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憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「鋼鉄の裁定 -あるいは天空神の見定め-」1.5
- C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月後半 地球連合 リンクス専用ネットワーク
「後進教育といえば、聞こえはよろしいと思っていませんの?」
『否定はしない。だが、だれしも通る道です』
刹那の端末に表示されているのは、訓練を終え、ある程度の実戦を経た新人リンクスのデータだ。
自分より二つ世代の新しい、第五世代のリンクス。丁度アマツミカボシと同世代ということになる。
そして、彼はGAの期待の新鋭という触れ込みだ。
「リンクス登録名を『エイト・ホーネット』……実は日系人では?」
問いかけた先、流星は頷いた。
『その通りです。
GAの地元である大西洋連邦に国籍を持ちますが、祖先をさかのぼると日系人とユーラシア連邦の旧ドイツ系にぶつかる家系です。
そして本人もルーツにつながる教育を受けているとのことですね』
何しろ、名前からしても最低でも3つの言語に通じていることになる。
ドイツ語、日本語、英語だ。それらを全部混ぜ、日本語ベースにして洒落として完成させている。
八(エイト)と蜂(ホーネット)で、ハチハチ、ドイツ語化すればアハトアハト(8.8センチ高射砲の俗称)ということである。
そういうセンスか、あるいは教育なのか。どちらにしても、よくも考えたことである。
「日企連に引き入れてもいいくらいでは…?」
『同じことをローゼンタールも考えていましたよ』
欧州企業の雄たるローゼンタールが同じことを考えた、それはどういう意味か?
それは簡単だ、引き抜きたがったということ。
言うまでもないことだが、企業は優秀な人材を常に求めている。国軍とも奪い合いになるし、何なら企業間でも奪い合いになる。
落ち着いて人材のトレードや移籍なども行われていたりするが、結局のところ優れた人材を一人でも多く集めたいという欲求があるゆえだ。
企業とて、国家同様に従業員であるとか社員だとか、あるいは企業の資産を守らなくてはならない。
その為にこそ、国軍の庇護下にありながらも独自に軍備を揃え、時には国軍や地球連合軍へも協力しているのだ。
その過程においては、リンクスの出自、出身、適性なども判断材料となりうる。
旧ドイツの流れをくむローゼンタールが、大企業の一角であるその企業が欲し、それを言いだせるということは意味がある。
「かなり優秀……あるいは有望株ということなのですか?」
『あくまでも養成課程と、これまでの実戦においては、ですが。
元々はGA系のリンクスとして教育を受けていましたが、本人の適正と最近の戦力の傾向に合わせ、移籍門検討されているのです』
そして、と流星は人材の綱引きの結果を告げた。
『それぞれの企業のネクストや装備を用いて実戦に送り込み、テストを行うという方向で落ち着きました。
まあ、表向きには人材交流となっていますがね』
「なんとまあ、醜い争いです事……」
『刹那さんだって他企業から引き抜きが来ていたんですよ?』
「え゛?」
思わず漏れてはいけない声が漏れた。それにあわあわする姿を彼女の名誉のためにも見なかったことにして、流星は続ける。
200:弥次郎:2023/01/04(水) 22:19:06 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
『刹那さんの実家の家系はいわゆる日系です。割と純度の高い珍しい家系ですね。
ですが、母方の方には欧州の、旧イギリスや旧イタリア、あとは北欧はスカンジナビアの血が混じっているとのことです。
家出をしなくて、本当に良かったですね……スカンジナビアにドナドナされていたかもしれません』
「下手をしていたら私はあの度し難い丸い球体に汚染されていたと……!?」
そこにショックを受けるのか、と流星は一瞬苦笑したが、オペ子(スミカ)の言葉を思い出し真顔になった。
あんなものを浮かべて喜ぶ変態だった。何ならばあんなものが変態機動で編隊で飛んでくるくらいは普通だ。
あの企業は、特にアクアビットとかトーラスは本当にやばい。国家を挙げて汚染されつくしている、あの丸い球体に。
それこそネクストに小型化した奴をねじ込んで完成させるような奴らなのだし。
(それならショックだよなぁ……)
結局のところ、日企連の中でも大きな企業である新三菱に近しいという理由から、移籍などは撥ねられたのである。
まあ、本人が窮屈な生活を嫌って出奔を図っていたというのも事実であり、あと数歩間違えば元気にあの球体を信仰していたかもしれない。
それはそれで面白かったかもしれないけれど、と流星は考えたりする。
閑話休題。
『話を戻します。
今回のオペレーション・ジュピター、帳作戦では大洋連合に出向した企業連の傭兵という形で参加してもらいます。
リンクスとしてのお目付け役は刹那さんにお願いしますね』
「ペアで動くのは苦手でしてよ?」
『半分はお題目みたいなものです。同じリンクスとして後見を務める程度ですから。
重要なのはホーネットがBETAという弱い相手に対して慢心や油断などを見せず、そして自己研鑽をやめないかどうかです』
「敢えて弱い相手にぶつけ、その反応を見ると?」
『ええ。今のところは優秀という評価。さりとて、適性と能力で慢心する程度ならば切って捨てる。そういうことです』
なるほど、と刹那は納得を作った。
新人リンクスが、新人という枠を超えられるかどうかの、一つのテストということ。
複数の企業が目を付けるほどに優秀だというのは本当だという裏打ちが必要とされていること。
次の戦い、次の次の戦いを見越し、準備は怠っていないということだ。これは非常に良い傾向ですらある。
「承りましてよ。作戦までに実際にお会いできますの?」
『もちろん。リンクス同士、語り合うには言葉だけでは足りないでしょうから、時間もたっぷりと確保済みです』
転送されてきたスケジュールデータを確認すれば、合同での訓練や教導への参加が計画されているのがわかる。
そういった方面からもアプローチをしてみろ、ということか。楽しみだ。また未知なる強敵と戦える。
『細かいことも一緒にデータとして送っています。作戦決行日まで、そして当日もよろしくお願いしますよ』
「ええ、お任せくださいませ」
戦士としての表情を浮かべる刹那に、満足げに頷いた流星は通信を切る。
それからほどなく、GA出身のリンクス「エイト・ホーネット」は刹那との顔合わせなどを行い、帳作戦へと挑むこととなったのである。
201:弥次郎:2023/01/04(水) 22:19:39 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
次の話で出すリンクスについての挿話を。
エや下
最終更新:2023年08月28日 22:12