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銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです欧州大戦その十九 可能性の少女
「全くひどい目に会った…。」
「ハハ中将、練度が剥がれた程度ですんだのだから僥倖と言うべきでしょう。」
バッキングダム宮殿よりおでこにマンガの様なバッテンの絆創膏貼ったペンウッドと片腕を包帯で固定したマックスが出てくる。
夜の闇に炎で照らされるロンドンの街並みを見ながらゼルモニターを立ち上げるとペンウッドは呟く。
「戦況はこちらが有利…か…現在まで確認された犠牲者も最悪の想定よりは少ない…本土侵攻を許したのは腹が煮え滾る思いだが…。」
「地の利はこちら…対抗可能な戦力さえ整えば恐れるに足らずな相手ですからな…。
ま、初期攻撃に対応出来ずにいたずらに被害を増やしてしまいましたが…。」
眼鏡を空いている方の腕で直しつつ少佐はペンウッド卿の呟きに答える。
現在戦況は英国側に傾いていた。日本人に艦娘や異星の援軍により戦況は完全にひっくり返された。
そして伝承通りブリテンの危機に現れたやがて来る騎士の王、かつてこの島の人々側に居た妖精らの帰還によりロンドンにいる人々の士気は高まっていた。
まだ北海の超巨大戦艦や北米東海岸を強襲した複数の超高速巨大戦艦こそ健在であるが既にブリテン島周辺の制海空権は奪還。
明日の夜明けを待たず巨人や吸血鬼のロンドンからの完全排除も時間の問題という予測が立っていた。
二人の背後より草を踏む音が聞こえ二人は振り向く。
「二人共、現在の戦況は?」
「陛下…。」
そこにいたのは護衛を伴ったこの国を統べる女王その人。
戦火に燃えるロンドン、その現実を受け止め己の目で見据えつつも二人に問いかける。
「現在戦況は我が方が優勢、ロンドン市内より敵の排除も時間の問題と思われます。」
「ブリテン島周辺の制海空権は奪還済み。残る敵主力は北海の超巨大戦艦及び、米東海岸を襲った複数の超高速巨大戦艦のみです。」
「そう…。」
二人の言葉に返事をし炎をその目に映す女王、その胸中は如何ほどのものか。
ペンウッドが女王に話しかけようとしたその瞬間。
「陛『A"h"a"a"a"a"a"a"a"a"a"a"a"a"a"!!!』!?ッ…何だコレは…!!」
「クッ…頭が割れる…!」
声にならぬ声、いや言葉にならない歌が響き渡る。
世を呪う様な悲嘆と怨嗟を濃縮したような歌がロンドンの街に響き渡る。
その歌に込められた深いタールの様に澱んだ呪いに妖精である筈のペンウッドとマックスですら膝をつく。
奥歯を噛み締め二人は歌に耐える。
力を振り絞り二人が周囲を見回すと女王の護衛の全員が倒れ伏している。
そして…、
「陛下…!!」
「クソッ…!」
女王自身も耳や口から血を流し芝生の上に伏せていた。
「何なのだ!?この歌は!!」
『クッ!!これじゃ攻撃出来ないのです!!』
「民間人を傷つけることは…!」
援軍に来たネロや電そしてアルトリアは苦戦を強いられていた。
その光景を見て柏木は呻く。
「人間が操られている…!!」
ブラックマサトサンな柏木の眼前に広がる光景。
自衛隊員…いや帝国陸軍や神崎島や土着の妖精、ティ連の兵達襲いかかり、ネロや大具足、ドゥン・スタリオンに取り憑く民間人や英国、米国の軍人達の姿。
皆耳や鼻から血を流し、瞳からも血を流し充血させどう見ても普通の状態ではない。
「アノ機械付けられた女の人を吸血鬼達が出して来てから皆オカシクなりマシタ。」
「どう見てもあの女怪の歌が原因のようですね…。」
焔の騎士なフェルや月影なマスクドライダーなナヨは一点を見つめる。
その先には吸血鬼達により普通の状態ではない市民を人間の盾にした上場所に拘束具と何らかの機械を付けられて女の異形の姿があった。
