505:弥次郎:2022/12/18(日) 00:35:09 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
 憂鬱SRW ファンタジールートSS 「1944年9月、ペテルブルクにて」6




  • F世界 ストライクウィッチーズ世界 主観1944年9月 オラーシャ帝国 ペテルブルク 502JFW基地 ブリーフィングルーム



 定例の朝のブリーフィングにおいて、新型ネウロイの出現とそれへの対応訓練の実施などを告げて解散を告げた後のことだ。
ブリーフィングルームにはウィッチとウォーザード数名が残り、机を囲んでいた。
先ほどまでブリーフィングをしていたというのに再度集まるのも妙な話であるが、必要だったからやむを得ない処置だ。
参加者は合計で4名。502JFWからは隊長であるラル、戦闘隊長のサーシャの2名。オーカ・ニエーバからは小隊長のカーチャ、バルバラの2名だった。
 因みに、ロスマンは新型ネウロイに対して対抗馬となりうる管野を引っ張りシミュレーターの方へ向かったためここにはいない。

「さて」

 502JFWの実働戦力を担うメンバーが集まったところで、口火を切ったのはラルだった。

「昨日は本当に感謝している。
 夜を徹してのデータ解析とシミュレーターへの反映に協力してもらったおかげで、今日からすでに対応訓練ができるようになった」
「言いっこなしですよ、ラル隊長。こちらとしても、哨戒機狩りにあんなのを投入されたら死活問題になりますから。
 それにお礼を言うならスタッフたちの方にお願いしますよ」
「考えておこう……私の秘蔵の酒でも差し入れておくかな」

 最初は感謝からだった。
 昨日、オーカ・ニエーバのスタッフは新型に遭遇した鏡子のナハト・リッターからのデータの吸出しを行った。
それだけでなく、そのデータの解析、分析、シミュレーションデータへの転換と入力に全力を費やしたのだ。
こうして翌日には訓練ができるのも、スタッフがかなり頑張り、また鏡子がテスターとして繰り返し試した結果なのである。
 だが、感謝だけが今回の招集の理由ではない。それならば昨日の時点で伝えられている。改まって言うほどでもない。
そもそもオーカ・ニエーバの役割は502JFW本隊の支援と援助にあるのだから、それこそ今更な話であるのだ。
 つまり、それだけの理由があるということになるとカーチャは理解していた。

「さて、本題だ。
 カーチャ、そしてタマロ曹長には聞いておきたいことがある。
 あの分裂要撃型、MPFでは倒すことができた。しかし、ウィッチが倒すならばどうするべきか、だ」

 ラルが問いかけたのは、まさにカーチャの予想通りの内容だ。
戦闘隊長であるサーシャがいるのも、実際に遭遇した際に指示を出す立場にあるためだろう。
さらに、バルバラが呼ばれたのも、ウィッチとウォーザード両方の視点から意見が言えるためとも想像できた。

「対応策です?」
「そうだ。MPFほどの装備とスペックがあるならば倒せるのはわかった。
 だが、アレがウィッチに向けられた際にどうすべきか、具体的な対応策を検討しておかねばならない。
 場合によっては、哨戒シフトの変更も視野に入れなければならんと判断した」
「オーカ・ニエーバに負担を押し付けることはよくありませんし、仮に今後の正面戦闘で出てきた際に何もできないではたまったものではないのです。
 忌憚のない意見を頂ければと思います」

 バルバラの問いに、ラルは頷いた。サーシャもまたそれを肯定した。
 ウィッチとウォーザード、ストライカーユニットとMPF。その両者の間には様々な差が存在している。
 総合的なスペックにおいてウィッチとストライカーユニットでは劣っており、戦闘能力で追いつけないということも、周知の事実だ。
 だが、そんなことを差し置いても、ウィッチが哨戒に出た時に遭遇戦になる可能性について検討しなければならないのだ。
都合よくMPFだけを狙ってくれるわけもないのだから、対応策というか遭遇した時の戦闘協定なりを定めておく必要があるのだと。

