5:弥次郎:2022/12/23(金) 23:20:05 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「女神を振り向かせて」


  • C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月後半 日本列島 地球連合ネットワーク上




 刹那は激怒した。
 必ず、あの邪知暴虐にして厚顔無恥の国を分からせねばと決意した。
 刹那に複雑な外交など分からぬ。刹那は日企連に属するリンクスである。
 企業の重役の一族に生まれ、社交界で鳴らし、戦場で優雅(物理)に舞い、休日はオンラインゲーを嗜み台パンしながら過ごしてきた。
時に強化された肉体ゆえに机をぶっ壊してしまうこともあったがそれはご愛嬌というものである。
 けれども、ノブリス・オブリージュだとか面子だとか責任だとかそういうのに関しては、竜の逆鱗より敏感であった。

『(放送禁止用語)』

 そんなわけで、日企連のリンクスがオンライン上で集まってのミーティングにおいて、その計画を開示された際、真っ先に口をついたのはそれだった。
 現実世界の彼女の目の前にあるのは、一つの計画書。
 地球連合とこのβ世界の国々との間で協議がなされ、その上ですったもんだしたり乱闘寸前になったり舌戦したりして、固められたものであった。
はっきり言えば、とてもではないが綺麗な経過を経て生まれたものではない。国家間の醜いエゴと我欲とその他もろもろが煮詰まったおぞましいさがある。

『……刹那さんがそうおっしゃるのもわかりますが、これも融通できる戦力と、国家間の妥協の結果です』

 その口をついて出た罵声を聞いて、刹那の心情を理解したうえで、声の主である大空流星はそう告げるしかなかった。
彼女の為人はよく理解している。良くも悪くも竹を割ったような性格であり、尚且つまっすぐだ。
厳しくもあるが他者を赦せるやさしさや寛容さも備え、人格的にも問題はないと判断されている。
 しかし、その高潔さゆえに、時には折り合いが悪くなることも、また確かなことであったのだ。

『そこは把握しております。
 一目連様は日本帝国に駐留し外交官兼講師役、タケミカヅチ様と黒子御前様はアラスカへ。
 有澤隆文様は同じく日本帝国での営業活動を行う。派遣されたリンクスがそれぞれに仕事を割り当てられるのも納得です』

 ですが、とパァン!といい音をたてて机をたたきながらも、刹那は抗議した。

『ですが!厚顔無恥にも、そして図々しくもハイヴ攻略のためと出張ってきたアメリカや国連と協同など、危険が伴うのではなくて!?」

 そんな刹那の吠える声に、誰もが視線を逸らすしかなかった。
 そう、日本帝国・地球連合・大東亜連合・国連・米国という国家群が共同で行うことになっている一大作戦。
BETAの大侵攻の際に建造されたと思われる新たなハイヴ「H27 光州ハイヴ(帝国呼称:甲27号)」の攻略作戦であった。
作戦名を「オペレーション・ジュピター」。国家と惑星の壁を超えて人類が手を取り合って立ち向かうという触れ込みの作戦。
 だが、その実態は、国連と米国の意志が極めて大きく絡んだ、政治的な思惑がとてつもなく大きいプランなのであった。

 そも、この発案者が国連経由の米国という時点ですでに参加するβ世界の国の不評を買った。
 米国は、そして米国の意を酌んでいる形の国連は、先だっての大規模侵攻において戦うことを放棄し、撤退した。
それは到底防ぎきれない大侵攻において自軍を無駄死にさせることを嫌ったというのが表向きの理由であった。
 他方、すでに戦後を見越しているとされる米国の動向から見れば、意図的に撤退したという見方が大きい。
ただでさえ、事前の確約さえも無視したG弾の実戦投下による被害を受けているのだから、日本帝国も東亜連合も良い顔をしない。
価値もないからそのまま死ね、と間接的に言われたに等しかったのだ。今更しゃしゃり出るなど、どの顔をぶら下げているのだ、というわけである。

