196:陣龍:2022/11/28(月) 18:55:57 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

『背負い背負われ、想いをかけて ゴーストウィニングの勝負服』


 異世界からウマソウルや神代に踏み入った艦娘や半分英霊盾少女らが、
神の気紛れと思い付きで拉致られて一騒動が起きる数日前の事。


「ターボ……なんてことだ……なんてことをしてくれたんだ……」


 チームスピカの部室内にて、一人ロッカーに両手を付け項垂れる一人のウマ娘。
その名は【ターフの亡霊】ゴーストウィニング。トレセン学園に入学してより何時も
何処かで何かしらのミニイベントをスマートファルコン並に、
半分位は自己意識や経験が中途の確立であるが故の原因で起きたり起こされたりしている少女である。


「へぇー、何だかんだで勝負服が出来たんですねー。セイちゃんちょっと楽しみ」
「だねぇー。会長やマルゼンさん、それに黄金世代や覇王世代とかも勢揃い。
これは一大イベントですわー」
「ゴースト!みんな来てくれたぞ!早く早く、ゴーストの勝負服を見せてー!!」

「誰が呼べと言ったし……」


 現在、スピカの部室の外では結構な有名ウマ娘らがウマ娘ウマ娘ウマウマ(゚∀゚)ウマウマ々々、
と言うような感じで集っていた。




「うむ……二度に渡る却下の末、一体どのような勝負服を選んだのか、気になるな」
「そうですね、会長……。何せ、却下された二回とも、想像して居なかった意匠でした」
「心配か?エアグルーヴ」
「……あの二回の自称『勝負服』を見れば、誰しも心配するものです」


 そう溜息を吐くエアグルーヴに、苦笑いするしかない【皇帝】シンボリルドルフ。


『却下!流石に、騎手の勝負服をそのまま着用するのは不可!』
『何でですか!?著作権なら主さんからちゃんと許可取ってますよ!?
別にエロティシズムとかでも無い健全な勝負服です!!』
『ゴーストウィニング!君はもう少し自分の影響性を理解して欲しい!!勝負服と言うのは、
レースを走るウマ娘の真剣な考え無しに作られて良い物ではない!!』


「一度目の申請では、あの竹内騎手兼トレーナーが着用していた勝負服をそのままウマ娘の勝負服に移して居たな」
「確かに、紛れも無く『勝負服』では有るのですが……」


『却下!頑張って考えて来た努力は認めよう!しかし!このような直接的に威圧感を与え兼ねない意匠は、
他のウマ娘への悪影響を及ぼす可能性が有る!!』
『凄く頑張ったのに一発否定ですと!?一体何処が駄目なんでしょうか!?この顔の隈取りでしょうか!?』
『その顔の化粧は、勝負服それ以前の問題である!!』


「それで今度は何を思ったのか、歌舞伎役者の様な化粧に墓石を背負った、
一瞬衣類の全面に叩き付けられた血痕に見えてしまう、赤い彩の黒い勝負服……」
「夜にあの姿で出て来られたら、皆驚く程度では済まないだろうな」

197:陣龍:2022/11/28(月) 18:57:27 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

「えぇー……なんでそんな勝負服にしようと思ったの、ゴーストちゃん……」
「同感デース……特に後者は、想像するだけで……足が震えそう、デース……」
「そうですねぇ……キングちゃんは大丈夫ですか?」
「ふ、フンッ!お、おおおお化け何て、こっ、こっ、このキングがこわこわここ怖がるわけ
なななないじゃない!!?」


 聞こえて来た会長と副会長による、ゴーストウィニングの勝負服申請歴の内容の
突拍子の無さを聞いて呆れたり想像して怖がったりするウマ娘たち。
特に後者の何処かスプラッタ的連想をさせるに十分な衣装と化粧は、
このトレセン学園では常々心霊現象らしき状況が起きている事も有って、
少なからぬ恐怖心を刺激されるのも無理はなかった。



