102:陣龍:2022/11/23(水) 15:50:34 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
『奮迅、猛進、アイザック臨時小隊奮戦せよ』
「……とんでもねぇもん拾って来たな」
「……良いんじゃ無いですかね、無害そうですし」
「……何処の所蔵品なんでしょうかね」
「すまぬの、何分永い事寝続けておった故、我は我である事の他……何故、何処から、
その様な事を問われても応えられぬのじゃ」
「つまり忘れてしまっている、と」
「そうとも言う」
英国が首都、ロンドン。頭オカルトが現実化した第四帝国による第二次アシカ作戦によって
戦禍に呑まれつつあるこの大都市にて、様々な要因で所属部隊が離散し、臨時に集結、
現場で簡易編成された米軍小隊が、一振りの剣【と】喋っていた。
「分からんのなら仕方がねぇが……どうしてそんな声しているんだ、神剣ならもっと厳かに語るモノなんじゃ無いのか?」
「人の子らの常識を我に押し付けるで無いわ、我は昔からこんな感じぞ。多分」
「多分かよ、ハッキリしねぇな」
「喧しいわい、分からぬ事は仕方が無かろう」
「……なぁ、本当にトマホーク代わりになるのか、コレ」
「素手よかマシでしょうし、銃床で殴る訳にも行かんでしょう。きっと大丈夫です」
「あんな西洋剣とか、使った事有るのかよ」
「有る訳無いじゃ無いですか、子供の頃に木の棒ぶん回してた位です」
「おい、全然大丈夫じゃねぇだろ、ジョンストン……」
緊急展開、現地駐留、増援、欧州大陸からの撤退。様々な事情で同盟国の首都の大地にて戦う米兵達。
その中の空挺部隊の兵士が、トマホークを吸血鬼共に叩き付ける様な近接戦闘中ドイツ空軍による爆撃にて吹き飛ばされ、
覆い被さった家屋の残骸の中に何処かから落ちて来た剣が混ざっていたのを偶々取り上げた事で、
謎のお喋り神剣が覚醒した。その後色々有りつつも、様々な理由で四散した友軍兵と合流したのが、
この集まりである。
現在機能停止状態にある在英米軍基地の兵士、輸送機を撃墜された本土からの空挺兵、
化け物の体当たりで落とされた陸軍戦闘ヘリパイロット、撃沈された強襲揚陸艦から脱出した海兵隊員、
民間人とその護衛の英国兵離脱の為に殿となり部隊が壊滅したアメリカ陸軍装甲車両部隊兵士。
経緯は様々だが、共通しているのは全員初対面で、所属部隊が壊滅か離散して行方知れずとなり、
そして『化け物全員ぶち殺す』と内心の戦意は些かたりとも衰えさせては居ない勇士たちで有る事位である。
103:陣龍:2022/11/23(水) 15:53:10 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
「接敵(Contact)!敵は、数人の吸血鬼と……畜生、巨人(Giant Boy)です!!」
「なんだと……クソ、今の俺達にはM4と手榴弾しか無いぞ!ATMは?!」
「さっき使い切りました!C4も無いです!!」
「不味いな……」
ファンタジー系、若しくは近年のゲームでのゾンビ物でも普通に出て来る、
人間の倍以上の巨体と意味不明な怪力を持つ怪物の巨人。対人用でしか無い
アサルトライフルと破砕手榴弾では、目くらましが出来るかどうかすら怪しかった。
そもそも吸血鬼と巨人はジャンル違いでは無いのかと言う、
全く無益な疑問が脳内に過る程度に現実逃避したくもなる。
「ほぉほぉ……青年よ」
「なんだ!?こっちは今忙しい……」
「我を抜け、そしてあの不快な獣を斬るが良い」
「は?」
「剣の腕が下手で有る事は気にするで無い、その程度、我が調整出来るぞよ。
感謝するが好いぞおっほっほ」
吸血鬼、そして巨人へせめてもの抵抗として弾をばら撒く米兵達であったが、
それぞれ普通では無い耐久性の為、吸血鬼の方は造りが粗製なのか大量に撃ち込み
挽肉にすれば動きを止めるのは兎も角としても、巨人の方は羽虫を鬱陶しがる様な動きを見せるだけで、
全く歩みを止めなかった。その様な状況での【神剣】からの、気の抜けるような声色で、
状況の危機さ加減を分かっていない様な指示。
「……下手やらかしたら鋳潰してやるからな!!」
「やれるものならやって見るが良い、とぉ!!」
放置された車両を盾にする米兵達の目の前で立ち止まり、虫を潰すかの如く足を上げた巨人。
一縷の望みを賭けて、間合いも何も無く力づくで剣を抜いて振り回すしか無いのは当然だった。
「ちょぉ!?」
「おぉぉおお!?」
「……えぇぇぇー-!?」
「だぁっはっはっはっは!!これが我の実力の一部じゃぁ!!」
「いや全部じゃ無いのかよ?!信じらんねェ!!」
「……久方ぶり過ぎて、ちょっと全部出せない位に鈍っておるようじゃ……何処までやれたのかも、
覚えておらんがの。あ、あっはははははは……」
「声と見た目に反する位に滅茶苦茶年寄り剣かよお前!?」
「とぉ、年寄りと言う出ない!!事実を言われると剣も傷付くのじゃぞ!!?」
「そこは人……いやお前は確かに剣だったな……」
素人剣術丸出しで力任せの振り回しが、巨人の片足を丸ごと切り裂いた挙句、前のめりで倒れた
巨人の首を一撃で両断、殺害する神剣。剣曰く、これはあくまで実力の一端でしか無いそうだが、
真の実力がどうだったかも忘れてしまっている以上、何処まで本当か分かったモノでは無い。
「あーもう、我の実力話は終わりじゃ!お味方探すんじゃろ?優先順位を間違えるで無い!!」
「正論なんだが、何だか俺の親戚の子を思い出して可愛いな」
「だまらっしゃい!ええい、我は神剣ぞ!神剣であるぞ!?我をもっと尊敬せよ人の子ら!!
