200:弥次郎:2022/12/25(日) 21:34:36 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「女神を振り向かせて」3
- C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月後半 イギリス ダウニング街10番地 通称“ナンバー10”
アンソニー・ブレアにとって光州ハイヴ攻略作戦は他人事ではなかった。
いや、彼だけに限った話ではない。彼をはじめとした欧州各国の政府にとっても他人事ではなかったのだ。
G弾。五次元作用爆弾。その破格の力を持つそれがよもや本気で投入されることになりかけたのだから。
その作用についての検証は、欧州の頭脳を集めた結果、為されている。なされてしまったというべきか。
そうであるがゆえに、英国をはじめ欧州各国は国連の会議の場において公然と米国を批判し、日本帝国と地球連合に援護射撃をしたのだ。
(思い出すだけでも腹が立ってくるな……!)
午後のティータイムだというのに、思い出すだけで紅茶の味が悪くなる。
それほどに、国連での会議は胸糞悪いものであったのだ。
アメリカの醜いエゴが、同じ人間を人間とみなさずに振舞う姿が、自らが持つ力を絶対として我儘に振舞う姿が、我慢ならなかった。
そして、同時に思うのだ。アメリカは手段を選んでこない、と。
欧州を基点とする地図を見れば、その候補地に困ることがないのがわかる。
ロヴァニエミハイヴ、ミンスクハイヴ、ブダペストハイヴ。この三つが今最前線と接しているハイヴである。
リヨンハイヴを攻略し、欧州本土の奪還ができたことによる戦線の移動の結果だ。
故にこそ、欧州各国は全会一致で米国に半ば以上の見切りをつけたのだ。
国連からの脱退は何の考えもないブラフなどではなく、本気であった。
いざとなれば地球連合という国家連合に頼るという手が使えるからこその、強気の発言。
無論のこと、自分たちが苦労するというのはわかることである。それでも、戦後にアメリカの言いなりになるよりもマシという判断を下した。
利害という意味でもそうであるし、いざとなればBETA諸共滅ぼされるかもしれないという恐怖が選ばせたのだ。
もはや米国は現実を見ていない。自国の提唱しているAL5の実現にしか全く興味がないようにさえ見えた。
勿論、ブレアとて政治家だ、国家はその国益のためにあらゆる手段をとるものと理解している。
だから時に非情な判断を下すことだってあるし、昨日の味方が今日の敵になることだってある。
(とはいえ……)
恐らく戦後のアメリカのビジョンは、人類の生存圏たるアメリカ大陸とそれ以外の荒廃した大地という図式だ。
アメリカという国家はG弾でBETA共を駆逐し、ついでに自らの覇権に不都合な国を潰そうとしている。
戦時においてアメリカが果たした役割は、悔しいながらもG弾以外でもたくさんある。それだけで戦後の発言権は保証されている。
そして、G弾の集中投射を以てそれを決定的にするつもりだ。
BETAとの戦いで荒廃した大地とG弾の投射で復興は困難を極め、尚且つ、アメリカの支援抜きには成り立たないであろう。
これによって各国はアメリカに逆らうことができなくなり、パックス・アメリカーナを確固たるものとできる。
201:弥次郎:2022/12/25(日) 21:35:19 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
自分が同じ立場なら、とブレアは思考したことはある。
最大の利益を求めるなら、そうするだろうと結論を出していた。
(だが、それはあくまでも最大の利益を求めるなら、という注釈が付く)
カップを再び傾け、紅茶を飲みながら書類をめくるブレアの思考は止まらない。
確かにそれをやることは利益拡大につながる。利益どこか、覇権を文字通りの意味で握ることさえも。
しかし、アメリカは見過ごしているように思えるのだ。どうやっても、恨みを買うと。
何年か、何十年かかかって復興が終わった後に報復されることを考えていないのだろうか?
その時にアメリカは自らが恨まれていることを認識し、報復されないように対策しているだろうか?
それこそ、自らの国家が真に復興し自立できないと覚悟した国が、後先考えず戦争を吹っかける可能性だってあるのだ。
誰かが始めれば、それに続く国は絶対に出てくるであろうことは間違いない。それこそ、国が滅んでも復讐をしてくるだろう。
そうなれば、アメリカは永遠に争いを続ける羽目になる。終わりのない、ともすれば自らの内に招き入れた移民の反乱さえも起こる争いをだ。
「いや……まさかな」
その時、ふとAL5の移民船団のことが頭に浮かぶ。
もしもG弾の影響で、かつては地球で、今はこの惑星に居住できないできないほどの被害を与えてしまったら?
どうしようもないほどに米国の横暴が過ぎ、各国がそろってBETAとではなく米国と争う道を選んだら?
絶望的なまでの戦争になるだろうし、そうなれば米国本土とて無事で済むわけもない。
今後落着ユニットが降ってこないわけでもないだろうから、最悪米国がカナダの二の舞になることだってある。
そんな状況を打破するには、逃避というのがある。
10万人を安全なバーナード星系へと移住させることで人類を存続させるというプランが一応はAL5では提唱されている。
その事実を言い換えれば、10万人を追手のかからないところへ逃がすことにも使える、ということである。
アメリカの国家の意思決定にかかわる人間と、それを生かすための奴隷たちだけで逃げ出す。
少し考えが飛躍すぎだろうか?と自嘲するが、背筋が冷えるのを抑えることができない。
(調べさせるか……)
環境の激変で、非正規を含む諜報活動はだいぶ苦労するようになっている。
さりとて、ナイフとコートの世界で生き抜いてきた大英帝国を舐めてもらっては困るのだ。
その日も、ナンバー10の灯りは遅くまで灯り続けたのであった。
202:弥次郎:2022/12/25(日) 21:36:40 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
とりあえず、各勢力の動向で最後の欧州組でした。
メリケン?書くまでもないので…
幸せな合衆国民は幸せなままでしかありませんから。
ちょっと充電期間を置いて、いよいよ作戦のフェイズに移ります。
全部で6~10話くらいで完結させることができればなぁと思いますので、しばしお待ちを。
最終更新:2023年01月24日 10:11