724:弥次郎:2022/12/20(火) 22:06:23 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

憂鬱SRW ファンタジールートSS 「1944年9月、ペテルブルクにて」8



  • F世界 ストライクウィッチーズ世界 主観1944年9月 オラーシャ帝国 ペテルブルク 周辺空域



 早くも冬の寒さを湛え始めたオラーシャの空気の中、管野はストライカーユニットを履き、哨戒飛行をしていた。
仕事の内容は単純、既定の時間までネウロイの襲撃がないかを見張り続け、出現したらそちらに向かって迎撃に向かうというもの。
502JFWの実働戦力がほぼ動員されており、ネウロイの支配地域に対して壁のように哨戒網が構築されている。
そして、いざとなれば地上で待機している人員がスクランブル発進して対処するのだ。

(くそ……あと1時間もか)

 HUDに表示されている時計を確認すれば、まだまだ地上に降りて交代するまで1時間近くある。
 追加増槽を付けているのと、魔力をセーブしていることもあって、それくらいは飛び続けられる。
 とはいえ、それだけの時間集中力を維持し続けるのは中々つらいものがある。端的に言えば暇なのだ。
ネウロイが攻めてこないことが最も良いのであるが、攻めてこないなら攻めて来ないで時間を持て余す。
書籍でも持ってくれば、と思ったが、HUD内蔵のヘルメットには主観カメラが装着されているので、書籍など読もうものならバレてしまう。
哨戒で飛んでいるウィッチやウォーザードの主観映像は本部に転送されており、CPにいる人員によって精査されているのだ。

(便利なのはわかるけど、窮屈だぜ……)

 なぜ、ここまで長時間の、そしてウィッチたちを動員した哨戒態勢が構築されているのか?
 それは偏に、502JFWの基地において大規模なメンテナンス作業が入っているために他ならない。
 具体的に言えば、基地および基地周辺の防衛設備や対空設備---レーダーや監視カメラ、それらと連動する対空砲や地対空ミサイルなどが使えないのだ。
何しろ、メンテナンスを受けているのがそれらに電力を供給するための発電設備---元々502JFWが用意したものと、地球連合が設置したエーテルリアクターだからだ。
 それこそ、専用の技師や整備士などを動員しての大規模なもので、年に1度か2度ほどしかないものだった。
 その間、供給される電力量は蓄電されている分のみとなり、設備の稼働率や稼働時間は大きく制限を受ける。
この状況においてネウロイが攻めてくると、レーダーで探知はできても、防衛設備の稼働は厳しくなる。
エーテルと電力の両方を必要とするエーテルバリア設備は当然として、無人化された防衛設備も長時間使えない。
 故にこそ、ウィッチとウォーザードによって周辺を警戒し、メンテナンス完了まで警戒を続けるのだ。

「……っと、定時だな。あーあー、こちら管野、今のところ敵影はなし。長閑なもんだぜ」
『こちらクルピンスキー、僕のところにも問題はなし』
『ニパ、こちらも問題なし』
『ロスマンですが、こちらも敵影見えません』

 定時の報告をCPと展開しているウィッチの間で行う。
 あと1時間ほどの任務だ。厳密には地上待機組と交代するだけのことだが、改めて考えると憂鬱だ。

『管野さん、気が抜けていますよ』
「…了解だ」

 顔に出ていたか、とロスマンの言葉を受けて気を入れ直す。

「けどよ、流石に退屈が堪え切れねぇんだけど」
『私たちの哨戒網の外側で、ずっと飛んでいるオーカ・ニエーバの皆さんよりは楽ですよ?』
『あー、そうだったねぇ……』
『二人で私たちより広い範囲を飛び回って哨戒……すごいよね』

 すました顔の、疲れをまるで見せないロスマンにそれを言われると管野でも黙るしかない。
 オーカ・ニエーバの4名のウォーザードは二人一組で更に広い範囲を飛び回って哨戒を行っている。
 これはMPFの性能、巡行ブースターユニットによるところも大きいが、それでも負担の大きさは502JFWより大きい。
万が一の時にはCPを経由して彼女たちの情報が伝達されることになっており、それに合わせて有機的に動くことになっている。

