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憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「鋼鉄の裁定 -あるいは天空神の見定め-」2



  • C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月後半 15:17 朝鮮半島周辺東部海域 合衆国海軍 ニミッツ級戦術機母艦 セオドア・ルーズベルト


 セオドア・ルーズベルトは突如として沸いてきたBETAへの対処で大わらわであった。
 水中から柱のように突き出た母艦級から降ってくるBETA、さらには海中からミサイルのように打ち上がってきて、さらに突撃してくる突撃級。
海中・水上・空中と全方位に対処すべき相手がいて、処理能力が飽和しつつあったのだ。

「面舵!一か所にとどまるな!母艦級を避けろ!」
『こちらオロール3!エレベーターはまだか!早く甲板に上がらないと艦がやばい!』

 あちらこちらで人が動き、指示を飛ばす声がとどろき、戦闘の音が飽和する。

『くそ、弾が……!甲板に来る奴!予備弾倉も多めに持ってきてくれ!』
『落ちろ落ちろ落ちろ!』
「ああっ!?マッキャンベルが沈む!」
「救命ボートは展開しているか!?」
「それが、突撃級に……くそったれめ!近づかせるな!」
「撃ちまくれぇ!」

 BETAのとってきた新戦術。それに襲われていたのは帝国海軍だけでなく、作戦に参加していた米海軍艦隊も同様であった。
特に他の艦艇を超えるサイズの戦術機母艦は、大型であること、さらに電子機器を大量に搭載していることからBETAのヘイトを買っていたのだ。
 無論のこと、それを察したセオドア・ルーズベルトは黙っていたわけではない。回避運動を行いつつ、接近してくるBETAへの対処を開始していた。
戦術機母艦としての常か、搭載火器が他の艦艇に劣ることから、艦載機である戦術機を甲板上に展開させて自衛を図っていた。
 さらには周囲を囲んでいる巡洋艦や駆逐艦と共に陣形を組むことにより、効率的に迎撃を行おうとしていた。

 しかし、それらの攻撃はうまく効果を発揮しきれていなかった。
 まず、多方面に敵が展開して包囲されているに近いため、一つの方向に対して指向できる火力に限りがあったこと。
 さらに、押し寄せるBETAに対してSAMやRAM、あるいは艦載砲で迎撃しているがそれらの数が足りないこと。
 とどめに未知の状況に対して誰もが混乱と困惑しており、判断力が落ち、思わぬミスなどをしてしまっていたことだ。

 その危機的状況がわからないほど、セオドア・ルーズベルトの艦長であるニール・ジャクソン少将は間抜けではなかった。
むしろ、良く把握し、各所に指示を飛ばしていたのだった。母艦級が出現した時点で彼は艦載機を甲板上に上げることを指示していた。
さらに、共有されていた情報から、母艦級の口部内からBETAが湧いてくることを知っており、尚且つそこに攻撃をすることが望ましいと知っていた。
これにより、戦術機の火器による防空支援が加わったことにより、上空から降ってくるBETAへの対処を順調に行えていたのだ。

「Dam it! 突撃級が硬すぎる!おまけに数も多い!これ以上湧かれると危険だ!」

 ニールの叫びは事実だった。
 水中から攻撃を仕掛けてくる突撃級への対処がうまくいかずにいた。
 ソナーの情報を頼りに浮上してくる突撃級の位置を把握し、それから逃れるように艦を動かすのは比較的楽であった。
海中をBETAが動き回っていることで精度は落ちているものの、ソナーで位置さえ特定できれば回避はできる。
マッキャンベルのように運悪く回避した先に突撃級が浮上してきて直撃をもらったり、あるいは潜水艦が犠牲になることもあるが、まだ落伍艦は少ない。
 問題なのは、その後は浮上して海上に出た突撃級を排除しなくてはならないことだ。
 陸上での速度ほどでないにしても、およそ30ノット(時速45㎞)で突っ込んでくるのは脅威でしかない。
発艦させた戦術機が後方に回り込み、火器を叩き込むことで駆除はできるのだが、もしもぶつかればただでは済まない。
突撃級は、まさしく海上を走る巨大な衝角なのだ。しかも数が多く、海面ギリギリどころではない低さを維持してくる。

332:弥次郎:2023/01/06(金) 00:42:36 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

 無論のこと、戦術機達もそんなことを許すわけもない。
 艦載砲による攻撃を受けないようにしつつ、海面ギリギリを飛行し、的確に攻撃を叩き込んでいくのだ。
 とはいえ、前述のように数が多く、速度も速いこともあり、一瞬のミスが艦艇への大打撃につながりかねないのだ。

