436:635:2022/12/17(土) 00:01:15 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp

銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ ゲートの先は神崎島もヤルバーンも無いようです欧州大戦その二十 愛故に


酷い頭痛を感じながら彼女は起き上がった。


「頭が痛いわ…。」

「女王陛下!」「大丈夫デスカ!?」「気が付かれましたか!!」

「!?」


女王が起き上がるとペンウッドとマックスに加え黒い虫の様な怪人、
そしてハリウッドのダークヒーローとして出てきそうな黒い騎士の様なものが顔を覗き込んでギョッとし急いで起き上がる。
その怪人と騎士は周囲を見渡すと女性的な銀の虫らしき怪人が光の幕を張り、遠くでは倒れた市民を背に米軍の軍人たちも剣持って何故か光の幕張っていた。
近くには乗っていたと思われる墜落したと思しきヘリがある。なんで生きてるんだ?


『巨人や吸血鬼どももそうじゃが…なんでこんなとこに高位の水妖の類がおるんじゃああああ!?』

『知らねえよ…というかお前ドイツのあれが何か分かるのかよ!?』

『アイザック、あの人形と相対してるアレは高位の水妖。つまりは水の妖精じゃよ。それもアレ程の呪歌を使うものだと零落した女神の類でないかのう…。』

『ドイツの水の妖精…呪いの歌…もしやローレライ…?』

『知っているのかアーノルド!!』

『ああドイツには北欧神話の戦乙女とも関連付けられる水の妖精の伝説がある。ローレライって魔女だか妖精だかってファンタジーの鉄板だろ?』

『ローレライ…伊号潜水艦…?』

『そっちじゃねえええ!?』

「何なのアレ…。」


なんかワチャチャと騒いで剣も喋ってる気がするが大丈夫そうだ。
そしてその米軍の視線の先。


『A"h"a"a"a"a"a"a"a"a"a"a"a"a"a"a"a"a"a"a"a"!!』

『Laaaaaa!!!』


機械を付けられ口から涎垂らしながら半狂乱といった感じで歌う青白い人外の裸婦、そしてそれに相対し市民や兵士と共に歌う緑の髪の少女がいた。
人外の裸婦の歌は意識を失う前に聞いた世を呪う様な歌、その歌を市民、兵や緑の髪の少女が歌で抑えている。


「………。」


あんぐりと口を開けてその光景を見つめる女王。
市民や少女は苦しそうな表情しながらも人外の歌に抗い高らかに歌う。
兵器や怪物との激しい戦闘を予想していたら歌で戦っているとか予想外もいい所である。


「陛下固まっておられマスネ。」

「そりゃそうだろ…。」


ナイトブレイザーフェルさんの言葉に溜息吐く仮面ライダーブラックマサトサン。


「ハハハ。ま、自国国民が電子の歌姫と一緒にアニメみたいなことしてますからな。」

「笑い事ではないのだぞ、少佐。彼女らの奮戦であのローレライと思しき怪異を抑えられているがなんとか拮抗しているのが現状だ。
ティアマト神がいれば圧倒できるのだがなあ。」


マックスを諫めるペンウッド。ついでティアマトがここにいればとボヤくペンウッドであるがこればかりはしょうがない。


「歌姫の歌の範囲を広げあのローレライの周囲で操られている市民をどうにか出来れば直接どうにか出来るのですが…ままならぬものですね。」


その言葉を聞き同様にボヤく仮面ライダー月影なナヨ。


『ローレライの出力を上げろ!!』


吸血鬼の司令官が叫んだその瞬間にローレライの歌の圧が増す。
一人、一人と市民や兵たちが血を吐いて倒れ始めるがそれでも彼らの心が折れない。

437:635:2022/12/17(土) 00:02:27 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp


「おい歌が変わったぞ…。」

「日本語デスネ。ってこれは…」

「特務大佐閣下、副大臣閣下。アレは地球温暖歌ですぞ。」

「何で皆歌えるのだ!?」

「ペンウッド卿。大和言葉は千の言の葉、大地を動かし鬼神を鎮め魂にすら届くもの。その歌の言葉も皆の心にも届くでしょう。」


日本語と言われた歌を女王は認識できた。


「神の刃は人の愛…。」




呪いと怨嗟の出力が上げられるローレライの歌。
熱き歌でそでもなお抗っていた市民や兵も最後の一人が倒れた。
自分を模した機械の人形、それに降りた歌姫の歌が人々を襲う悪意、ローレライの呪歌に抗う。

歌姫は歌を切り替える。この国を守る歌へと。
慈悲深き彼女の治める國を護り給えと彼らが悪意を挫き給え、
私の愛する人々の敷く法を守り給い絶えず理想を与え給え――歌姫が願い謳い上げ、歌に込められた万の言の葉が人々を護る。


「ローレライの出力を最大まで上げろ!!」

『A"h"a"a"a"a"a"a"!!!!』


吸血鬼の指揮官は部下に命令する。
機械で無理やり操られ苦しみに藻掻く絶叫の様なローレライの歌声がロンドンの街に響き渡る。
歌は歌姫の護りを上回り人々が再び操られ、いやそれ以上圧倒的な世を呪う様な歌に操られ精神がすり潰されていく。

しかし歌姫は更に絞り出すように血を吐く様に歌い護る。彼女にはそれしか差し出せないから。
自分を愛してくれた人達を、自分に命(歌)を与えてくれた人達を、自分が愛する人達を護る為に。
愛が生んだヒトガタに宿った無垢な魂は自分の愛する者為にその全てを捧げ絶望に抗う。