 地球連合にしても、G弾の使用がこの融合惑星の誕生につながったことは明白であり、同時にこれ以上の仕様はさらなる影響さえ想定されることなのだ。
これでハイヴ攻略を名目としてG弾を集中投射しようものならば、次元にどれだけの影響が出るか全くの未知数なのだ。
この融合惑星が影響を受けるだけならまだしも、C.E.太陽系にまで影響を及ぼされてはたまったものではない。
G弾抜きにしても次元の壁が揺らぎ不安定な状況なのだから、これ以上のドカンなど勘弁してほしいのである。

6:弥次郎:2022/12/23(金) 23:22:12 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

 そして、国家間の会議の場において米国が提案したのが、案の定のG弾の投入によるハイヴ攻略であった。
 それこそ、明星作戦のように2発などではない、10発以上を投入し、ハイヴ自体はもちろん、ハイヴまでの道を開くために使用するという大盤振る舞い。
そのうえで、国連軍麾下にある日本帝国と大東亜連合の軍勢であり、ハイヴを包囲、間引きを以て突入部隊が向かうというプランであった。
その時に一体どのような反応と行動があったのかは、そこにいた人間の名誉のためにも伏せるとしよう。

 対して、地球連合が提案したのは通常戦力による攻略作戦であった。
 方法論としては単純。解放の完了している舞鶴から艦艇とAFを以て海上を進軍。済州島を奪還して中継基地を設営。
 そこから先遣隊を送って上陸地点を確保し、陸軍を上陸させる。その後は海上艦艇とAFによりハイヴ周辺を均し、間引きの後に破壊するというもの。
AFおよび大型MAの投入によるハイヴ攻略というのはすでに極東ロシアおよび欧州において実証済みであった。
それこそ、G弾以下の被害で、G弾より多くのBETAを消し飛ばし、ハイヴの攻略をやってみせたのであった。

 当然の帰結として、この二つの案はぶつかり合うことになった。
 ハイヴ攻略後にG元素を確保したいアメリカとしては、G弾を使った自国主導の作戦を押す。
 G弾の影響、さらにG弾のもとになる元素など廃棄一択の地球連合はその案の危険性を指摘して反対。

 他国はどうかといえば、消極的ながらも地球連合の案に賛成であった。
 消極的、というのは米国が圧力をかけてきていることに由来する。
 露骨に戦後を見越した脅しをかけてきたのだ。具体的にはこれまでの支援の見返りを、という体裁で。
この案を飲まなければ今後の支援は行わない、そしてツケの支払いを要求するとまで言い切ったのである。
いっそのこと清々しいほどの態度であり、要求であった。もはや命令に等しいものである。
外交などというものですらなく、要求を突きつけ、力と道義を笠に着て押し付けていたのである。
 地球連合は米国が見捨てても自らが援助すると申し出ているが、β世界にとっては地球連合もどこまで信頼できるか、というところであった。
それに加え、仮に作戦が成功したとしても、戦後において米国との争いになれば自国が不利、もしくは負ける公算は高いとみているのだ。

 しかし、盤外戦術というが外道戦術に出たアメリカに横やりを入れたのは、欧州各国であった。
 同じく盤外戦術、アメリカがそのような態度に出るとなれば、国連からの脱却も検討すると大きく出たのだ。
 欧州としても、目端が効く者にとってはアジアのことと座視できるものではなかった。
同じような理論を振りかざせば、通常戦力によって奪還できる公算が高くなった欧州本土をG弾で荒らされることになるからだ。
欧州側も地球連合が推定したG弾の影響力を勘案し、その後の影響は看過しきれないと判断している。
それに、欧州各国としても夜逃げ同然に逃げ出して戦力を供出しなかった米国や国連に思うところは山ほどある、というわけだ。