 問われた先、バルバラはちょっと考え込む。
 バルバラは現役ウィッチでもあるので、アレに対してストライカーユニットで立ち向かうときの危険度の高さは理解できる。
速度差、火力の差、手数の差、防御力の差など、相手との間には歴然とした差というものが存在していて、それは簡単に覆せないと。

「……正直な話、一対一であれを倒そうというのはちょっと無理があると思います。
 勿論、哨戒に出る時は一人ですけど、遭遇したら無理に撃破しようとせずに時間稼ぎに徹して、増援を待った方がいいです」
「その心は?」
「いや、いうまでもなく、まともにぶつかったら負けますから…」

 身もふたもない言い方ですけど、とバルバラは言う。

506:弥次郎:2022/12/18(日) 00:35:52 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

「分裂要撃型の火力とスウォーム攻撃は、ウィッチじゃ防ぎきれませんしー…」
「これについては私も同意見だな。ラル隊長、ウィッチにもできないことはあると、そう考えるべきだ」

 カーチャの言葉に、分かっているとラルは理解を示す。

「だが、おんぶにだっこではよくないのも事実だ。
 連合の戦力に甘えてばかりというのも、今更だがよくはない話だ」
「互いに政治で苦労するな、ラル隊長」
「まったくだ。ただ、流石にこちらの政治的な事情のためにウィッチに死ねということもできない。
 だから、倒せなくとも、凌ぐ手段が欲しい。そういうことだ」
「できれば、兵站面でも楽ができればと思います。
 ストリボーグ艦隊が引いている影響もあって、物資が確実に届くとは言えないのが実情ですから」

 サーシャが言うストリボーグ艦隊、それはオラーシャ帝国欧州側や北欧諸国の制空権を担う航空艦隊のことだ。
制空権の確保と上空からの監視、さらには航空艦艇による各地への物資の輸送を担うことで、戦線の維持に協力しているのだ。
 だが、ブリタニアのやらかしの影響で、そのストリボーグ艦隊は現在地球連合拠点に引き上げている。
散々物資の横領やら何やらを喰らってしまったので、その影響が出ているのではという懸念が出たためだ。
その結果、ネウロイに対する対応力が下がってしまっているのだ。それは、補給線へのネウロイへの攻撃という形で噴出している。
孝美が502JFWに着任する際に艦隊が襲撃されたのも、これが無関係というわけでもない。
ついでに言えば、502JFWへの物資輸送のローテーションも動員できる航空艦艇の減少で、物資が届く頻度も落ちている。
これについてはラルも我慢ならず、ブリタニアへの鬼電という形で抗議は実行に移されていた。
 ともあれ、である。

「ウィッチがあれに対抗するならば、スウォーム攻撃への対処能力と迎撃能力。そして本体を撃破する一転火力がいいと思います」

 バルバラは自分のタブレット端末の画面にいくつかの武装を表示する。

「これ、あたしが使う奴とか、ティル・ナ・ノーグで同期が使っていた奴ですけど、こっちに送ってもらって装備すればいいかなと」
「どれ……」

 表示されているのは、ストライカーユニットとは別に、ウィッチが装着するユニットの画像だった。
 宮藤理論により異空間に体の一部と弾薬などを格納して、装備の数を増やす役割を担っているようだった。

「ストライカーアームズ、そう呼ばれています。
 本当はもうちょっと早くに配備が進む予定だったそうですけど、ブリタニアでのごたごたで遅れたそうです。
 ヴェルクマイスター大佐がMIA認定を受けた混乱もあって開発遅延が起きたのもありますし」
「……本当にあちこちに響くな、ブリタニアの影響は」

 だが、表示されている武装が有用に見えるのも確かだ。
 例えばだが、腕部装着型のマシンガン。これを持っていれば、大量に押し寄せる子機を打ち落とすのが楽になりそうだ。
通常のマシンガンなら手で持てる限界は1丁だが、こちらはその3倍の銃口と装弾数を誇っている。
雑にバラまくだけでも有効であろうというのは容易に想像ができることだ。

