460:モントゴメリー:2022/12/26(月) 00:17:27 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
仏帝連合ネタSS——「国歌狂想曲」——

フランス帝国連邦、首都パリ
この仏帝(ブルボンnotミホノ)が誇る花の都では、現在とある祭典が行われていた。
鏡の向こうの自分——平行世界のフランス外交団の受け入れである。
マルセイユ沖に「門」が現れるという事件(約400年ぶり2回目)から数か月、混乱も収まりようやく各世界のフランスの国交が正式に樹立されたのである。
その手始めとして、代表団の相互派遣・受け入れが計画され実行された。
今回の催しもその一環であり、主題は「フランス連邦共和国」の代表団の受け入れである。
…正直に言うと、当初は他の世界と比較しても目立つほど異質な平行世界であったため心理的衝撃度は大きかったが、基本的に理性的で平和的であったので現在では「話の分かる」相手として認識されつつある。
少なくとも共産主義と無政府主義のカクテルのような主張をする某世界(注:史実世界)より遥かにマシであった。
式は特に問題も無く、平穏に進んだ。
そして最後のセレモニーとして、敬意を表すためにお互いがお互いの国歌を演奏・合唱する時が来た。
まず、帝国側の合唱団が連邦共和国国歌である「La Marseillaise」を披露する。
……帝国側の心情としては、とても受け入れがたい歌詞なのであるがそこは外交の場。関係者はおくびにも出さず演奏は無事に終了した。

対して、連邦共和国側も返礼として帝国国家「Vive Henri IV」の演奏を行う。
出でたるは連邦共和国陸軍が誇る軍楽隊である。
……軍関係者が出てくるのは安全保障上の理由でまだ理解できる。だが、構成員が皆10代後半から20代前半で占められているのはどういうことなのだろうか?
帝国側関係者の疑問を他所に、歌は始まった。

461:モントゴメリー:2022/12/26(月) 00:17:58 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
Vive Henri IV! 
Vive ce roi vaillant!
Ce diable à quatre 
A le triple talent
De boire et de batter 
Et d'être un vert galant. 

(万歳!アンリ四世勇敢な王
ちっぽけな四肢に三つの甲斐性
大酒飲みで博打好き
そして女好きなのさ)

一見すると讃えているのか、けなしているのか判断に困る歌詞であるが、フランス人の諧謔成分過多なエスプリは500年前から変わらないということだろう。

Au diable guerres,
Rancunes et partis!
Comme nos pères
Chantons en vrais amis,
Au choc des verres
Les roses et les lys.

(地獄の戦争は過ぎ去った
我が父、友のように歌おうぞ
今こそグラスを鳴らして
バラと百合に乾杯を)

二番も素晴らしいコーラスで朗々と歌い上げられた時点で、帝国側も安心しきった。しきってしまった。
ここまで来れば何も問題はないだろうと。
しかし、「3番」が流れた時帝国側関係者は色を失うことになる。

Chantons l'antienne
Qu'on chantera dans mille ans;
Que Dieu maintienne
En paix ses descendants
Jusqu'à ce qu'on prenne
La Lune avec les dents.

(繰り返し千年後も歌おう
平和と恩寵を子供らに
我らの歯によって
月を討ち取らん)


「歯」は牙や武器と言った意味であり、「月」はイスラム教の象徴である。
そしてこの歌が作られた時代背景を加味すれば、これの意味は

『千年かかろうとも我々はオスマン帝国を打倒する』

ということになる。 
この3番はオスマン帝国と友好関係を築き上げた20世紀初頭から公式の場では封印されてきたのであるが、連邦共和国側へその説明が届いていなかったようである。
「立会人」として式典に参加していたオスマン帝国大使を見れば、意味を理解してしまったようで苦笑を浮かべているではないか!!
さらに言えば、式典は(日仏)世界中に生放送されており当然オスマン帝国本土でも視聴されている。
これから為さねばならぬ「後始末」を考え、帝国側関係者たちは顔を青くした——。


なお、結論を言えばオスマン帝国側はこれに関して特に文句をつけることはなく、オスマン国民たちも冷静であった。
むしろ初めて聴いた!!など好意的反応が多かった。
混乱具合では仏帝国民の方がひどかったほどである。

462:モントゴメリー:2022/12/26(月) 00:18:34 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
以上です。
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誰も「仏帝連合」ネタ書いてくれないから自分で書いたぞオラァァン!!
今回は届いた断片的な電波な中で比較的解像度の高いネタを優先しました。
あと仏帝のお父様である弥次郎氏への無言の圧力です(冗談3/4)

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最終更新:2023年01月16日 09:27