 これに日本帝国らが同調すれば、国連はアメリカを中心とする国家と、それ以外の国家群に真っ二つになる。
そうなればこれまでの協定やら支援やらなにやらを完全に無視したとしても対抗するだけの勢力となりうる。
これに米国が武力でもって戦争でも吹っ掛けようものならば、それこそBETAとの戦いどころではなくなる。
 いかに米国がβ世界トップの国力を持っているとはいえ、それだけの国への支援を踏み倒されて、さらには市場から追い出されればただでは済まない。
さらには、AL5を推進する米国に賛同していた国々が地球連合へとすり寄っている事態も、米国に不利な情勢を生み出していた。
如何にG弾や核兵器でも使えばなくなり、それこそ力押しで他国を滅ぼしても、その後はBETAを自前で何とかする必要がある。

 こうして情勢が地球連合側に傾いたこともあり、米国はますます強硬的な態度を貫いて、宣戦布告さえも叫びそうになった。
 しかし、ここにおいてついに国連が白旗をあげた。このままでは国連がその体裁を保てなくなるのだ。
国連とは国家が資金や人を出し合い、さらには妥協の上で成立している組織であって、アメリカの持ち物ではない。
あくまでもアメリカが影響力が大きいというだけであり、少数の意見をそこまで無視できるものではない。

7:弥次郎:2022/12/23(金) 23:24:11 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

 まして、人類同士の争いを現段階でやるなど、自殺行為でしかないというのは火を見るよりも明らか。
 これまで国家間の軋轢がありながらも戦えて来たのは、その建前を守ってきたからこそであり、それは形はどうあれ破ってはならないもの。
 もし国連から欧州各国と日本帝国と大東亜連合が抜けた場合、国連は人類のための国際機関ではなくなり、アメリカの意志の代弁者になり下がる。
そんなことはさすがに見過ごすわけにはいかない、というわけであった。
 それでもとアメリカは反対の姿勢を崩さなかったため、諦めた各国は妥協案を練ることで妥協した。
 無論、望んでのモノではない。だが、これが最後通牒の数歩手前という覚悟での、極めて危ういものであった。

 「オペレーション・ジュピター」の骨子は地球連合の案を採用する。
 この際には、原案においては編成されていない米国や国連の軍の参戦を許可する。
 ただし、明星作戦のことを鑑みて作戦領域内への持ち込みを一切禁じる他、G弾を投下するあらゆる手段を地球連合が封鎖することとした。
それこそ、空域及び宙域の封鎖においては、無警告での撃墜なども許可されるという大盤振る舞いだ。

 実働作戦において実働を担うのは国連軍と大東亜連合と日本帝国を主力とし、地球連合はそのバックアップを担うという形に落ち着かせる。
国連軍といっても米軍の割合が非常に大きいのであるが、その国連軍や米軍も密かな持ち込みなどを禁じるために調査を行うことも許可。

 代わりというように、地球連合と日本帝国には、作戦の侵攻において必要となる艦艇や物資の供出。
兵力が日本列島において集まるための基地の用意。さらには済州島の奪還と拠点化、そこから光州ハイヴへの道の確保も任されることになった。
 要するに、立案国であるから積極的に動いて規範を示し、各国軍はそれに従うべし、と判断したのであった。

 勿論この案は折衷案であり、米国側の意見も混じっている。
 規定期日までにハイヴ攻略が未完了であった場合には、G弾の集中投射によるハイヴ攻略作戦への切り替えを認めたのである。
ただし、繰り返しになるが、それまでG弾を運用できる部隊は作戦領域内に近づくことを認めなかった。
もし発見もしくは発覚した場合には、アメリカ側のプランをハイヴ攻略の成否に問わず無期限延期するというおまけもつけてである。

 斯くして、拗れに拗れた会議は終了し、作戦案は承認され、実行に移されることとなった。
 各国はそれぞれの思惑のもとに動き、一応は妥協を得た。しかし、それが本当に無事に実行に移せるかまでは、まだまだ不安視されるものであった。