319:635:2022/12/04(日) 23:20:36 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
『Ahaaaaaaaaaaa―――――!!!』
その歌、先の対馬猛威を振るったティアマトのものと同じ呪歌。
ティアマトのものより威力は低い、だがここはロンドン市街。
艦の守りもなく加護も持たないロンドン市民やNATOの軍人達は格好の餌食となり精神を侵され操られれている。
何か対策はないとかとフェルは考える。
「マサトサン!キングストーンフラッシュなら!」
「さっきからやってる!一時的に解除されるけど直ぐにあの歌に上書きされちまう!」
柏木やナヨのその時不思議なことが起こったで問答無用なそれは市民の呪縛を解くがそれだけでは駄目だった。
継続的に流れ続ける呪歌により解除した側からまた操られてしまうのだ。
『一体どうすればいいのです…。』
足元に群がる市民に注意しつつ巨人の攻撃をいなす摂津式大具足熊野を駆る電。
―――――神よ我らが優しき女王をお守り下さい―――――
「これは…歌…?」
その時、電は戦場に似つかわしくない少女の様な歌声を聴いた。
その歌を電は電が理解しやすい日本語として認識。
『『『『我らがいと気高き女王よ永遠なれ。』』』』
「いや…違うのです…これは…歌に力が込められている…!」
力を込められ生きとし生けるもの全てに届く少女の歌声とそれに重なる老若男女多くの人々の歌声を聴いた。
その歌は人々を捉える呪縛を解く。
「ッ!!操られている人達の動きが緩んだ!!今なのです!!」
その瞬間を見逃さず電は巨人を打ち倒す。
「これは【God Save The Queen】…Old Lady、一体何が…。」
「呪歌により掛けられた呪いが解かれていくわ…この歌が原因ね。」
ロンドン市街に戦闘開始前より展開していたウォースパイトとヴィクトリアスはロンドンの街に響き渡る歌を聞く。
「彼女が導き市民達が歌ってるようね。」
ウォースパイトは一点を見つめる。
一人の人物と付きそうバグパイプを吹く男に率いられロンドン市民達がロンドン塔より来る。
彼らは皆高らかに歌を歌う。【God Save The Queen】、英国のアンセム(国歌)である。
戦場を目指し行進しながら高らかに讃歌を歌う、傍目から見れば狂気でしかないだろう。
ハーメルンの笛吹きを連想するかもしれない。
だが市民達の瞳には輝きがある。深い理性の輝きがそれを否定する。
その中で先頭を行き最も声高く歌う【少女】…あれは【少女】なのであろうか?
翡翠の髪と翠玉(エメラルド)の瞳を持つ【彼女】、その姿はヴィクトリアスらも良く知る。
「あれは…。」
「【彼女】ね。間違いない。」
「Old Lady、ありえないわ…【彼女】は単なるプログラム。それが自我を持ち自らの意志で動くなど。」
首を振るヴィクトリアス。
「私はそうは思わないわヴィクトリアス。【彼女】は私達と同じ人の生み出したモノ。人の生み出した可能性。
現実に存在しえぬ電子の海を揺り籠に多くの人々に愛され、その愛により育まれた存在よ。」
「それじゃ…まるで…あの創作のユニコーンじゃない…!」
「ヴィクトリアス、【彼女】は【可能性】であるけど【獣】じゃないわ。」
ウォースパイトは詠う。
320:635:2022/12/04(日) 23:22:01 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
「『生まれ落ちたそれは少女と言って良い
歌と竪琴の至福の音に祝福されて私の内に、
少女は春のベールを纏いその薄い向こう側で燦然と輝いていた
そして私の内に小さな寝床を、自分の居場所を作り上げた
そして私の内で少女は眠りについた
するとすべてが少女の眠りとなった
私のお気に入りの木々
目にするもの全て 広大な草原
私の五感を通し感じる全ての不思議も
少女は世界を眠らせた 神様どうしてでしょう
あなたは少女を完全にすることを望まなかった
私達はいつ起きれば良いでしょう?
