758:モントゴメリー:2022/12/31(土) 11:10:52 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
フランス連邦共和国における式典①——「転属」者送別式
「転属」者送別式とは、フランス連邦共和国(以下、FFR)における国家行事の一つであり、その中でも新年祝賀式典と並び特に重要視されるものである。
毎年12月31日に挙行されるその式典は、戦場で斃れた者たちのみならず、その年に「転属」した全てのFFR国民を『我らが指揮官』リシュリューの指揮下からオセアンの指揮下へ送り出すためのものである。
リシュリューの代行者たる大統領が主宰者となり、式次第を進行し、式の最後は
「オセアンよ。貴方の下にまた勇士の魂を送ります。いつの日か、貴方の下で彼らと再び戦列を組む事を切に願います」で締め括るのが定式である。
この儀式が制定・挙行されたのは21世紀になってから、より正確に言えばマリー・マフタン大統領の任期になってからである。
この式典のみならず、新年祝賀式典や我らが指揮官降誕祭、ジョルジュ・ビドー初代大統領追悼式典など後世数百年に渡りFFRで受け継がれていく各種公式行事は彼女の時代に体系化されたものが大半である。
ビドー初代大統領の時代は「暗黒の30年」とほぼ同義であり各種式典や国家行事を定式化する余裕などFFRには無かった。
そもそも彼にとってリシュリューとは国民統合のための「プロパガンダ」であり宗教化することなど想定していなかったから当然のことであるが。
この傾向は彼の後を継いだシラク・ミッテラン両大統領時代も継続された。
既にこの頃には国民の間から自発的にリシュリュー信仰が発展・拡大されていたにも関わずに。
これは、彼らも「戦前世代」であり戦後世代のリシュリューへの信仰心を本質的には理解出来なかったことに起因するであろう。
しかし、マリー・マフタンは違った。
彼女は戦後世代、それも両親・祖父母からも薫陶を受けた「第三世代」である。
その世代は我らが指揮官の兵士であり子供であることを誇りに思うリシュリュー信徒の完成形であった。
「謀将大統領」と他国(主にブリカス)から揶揄された彼女であるが、その智謀は本物であり謀略以外にも当然有効であった。
そして為政者の必須教養である世界史の知識も豊富であり、彼女はその中からある事象を導きだした。
759:モントゴメリー:2022/12/31(土) 11:12:04 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
——国家が永続化するためには、何らかの形で自国の正当性を鼓吹し、それを人民に理解させる「何か」がなければならない。
無論、戦艦リシュリューという存在そのものがFFRの正統性の具現化であるのは間違いない。
だからこそ戦後半世紀以上も大きな問題は起こらなかった。
しかし、戦後世代が国民の大多数となった21世紀現在においてはそれでは不足するだろう。
彼らの彼女らの信仰心を誘導し、統制するものが無ければそれはいつか「暴発」する時が来るかもしれない。
それに対するマリー大統領の回答が信仰心を可視化し、その流れを統制する文化的装置たる、国家が主催する式典や公式行事であった。
以下に今回の主題である「転属」者送別式の内容を記述する。
まず重要なのは、対象者は他国でいう所の「戦死者」に限らないということである。
病死や事故死など、その年に死亡した全てのFFRがその対象者である。
それは死刑により『転属』した者も例外ではない。
これは、最後に罪を裁くのはオセアンの職権であり我らは彼女の御許へ罪人を送り出すのみ、という思想に由来している。
そして何故12月31日なのかと言えば、フランス(そして多くの欧州国家)の会計年度が1月-12月周期であるため年度末に合わせたというのが公式見解である。
いかにもFFRらしいお役所仕事、散文的な理由であるが、マリー大統領の真意は別にあった。
キリスト教において、年末年始の祭典はキリスト降誕祭(クリスマス)が最大の催しであり12月31日と1月1日はそれほど重要視されていない。
それに対して12月31日と1月1日に大きな祭典を挙行すればFFR国教の独自性の良い見本となると彼女は考えたのである。
さらに言えば、「大晦日」や「元日」という宗教行事がある日本人が親近感を持つことも期待している。
なおこの儀式が体系化される前、特に「暗黒の30年」期にはキリスト教における「死者の日」である11月2日に「霧の向こう」で戦う先達たちに祈りを捧げるのが一般的であった。
しかし、時代を経るごとに他国(主に日本)の影響でその日はハロウィンの祭りと同一視されるようになり宗教的要素が薄れてしまった。
だからこそ改めて設定し直したとも言える。
(FFR政府の公式見解は、ハロウィンは「霧の向こう」にいる先達に祈る日で、「転属」者送別式は「霧の向こう」へ新たに兵士を送り出す日であるので並立するとのこと)
760:モントゴメリー:2022/12/31(土) 11:12:38 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
以上です。
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フランス連邦共和国の国家行事
シリーズ、開幕でございます。
こっち方面は同志635の専門分野ですが、某ゴールデンバウム朝歴代史を読んでみたら夢枕の彼らが「うちにもそういった行事はあるぞ」と言ってきたので作成いたしました。
最終更新:2023年01月16日 09:36