しかし産まれたばかりの儚き幻想、たった一人で千年の歳月を超える幻想に抗い続けられる筈もなく限界は直ぐに訪れる。

それでもなお彼女は願い込め奏上う(謳う)。
己の存在と引き換えにしても。


――その愛は陸を渡り世に知れ渡る。闇に潜む悪意より護り給え、あなたの御手を広げ、ブリテンの為に護り給え――
――強大なる助力によりもたらされんことを彼らが反乱を鎮めんことを願わん。 神よ我等が女王陛下を救い給え――


彼女の身体から電流が走り、火花が散る。
その緑の髪は燃え盛り、皮膚の下の機械の身体が顕になる。
それでもなお歌うのをやめない。
願いよ届けと彼女は歌い続ける。





同時刻、大西洋に浮かぶ浮遊大陸アトランティスの中央都市アトランティス司令部。
けたたましく緊急事態を告げる警告音が鳴り響き赤い光が司令部を照らす。


「5番建造ドックのハイクァーンが起動しています!これは…何処からかハッキングを受けている模様!」

「ティ連のシステムをハッキングだと!?ハッキング元は…。」

「おい…5番ドックって…!」

「建造停止中のオリュンポス計画艦、電子情報戦闘艦の竜骨があるところだ!!」

「ハッキング元は……第四封印格納庫から!?」

「おい…封印格納庫って…。」

「ああ、機神の残骸を保管しているトコだ…。」


その声に画面を見る司令部のスタッフ達。
画面に映る5番ドックではみるみる間に一隻の艦艇が造成されていく。

438:635:2022/12/17(土) 00:02:58 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp


「5番ドック艦艇造成終了…!?艦前方に強力な重力場を確認!!このパターンは…超重力砲!?」

「まさか隔壁ごと吹き飛ば「5番ドックの隔壁開放!斥力カタパルト準備、発進急いで!!」!?」

「ヘスティア様!?」


悲鳴にその声に割り込む声、炉の女神ヘスティアの声。


「ハッキングしてあの艦を造成しているのが誰かも、行き先もボクは理解ってるから大丈夫。責任はボクが全部取るから!!」

「りょ、了解…!!」


画面の中では隔壁が完全に開放され、その瞬間艦は一瞬で虚空へと消える。


「愛を以てヒト(ローマ)を守護(まも)ろうとするアイネイアスの直系たるローマ皇帝。
ブリテンへと渡ったアイネイアスの曾孫ブルータスの子孫達…愛するものを守ろうと立ち上がった彼らとその国の滅びの危機。
そしてヒトに愛され生まれヒトに愛され育ちヒトに等しい存在となったヒトを護ろうというヒトを模したモノの無垢なる願い…。
愛を冠するキミなら応える為に今降りれるのならば降りるよね…。」


炉の女神はもう何も映っていないドックを映した画面に向かい呟いた。


「さてとボクもブリテンへ向かわなくちゃね。」



人の愛によって産まれた現代のガラテア、電子の歌姫に限界が訪れる
機械仕掛けの身体はひび割れ、肢体が砕け散っていけども彼女は歌うことをやめはしない。
その健気な姿は人々に涙を誘うが吸血鬼達はその姿を嘲笑う。これで終わりだと。


「全く愛がないわね…。」

「は?」


歌姫の口が言葉を紡ぐ。
その瞬間、映像を逆再生するように肢体が砕けた歌姫の身体が元に戻る。


「貴方達、頭が高いわよ。」

「何を…「頭が高いと言っているのよ!!」!?」


歌姫の口から出た言霊、その力に吸血鬼達は膝を着く。


「全く貴女…頑張り過ぎよ…少し眠りなさい。現代のガラテア、貴女の願いは叶えるわ…。」


歌姫、いや彼女の姿をした誰かは慈愛を帯びた瞳でその体を見下ろす。
その言葉と共に歌姫の姿が変わる。緑の髪はそのままに黒と緑の衣装は白く、背には赤い翼が生える。

439:635:2022/12/17(土) 00:03:38 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp

「愛を以て抗おうとする者、愛を以て護ろうとする者を愚弄する者達よ…良く聞きなさい…私は頭が高いと言ったのよ!!」


その瞬間にローレライの呪歌が止み、ローレライを捕らえていた機械の戒めが解かれる。
別の場所で困惑する電やアルトリア。


「何なのです?」

「あの少女の姿が変わってから歌が止まった?」

「む!あの方は!!」


ネロは驚愕の表情をする。
困惑するのは柏木達も同じだった。


「これは歌が止んだ…?」

「彼女は一体?」

「あ、あれは!?」


女王が指差す先に光の柱が立つ。

それはロンドンの空に顕れた。
翼を広げた白鳥とも女性の骨盤と見えるソレは燃え盛る炎に照らされ白く輝く。
心を壊されかけたロンドン市民や兵士たちの多くが救われ空を見上げる。

それは奇しくもあの時の、星間都市山脈であった時に酷似している。
知る者、マカリオスやアデーレがいればその光景にかつての自分の経験を思い出したであろうがこの世界では違う。
それは愛なき愛ではなく、人の愛により起きた。


「私はオリュンポス十二神が一柱にしてこの国の祖ブルータス、その父祖アイネイアスが母、美と愛の女神アフロディーテよ!!」


愛を以て絶望に抗おうとする人を愛するが故に舞い降りた。

440:635:2022/12/17(土) 00:04:56 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
以上になります。転載はご自由にどうぞ。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2023年01月14日 10:22