457:奥羽人:2022/11/23(水) 15:36:09 HOST:M014009102000.v4.enabler.ne.jp
「なるほど、こりゃあ良い。日米枢軸の奴らが積極的に勧めるだけはあるな、自動人形」
──────とある転生者
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殆どの“連邦”人にとって、それは唐突に始まった。
戦争は、隣国とはいえ、遠い遠い国外で起きている事だ。動員が始まれども、まだ本土深くに戦火は及んでいない。
少なくとも、連邦の彼ら彼女らはそう考えていた。
日本軍の総攻撃が始まる、その時までは。
「来たぞ!撃て!近づけるな!!」
ここは連邦の首都近郊。
WW2の一大地上戦で、侵略者がギリギリ手に掛けた連邦の奥深く。そこで、連邦陸軍のとある部隊が“何か”を相手に戦っている。
この部隊は、最近になって新設された新規部隊であり、所謂動員兵達が多い編成となっている。動員兵故に一線級部隊向けの「アルマータ」
シリーズは配備されておらず、保管されていた比較的旧式の武器兵器を受領している。
とはいえ、それでもT-90やBMP-3を多数装備しており、十分な戦闘能力は保持している。
その筈だった。
「クソッ!なんなんだよアレは!?」
一人の兵士が銃を乱射しながら絶叫する。
その視線の先には、健脚の二足歩行兵器……日本軍の無人装脚戦闘車「蛭」の群れが、全力疾走でこちらに突進してくる姿があった。
「止められねぇ!」
「逃げろ!」
一機の「蛭」から放たれた小型で高速のKEM(運動エネルギーミサイル)が、多少小高くなっている道路の並木沿いに展開し主砲を釣瓶撃ちしていたT-90の一両を破壊する。
直後、一発の戦車砲弾がその「蛭」に命中しこれを破壊するが、他の「蛭」達は一切意に介さず突撃を続行する。
「後退、後退……!!」
接近戦を避けるべく、戦車が後進を始める。
しかし、そこに向かって横合いから多数のロケット弾が飛来し、数両の戦車・装甲車が擱座してしまう。
「“下半身”が来た!浸透された!!」
“連邦”の部隊が「蛭」迎撃に夢中になっている間に、人間の下半身だけで走り回るが如きおぞましき様相の自律兵器……無人装脚戦闘車「飛脚」の大群が、懐まで潜り込んでいたのだった。
「畜生!畜生!」
交戦距離数十メートルも無い乱戦。
死を恐れぬ無人兵器の、安全を省みぬ浸透襲撃が、連邦兵士達の雑多な抵抗を搔き乱す。
真っ黒い下半身だけの存在が走り回り、腰から生やした銃で味方を蹂躙する光景。
そんなモノに耐えられる兵士は志願兵でもそう多くはないだろう。
「ダメだ!逃げろ!」
「孤立するな!纏まって反撃するんだ!」
幸いにも通用するライフル弾で「飛脚」を撃ち倒す度に、反撃で味方も倒れていく。
そうこうしている内に「蛭」の残りも到着したようで、重機関銃の野太い発砲音が生身の兵士の悲鳴と共に響いてくる。
「ああ、神よ…」
化け物の軍勢に狩られる存在と化した連邦兵は、もはや神に縋るしかなかった。
458:奥羽人:2022/11/23(水) 15:37:36 HOST:M014009102000.v4.enabler.ne.jp
欧州標準時における深夜帯。
松島型3隻による大陸間弾道砲撃が連邦の大地に炸裂した。
続けて、日本空軍の爆撃機と輸送機が多数飛来。これら航空機には全て大量の巡航ミサイルが搭載されていた。
同時に、地中海やバルト海、オホーツク海に展開したSSGN(巡航ミサイル原潜)により、アメリカ軍人をして「贅沢な戦争」と言わしめる程の一斉攻撃が実行される。
この攻撃により、連邦の核兵器関連施設は元より通信基地やレーダー網までもが破壊し尽くされた。
特にレーダーサイトを始めとした戦略的防空システムは徹底的に攻撃を受け、連邦の広域防空能力は瞬時に焼失してしまう。
呆気なく空の守りを失った連邦のあらゆる都市や地域の上空に、日本空軍の無人化された大型輸送機が飛来する。
その積み荷は、血も涙もない機械仕掛けの量産兵団、日本軍自律無人機三種の神器「蛭」「飛脚」「土蜘蛛」。