725:弥次郎:2022/12/20(火) 22:07:01 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

 その時に即応するのは自分達。気が緩んでいてはいけない。
 そうして気を入れ直したところで、ふいにクルピンスキーが口を開いた。

『そういえば直ちゃん、最初はオーカ・ニエーバの子猫ちゃん達を邪魔者扱いしていたよねー』
「だ!?おい、それをほじくり返すなよ!」

 管野の着任直後のことだ。まだ502JFWにウィッチや人員が少ない状態だったころ、それこそ実働が3人ほどだった時。
 502JFWを支援するための部隊ということで、着任早々に引き合わされたのがオーカ・ニエーバだった。

『俺のスコアを持っていくまがい物、とまで言ってたっけ?』
『スコアの競争で熱くなっていたから、直ちゃん結構危ないこと言っていたよね』

 乗じてニパもカラカラと笑いながら曝露した。
 着任直後のことだ。スコアを競い合っていた三人にとって、哨戒任務などを熟して撃墜数を稼ぐオーカ・ニエーバはある意味邪魔者だったのだ。
殊更に、雁淵孝美が502JFWに着任することを熱望していた管野にとってみれば、憎いあん畜生扱いもやむなしであったのだ。

「うっせー!もうあいつらのことは認めてんだ!何笑ってんだー!」

 叫ぶが、ニパとクルピンスキー、さらには普段は諫める立場のロスマンまでもが笑っていた。
 だが、否定してもそれは事実であったのだ。とはいえ、なんだかんだで戦場を共にし、協力し合い、実力を認め合った仲にまでなったのも事実。

『やれやれ……直ちゃんはこのネタで揶揄えないのか』
『カーチャさんや鏡子さんにコテンパンにされて、おまけにバルバラさんにも追い打ちされたんでしたよね』
『あの時のカンノ、相当お冠だったよねー』

 抗議の声も聞きやしない、と直枝は嘆息する。
 まあ、あの時はあの時だ。お行儀よくお澄ましした顔と態度でこのオラーシャで戦えるものかと疑ったものだ。
ただ、あの態度が戦場になると一変して獰猛になり、ネウロイを次々と落としていくのは、最初は驚いたものだ。
ついでに半ば反抗心のようなものから勝負を持ちかけもしたが、一蹴されたもの今でも覚えている。

「るせー、あの時の教訓はちゃんと覚えているし反省もした。あの時のまんまじゃねえ」
『どうだか』
『少なくとも、言い方は少しは改めたほうがいいですよ』

 笑顔のロスマンに言われ、またしても口を閉じるしかない。
 なんだか、口を開くたびにぼろが出て、それをほじくり返されている気がする。
 まずいな、と思った矢先だ。CPを通じて通信が入る。

『こちら、101W001、リッター1。哨戒中に群れと遭遇し交戦中。
 ネウロイの規模は中規模。最大個体はCクラスのネウロイで構成はDクラスが多数。
 強行偵察かしら?こちらで基地方面から引きはがしているわ。ポイントF-23からC-27へ進行中、増援を求む』
「比較的近いな、俺が行く」
『え、ちょ!』
『直ちゃん!』

 丁度いいや、と管野は真っ先に飛び出す。
 これ以上ここにいては何をほじくり返されるかたまったものではない。
 それに、あれから見返すべく訓練と実践を重ねているのだ、リッター1---カーチャに腕を見せつけるチャンスでもある。

『しょうがない……ニパ、管野についていってやれ。残りの面子は哨戒を継続』

 地上で指揮を執るラルはため息をつきながらも指示を出した。
 よし来た、と管野はそのまま加速を続行した。ネウロイの出現したポイントまでのルートはHUDに表示されている。

「いくぜ!」

 そして、デストロイヤーの異名を持つウィッチは飛翔する。獲物を求め、どう猛な猛禽類のように。

726:弥次郎:2022/12/20(火) 22:08:10 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

以上、wiki転載はご自由に。
どんどん書いていきたい。
けど、どこで終わらせようかなーと迷っております。
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最終更新:2023年11月03日 11:13