156:奥羽人:2023/01/15(日) 19:45:02 HOST:sp49-96-238-188.msc.spmode.ne.jp


「なんか……意外とアッサリ終わりましたね」
「まぁ、無理もないだろう。核も無しに全世界を相手にするなんてのは無謀だからな」


2022年末、“連邦”は実質的に降伏した。

日本軍の最精鋭部隊である第一空挺師団と、あらかじめ国内に潜入していたアンドロイドの秘密部隊が共同で首都を強襲し連邦大統領ほか、主要閣僚および政治家、官僚を強襲。
市街地で短くも激しい戦闘が展開されたものの、空挺降下に先だって行われた偽装アンドロイドによる破壊工作と無人機群の攻勢によって連邦軍の防衛体勢は機能不全に陥っており、空挺師団へ妨害攻撃が行われることはなかった。

その降下した空挺師団も、全員が某プロテクトギアやパワーアーマーを彷彿とさせる強化装甲服を着用していた。
軽機関銃は当たり前で重機関銃や20ミリクラスの対物ライフル、対戦者ロケットを当然の如く振り回す輩であり、無人機との協同作戦によって疲弊した防衛側を火力で圧倒しながら首都中心部を制圧していった。

大統領府から逃走しようとした連邦大統領は、偽装アンドロイドの秘密監視網に接触し、同時に行われた攻撃によって足止めを食らった所を、第一空挺師団の捕縛部隊に包囲され直ぐに投降した。

同日中にクレムリンの大統領府や重要省庁が占領され、連邦軍……ひいては連邦という国は、呆気なく頭を切り落とされることとなった。
この時、首都近郊に存在していた連邦第一親衛戦車軍の残存部隊は、首都強襲にあたって追加投入された自律化戦闘団によって徹底的に蹂躙されており、戦力としては完全に消滅していた。
それ以外の部隊も首都奪回に動いたものの、既に連邦中に拡散した無人機群によって各所で交通網や物流が寸断されており、また、無人機との消耗戦による疲弊も相まって、効果的な行動を起こす事は不可能となっていた。



首都襲撃の少し後、満を持して連邦国境部に集結していた多国籍軍が一斉に越境を開始、世界ぐるみでの連邦への制裁作戦が開始された。
多国籍軍のうちアメリカを中心とする欧米諸国の軍が連邦西部から、日中を中心とするアジア諸国軍が極東地域から、連邦を東西から挟むように侵攻。
既に消耗しきって動けない連邦軍部隊を一蹴しながら主要都市めがけて突き進んだ。

戦争に勝って賠償や利権や割譲…という時代ではない以上、面倒な負担は皆で分かち合いたい。
それに、不法な侵略に対して国際社会が一致団結して対処する演出があった方が、絵面が良い。
そう考えていた日本政府が各国を巻き込んで結成された多国籍有志連合軍。

その陣容は、安保理常任理事国を初めとしてSTO諸国およびNATO諸国の一部と中、韓という、まさしく世界を巻き込んだ連合軍であった。


その様子は、ニュース映像と共にSNSに投稿され、敢えて生かされていた民間回線に乗って連邦中に届けられていた。
それがもたらした影響は絶大であり、首都が陥落し大統領が捕縛され、尚且つ全世界が敵となった事実を前に、連邦の軍民の士気は完全に消失。
1日経つ頃には連邦軍残党は我先にと降伏を始め、多国籍軍の行く手を妨げる者は皆無となっていた。

157:奥羽人:2023/01/15(日) 19:46:26 HOST:sp49-96-238-188.msc.spmode.ne.jp

そうして多国籍軍は、クリスマス頃迄に連邦全土の実権を手中に納め終わり、首都の大統領府にはUNTAR(国際連合“連邦”暫定統治機構)が設置され、連邦政府の「再建と健全化」が始まった。

また、日本にとっては初の戦闘用無人機を大量投入した戦場であり、その課題も幾つか浮上していた。
特に消耗率はかなりのもので、真っ先に投入された第一梯団は9割、全体で計算しても6割近い無人機を喪失しており、戦後は性能を維持しつつ更なる低価格化に邁進することとなった。



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この戦争がもたらした影響は、大きかった。

表面上は平和が戻り、再び世界は静かになっていた。
しかし、今戦争で判明した日本の力は、各国政府に新たな危機感を持たせることとなっていた。

いがみ合っていた米中も水面下で関係改善の兆しが見られ、とくにアメリカは、これまで予算関係で消極的になっていた軍事技術の開発と更新を再加速させている。


欧州諸国も、最近の軍事軽視姿勢を見直し、EUという枠組みでの協力体制もまた強くなっていった。
総じて、世界はどこか懐かしい雰囲気……列強が並立した状態特有の緊張感に包まれることとなる。

夢幻会の推進していた「史実21世紀初頭の楽観的雰囲気を維持したまま宇宙移民時代へ移行する」昭号計画は、その安定した遂行が危機的状況となっていた。
しかし、緊張感があるとはいえ、世界は曲がりなりにも安定している。

ならば、まだ巻き返すことは可能な筈だ。


「国の舵取りは大分難しくなっちまったがね。まぁ、最善は尽くした。今はこれでいい」


世界が緊張に包まれたといえ、それで世界が終わる訳でもない。
ならば、それは受け入れて進むしかないのだ。

今までと、同じように。





近似世界 2022年IF
日本による直接的軍事介入 完

158:奥羽人:2023/01/15(日) 19:50:03 HOST:sp49-96-238-188.msc.spmode.ne.jp
以上となります。

無人機が思ったより効きすぎたせいか、連邦はアッサリ終わりました。戦後は親西側の政治家を擁立して政府を立て直す方向に行くんでしょうが……存在しますかね?親西側政治家…。

無人機の損耗が激しいから性能向上……ではなく低価格化に邁進するのも多分近似世界日本クオリティだと思います。
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最終更新:2023年08月28日 22:44