438:弥次郎:2022/12/16(金) 23:10:51 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

憂鬱SRW ファンタジールートSS 「1944年9月、ペテルブルクにて」5




  • F世界 ストライクウィッチーズ世界 主観1944年9月 オラーシャ帝国 ペテルブルク 502JFW基地



 グンドュラ・ラルは大いに顔をしかめていた。
 その理由はただ一つ、「オーカ・ニエーバ」の遭遇した新型のネウロイにあるのだ。
 これまで出現してきた要撃型を超える新しい要撃型。「分裂要撃型」と仮称されるネウロイだ。

「確定情報としてわかると、とんでもないものだな……」

 最初に遭遇したのが「オーカ・ニエーバ」の哨戒機であり、その際に詳細なデータ採取が行われたため、精度の高い情報が得られた。
 だが、それは実現していては欲しくない情報の塊であり、さしものラルをしても、相手にしたくはないと思えるネウロイだった。

(いや、目をそらしても意味はないか…)

 分析班が映像や写真、そしてウォーザードの証言を元にまとめた報告書を、改めて開く。
 「分裂要撃型」の基礎スペックは、全長がおよそ25m、全高がおよそ9m、胴体の円錐部の直径がおよそ6mほど。
最高速度は不明だが、マッハ2以上で飛行するブースターユニット付きのナハト・リッターに追従できる程度は足が速い。
攻撃手段は円錐形の胴体の先端と、胴体から生える4枚の羽根に3門ずつあるレーザー砲。後方にも羽の付け根から2門ずつ発射が可能とわかっている。
 そして、分裂とあるように、この個体は分裂する。ちょうど半分になるように分裂し、そのまま行動が可能。
分裂した断面からはレーザーを発射する小型個体を放つことにより、スウォーム攻撃を可能としていた。
確認されただけでも小型個体は100以上搭載されているようであり、包囲して逃げ場をふさぎ、飽和攻撃を仕掛けてくる。
 撃破するには、合体状態では2つ存在するコアを同時に破壊する必要があり、片方だけ潰しても即座に再生されてしまう。
分裂した後ならば先端部付近にあるコアを破壊すれば撃墜できるのであるが、それを相手が許してくれるかどうか。

 ぎしり、と体重を預けた椅子が軋む。
 ウォーザードの鏡子はうまく立ち回ることで、連続して遭遇戦になった状態からでも撃破することができた。
 だが、それはMPFというストライカーユニットの上を行く装備を用いての戦いの結果だ。
今後、本隊である502JFWが戦場で、あるいは哨戒などで遭遇する可能性は非常に高く、その対策は必須と言えた。
 では、ウィッチの場合どのように撃破するだろうか?

(第一の問題は速度差だな)

 相手はマッハ2以上をたたき出してきた。
 下手をすれば相手を感知しても対応が間に合わないほどの速度で迫ってくるということである。
 昨今においては、ストライカーユニットにも携帯型のレーダーとその情報を表示するHUDが標準化されているが、あまりにも相手が速すぎる。
MPFのそれと比べれば、ウィッチが装備するレーダーの範囲や精度は低いものだ。これでも何もなかったころに比べればマシであるが。
ともあれ、接敵を仮に目視したとしても、それに反応しきれるかというのが実際問題だ。
相対速度がほぼ0かそれに近かったことでMPFでは勝利できたが、未だにウィッチのストライカーユニットではその速度域にたどり着けていない。
無論のこと、ストライカーユニットでの音速飛行及び戦闘は研究されているのだが、成果としては未だ不十分と聞く。

439:弥次郎:2022/12/16(金) 23:11:25 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

 次の問題は、火力の差だ。
 通常の要撃型に比べ、発揮可能な火力が倍以上だ。
 すっかり操作の慣れたパソコンで3次元モデルを画面上で動かしながら、ラルはそこに悩む。
 特に分裂された時が、スウォーム攻撃をされた時が厄介にも程がある。全方位からの攻撃にさらされれば、防御が間に合わなくなるのだ。
無論、これまでも小型の個体を飛ばして攻撃してくるネウロイというのは存在していた。
だがこれは厄介なのだ。小型個体でもマッハで飛んできて小回りも効くという特性を生かして攻撃してくる。
しかも確認されただけでも相当な数をばらまいてくるという悪条件だ。こちらが1発撃つ間に、相手はその10倍以上も撃ってくる。