情報が混乱して何時何処から輸送機が飛来するかも分からない中、心許ない野戦防空戦力のみで雑多な抵抗を行う連邦軍を尻目に、大量投下される異形の戦争機械。
その様子は、SNSを通じて広く世界へと拡散されていった。
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「一体なんなんだ、あの化け物共は…!?」
「はっ!大方、“鳩山《宇宙人》”が地球侵略軍でも引き連れて来たんだろうよ!」
連邦第二の都市であり、西部軍管区司令部を擁するС市では、司令部を制圧しようと降下してきた日本軍無人機部隊と連邦軍防衛部隊の激しい市街戦が行われていた。
ここには志願兵中心の精鋭部隊が駐留していたとはいえ、装脚式で俊敏な日本軍の無人機の大群の前に、ホームグラウンドである筈の連邦軍部隊は苦戦を強いられている。
重火器を搭載した「土蜘蛛」から放たれた多数の誘導迫撃砲弾が、中核を担う筈だった機甲戦力に多大な損害を与え、近隣の空軍基地に存在していた航空戦力は長射程ロケット弾によって飛び立つ前に半壊していた。
ゲリラ戦をするにしても、無人機部隊が放つ更に小型のスワームドローンが縦横無尽に飛び回り、市街地をまるごとマッピングして情報共有するという荒業によって、地の利というものがほぼ消滅してしまい不発に終わっていた。
とはいえ、全く希望が無い訳でも無かった。
幾らかの戦闘で、相手の“弱点”らしきものを発見していたのだ。
それは「反応速度」である。
日本軍の無人機は、こちらの発見から攻撃までに微妙なタイムラグが存在していた。
おそらく、市街戦において市民と兵士を判別するための処理でそうなっているのだろうと思われるが……一部の古参兵はその隙をついての反撃に成功していた。
アクティブ防御システムの類いも、巻き添えになる加害範囲がそれなりにある以上、コラテラルダメージを最小限に抑えようとしているのか十全に働いてはいないようだった。
「やれ!撃ちまくれ!」
両脇に数階建ての住宅が隙間なく並ぶ欧州然とした道。そこに侵入してきた「蛭」の一団目掛け、建物の高所に陣取った連邦兵達がライフルや機関銃、RPGを一斉に撃ち始める。
最初の奇襲で先頭の「蛭」が一機と随伴する「飛脚」を数機破壊したものの、無人機群は直ぐに態勢を立て直して反撃を始める。
「飛脚」の搭載機関銃が牽制にと連邦兵達がいる付近の窓辺に撃ち込まれ、運の無い者達がいる部屋を「蛭」のAGL(自動擲弾銃)が薙ぎ払う。
何機かの「飛脚」が、連邦兵を掃討するために室内へと踏み込み始め、次の瞬間、突然の爆発で吹き飛ばされた。
瞬発信管にワイヤーがくくりつけられた手榴弾、所謂ブービートラップが先に突入した「飛脚」をスクラップにしたのだった。
しかし、そのスクラップを後から突入してきた「飛脚」は躊躇せず踏み越える。無人兵器故に、恐怖や戸惑いは存在しない。
文字通りの、歩く銃座。
通りに面した部屋に乱入した先頭の「飛脚」と、連邦兵の目が合う。
「くたばれ!化け物!」
軍民判別処理の関係で一瞬だけ立ち止まる「飛脚」に、連邦兵達は反射的に銃弾を浴びせかけた。
簡易防弾部に命中した幾つかの弾が火花を散らして跳ね返るも、防護されていない箇所を複数の銃弾が貫き、その「飛脚」は片足が断裂しながら床に崩れ落ちた。
しかし、「飛脚」の情報共有が少しばかり早かったらしい。
情報を受け取った後続の「飛脚」の群れが、その搭載ライフルを一斉に撃ち放つ。
放たれたライフル弾は、薄い民家の壁を容易く貫通し、中に居た連邦兵達を引き裂いた。
459:奥羽人:2022/11/23(水) 15:41:30 HOST:M014009102000.v4.enabler.ne.jp
一方、大通りでは「蛭」のAGLが、連邦のティーグル軽装甲車を吹き飛ばしていた。
散発的な反撃はあるが、歩兵のライフル程度が精一杯ということもあり「蛭」の装甲に有効打を与えられていない。
室内掃討の為に随伴戦力たる「飛脚」の防衛が薄くなったのを見計らい、果敢にも爆薬を片手に肉薄する連邦兵が幾らか存在したものの、既にその全員が「蛭」の太く強靭な脚に蹴り飛ばされ、壁や地面に叩き付けられたことで惨死していた。
