232:弥次郎:2022/12/04(日) 21:53:12 HOST:softbank060146109143.bbtec.net


憂鬱SRW GATE 自衛隊(ry編SS 「エリア52にて」



  • ファルマート大陸 アルヌスの丘近郊 平成世界主観2008年 地球連合特地拠点 企業連保有航空基地「エリア52」



 平成世界の関係者から「エリア52」と呼ばれる基地がある。
 それは、地球連合軍の拠点の近くに設営された、日米地三か国が共同で使う航空基地のことだ。
本来はややこしい名称がついているのであるが、手っ取り早い呼び名ということで「エリア52」というのが定着している。

 この航空基地、ただの基地ではない。
 所属こそ地球連合軍の麾下にある企業連のモノという体裁だが、その実としてはこのファルマート大陸に関与する平成世界の国も一枚噛んでいる。
この基地は確かに航空基地としての機能がある。だが、それ以上に大きいのは工廠が併設されている、ということだろう。
それこそ、平成世界の日米の航空機メーカーが機材やら資料を運び入れ、さらに企業連さえも協力しているというくらいだ。
その気になれば航空機を一から、コンセプトを決め、設計図を引き、シミュレーションし、実験をし、パーツを生産し、組み立てまでできるほど。

 そんな、航空業界に関わる人間にとって垂涎の環境で行われていることとは何か?
 それは単純だ、企業連合による平成世界の航空業界への強烈なてこ入れに他ならない。
 突如としてこのファルマート大陸に出現し、帝国を蹂躙したヴォルクルスとの雌雄を決した邪心戦争からこっち、連合のやるべきことの一つだったのだ。
というのも、今後ヴォルクルスのようなコミュニケーションも何も通用しない「外敵」の存在が現れるかもしれないという危機感を日米も抱いたのだ。
元より地球連合としては外敵に備えてほしいと言ってきたのだが、ヴォルクルスの出現はその言葉の説得力を強化したのだ。
 既存戦力が如何に無力であり、機動兵器というのが既存戦力の上を行くことは日米も嫌でも理解した。
 しかして、そんな一朝一夕に機動兵器の運用などをできるようになるわけがない。
 なればこそ、既存兵器などを改良して順々に技術とノウハウの蓄積を行う、というのが順当な判断であった。

 そして、航空業界にテコ入れをするにあたって利用されたのがこの航空基地、というわけである。
 日米の航空業界、軍事企業を主とする企業の技術者や研究者、さらには軍の抱えるパイロットまでも招集し、ここで研究と研鑽を行わせた。
彼らの仕事は地球連合から提示される未来の技術をかみ砕き、吸収し、活用できるようになること。
その為ならば惜しむことはないと、それぞれの国の後押しの下、多くの人間が学んでいたのだった。

 さて、ここでなぜエリア52などと呼ばれているかを明かそう。
 それは単純に、この航空基地から奇妙な航空機が飛び立っているのが散々目撃されたことに由来する。
 そう、UFOのような、既存の航空機の枠に収まらないようなものが飛び回っているのを、日米の兵士たちが目撃したのである。
その実はUAVであるとか飛行MTであるとかが正体であるのだが、それを知らされている人間は少ない。
これを理由に、UFOなどが飛んでいるとされるエリア51に倣う形でエリア52と呼称されることになったのであった。
そこには揶揄があり、ある種の興味があり、あるいは憶測や恐れというものがあった。人間、分からない者は怖いのである。

 だが、ここにいる人間たちは一向に意にかさない。そんなことを気にしているほど余裕はないのだ。
未来の技術を、あるいは並行世界の技術を学ぶというのは如何に金を払っても不可能なこと。それができてしまえるのだ。
未知を知るということは、その手の人間にはたまらない魅力がある。元の世界での商売のことも考えれば、なおのこと手は抜けないのであった。



