91:弥次郎:2023/01/04(水) 17:14:10 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「鋼鉄の裁定 -あるいは天空神の見定め-」1
- C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月後半 14:00 朝鮮半島周辺南方海域 大洋連合海軍笠置型航空母艦「薬来」
現地時刻において14時を告げる鐘がなる。
それは、宣告の時。
人類を脅かす異星からの生命体に対し、人類が反抗するという意志を宣告し、実行に移す時だ。
今作戦において、作戦の進行を司る旗艦を務めることになる
「全軍に通達。現時刻を以て、『オペレーション・ジュピター』を発令する。
第一段階、作戦プランT-238に基づく、BETAの漸減と上陸地点の確保を開始せよ」
総旗艦の艦橋、そこにおいて指揮を執る柴島提督の合図を以て、全軍が行動を開始した。
光州ハイヴを3方向から包囲する軍勢が、朝鮮半島に展開するBETAを駆逐せんとする軍勢が、一斉に動き出したのだ。
それは統制のされた、一糸乱れぬ動き。まさしく火ぶたが切って落とされるような、一斉の動きであった。
『航空艦隊より、総旗艦へ。対地砲撃を開始する。先鋒の誉れを頂戴する』
「各艦、アンチレーザー爆雷投射開始せよ!」
「レーザーの発振位置の特定作業、順調です。各艦が別個に排除に乗り出しています」
「バイコーン級各艦、浮上完了。砲撃態勢に入りました。順次砲撃開始とのこと!」
「続けて潜水空母群、艦載機を発艦開始!」
『作戦領域内にアンチレーザーフィールドの展開を確認!帝国海軍に通達!』
『各艦、対地ミサイルおよび対地砲撃を開始せよ!』
「衛星軌道艦隊より報告、光州ハイヴの門よりBETA群の出現を確認!総数は小型個体含みでおよそ10万!さらに数は増大中!」
膨大な数の報告が、各部隊の動きが、それぞれのCPを経由し、総旗艦としてHQを務める「薬来」のCICに押し寄せてくる。
アンドロイドも含めたオペレーターたちは適宜それらの報告と情報を捌き、リアルタイム情報を戦術マップへと反映させていく。
艦橋に設置され、多くの将官やオペレーターたちの目にする情報は、着々と動いていた。
宇宙からの視点、あるいは海上からの視点、はたまた空中からの視点。それらを統合した情報により、予測されるBETAの動き。
それらを基にして、展開してい部隊はそれぞれが的確に処理を進めている。
現在のところ、作戦の第一段階である砲撃や艦艇からの攻撃による数の漸減は順調に進んでいる。
BETAも光線級を大量に送り出しているのか、レーザーが砲弾やミサイル目がけ照射されているのが見える。
だが、それらは効果をなさない。濃密に展開されているアンチレーザーフィールド、そして対レーザー処置の施された砲弾などで対策済みだからだ。
必死に撃ちまくっているのはわかるのだが、如何せん相手が悪すぎる。数をぶつけた程度で貫通できるやわな防御ではないのだ。
これは光線級による対艦攻撃も同様である。これまでの艦艇の上から臨界半透膜を施した結果、耐久性はかつての比ではなくなっている。
「さて、問題はここからBETAがどう動くか、だな」
一通りの指示を出し、状況がこちらの想定通りに進む中で、柴島提督は自身の席においてぽつりとつぶやく。
すでに作戦開始から1時間ほどが経過する。今の段階ではまだ準備段階、すなわち朝鮮半島沿岸に陣取るBETAの漸減を進めている最中だ。
順調にハイヴからBETAを引きずり出し、砲爆撃や艦載機による攻撃によって、順調に数を減らしている。
これらをもうしばらく続けたのちに、橋頭堡を確保して陸戦に持ち込むのが今後の予定だ。
しかし、BETAは何も馬鹿ではない、というのは地球連合軍が有している共通見解であった。
かつて航空機に対して光線級を繰り出したように、あるいは母艦級を投入してきたように、何らかの手を打ってくると考えられた。
想定されるパターンはいくつかある。
例えば、新種、水中や水上での活動が可能な新種を送り出す、とかである。
現在のところ、BETAに水上活動を可能としている個体は存在していない。
水中を行動できるポテンシャルを有している個体は多いが、あくまでもそれは進むことができるだけであり、戦闘などはまた別の話だ。
だが、先だっての大規模攻勢において、BETAは水中用あるいは水陸両用のMSにより甚大な被害を受けている。
一方的になぶり殺しに遭い、あるいは海を利用して接近されて背後や側面を突かれて包囲され、殲滅されるというのはよくあったことだ。
それをBETAがどのように情報として受け取り、どのように判断を下し、行動してくるであろうか?
