516:奥羽人:2022/12/27(火) 21:30:28 HOST:sp49-96-47-126.msd.spmode.ne.jp
近似世界 2022年 IF
共産党主席の憂鬱
復活した東洋の龍にして、不遇の歴史から急成長を遂げた新進気鋭の強大国、中華人民共和国は北京の中枢にて。
この赤い龍の国の頂点に立ち、政敵を蹴落とし確固たる体制を築き上げた勝利者……中国共産党主席は、その権勢に似合わぬ疲れ果てた溜め息を漏らしていた。
「大夷(近似中華における日本の蔑称)め、とんだ無茶振りを……」
それは、日本政府よりもたらされた、たった一つの「要請」が原因だった。
「国際社会の平和と安定の為に“連邦”を攻めろ、とは……」
言われた事を要約すると、
“国際社会の平和と安定の為に、責任ある大国の中国は、平和を乱す敵である“連邦”を制裁する有志連合軍の一員として軍事的制裁に参加して♥️”
というラブコールになる。
紛うことなき「ショー・ザ・フラッグ」である。
連邦と中国は、反米仲間としてそれなりに協力していた仲であり、西側諸国が次々と連邦との関係を断絶していく中で、貴重な貿易相手としての関係を保っていた。
では、日本の要求を拒否するか?
「……できる訳がなかろう、そんな事」
何故なら、たった数年……中国が日本陣営に接近し始めてから僅か数年ぽっちで中華経済は日本経済圏に呑み込まれてしまったのだから。
事の始めは、米中関係のすれ違いからだった。
数十年前、中ソ関係が険悪になって以来、中国は米国を新たなビジネスパートナーとして国家躍進の道を進んでいた。
米国も、巨大すぎる日本陣営に対抗する為、そして中華10億の巨大市場を目当てに我々と手を繋いだのだった。
しかし、今世紀に入ってしばらく経ったある頃から、米国は中華経済の強烈な躍進に気を尖らせ始めた。
経済摩擦の末、遂には米国によるスーパー301条の発動に至り、米中関係は破断。日本を包囲するための“太平洋の檻”は、日本人を間に入れた米中のリングと化したのだった。
故に、一方と敵対心するならば、もう一方とは仲良くしておいた方が良い。
その当たり前の発想から、中国は日本への接近を始めた。
これが、全ての終わりの始まりだった。
「汎用自律産業機械」を始めとするAIロボットをフル活用し、圧倒的な威力を有することとなった日本経済は、長きに渡って研ぎ澄ました“巨大経済圏”という砲弾を一斉掃射。
人民の数だけが頼りの外見だけは巨大な中華経済を瞬く間に蹂躙し、中華の人民は安価な日本製品を有り難がる家畜と成り果ててしまった。
古来より、中華を征服した異民族は、後に中華の一部となったし、今回もそうする筈だった。
しかし、日本人相手に人口差2倍程度の優位性は何の意味も成さなかったらしい。
日本人を沈める沼を用意したと思ったら、沼ごと飲み干されてしまった。
こんなこと、予想できる訳が無い。
517:奥羽人:2022/12/27(火) 21:31:47 HOST:sp49-96-47-126.msd.spmode.ne.jp
慌てて対策しようとした頃には、中華の優秀な筈だった官僚や企業家たちは皆、日本人の寄越す賄賂と女、そして醜聞の首輪に繋がれていた。
それは、主席であるこの私も例外ではない。
そして、愛国心溢れる若き人民だった筈の若年層も、日本人の作るコンテンツを有り難がり、求め、憧れ、遂には“日本人化”していった。
産業の効率化によって増大した可処分所得と可処分時間がカルチャー方面に流れ込み、ドージン(アマチュアサブカルチャー)市場だけで中小国経済に匹敵するなど、そんなのは反則ではないのか!?
日本陣営から流し込まれる高機能で安価な製品は人民を物質的な快楽に酔わせ、日本のコンテンツから発せられる毒電波は「今が良いならそれで良いじゃないか、中日友好!」と中華人民の愛国心と闘争心を奪っていく。
心理的な充実度合いは出生率にも響き始めている。
中華が、溶かされる……!
中華人民共和国という国家が、日本という鍋の中でゆっくりと溶かされていく……!!
抗う?
もしそうすれば、日本は中華を悠長に溶かすなどせず、即座に叩き割るだろう。
いや、贅沢を取り上げられた中華人民に自ら叩き割られるかもしれない。
つまり、選択肢など初めから無かった。
「英国人が腹黒くなったのも納得だ。こんな相手と200年も渡り合ったのだからな………………中華光復の夢は、次の100年に託すしかない、か」
そう呟きつつ、日本車が行き交う大通りを見下ろしながら側近に指示を出す主席。
しかし、主席の脳内では、地上で勝利を喧伝する中華を見下ろしながら、星の海を駆ける日本人達の姿を想像することしか出来ないのであった。
519:奥羽人:2022/12/27(火) 21:35:39 HOST:sp49-96-47-126.msd.spmode.ne.jp
以上となります。
中国「バカな!12億の民がこうも容易く!?」
日本「ほーん(日本陣営30億)」
中華世界、少数の支配者を飲み込んだ経験は多いものの、自分よりデカイのに丸ごと呑み込まれるのは初体験であった。
最終更新:2023年08月28日 22:45