(まともに相手をするだけ無駄、とみるべきだな)

 これに対する対応法として、実際に遭遇した鏡子はとにかく肉薄して本体を叩くべしと報告している。
 相手の数に任せた攻撃を一々律儀に処理していると先に消耗するのはこちら。ならば適度にあしらい、撃破したほうが良いと。
実際、コアの破壊により小型個体は連動して消滅したため、この上申の内容には説得力がある。
逃げ回るよりも、相手の懐に飛び込むという、いわば前方への脱出こそ突破の鍵になる。
 ここで問題なのが最初も言ったとおりに火力だ。丸ごと吹き飛ばせる火力があるMPFならある程度無視できる問題ではある。
しかし、ウィッチが携行可能な火力には限度がある。MPFでも火力を浴びせてコアをむき出しにして撃破したというが、それと同じくらい持たせられるか?
ネウロイの装甲は頑丈なことが多い。肉薄しての攻撃ならば攻撃は当たりやすくなるが、その防御を抜いてコアを破壊する必要がある。

(管野の固有魔法ならば……いや、あれは固有だから例外だな)

 端的に思いついたのは、ブレイクウィッチーズの一人である直枝の固有魔法だ。
 かつて襲来したネウロイのコアを、連携の末にぶち抜いたのは彼女の固有魔法による一撃。
 しかし、固有魔法というからには、彼女以外には不可能な技ということ。
戦闘記録から考えれば、防御を貫通しコアを破壊するには、それに匹敵する攻撃が必要との計算が出ていた。

(やれるとすれば……それこそ、専用の武器か?)

 あるいは良く魔力を込めた銃撃だろうか、とコーヒーを傾け、ラルは考えを巡らせる。
 攻撃を防ぎ、あるいは小型個体を捌きながらも肉薄、そしてコアに一撃を入れる。
 少し頭の中でその動きを想定してみて---何度かやったがうまくいくイメージがわかない。

(……とりあえず、明日の朝にでもブリーフィングで通達しておく必要があるな)

 それにシミュレーターへのデータ反映も、とラルは連合から供与されている設備のことを考える。
 ティル・ナ・ノーグにおいて訓練にも使われるシミュレーターは、ここ502JFWの基地にも設営されている。
前線で確認された新型のネウロイのデータを打ち込むことで、ネットワークを通じて共有され、対処法の共有などができるのだ。
誰もがあれに遭遇した時に対処できるように、訓練や対策の検討をしなくてはならない。

「……あとは戦闘詳報の共有と、訓練内容の変更もしくは追加だな」

 それに伴う仕事のことを考えると、少し憂鬱になる。
 ネウロイも厄介ではあるが、それに対処するために行う仕事というのも厄介である。
殊更に部隊内の陳情やら報告も処理したうえで、さらに仕事の割り振りや指示を出すためにアレコレとしなくてはならない。
その点では、連合から持ち込まれ、扱いを叩き込まれたこのパソコンによって作業が効率化されたのはありがたいことだ。
まあ、画面をじっと見ていると疲れてしまうし、タイピングを重ねていると肩が非常に凝るという負の面もあるが。

(休ませてくれないな、敵も味方も……)

 内心愚痴りながらも、ラルは己の仕事にひたすらに打ち込むのであった。

440:弥次郎:2022/12/16(金) 23:13:45 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
ラルさん、現場に出ていないけど現場に出る以上の仕事をやるので辛いところですな。
ちなみにですが、重傷を負ったラルさんですが、この世界においては連合の手により治療されております。
ただし、出撃できるほど管理職の仕事が楽なわけもなく…
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最終更新:2023年11月03日 11:09