92:弥次郎:2023/01/04(水) 17:14:56 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
β世界から得た情報では、BETAはこの手の対応策をおおよそ2週間程度という時間で考案し、送り出すという。
これは航空機による攻撃の開始から数えた日数、および実際の作戦において行われた実験で得られた貴重な戦訓だという。
そして現在、先だっての大規模攻勢から数えればおよそ2週間余りが経過しているのだが、特に対応の変化は見られていない。
まだその対応策として新種を送り出す準備中なのでは?という予測もたてられてはいるが、今のところは詳細不明だ。
(あるいは既存のBETAが通常では考えられない行動に出る、という可能性もある)
次いで考えられるのが、BETAの行動パターンの変化である。
これまで調べたところ、BETAは水中行動が可能なスペックを持つが、水中で積極的な戦闘は行っていない。
これはあくまでも陸上を歩行する個体のみが確認されているため、ということであるがやろうと思えば攻撃可能ではと考えられる。
海軍の艦艇は、得てして水面下からの攻撃に弱いものだ。念のために水中にも護衛機は展開しているのだが、それは杞憂に終わるのか。
「提督!」
そして、その杞憂はズバリ的中したようだった。
オペレーターの声とともに、モニター上に表示されている戦場の略図において大きな変化が起こった。
「水中を監視していた哨戒機より入電です!水中、いえ、海底から多数の振動を感知とのこと!
振動パターンに該当あり、母艦級BETAです!」」
「……やはりきたか、母艦級。各艦および展開中の各部隊に通達、敵がこちらの艦艇に対して対処行動に出てきた。
水中用MSおよびMTなどは行動を開始、醜悪なミミズを歓迎してやれ。
それと、艦艇群は対空及び対潜戦闘の準備を!上からも下からも来ると思え!」
「はっ!」
やはりきたか、と柴島は指示を飛ばした。
地中を掘り進める母艦級が海の水圧に耐えられないということはないだろう。
実際、その生体構造は非常に頑強であり、尚且つ柔軟性に優れてていることが判明していた。
その気になれば、地下を掘り進め、海中から顔をのぞかせて展開というのは十分考えられた。
「提督、日本帝国や大東亜連合軍、それに米海軍の方ですが……」
「ああ、そうだな。散々妨害してくれた米海軍など感情的には見捨ててもいいが、外聞にも関わるからな。
きちんと援護戦力を送ってやれ。現場の兵士に死なれては気分も良くないしな」
「は!」
そして、控えていた艦載機---旧式中心とはいえMS、さらにACなどが次々と発艦していく。
薬来だけではなく、機動兵器の輸送艦からも、あるいは無人MTの母艦からもまとまった数が投入されていくのだ。
何分、今回の作戦で現地勢力に死傷者があまりに出てしまうのは問題なのだ。こんなところで死んでもらっては困るのである。
それが例えG弾による攻略を提唱し、それを実現するためにあらゆる妨害工作を仕掛けてきた米国の兵士たちであっても、平等に。
まあ、逆に言えば気分と矜持の問題であって、そうでもなければ見捨てていたかもしれない、というのは半分くらいは事実なのだが。
ともあれ、と後ろめたい思考を追いやり、柴島は言葉を発する。
「いつまでも食われっぱなしだと思うなよ、BETA共」
そして、その言葉を実現するため、艦載機達は散って行く。
これらの行動に対処するための準備を重ねていた部隊は控えていたのだ。
今こそ、と彼らは飛び立つ。
93:弥次郎:2023/01/04(水) 17:15:36 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
- 朝鮮半島沖 日本帝国海軍 第三戦隊 大和型戦艦「信濃」艦橋
「地球連合軍に負けるな!帝国海軍の力を見せつけろ!」
戦艦群は対レーザーコーティングである臨界半透膜の処置を施され、その力をふるっていた。まさしく思うが儘に、である。
レーザーの照射位置を捉え、狙撃し返す能力を持たせるFCSと演算装置、そしてそれと連動した砲の制御システム。
それらが一体となり、砲撃が的確に重光線級や光線級の群れを屠っていく。いや、最早潰してくと言う方が正しい。
「多少のシステムの変更だけで、ここまで楽になるとはな……」