「ところでターボさんや。ちゃんとゴーストから許可は取ったの?」
「許可?ターボはゴーストに勝負をしに行ったら丁度勝負服が届いたからと言われたから皆に知らせただけ!」
「えぇぇ!?それって、つまり……」
「……後で謝りに行きましょう」
「?」



 良くも悪くも無邪気な暴走気質と言う事も有り、悪意無く、許諾も無く、ゴーストウィニングの勝負服の話を
ばら撒いたツインターボに目頭を抑えるカノープスメンバー。因みにゴーストウィニングは誰よりも先に
自分の竹内騎手兼トレーナーに勝負服を見せようと決めていたので、その謝罪の事は正しい。


「……今出ます」


 そんな中、諦めが着いたゴーストウィニングがとうとうスピカの部室から出て来る。
今更ながらに別に勝負服を着ずに普通に制服かジャージ姿で出ても良かったのでは、と言う考えが出て来るのは、
全てが終わってからの話である。


「おぉー…!」「これはー…」「へぇ、良いじゃない」「あらまぁ……」「カッコいいデース!」
「うむ…これなら問題無さそうだ」「ふふっ、良い勝負服だな。ゴーストウィニング」


 周囲からの誉め言葉に困った様に左手で額を抑えるゴーストウィニング。このウマ娘の勝負服は、
上着は黒のトレーナーを基調とし、両袖には水色の輪、首から下げたアクセサリーは水色のチェーンネックレス。
黒のレザーベストにズボンは膝までの黒スカートで両靴は白のサイハイブーツ。そして耳のメンコは芝の緑色。
デザインを整えた匠の技が光ったのか、一応それぞれに細やかにゴーストウィニングの事を表す意匠が盛り込まれているも、
全体的に見れば普通で、それぞれシンプルな各衣裳の喧嘩と衝突事故でグチャグチャかつ
【ダサい】印象になりそうなそれぞれが、ゴーストウィニングが着込む事で奇妙な照合性と神秘性を醸し出していた。
間違い無く今頃これをデザインした勝負服師は、この地獄の衝突事故レースを完走した疲れでさぞ寝込んでいる事であろう。



「むむっ!ターボ見つけたぞ!ゴースト、そのベストの下に何隠しているんだ!?」
「え、あっ」


 そしてこう言う時に謎の目敏さを発揮した爆走師匠。し切りにゴーストウィニングが背中を気にしている事を看破して
勢いよくベストをまくり上げる。スピカの部室の外と言う事は屋外で有るのだが、
人垣ならぬウマ娘垣の為に変な事故が起きてもそこは安全である。

198:陣龍:2022/11/28(月) 18:58:51 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

「おっ……これって、ウマ?!」
「……せめて一言断りを入れるのが筋って物でしょ、ターボ!」
「いだだだああー-!?」


 某嵐を呼ぶ幼稚園児の母親の如きグリグリで今更ながらに制裁する
ゴーストウィニングと痛みで悶絶するツインターボ。ゴーストウィニングは
比較的早期に解放したのだが、渦巻き目でふら付いているツインターボを見るからに、
その反骨精神と根性に反して意外と打たれ弱いのかも知れない。


「……空に駆ける競走馬と騎手?」
「まぁ……うん、そう」
「態々どうして?」
「『サラブレッド時代のゴーストウィニング』の、凱旋門賞での実況に有ったんだ。
『ターフに呑まれた日本馬の無念を背負い、今日本の亡霊が一着に突き進む』、って。アラブの方ので、だけど」
「え、まさかそこまで見て考えたの?」
「全然思い付かなかったから……アラブでの放送動画を翻訳付きで上げてくれていた人には感謝しかないよ」