そんな事を言うのなら、我の思い出したこの痴れ者共の弱所を教えんぞ!!それでも良いのか!?」
「涙目なのがありありと浮かぶ声で反論して来てもなぁ、余計に可愛いとしか思えない」
「うっしゃい!うっしゃい!うっしゃいしゃい!!」
戦場のど真ん中でありながら、全く不釣り合いな生温かい雰囲気のこの臨時小隊。
この後も彼らは戦場の各所を鹵獲したり接収した装甲車や一般車、果てはかっぱらった敵軍の軍用ヘリで
駆け回って救援と敵の撃滅に勤しむのであるが、それはまた別の話である。
104:陣龍:2022/11/23(水) 15:55:32 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
『アイザック』小隊長…現在機能停止状態にある在英米軍基地所属の兵士。
過去中東やアフガンに派遣され、現地での戦闘経験も相応に有るベテラン兵の一人。
第四帝国軍の奇襲攻撃で基地機能や指揮系統が壊乱し、後方からの指揮を失った部隊が
散り散りになった所で、同じく部隊が四散した他兵士と合流した。
勤務地の都合も有って、立派に髭を蓄えた筋肉質の外見は典型的大酒飲みの様相だが、
実際は日本人並に酒に弱い。先祖は欧州系で血統的に酒に強い一族であるはずだが、
これに関しては謎である。
『ジョンストン』…輸送機を撃墜された本土からの空挺兵。被撃墜時の状況から武装も
不十分な状態でロンドンに降り立った為、先に戦死した友軍兵の装備を一部頂戴して武装している。
交戦中吹き飛ばされた先で忘れ去られていた神剣と出会い、この戦争でずっと共に戦う事になる。
金髪碧眼の理想的白人その物の容姿で某黒歴史時代の総統閣下大歓喜の様相。
酒に関しては良くも悪くもアメリカ人平均の耐性である。
『サイガ』…化け物の体当たりで落とされた陸軍戦闘ヘリパイロット。強襲揚陸艦から先行し
現地の支援に奮戦するが、少しばかり低空に深入りし過ぎてドイツ軍の襲撃を受け、撃墜された。
今戦争での地上戦では臨時の観測手や通信兵役をやり、後にドイツ軍からかっぱらった
ヘリで化け物共を薙ぎ払う活躍をする。
日系アメリカ人で典型的アジア系の顔立ちだが、四分の一ラテン系の血が入っている為か、
意外と欧米人的にも整った容姿。飲酒は実はザルや枠を通り越して海、全然酔わない。
『アーノルド』…撃沈された強襲揚陸艦から脱出した海兵隊員。ヨーロッパ大陸でドイツの動きが
明らかにおかしい事から、抑止力の為に派遣されたが、化け物共を大量投入してきた
ドイツ軍の初撃に打撃を受け、這う這うの体で離脱しようとするも追撃を受けて乗艦が撃沈された。
撃沈後は泳いだり放置された一般車を『借りて』ロンドンに退却し、現地合流した友軍兵と戦う事になる。
南部テキサス州出身の実家は牧場と言う半ばテンプレの家庭環境だが、実は某有名大学を主席で
卒業する様な英才。どうして海兵隊になったのか分からないと皆から突っ込まれた。
酒は比較的強い方だが樽を空には出来ない。
『ハーパー』…民間人と護衛の英軍を逃がす為に殿となり、部隊が壊滅したアメリカ陸軍装甲車両部隊兵士。
緊急展開組で有るが、想像を超えた戦力を叩き付けて来た第四帝国には大苦戦し、
尚且つ人道も何も無い鬼畜との戦闘で次々部隊員の多くが精神力を削り落とされて判断力を落とし、
その隙に付け入られた。臨時編成されたこの小隊ではドライバー担当で、ロンドン市街を派手に疾走して
敵軍の目を引き付けて友軍の間接援護と化け物の轢殺に奮迅する。
東海岸で街の車屋を実家が営んでいる事も有ってドライブが趣味で特技、筆記試験は合格ラインは
超えてる程度だが実技は優秀な感性派。唯一『サイガ』と差しで飲み合える酒豪。飲酒運転はしません。
105:陣龍:2022/11/23(水) 15:57:48 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
以上となります。ロンドン市街でこんな感じに丁々発止と戦闘と殲滅を繰り返すアメリカ軍兵士らも若しかすればいたんじゃなかろかってね
因みに神剣ちゃんは見た目は西洋剣ですがそれ以外の設定は特にありませぬ、声色はまぁサクナ見たいなのじゃロリ濁声風で(´・ω・`)
最終更新:2023年01月14日 10:01