艦長を務める安倍智彦大佐は感嘆の息を漏らすしかない。
実際、レーザー級の射程圏内から実弾を次々と送り出し、命中を得ているのは驚異的なのだ。
本来は重金属雲を一定濃度まで展開させるための砲弾を撃ち込んで迎撃させ、その上で砲撃して、それでやっと命中弾を得るという手順を踏む。
その為に命中率など恐ろしいほどに低くなるのが常だ。相手に撃ち落されて効果を発揮できないなどざらにある。
それが、今となっては適当に撃つだけでもレーザーの迎撃を潜り抜け、着弾して効果を発揮できるのだ。
これは駆逐ペースの向上だけでなく、弾の節約にも大きく貢献しているのだ。
基本的に数に勝るBETAの処理に鉄量というのは必須。さりとて、戦艦に搭載できる砲弾とその弾薬には限りがあるのだ。
これまでのBETAとの戦いにおいても、結局その問題の解決ができずに、想定以上に弾薬を使いすぎて支援が足りないという状況に陥ったことが多い。
だが、今はどうだ?済州島攻略作戦を経た後でも、弾薬には非常に余裕がある。
何ならばこの後の上陸支援においても、弾を惜しむことなく送り込めるという試算まであるほどだ。
「ふふ、圧倒的だな」
さらには、レーザー級からの攻撃を恐れなくてよいということから、巡洋艦以下、本来は支援に適さない艦艇も遠慮なく攻撃に徹することができる。
スーパータンカーを利用したロケット砲艦なども、上陸支援の際には遠慮なくぶちまける仕事に注力できるというのだ。
海軍の大砲屋としては冥利に尽きる光景だ。これが佐渡の陥落時、あるいはそれ以前の侵攻時にあれば、と思うがそれは贅沢すぎる話。
今からどう思っても、どうしようもないことである。それでもなお、高揚は隠せないのだが。
だが、その高揚も長くは続かなかった。
「艦長!総旗艦より至急電です!」
その内容に、しばし瞠目した。
だが、同時に納得もした。大規模侵攻において確認された新種のBETA。
戦艦の主砲クラスの直撃にも耐えうる外皮と長大な体を持つ母艦級。それは、キャリヤーとしても、さらには足場ともなりうる存在だ。
「そう来るとはな……対空戦闘用意!出現する母艦級からBETA共が降ってくるぞ!」
「護衛艦艇群、対潜戦闘用意!」
「ソナーより連絡!水中に多数の反応!これは……やはり母艦級です……!」
まさか対空設備を使うことになるとは、と誰もが呻く。
水上艦艇には、CIWSやRAM、あるいは両用砲としてOTT62口径76㎜単装砲などが装備されている。
しかしてそれらはこれまでの艦艇の設計を踏襲したが故の装備であり、もっぱら対地戦闘が主任務の艦艇群では役に立ってこなかったのだ。
それが上空に、飛行する個体がいないにもかかわらず対BETA戦で使うことになろうとは。なんとも数奇な流れである。
94:弥次郎:2023/01/04(水) 17:16:25 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
ともあれ、である。
「今になって出番とは……対水上レーダー、用意は!?」
「問題なし!」
「うおっ……揺れた!?」
「水中より音源多数、接近中!これがBETAの進む音か……!来ます!」
艦橋およびCICでは指示が飛び交う。
そして、ふいに海面が大きく揺れ、それに揺さぶられる艦艇群の合間から、それは顔を出した。
「……出やがった!」
母艦級。
巨大なキャリヤーとなる、BETAを運ぶBETA。それが海底から垂直に伸び、大きく口を開けたのだ。
その中に何があるのか、言うまでもない。大量のBETAである。
「砲術長!この距離で砲撃は……」
「やれないことはありませんが、撃って吹き飛ばせば、張り付いているBETAが降ってきます!」
「くそ、対空戦闘開始!取り付かせるなよ!」
「取り舵!相手に飛翔能力はない!距離をとれば乗り移れないぞ!各艦に通達!」
そして、前時代的ともいえる弾幕による対空戦闘が開始された。
艦艇群の合間から顔を出した母艦級は、その内側からBETAを吐き出し、同時に外皮を小型個体に上らせることで、水上へと送り出す。
そこからは単純だ、跳躍を以て飛び上がり、あるいは落下することで艦艇の上へと降りようとするのだ。
「撃て!撃て!」
「舐めるなよ!」
出現した母艦級は多くはない。この第三戦隊の付近だけでも10いるかどうかというところ。
