの名を持った決戦兵器が活躍。
ガンダム=救世主という名声を不動のものとした。


現在のジオン連邦においてガンダムの名を持つ兵器は一種のヒーローであり、旗役であり、決戦兵器という幾つもの意味を持つ特別な名前となっている。

現在ジオン連邦が関わりのある文明へ友好使節の派遣、もしくは諜報員を派遣しているのは他の星系でも同じようにガンダムの名を持つ兵器が確認されているという点が大きい。

それが今のジオン連邦にとって友好的な存在となるか、それともかつてのように悪魔のような存在となるか。
それを見極めるための調査である。





  • 外宇宙の存在たち

セフィロト:鉄血のオルフェンズに登場する無人MAのこと。セフィロトの名称はジオン連邦が命名した。
かつての厄災戦の際に外宇宙に逃れた残党が、時間をかけて大勢力化した存在。
宇宙を進みながらも道中に存在する知的生命体の文明を滅ぼしている。

彼等の認識では人類という種は脅威(アグニカ・カイエル)を生み出す存在であり、脅威(アグニカ級)が生み出される前に排除するのは当たり前のことである。
セフィロトにおける脅威とは取り合えずアグニア級がものさしとして使われている。

ジオン連邦にも喧嘩を売り、撃退されたため見事同国の繰り出してきたガンダムとそのパイロットもアグニカ(と書いて脅威と読む)認定している。



宇宙クジラ:ガンダムseedに羽クジラという名称で化石としてのみ出演した謎の生命体。
その実態は宇宙を群れで遊泳する巨大な魚型の生命体であり、地球のような生命に溢れる星を襲っては餌場としている。

クジラと名付けられているかこれは単なる総称であり、胸の中には様々な種類が存在しており、それぞれの役割に応じて働いている。
群れごとが一種のコロニーであり、女王個体に統率されて泳ぎ、餌を見つけ、捕食し、繁殖する。

言ってしまえば宇宙規模の害魚である。
戦闘力は中々高く、当時セフィロトやELSとの戦闘を経験したジオン連邦でも押し切れないほどには強い。
結局はガンダムを中心とする精鋭戦力をぶつけ女王個体を排除し、撃退に成功した。

因みに女王がいなくなると群れは統率を失い、バラバラになる。
その殆どは餌にありつけずに餓死するが、稀に他の群へ合流を果たす個体もいる。

982:トゥ!ヘァ!:2022/10/03(月) 19:14:05 HOST:FL1-122-133-164-39.kng.mesh.ad.jp
  • ELS
故郷を失いかけ、宇宙を漂う金属生命体。
ガンダム00に出てきたELSそのものであり、宇宙中に散らばった群れの一つ。

ジオン連邦と衝突した第二次外星系戦争では連邦内のNTパイロットたちが「なんかこいつら喋るぞ!」ということに気づき、急遽ミノフスキー粒子とNT能力を用いた対話がなされ、和解に成功した。

以降はジオン連邦の太陽系周辺に居候している。




  • 先生
ヘルメットのようなフルフェイスマスクを被った男性。

ジオン連邦からのAS星系に派遣された親善大使の一人であり、仕事の一環としてアスティカシア高等専門学校に教師として赴任した。
専ら同校ではジオン連邦の歴史や外宇宙勢力史のことをを扱う外宇宙史を扱う。

親善大使であるが、半分は工作員のような役目を持ち、学校の生徒たちの信頼を勝ち取り、将来的にAS星系における友好勢力を構築するのが役目。
彼以外にも同じような役目を持った半工作員が多数AS星系に派遣されている。

彼自身も訓練を積んだ正規の工作員の一人であり、MSの操縦技術においてもジオン連邦で指折りのものを持つ。


本人は黒のスーツにフルフェイスヘルメットで顔を覆っており、その下の表情は見えない。
しかしヘルメットの正面液晶には文字を浮かべる機能があり、その時々の感情によって様々な顔文字が浮かび上がるので表情自体はわかりやすい。
最もヘルメットに浮かべている表情と中身の表情、感情が一致しているかは本人のみが知るが。

丁寧な姿勢と、意外とユーモアに満ちた語り口で既に学園の教師、生徒問わず多くのシンパを作りだしており、先生として慕われている。

本人自身も現在の教師生活は満更でもないものと感じており、同僚や生徒への信愛の感情は本物である。


元々歴史学を専攻していたためガンダムを始めとするジオン連邦の歴史にも詳しい。
このため学園に現れたこの星系のガンダムに対して強い興味を抱く。
それがこの先どう影響していくかは、まだわからない。




  • 教え子の少女
名もなき少女。モブと言う意味である。

原作では背景に映ったかも怪しいレベルのモブであったが、その好奇心旺盛な性格により積極的に先生へ外宇宙のことを学んでいる。

先生も自分が受け持つ生徒の中でも最も強い好奇心を持つ彼女を目に掛けている。

先生の一番弟子であるために本来なら物語に関わるはずもなかった彼女もガンダムという存在に魅入られていくこととなる。

983:トゥ!ヘァ!:2022/10/03(月) 19:14:45 HOST:FL1-122-133-164-39.kng.mesh.ad.jp
投下終了

水星の魔女見てから突如電波が下りてきたので。

次スレも立ててきます。

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最終更新:2022年11月27日 10:29