  • 企業連保有航空基地「エリア52」第3滑走路


 格納庫からトーイングカーで引っ張り出されたのは、見る者が見れば「SR-71」と誤認しただろう。
 実際、ロッキード・マーティンから招聘され技術者はその機体を初めて見た時「SR-71だ」と発言していた。
 だが、その実態はまるで違う。
 元々はC.E.世界で開発された超音速ステルス機に祖を持ち、尚且つそれを再設計して技術レベルを下げて開発された航空機。
漆黒のボディ。何者の追随も許さない速力。レーダーからも逃れるステルス性。無茶な飛行に耐えうる機体フレームとエンジン。
それらの結晶たる黒い巨星(ダークスター)こそ、今タキシングを行い、飛び立とうとしている航空機「XA-999」のペットネームだった。

233:弥次郎:2022/12/04(日) 21:53:42 HOST:softbank060146109143.bbtec.net


 コクピットに収まるのは、米軍から招聘された腕利きのパイロットだ。

『ストーム、緊張は?』
『ああ、している。これから、そこに行くんだからな』

 航空管制官であり飛行テストを見守るスタッフに軽口をたたくパイロット「ジャック・“ストーム”・スミス中尉」は緊張と興奮を抑えきれずにいた。
すでに何度もシミュレーションで訓練を重ね、訓練機でも同じように飛ばすことができるようになっているパイロットである。
しかして、ストームが実際にXA-999に乗るのはこれが初だ。しかも、米軍のパイロットの中でも初めて、となる。

 初めて尽くしだ。大変に名誉なことであり、あるいは危険なことであり、同時に心躍ることでもある。
 カタログスペックでは---未来の技術の結晶を劣化させたと言え盛り込んだことで---なんとマッハ10という領域をも凌駕する。
それを可能とするのがエネルギー転換装甲という頑強な素材と、熱核タービンエンジンという強力なエンジン2発。
そしてSR-71をさらに発展させたかのような形状が空気による妨害を極限まで減らす。
ストームの言うところの「そこ」とは、これまで人類が有人ではたどり着いていない速度域のことであった。

『だが、改めて言うぞ。今回のは安全マージンも取ってある試験とはいえ、危険が伴う。
 わずかな操作ミスでも、0.1秒の間でも狂えば、とんでもない方向に吹っ飛ぶ。そういう航空機だ』
『わかってる、わかってる。操縦桿にしっかりしがみつくさ』

 専用のパイロットスーツ---最早宇宙服のレベルのそれ---に身を包んだストームは管制官にそう返答する。
 それは比喩ではない、しがみついてでも耐えなければ、ダークスターは危険な航空機となるのだ。
これまでシミュレーションでの飛行では、多くの腕利きパイロットが、それこそテストパイロットを任される人間が振り回され、墜落を経験していた。
それらの積み重ねの中でやっとこさその速度と運動性を発揮できると認められたのがストームだったのだ。

『ストーム、滑走路への進入を許可する』
『ああ』

 そして、滑走路に進み、悠然とその時の備えるダークスター。
 今回はあくまでも飛行テスト。武装は搭載しておらず、同じ重さとバランスのダミーを乗せているだけだ。

『ここはいい……気ままに、自由に飛べるからな』

 そう、この特地、ファルマート大陸には地球上では存在するしがらみがない。
 国境、天空からの無粋な目、追っかけてくる無粋な迎撃機、あるいはノイズがない。
 純粋に航空機を飛ばすことだけに集中できるというもの。パイロットとして、極上と言える世界にいたのだ、ストームは。
 実際、地球連合からの技術供与を受ける場所を特地に置いたのは、防諜という観点があったのは間違いない。
特地という環境にスパイなどを送り込んだりするのは至難の業だ。まして、地球連合の目も光っている。
無論ここ以外での防諜も行うことが前提となるのだが、それでも負担が小さいのは確かである。

『クロス1、離陸を許可する。グッドラック』
『クロス1、了解』

 各種システムが飛行に向けて一斉に動き出していく。
 ここから向かうのは、人類未踏の速度域。人の作った翼が、未知の世界へ飛んでいくのだ。
 そして---緩やかに最初の離陸というステップを踏み、上空へと飛び立っていった。