さりとて、その10匹もいれば、さらには海上数十メートルまで体を伸ばせば、飛び移るには最適だ。それがわかっているから、人類側も全力だ。
駆逐艦などは対空戦闘と並行して爆雷までも投射をし、さらに近距離でも撃てる主砲で何とかBETAの数を減らそうと必死になっていく。
しかして、BETAの数が多すぎた。対空戦闘に使える砲の数と質には限度というものが存在する。
それに対して、こちらに取り付こうとするBETAの数は確認できるだけも数百という数で押し寄せてくるのである。
そして、信濃でさえもその数の暴虐には耐えきれなかった。
「!?右舷後部甲板にBETA着弾!取り付かれました!」
「くそ、懐に飛び込まれたか!手隙の要員は……退避急がせろ!歩兵級でも闘士級でも脅威に変わらん!」
「しかし、それでは艦が食われます!内側から食い破られては、如何に堅牢な本艦でも沈みます!」
そう、艦艇は確かに陸上では考えられない巨砲を有する。
しかして、それが有効に使えるのは遠距離である。自らの至近の距離、それこそ船体そのものに張り付く相手など想定はしていない。
ついでに言えば、懐に乗り込んでくる相手への対処手段など限られている。そんな戦法など人類同士においては途絶えて久しいものだからだ。
それを知ってか知らずか、BETAは肉弾戦を仕掛けてきている。そうでなくとも、BETAはそのまま艦艇を破壊すると言う手も使えるのだ。
「艦長、陸戦隊を編成します。ないよりマシですが、時間稼ぎくらいは……」
「小銃や拳銃だけで勝てる相手ではないぞ、無駄死にになる!」
「次弾、来ます!」
そして、また戦車級と兵士級から構成された群れが着弾した。
早速破壊活動に移っているようであり、艦上にある設備や砲などが次々と被害を受けている。
やがては艦艇そのものを破壊しだし、それが致命傷となるのは時間の問題と言えた。
「鈴谷、大井にも着弾を確認!艦上構造物が攻撃を受けています!」
「まずいな……」
「艦長……!」
95:弥次郎:2023/01/04(水) 17:17:21 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
BETAが艦上をはい回り、破壊を行う音と振動はここまで聞こえてくる。
このままBETAを放置し、万が一にも艦橋に取り付かれようものならば、その艦艇の命運は断たれたようなものだ。
それに次に飛んでくるBETAが艦橋などを狙い撃ちにしてくる可能性もある。現在のところは防げているが、いつまでも防げるわけでもない。
どうするか、その判断を艦長たる安倍は求められた。作戦の遂行か、第三戦隊の保全か、それとも人命か。
「くそ、どれを選ぶか……!」
『当然、全部でしてよぉ!』
突如として、安倍の声に応える女性の声が外からとどろいた。
ドヒャァドヒャァという、独特の音が重なり、次の瞬間には一番近くにいた母艦級が悶え始めた。
「!?」
混乱しつつも目を凝らした先、そこには何かがいる。母艦級の周囲を飛び回りながら射撃を浴びせているようだ。
ものすごい速い動きで、それこそ目視が追い付かない速度で飛び回る存在が、戦闘をしているのだと何とかわかる。
それも、乱雑なようで、それでいて丁寧に体表に張り付いているBETAを打ち落としていく。
下から順に行われたそれがやがて口部にたどり着くと、ようやくその姿が目に移った。
滑らかな流線形により構築された人の形をしたモノ。戦術機とは異なり、より人らしく、それでいて武装を満載にした姿をしている。
太陽光に照らされる光の膜を纏い、悠然と浮かぶその姿は、一瞬で安倍の脳裏を焼いた。
恐ろしい、されど---見惚れるほどに、残酷なまでに、美しいと。
そして、背部から伸びた砲門が火を噴いた。それは、強力なレーザーであり、一瞬で母艦級を串刺しにしてしまった。
当然のことながら、母艦級は一撃で絶命した。内側から強力なレーザーで焼かれ貫通されたのだ、当然だった。
口の中にいたであろうBETAの群れも丸ごと焼き尽くされたとみるべきか。
悶えることもなく、その母艦級は海中へと没していく。まさしく瞬殺と呼ぶべき、効率的な殺害だった。
『日本帝国海軍第三戦隊旗艦の信濃とお見受けしますわ。
私、大洋連合軍に出向しております、新三菱のリンクス「刹那」と申します。ご無事でしょうか?』
そして、通信が入る。
一瞬で母艦級を屠った相手が、こちらにつなげてきたのだ。