「あとはこっちの……パンツァーファウストとかフリーガーファウストを基にしたロケットランチャーとかですね。
 当てにくいですけど、接近してあてれば高い威力が期待できます」
「なるほど……」
「バリエーションは色々とあるんですね……」

507:弥次郎:2022/12/18(日) 00:36:25 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

 感心するラルとサーシャだが、開示した本人は微妙な顔をしている。

「けどこれ、重たいうえに動きを制限しちゃうんですよねー。
 それにウィッチの魔力の消費が単位時間当たりでも増大するんです」
「そうなのか?」
「はい。ストライカーユニットほどではないにしろ、魔力供給をしないと動かないんですよ。
 飛行の時のバランスも変わりますし、ついでに言えば整備に時間がかかるので……」

 その言葉に、502JFW側は嫌でも沈黙せざるを得ない。
 何しろ、502JFWにはブレイクウィッチーズ3人がいるのだ。
 ただでさえ、ストライカーユニットを派手にぶっ壊してカツカツの稼働状態にしている彼女らが、こちらを壊さない保証はない。
加えて、このストライカーアームズ自体の整備の手間もあるということならば、整備班への負担の増大にもつながりかねない。
そして、兵站面での不安がある中において、さらに使う物資の量を増やすというのは必ずしも良い判断とは言い難いのだ。
まして新装備というのは、得てして初期不良があったり、あるいはノウハウの蓄積が少ないという弱点も伴っているのだ。

「そこらへん、折り合いをつけるのが難しいので、現状では少数配備でテストをしている段階なんですよ。
 その問題解決に時間がかかっているのと、そこまでやるならMPFでよいじゃないかというのもあって……あ、今のオフレコで」
「わかっている。ティル・ナ・ノーグも楽をしているわけじゃないというのはよくわかった」
「しかし、ラル隊長どうしましょうか?
 確かに有用であるのは確かですが、運用できなければ元も子もないですし、それに慣熟する時間も……」
「皆まで言わなくていい。とはいえ、部下の安全に配慮できない上司など問題外でもある。
 できる限りこちらに回してもらおう。何しろ新型ネウロイの脅威が迫っているならば看過できないしな」

 事情はあるとしても、そして負担が発生するにしても、これらで部下の命が助かるなら安いものである。
なんだかんだでこのオラーシャでの戦い方を知りつくし、これまでペテルブルグを守ってきた彼女らを信じるしかない。

「早速こちらへの配備を申請してみるか……ああ、クソ、また書類仕事か」
「あたしからも、ヴェルクマイスター大佐にお願いしてみますね」
「頼む。ん……?」

 その時、どこかから悲鳴が聞こえたような気がする。
 誰かが走る音と、同時に何かを蹴飛ばすような音もだ。

「……管野か?」
「多分そうだと思います…」

 そう言えば彼女はシミュレーターで、分裂要撃型と戦っているのだった。
 ロスマンに引っ張られていったとはいえ、新型のネウロイ何するものぞ、と元気に挑んでいったはずだが。

「奴にも苦手なものくらいはある、ということかな。
 サーシャ、お前も行ってくれるか?ほかのウィッチならどう対応するかのデータが欲しい」
「わかりました」

 臨時のミーティングはそれを以て終了した。
 502JFWの取り巻く状況は決して楽観できるものではない。むしろ油断すれば追い詰められかねない。
 なればこそ、力を合わせて必死に抗わなくてはならない。その理解が、全員にはあったのだった。

508:弥次郎:2022/12/18(日) 00:37:34 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
もうちょっとこのシリーズを続けたいところですねぇ
感想返信は今宵は無理なので悪しからず

514:弥次郎:2022/12/18(日) 09:37:34 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
おはようございました

誤字修正から行います
wiki転載時には修正をよろしくお願いします

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最終更新:2023年11月03日 11:10