 ツインターボが曝け出したゴーストウィニングの背。そこには天に駆け上がる、
一頭のサラブレッドと騎乗する騎手の姿が描かれていた。常々勝ち続け、
手前勝手に外野から勝ち負けを論ぜられ、剰え時には純粋な競馬からの観点では無く、
自己中心的かつ全くお門違いで分野も丸外れな政治イデオロギーから来る偏見・差別心からの
根拠無き批判と蔑視。【彼】はそんな批判など知る由も無く走り続けて不滅の栄光を得ていたが、
ウマ娘となってからは過去そう言った物事が有った事を知ると、自分の通った道へ辿れなかった
無数の競走馬の存在を少しは意識せざる負えなかった。これが結局【少し】止まりでしかないのが、
ゴーストウィニングがゴーストたる所以であるが、兎も角その少しばかり意識した結果が、
この天に駆け上る騎手とサラブレッドの意匠である。

 如何なる相手で有ろうとも、勝手に周囲から背負わされた物事であろうとも。共に背負い背負われ、
勝利へ駆け走る。サラブレッドの記憶と共に、ゴーストウィニングは勝利を目指してターフをひた走る。
『生まれ変わり』と言うプロセスを飛ばした稀有なウマ娘は、逃す気の無い過去と共に現在を生きる決意であった。


「まぁでも、一番は鞍上に見せたかったなって……」
「あー、うん……私から代わりに謝るよ。ゴメン」
「ありがと、ネイチャ。まぁ後数日もすればトレセン学園にドバイから戻って来るだろうし、大丈夫」



 尚その数日後、ピンポイントに異世界から複数のウマソウルやらが来訪してレース騒ぎや
ゴーストウィニング感情決壊事件等が巻き起こって当人すら忘れてしまう位にそれどころではなくなり、
オマケに夜になって無粋な連中がトレセン学園に押し寄せて来た事でウマ娘とトレセン学園関係者全員が
天高く(物理)避難する事になった為に、トレセン学園にゴーストウィニングの勝負服が置き去りになってしまった為、
竹内騎手兼トレーナーへの勝負服のお披露目は相当後になってしまうのであった。

199:陣龍:2022/11/28(月) 18:59:52 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp


――――――――――――――――――――――――――――――――



「ぜぇ……ぜぇ……ま、待つ……グフッ」
「あ、あのあのあのあの、ごめんなさい少しお待ちになって頂けないでしょうか!?」
「異界化するとは覚悟していてもこんな事になってるとか想定外なのですー!!」


 因みにトレセン学園からウマ娘と職員が居なくなった後、学園全域が現世から
常世と言うか異界化し侵入者も全員呑まれたが、異界化すると同時にトレセン学園に居残る多くの霊魂が、
学園内に残されたウマ娘の勝負服を依り代にしたり、或いはそのまま人型の霊魂となってトレセン学園内で出現し、
傍迷惑で邪魔で存在すべきでない侵入者を袋にして縛り付けて封殺した後、
エアロバイクやプールの有るトレーニングルームや坂路に練習用コースのあるグランド、
はたまたカフェテリアや教室へ大挙出没。異界化の原因である【姫】を抑えに来た
艦娘姉妹はその【姫】と共に、侵入者をほったらかしにしてそこら中でレースやトレーニングでの勝負や
カフェテリアで諸々を食べ尽くしたり各々の教室で遊び回って楽しみ回るウマ娘の霊魂達の鎮圧に
駆けずり回ったと言う【真偽不明かつ出所不明の噂】が有るが、本当の所はどうなのだろうか。

 後に戻って来た彼女らは、黙して語らなかった。

200:陣龍:2022/11/28(月) 19:02:02 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
|д゚) 勝手に異界化後のトレセン学園カオス模様出て来ましたが本筋は分からんのでまぁ噂は噂でありますので本筋とは無関係で御座る(強硬路線)

|д゚) 何か改めて考えてもヘンテコ具合やちぐはぐさが有る様に思いますがまぁある意味ゴーストウィニングらしいかも知れませぬな

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最終更新:2023年01月14日 10:02