「信濃艦長の安倍だ、救援に感謝する……」
『ようございました。BETAも決して愚かではないようで、このような策を弄してくるとは……』
まあ、所詮は小手先にすぎませんわ、と鼻を鳴らす彼女に、安倍としては苦笑するしかない。
それよりも、と重要なことがある。
「厚かましいようだが頼みたいことがある。
本艦をはじめ、BETAが母艦級から飛び移られている艦艇が多数ある、救援をお願いしたい」
『承りましてよ。ただ、私ではない他の部隊がやることになりますわね。
何しろ私の乗るネクスト……少々加減が効かないので』
「……そうだな」
母艦級を一撃で殺傷したレーザー兵器などを見るに、そういう装備で満たされているのだろう。
あのレーザーは海水と接触してすさまじい蒸気を発生させていた。それこそ尋常ではない音と蒸気が発生した。
つまり、それだけの熱量を有する強力なレーザーということになる。あれがBETAに向けられる武器で本当に良かったと、そう思うのだ。
96:弥次郎:2023/01/04(水) 17:18:37 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
しかし、未だに問題は残る。
第三戦隊の艦艇にはBETAが現在進行形で取り付きつつあるのだ。
『とりあえず……』
再び、ガンドライドの姿が音を置き去りに消え、再び現れた。
ほんの数秒も過ぎていないその間に、艦橋から見て後方でいくつか音が連続した。
『このようにしましたが、いかがでしょう?』
ガンドライドの手が掴んでいるのは、寸断されたBETAの断片だった。
思わず副官の一人に目で問いかけると、彼は艦内通信で問いかけ、そして返答した。
「砲塔に張り付いていた戦車型と要撃型がまとめて数匹消えたと……おそらく……」
「彼女か」
彼女が、あの空中に浮かぶ機体の中にいる女性がやった、ということか。
砲塔を食い破られると、戦艦の本分たる砲撃能力の大幅な低下につながりかねなかったのだ。
そのつぶやきを外部集音マイクで拾った刹那は肯定を示した。
『内部までは入れませんので、外にいる目立つ者を排除させていただきましたわ。
では他のミミズの処理に向かうので、私はこれにて』
「ああ。こんなことを言われるまでもないだろうが、ご武運を」
『ええ。それでは……参りますわよぉ!』
そして、瞬時に刹那の乗るガンドライドの姿は掻き消えた。
QB特有の音を連発させ、文字通り嵐のように次の標的にとびかかっていくのだ。
雄叫びを挙げていく姿は、少々乙女らしくないとは思うが---ちょっと背筋がヒヤッとしたので考えるのはここまでとしよう。
「艦長、後方より地球連合軍のヘリ群が接近中です。
本艦をはじめとした艦艇に制圧用の歩兵を送り込みたいとのことです」
「許可を出す。BETAの排除は彼らに任せよう。
こちらは一時自衛に注力する。連合の歩兵たちには伝えてくれ、多少手荒にやって構わんとな」
「はっ!」
戦闘の興奮の中にあって、戦隊を預かる安倍の頭は、確かに冷静さを保っているのであった。
「通信をつなげ……こちら第三戦隊旗艦信濃艦長安倍である。
現在、BETAの攻撃を受けている戦隊各艦に通達する。
地球連合がBETAに対処するための戦力をヘリでこちらに派遣してきている。
彼らが各艦に取り付き、侵入しているBETAの排除を担当するとのことだ」
一息を入れ、言葉をさらに続ける。
「まだ作戦は始まったばかりだ。無駄死にするな。
各員、生存を優先せよ。我らの使命と務めを忘れるな」
そうだ、作戦はまだ開始したばかり。
こんな序盤で死ぬなど阿保らしいにもほどがあるのだ。
光州の悲劇。そしてそこから生じた屈辱。帝国軍においてはよく知られた話であった。
そんな光州にハイヴができたのは、何の因果か、それとも宿命なのか。
「先は長い。急くな、慌てるな、油断するな。
そして、最後に勝ち取るのだ、勝利を」
それは紛れもない、安倍の意志だった。この戦いは、必ず勝つ、いや勝ったという結果のみを得るのだと。
97:弥次郎:2023/01/04(水) 17:21:48 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
割りと戦闘を書けたかなって…
もっと派手にしたいですけどね
最終更新:2023年08月28日 22:11