481:弥次郎:2022/12/26(月) 22:53:01 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
日仏ゲート世界SS「錬金術とその思わぬ反応について」
さて、ゲートが開通して、日仏双方の交流が盛んになった頃のことだ。
フランスから、そして欧州からは多くの人材が流入していた。
その中でも特筆すべき人種がいた。すなわち、欧州各地から錬金術師たちがこぞって
日本大陸を訪れたのだ。
錬金術。
狭義においては卑金属を金属へと変換するという技術や試みを指す。
広義には、世の中の真理を解き明かし、様々なモノを研究し、完全なる存在を作り上げようとする技術である。
歴史上、この錬金術の始まりは古代ギリシャや古代エジプトの頃には既に存在しており、脈々と受け継がれてきていたのである。
あらゆる学問の影響を受け、時には思想や哲学にまで発展し、時には細かく分派するなど変遷をたどっている。
そして、錬金術の研究の過程で多くの発見があり、今日における化学の先駆け、あるいは土台となったことで知られている。
では、ひるがえってなぜ錬金術師たちが日本大陸に集まったのか?
それは偏に、偏見や迫害などがなかったから、と言えるであろう。
欧州において錬金術というのは、ある種成功を収めていた面もあれば、当然のように失敗や腐敗ともつながっていたのである。
これは日本をはじめ東洋でもあったことであるが、錬金術というのは一般にはよく知られていない技術だ。
そうであるがゆえに、周囲の理解を得ることが難しく、あるいは詐欺に使われたりもするのである。
だから、例えばであるがガラスの実験器具ひとつ用意するだけでも言い訳が必要になったという話もあるほどだった。
そういうこともあり、錬金術の中でも化学に分派した錬金術師たちは、そういった疑惑の目を避けるため日本に赴いたのだ。
当時の欧州において、徐々に明らかになった日本というのは彼らの言うところの錬金術、
夢幻会のいう化学や科学の先進国であったのだ。
宗教的な縛りも受けることなく、純粋に研究に打ち込み、より実学的な、あるいは実戦的に活用することができる環境は何よりも欲されていたのだ。
ただ、前述のように日本のそれは実用的な、化学という面が極めて強く、宗教や哲学的な研究には向いていなかった。
その為か、欧州の錬金術師が持ち込んだ学問であっても、エリクサーであるとかホムンクルスだとか賢者の石などは中々定着をしなかった。
宗教や哲学的な、例えば薔薇十字錬金術のような学派はどうしても根を下ろせなかったようである。
これは夢幻会の功罪でもあった。
つまり、天下統一の過程においてその手の科学や化学の知識を証明し、解明し、普及させたことにより、自然と体系化がなされたのだ。
各地に伝わる伝承や口伝、あるいは習慣などの根底には共通した知識があり、それらは普遍の法則として存在すると、広めてしまったのである。
その為、実用的でないものとそうでないものが区別され、実用性に重きを置くことにつながり、民衆レベルにまでそれが影響した、というわけである。
夢幻会としては、特に歴史に興味のある人物や好事家にとっては、この時代の錬金術というものを知る良い機会であったのだが、流石にニッチが過ぎた。
織田幕府の統治の下、平和の時代、発展の時代を迎えた中にあって、求められるのはどういうものかは明白であったのだ。
482:弥次郎:2022/12/26(月) 22:53:37 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
斯くして、受け入れられた錬金術師たちは堂々と研究などに打ち込むようになった。
受け入れられなかった錬金術師たちは、それでもしたたかに生き延びて、錬丹術などを研究したというのだから評価すべきか。
夢幻会が、そして織田幕府がこういった学者の入国を認めたのも、偏に自国での技術発展の一助となると判断したゆえである。
彼らが持ち込むものは、より分け、解析にかけ、その意味するところを追求していくことで、知識を現実のものとする手助けとなるのだ。
技術を独占するだけではなく、広めて普及させ、より国家を反映させること。それこそ、夢幻会の目的であったためだ。
思わぬ影響があったこともここで記しておくとしよう。
このころから、エリクサーや賢者の石、あるいはホムンクルスだとか、アルカナといった概念が便利に使われ始めたのである。
そう、創作への登用であった。非科学的だと言われようが何だろうが、そういった研究自体に何ら罪はないのである。
現実に即していなくとも、空想の中、あるいは創作の中であれば立派に市民権を獲得できる、というわけである。
曰く、科学の光明はオカルトの闇を深めた、という。
表向き科学が礼賛されようとも、どうしても人の興味はそれらを超えた力や知識に向いてしまう。
それに乗っかった創作者たちは、知識を集め、自ら研究し、あるいは自らの解釈を行うことによりそれらを自らの創作に組み込んだ。
小説、TRPG、現代で言うところのトレーディングカードゲーム、あるいは漫画や占いなど、その形態はさまざまに、あらゆる層へ染み込んだ。
のちの時代、イギリスの歴史学者であるフランセス・イエイツは16世紀の錬金術がのちの自然科学に発展したと説いた。
また、錬金術が思わぬ形で変化し、独自に、それこそこれまでの欧州や中東といった地域ではなかった変化を起こした地域に日本大陸を挙げた。
自然科学と今日オカルトと呼ばれる非科学的なモノを両立させ、同時に語ることができる、というのは、欧州の価値観では珍しく映ったのであろう。
斯くして、このゲートを通じた錬金術師たちの躍動は、のちの日仏双方の国力の発展に大いに貢献することとなった。
その速度は他国を半ば置き去りにしており、欧州各国は必死にそれに追いすがり、何とか追いつこうと試行錯誤をするのであった。
483:弥次郎:2022/12/26(月) 22:55:11 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
一気に書き上げました。
久しぶりに日仏世界について……
史実におけるネームド学者の皆様が欧州から日本に集まる形になりますねぇ
なお、そんな皆様から教えを請われる側の夢幻会メンバーの精神的なアレは無視するものとする。
ニュートンとかラボアエジェとかがね!雪崩を打って日本に来るの!
そのまま帰化するとか言い出すの!めっちゃポンポンペイン!
最終更新:2023年01月16日 09:31