連邦兵達は恐慌状態に陥りながらライフルを乱射し、その内一人がRPGを構える。
「蛭」の中枢AIは素早い脅威査定でそのRPGを優先目標に設定すると、自動給弾装置に嵌め込まれた在庫処分の64式小銃(史実89式相当)が火を噴き、その兵士を穴だらけにしてしまう。
「今だ!」
歩兵達の犠牲の上に、満を持して一人の連邦兵士が瓦礫を押し退けて立ち上がり、RPGを掲げる。
その兵士からは「蛭」の背中がよく見えた。
彼は、息を殺して瓦礫の中に潜み、味方の叫びに耐えながら、ひたすらチャンスを待っていた。そして、今がその時だった。
「食らえ!!」
発射されたロケット弾が、無防備だった「蛭」の背面下部に直撃し炸裂し、爆風の余波が、射手をも押し倒す。
流石の「蛭」も対戦車成形炸薬弾頭の直撃には耐えられず、“頭部”の1/3が吹き飛んだ。
頭を貫かれた「蛭」は一瞬動きを止めると、制御を失ったように姿勢が崩れ、金属の歪む音を立てて倒壊する。
「ははは……やったぞ!」
尻餅を着いた射手が、倒れた「蛭」を見ながら驚喜する。
しかし、その笑顔が長く続くことは無かった。
「マジかよ……」
何故なら、彼の視線の先にあったのは、新しくやってきた大型輸送機の編隊が、新品の無人機群……たった今、死闘を繰り広げた相手である化け物共と同じモノを、遠慮無くばら蒔いている様子だったからだ。
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日本軍の無人機部隊は、自律化戦闘団を主要な戦略単位として編成されている。
【自律化戦闘団 標準編成】
09式UGV「蛭」
- 標準型 ×120両
- 対戦車型 ×40両
- 火力支援型 ×40両
11式AFP「土蜘蛛」
- 火力支援型(120㎜後装迫撃砲)×27両
- 長距離火力型(多連装ロケット)×36両
- 弾薬輸送型 ×27両
- 対空型 ×9両
- 自走給電システム ×40両
02式UGV「飛脚」×約4000機
戦域に投下された自律化戦闘団は、衛星からの無線送電によって電力を受け取り無人機へ電力供給を行う自走給電システムを中核として、簡易な“ベース”を設定。
そこから事前の作戦、もしくは指令に従い各方面へと侵攻を始める。
運用思想上、元々長期戦は想定しておらず、弾薬は各自に搭載されている分だけでも十分と試算されているが、必要によっては汎用作業機付きの弾薬コンテナも共に投下される。
また、給電システムに関しても、長期戦用に小型原子炉を電源として投下するオプションも存在する。
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それは、まさしく異常な戦場だった。
連邦全土が一夜にして戦火に曝され、存亡の危機に立たされていた。
既に、主要都市部は“軍事的な意味で”半壊。
交通の要衝も次々に陥落しており、連邦の首都ですら市街地での攻防戦を強いられて、重要な鉄道結節点としての機能を破壊されている有り様だ。
その為、国内奥深くの自らの基地に居ながら指揮系統の分断や混乱、補給の寸断で“孤立”する連邦軍部隊が多発。
連邦軍の組織的抵抗能力は急速に失われていくのだった。
その頃、日本から遥か遠くU国首都の空港では、滑走路を埋め尽くす日本軍の航空機の傍らに、最精鋭の一角である彼ら……習志野の第一空挺師団の隊員達が重装強化外骨格、つまりフル装備のパワードスーツを着込み、出撃の時間を今か今かと待っているのだった。
460:奥羽人:2022/11/23(水) 15:49:21 HOST:M014009102000.v4.enabler.ne.jp
近似世界2022年 IF
日本による直接的軍事介入 5
以上となります。
あんまり時間をかけたくないけど、コラテラルダメージも最小限にしたいという現代特有の悩みが、無人機無差別投下という事態を産みました()
枕元にいろんな世界線の自律兵器プレゼンが立っていたので自分なりに翻訳したらこうなったんです!お赦しを!
最終更新:2023年08月28日 22:43