234:弥次郎:2022/12/04(日) 21:54:17 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

  • XA-999 コクピット内


 規定通り飛行し、高度を上げ、機体を安定させる。
 ああ、興奮が沸き上がって止まらない。
 危険なことをするということに対しても、恐怖心以上に、ストームの身体の中には確かな喜びがあった。

(いい子だな……)

 ストームは感動を覚えていた。
 操縦桿を握って飛行しているだけでもわかるのだ。この航空機がいかに優れているか、ということが。
 徐々に高度を上げていくダークスターは、一切のよどみがない。人と航空機の一体感が段違いだ。

(さて……)

 既定の高度だ、と意識を切り替える。
 純酸素に慣らされた体で手早く、しかし正確に操作を行う。
 単に飛ぶだけならば、熱核タービンエンジンを2発も搭載する必要はない。
 その必要があったのは、偏に将来には既存の航空機を飛び越える速度を発揮できる航空機が必要になるからであった。
その構想は、パイロットである自分にも明かされているが、やがては可変航空機というとんでもないモノにたどり着くという。
この航空機をかっ飛ばしている熱核タービンエンジンもそれに使われるのだという。
 それらを反芻し、しかし、頭から追い出す。今重要なのは、これから行う飛行だ。

『加速する』

 それをあえて口に出してから、スロットルレバーに手を置き、慎重に、しかし大胆に開放していく。
 同時に、加速に備えて身構える。事前のウォームアップと連合から供与された耐Gスーツにより、身体は耐久できるだろう。
 しかし、それでもパイロットへの負荷が都合よく0ということはない。本来の負荷を考えれば何倍も良いとはいえ、襲い来るのはわかっているからだ。

(ぐっ……!)

 そして、速度が上昇していくにつれ、身体に徐々に負荷がかかってくるのを感じる。
 速度はすでにマッハの領域。じわじわと、HUDに表示される速度を示す数値は上昇していっている。
 だが、まだだ。まだマッハ5を超えた程度でしかない。

(まだいけるだろう……!)

 愛機と、自分にストームは言い聞かせる。
 熱の壁たるマッハ3は超えていて、実際に機体の表面温度が上昇しているのは確認されている。
 だが、それは問題ではない。エネルギー転換装甲とピンポイントバリアシステムの応用で局限されているのだ。
本来ならば有人機としては限界であっただろうが、そこを超えることができるのがこの機体であると知っている。
だからこそ、今の段階では「まだ」マッハ5を超えた程度でしかないのである。本領はさらにその先にある。

(行けよ……!)

 そして、速度はついにロケット動力の極超音速実験機であるX-15の記録したマッハ6.7を飛び越え、その先へと踏み込んだ。
現状はマッハ8。今回の飛行試験で目指す速度はその2つ上。その結果としてこの機体の飛行ルートは一部帝国領に食い込むが、構うものか。
ストームは、未知の世界に飛び込んでいる喜びと、パイロットとしての冷静な部分が両方体にあることを自覚した。
熱と冷たさの両方。驚くほど自分は落ち着いていて、集中できている。
 さあ、さらに先へ。
 ストームは、さらにスロットルレバーを解放した。
 それに応じるように、黒い巨星は空を引き裂くように、その羽ばたきで速度の壁を超えていった。

235:弥次郎:2022/12/04(日) 21:54:53 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

以上、wiki転載はご自由に。
GATE編でも、ちょっとは明るい話を。
次話に続きますのでよろしくです。

238:弥次郎:2022/12/04(日) 22:15:26 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
取り急ぎ誤字修正だけ…

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×
速度はすでにマッハの領域。じわじわと、HADに表示される速度を示す数値は上昇していっている。


速度はすでにマッハの領域。じわじわと、HUDに表示される速度を示す数値は上昇していっている。

ちょっと風呂入ってきます

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最終更新:2023年11月15日 20:13