少女を見なさい 歌姫は生まれたまま眠り続けています
永久に変わらぬ少女は何処に在るのか
ああ 少女の歌が枯れ果てる前にどれほどの可能性を描けるだろうか
少女は何処へいくのだろうか』。」
「同じオルフェウスへのソネットの一節よねそれ…。」
「あれは可能性の少女よ。それに人を模した存在が人の【可能性】と【愛】で育まれ現世に生を受けた。そういう存在は前例があるのよ。」
ウォースパイトは瞳を閉じて再び開き【彼女】を視界に収める。
「現代のガラテアよ。彼女は。」
歌が…歌が聞こえた…世を呪う歌が…。
『(陛下!!陛下!!)』
『(クソ!中将、何か手段は!?)』
『(そうだ!柏木大臣の所へ!彼は彼の国の大神の加護がある筈!)』
自分を呼ぶ…誰かの知っている様な声が遠くに聞こえる…
だけどここは暗い暗い闇の中、何処か安らげる…
起きたくない…
『(ペンウッド卿に少佐!?)』
『(女王陛下を背負って!?どうしたのデス!?)』
『(陛下はあの歌にやられた!!)』
『(柏木閣下にナヨ閣下のお二人のお力でどうにかなりませんか?)』
『(あれは精神に作用し壊す呪歌故にお借りしている我らの力でどれだけ通ずることか…)』
『(ナヨサンの借りてるアルテミスサマも専門は狂気に陥らせるデスシ……これは?…歌…?)』
歌が歌が聞こえる…
―――――我らの法を守り給え 我らに理想を与え給え 心を込め歌いましょう―――――
無事を願う歌が…
―――――女王を守り給え―――――
その瞬間視界が開けた
321:635:2022/12/04(日) 23:23:31 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
「ここは…?」
気づけば黄昏の空の下、何処までも見たこともない炎の様な花が咲く花畑に眠っていた。
その花の名を彼女が知らない。
「(リリベット。)」
懐かしい声が彼女の名を、女王と呼ばれることになる前の名で呼ぶ。
彼女は振り向いた。彼女の双眸より涙が流れる
「お父様…お母様…。」
在りし日の姿で二人はそこにあった。
彼女は二人に駆け寄ると抱きつく。男の腕が彼女を抱きしめ、女が彼女の頭を優しく撫でる。
老女のままの彼女と在りし日の二人、誰も彼らの外見と逆の関係とは思わないだろう。
在りし日の男と女は言葉を紡ぐ。
「(ここで休むかい?リリベット?)」
「(貴女は今日この日まで頑張って来たわ。もう休んでもいいんじゃないかしら?)」
暖かい腕の中、その言葉が彼女自身に染み込むまで暫し時間を要した。そしてハッとする。
脳裏に光景が浮かぶ。
―――――自国の兵士達が、市民達が心を壊されかけながらも必死に抗っていた―――――
―――――救援に来た極東の、異星の、この国で生まれた妖精の兵士達が彼を助けようとしていた―――――
―――――復活した帰還した伝説達がこの国を守ろうといしていた―――――
―――――緑の髪の少女と共に何処かの誰かの為に歌う人々―――――
自身から名残惜しむ様に在りし日の二人から彼女は己の身体を離す。
在りし日の二人はそれを微笑ましく三丸。
「…いいえ…私はそれでも…もう一度立ちます…。」
「(それがどれだけ苦痛に満ちていても?)」
在りし日の男が問うと頷く。
「私を待っている人達が居ります…。」
「(それは義務ではないのよ?)」
在りし日の女の問に首を横に振る。
「お二人の誇れる子供もありたいから…心の弱さなどで、こんな理由で終われはしません!!」
(そうか…それもお前らしい…。)
(気をつけて行ってきなさい。)
彼女は名残惜しそうにしながらも踵を返す。
「行って参ります。お父様、お母様…。」
彼女は駆け出した。いつにまにか少女の様な足取りで。
彼女は気づかなかったが在りし日の二人の足元にはある存在があった。
「キュウ。」
クジラの様な、カエルの子供の様なそれが鳴いた
322:635:2022/12/04(日) 23:24:14 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。
最終更新:2023年01月14日 10:20