984 :earth:2012/02/25(土) 22:19:18

 最近のラノベのように少年(主人公?)と美少女が戯れる話が憂鬱世界で出来ないか考えたら、あまり明るくない話が……おまけに短い(苦笑)。
 相変わらず勢いで書いたので細かいことはスルーでお願いします。



 南満州。かつて日中戦争での激戦地であった土地は第二次下関条約締結によって曲がりなりにも平穏を取り戻していた。
 尤も平穏とは言っても、それは戦前とは全くことなる状況だった。
 かつては我が物顔に歩いていたアメリカ人達は日本との戦争、そして津波と疫病で祖国を失いあっという間に後ろ盾を
もたない弱者に転落していた。加えて彼らを守っていた在中米軍の壊滅。上海大虐殺で高まった中国人の反米感情も手伝って
ユダヤ人の悲哀を味わっていた。
 特に親を亡くした子供達は悲惨だった。ある者は人身売買に、ある者は犯罪組織の鉄砲玉に、ある者は過酷な労働を強いられ
次々に命を落としていった。
 日本政府は旧米国人の保護や帰国事業を進めるなどして、そんな状況を改善しようとしたものの全ての人間が救われるわけが
なく、犠牲者は出続けていた。
 そんな中、旅順の市街地の一角で物語は始まる。

「その子は?」

 少年は両親が連れて来た少女を指差して訪ねた。
 彼ら家族は戦争が終ってある程度安全になったということで、商売を再開するべく大陸に戻ったばかり。
 金髪碧眼の美少女が、まして全ての感情を無くしたような空虚な表情をした少女がいる訳が無いのだ。
 その疑問に父親が答える。

「お前の妹だよ」
「……まさか、隠し子?」

 この直後、少年は己の失言の代償を嫌と言うほど思い知ることになる。

「いたたた……」
「彼女は孤児なんだ。今度、養子としてうちに引き取ったんだ」
「彼女も辛い思いをしているの。優しくしてあげなさい」
「は~い」

 こうして戦勝国として繁栄を謳歌する国の少年と、祖国の敗戦と滅亡によって全てを失った旧アメリカ人の少女の交流が始まる。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2012年02月29日 23:23