 視点を現在に戻そう。
 その案が承認されて、現在のところ、日本帝国に駐留する大洋連合を主力とする地球連合軍は戦力の編成を行っていた。
必要な戦力をC.E.地球から輸送してきて、融合惑星上に展開させ、運用の準備をするというのはそれなりに時間を要する。
作戦の細かい予定を詰め、兵力を揃え、ハイヴの偵察を行い、さらには米国の動きにも目を光らせるという多くのタスクがあったのだ。
 そして、こうして実働戦力でも高い戦闘力を持つリンクスも、この作戦において参加することになっているのである。

『その危険は十二分に承知しています。
 ですが、ここでアメリカの意見などをある程度受け入れ、妥協をしなくては、またG弾が使われる。
 それこそ、無差別にバラまいて再前線国家ごとBETAを滅ぼす可能性があるのです。
 力により解決するのは楽ですが、それを選ぶのは最終手段として控えたいところですから』

8:弥次郎:2022/12/23(金) 23:26:48 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

 そのように諫める流星も、原作を知るがゆえに、不安しかない。
 因果律に影響を及ぼした存在がいるとはいえ、原作においてはアメリカは余りにも看過できない行動をとった。
功績もあったのであるが、それを帳消しにしてしまうようなことをやりすぎてしまったのだ。
さらに後の作品においては、主人公たちの努力が実は無駄だったというレベルの事実も明かされており、その思いは強くなっている。
 刹那を諫める言葉を紡いで入るものの、半分は自分に言って言い聞かせているようなものだ。

『ぬぐぅ……』
『徒に力を振りかざすのは地球連合の方針にも反します。これまでだって、同じようなことがなかったわけじゃないでしょう?』
『そうですよ、刹那さん。正直アメリカの態度も行動も気に入りませんが、だからと言って同じことをしていいわけじゃないです』
『悲しいが、正論だな。正論は正しいが、そうであるがゆえに飲み込めないこともある』

 他のリンクスたちも同意見だった。
 米国も国連も確かに信頼も信用もできない。
 かといって、米国がやるような無法や力によるごり押しが無制限に許されているわけでもないのだ、と。

『なんでしたら、他のリンクスを出場させることもできます』
『私が推されたのは理由があってのことですか?』

 勿論です、と流星は頷いた。

『そのまっすぐさですよ。
 恐らくですが、米国は有象無象の形で妨害をしてくるでしょう。
 目的のために有効ならば、手段を選ぶべきではないとマキャヴェリも論じています。
 しかし、その妨害にあったとしても、折れることなく、同じ過ちを犯すことなく進める精神的主柱になれる。そう判断しました』

 つまるところ、影響力の大きい戦いをする人間こそ、それにふさわしい高潔な精神が求められるということ。
この一連の作戦において、リンクスは遊撃戦力として飛び回ることになる。それこそ、窮地に陥った友軍の救援を主眼として。
そこには日本帝国軍もいれば、米軍も国連軍もいるであろう。BETAは一々こちらの国籍などを斟酌はしないのだから。
その時に躊躇いなく相手に救いの手を差し伸べられるか?という問題が付きまとうのだ。

『それができるのが、私と……』
『その通りです』

 一瞬目をつむり、刹那は思考を巡らせる。
 そして、答えを出す。

『承知しました。この刹那、全霊を以て務めを果たすとしましょう』
『そう言ってくれると、信じていました。
 では、作戦の内容を、現段階でまとまったものですが、表示します』

 刹那の承認を以て、リンクスたちのお茶会の議題は細かな作戦内容へと移る。
 お茶会は、まだまだ続くのであった。

9:弥次郎:2022/12/23(金) 23:28:55 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

以上、wiki転載はご自由に。
というわけで、光州ハイヴ攻略作戦「オペレーション・ジュピター」の一連の流れをSSのシリーズとして投下していきます。

1.作戦までの国家間のアレコレ

2.実際の作戦

3.後始末

という三部構成になりそうですねぇ…
まあ、割りと戦闘は端折って、ところどころにロボットの出番を用意するという形になります。

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最終更新:2023年01月24日 10:09