385:奥羽人:2022/12/23(金) 20:15:51 HOST:sp49-96-46-41.msd.spmode.ne.jp
異聞 日本大陸連合
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それは、突然に現れた。

『南伊豆町上空に突如出現した謎の球体は現在も膨張を続けており、専門家からは何れ地表に到達するのではという懸念も──────』

超大国として世界に君臨する日本。例え世界中の国が束になっても抗うこと叶わず。
そんな圧倒的な存在が、今慌ただしさに揺らぐ。

『こちら、下田市より中継です!伊豆上空の謎の球体は、ここからでもハッキリと見える位に巨大です!』

ともすれば水滴にも見えるその球体は……水滴と形容するにはあまりにも巨大であった。

推定直径、80km。

しかし、それは“現時点”での大きさ。
何故なら彼の球体は、今も尚膨張している故に。


『政府は非常事態宣言を行い、下田市内では今、住民の避難が始まっています!』

それはまるで神々の暇潰しか。
超自然の悪戯に弄ばれる市民達が、街から離れる為の渋滞を成す。
その横を、球体目指して濃緑色の軍用車輌の列が市民達とは反対方向へと通過していく。


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「地上からのレーザー測距においては、現状推定されている距離のちょうど倍の数値が出ています。恐らくは、球体表面の“向こう側”の地表でレーザー光が反射しているのかと…」

「……ゲート、か」

混乱の中、日本を超大国に押し上げた“影の政府”のメンバーらも動き出す。
幸か不幸か、彼らはこのような事態に、ある意味、慣れ親しんでいた。


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「空間線量は依然として高い数値で推移しています。もっとも、健康被害が出る程ではありませんが……」

「膨張が止まったのは良いが、こいつは面倒そうだな……」


南伊豆町および下田市全域に戒厳令が敷かれ、全域的が避難してもぬけの殻となった下田市民文化会館に軍の司令部が設置される。
半島南端へ通じる陸路は、幾つもの検問所によって完全に封鎖された。

「調査用の無人機が来た!ゲート開けろ!」

地表に到達した謎の球体は、周辺海域を伊豆半島の先端ごと呑み込み、やがて静止した。

多種の陸用無人機が球体表面に向かって進む。
少しばかり歪んでいる「向こう側」の気色は、こちら側と似ていた。

「無人機、突入します!」

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「金糸雀1、電波障害が激しい……これ以上の前進は難しい」

「金糸雀2、こちらも同じだ」


無人偵察機が送ってきたノイズ雑じりのデータが、こちら側に酷似している海岸線を映し出す。

「全ての自律型無人機のAIが頻繁に原因不明のエラーを吐き出してます。これじゃ使い物になりません……」

“向こう側”に設置されていた標識は、こちらと同じ文字、同じ文法の日本語。

「辛うじて持ち帰れたサンプルに異常な点は見当たらない……全て、全てがゲート周辺で見つかるものだ」

下田市に入った科学者の一団は、機材を持ち込んで仮説の研究室を作る。
彼らは全員プロフェッショナルである。しかし、今起こっている現象を完全に説明できるかと言われれば、それは不可能だろう。

「植物サンプルについてですが……モノ自体は伊豆半島のそれと一致していましたが、遺伝子に顕著な変性が見られます」

「空間放射線が原因か?」

「いえ、それだけでは説明がつきません……どちらかというと、RNAの転写ミスに近いように思えます」

地道な調査と、そこから作られる推論は書類に纏められ、国の中枢へと届けられる。

「ラットや豚……それと死刑囚を用いた環境暴露実験の結果を待って、志願者による有人探査を行いたいと思います」

386:奥羽人:2022/12/23(金) 20:18:52 HOST:sp49-96-46-41.msd.spmode.ne.jp

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████████報告

██月██日████時

超空間境界面、仮称『ゲート』方向より詳細不明の実体が下田市方面へ進行しているのを、警戒センサーが捕捉。

無人機による偵察により実体を光学的に捕捉。詳細は不明なものの、外見的には██████████████████████████████████████████████████████████████████████████████。

現地部隊は複数の方法を用いてコミュニケーションを試みる。████████████████████████████████。█████████████████████████████████████████████████████████████。


████████████████████████████████。
█████████████████████████████████████████████████████。
██████████████████████████████████████。

███基地より緊急発進した第████飛行隊による緊急近接航空支援によって対象を破壊した。




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「多少違うところもあるが……下田市そっくりだ」

「人っ子1人居ない街がこんなにも不気味だったとはな……」

「装甲車が放置されている……これは、戦闘の跡、か……?」


風の音だけが響く“向こう側”のゴーストタウンを、防護服の一団が進む。
その街中の風景は、人が居ないという点を除けばごく普通のものでしかなかった。


「地形はこちらの大陸化日本に酷似、技術レベルは史実の2020年代程度と推定される、か………いっそのことファンタジー世界と繋がってくれれば、まだ安心できたというのに」

「あらゆる周波数で現地人との通信を試みているが、どれも反応が無い。持ち込んだレーダーで人工衛星の存在は確認できたが、どれもオフラインだ」


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静寂に支配され、完全に死んでいる思われた世界で繋がる、“別”の可能性を辿った末の日本。


『全周波帯で発信…………こちら………応……』

「聞こえている、応答せよ!こちらは日本連邦軍特別調査隊司令部、繰り返す。こちらは日本連邦軍特別調査隊司令部!」

『…!……来…!…こちら………大日本帝国…!…』

「なっ…!?」


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超自然の奇天烈なサプライズを受け、政府機関は過酷なデスマーチを強いられる。

「ゲートは、閉じるのか?」

「はい、ゲートは推定直径300kmまで膨張した後、現在は一定のペースでの収縮に転じています」

「では、閉じるのは何時になる?」

「現状での推定値ですが、最低でも2500年間……最高で1万年間は開きっぱなしですよ、首相」

387:奥羽人:2022/12/23(金) 20:19:59 HOST:sp49-96-46-41.msd.spmode.ne.jp


『少なくとも、ゲートの向こう側には明確な脅威が存在します。そうです。現代技術を保有し、最低でもアメリカに匹敵する国力を持っていたであろう向こう側の日本大陸を、1人残らず、完全に滅亡させるだけの力を持った存在が。
しかし、現在の我々は、その脅威に対して余りにも無知です。そもそも、そのような脅威が今も実存しているのかすらも判然としない程に。
それは、各平行世界の日本も同じです。

故に、我々は互いに協力し、一致団結して来るかもしれない脅威に備えなければなりません!』



『………よって、平行世界間軍事同盟、日本連合の結成を、全会一致で可決いたします!』

388:奥羽人:2022/12/23(金) 20:21:45 HOST:sp49-96-46-41.msd.spmode.ne.jp
以上となります。
こちらは現行の日本連合系とはまた別物になります。

もしかしたら、こういった結成理由もあったりするのかな、と思いまして。

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最終更新:2023年01月16日 09:12