『まずい、抜けられる!」
『くそ、総員、対ショック防御ーッ!』

 そして、ついに外延部で弾幕を張っていたアーレイバーク級の一隻が突撃級を横っ腹に複数食らった。
 艦の装甲によりある程度は拮抗したものの、やはり運動エネルギーの力は絶大で、そのまま破壊が発生した。

『こちらバルクリー!側面にまとまって食らった!傾斜復元は不可能だ!これより可能な限り脱出する!』
「了解!」

 悲鳴のようなバルクリーからの通信に応答したニールは、救命ボートの用意をバルクリーの近くの艦艇に命じる。
 だが、救助活動は命がけだ。前述のように空中からも、海中からも、水上からもBETAが攻めてきている。
 特に水上を突撃してくる突撃級にぶつかろうものならば簡単に粉砕されてしまうのは目に見えている。
例え回避ができたとしても、発生している波は尋常ではない。その波でひっくり返ってしまうこと考えられた。

(どうする……!)

 やるべきは簡単だ。救援を求めればいい。実際、東部方面旗艦への救援要請はすでに出してあった。
 けれども、この作戦に参加するにあたって自分たちが如何に歓迎されていないかはわかっている。
 別な惑星に転移してくるという不可解な現象が起きてからというもの、祖国アメリカは地球連合との間で軋轢を生んでいた。
それだけでなく、かつては共に戦っていたはずの国々との間でも関係がこじれ始めていたのだった。
何も流言飛語によるものではなく、BETAの大規模侵攻において他国を見捨てた、という事実に始まっているのだから厄介だ。
ニール自身、その命令を受けた身であるからこそ、どれだけ他国から白い目を向けられているかを理解できた。
 だからこそ、救援が後回しにされる可能性を考えたのだ。
 噴飯ものではあるが、祖国アメリカはそれをされてもおかしくないようなことを他国にやっていたのだ。
 故に、この空母機動艦隊を管轄する役目も負うニールは、救援が来ないことも想定して指示を出さねばならないのだ。

 しかし、取れる手段がない、というのも事実だ。
 艦載機を可能な限り発艦させ、突撃級の排除を行わせ、あるいはこのセオドア・ルーズベルトの防空に回している。
これによって被害を抑えながら、何とか拮抗状態を維持できているのはニールの手腕と言える。
 だが、これはあくまでも拮抗状態であり、状況の根本的な打破にはつながっていない。
 BETAが無尽蔵に数を繰り出してくるとしても、こちらの戦力は有限であり、時間が経てば櫛の歯が欠けるように脱落していくのは目に見えている。
 さりとて、何らかのアクションを起こそうにも、保有する戦力に一切の余裕がないことも確か。

「……東部方面旗艦からの返答は!?」
「先ほど返答が!こちらに追加増援を派遣したとのことです!」
「……ありがたいことだな」

 ほっとするが、果たしていつ到着するか。
 朝鮮半島を包囲するようにして展開している関係上、艦隊同士はそれなりの距離離れている状態だ。
 そして、その東部方面艦隊旗艦の方にも同じくBETAが出現し、その対処に終われているとのこと。
そうなれば、どうなるかは明白。救援の戦力が到着するまでに時間がかかるということであり、その間に致命傷を受ける可能性があるということだ。

(しかし、追加で派遣……?もうすでに増援は来ているということか?)

333:弥次郎:2023/01/06(金) 00:44:03 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

 それは事実であった。
 ニールらが持ちこたえられているのは、実のところ地球連合軍が督戦も兼ねて張り付けていた戦力によるところが大きい。
具体的なことを言えば、潜水空母が控えており、そこから発艦したMSや水中用MTによりBETAの漸減が行われていたのだ。
突撃級による対艦ミサイルモドキを水中で処理したり、あるいは水中のBETAを処理したりと、地味に大きい戦果を挙げている。
彼らがいなかったら、米艦隊はもっとあっけなくBETAの暴虐によって全滅の憂き目にあっただろう。その程度に彼らは活躍していた。

 彼らの解き放ったMS---比較的旧式であるゴッグやズゴックなどは着実に水中のBETAの排除を行っていた。
 水中用ビーム兵器による射撃、あるいは格闘攻撃、はたまたテスラドライブ搭載により可能となったブレイクフィールドによる吶喊などで次々と蹴散らしていたのだ。
それでもなお劣勢にされるほど数が押し寄せてきているというのは、ニールら米艦隊に理由があるのだが、それは置いておくとしよう。

 表に出ていないのは、偏にアメリカが自国の戦力に監視を付けることを嫌ったというのが大きい。
G弾の持ち込みがないかのチェックは終わっているのだから、いつまでも監視されては行動が制限される、と屁理屈をこねた。
その結果が、決して応答しない静かな督戦の潜水艦隊であった。監視していたということが露呈しては困るため、今も静かに戦い続けているのである。
 そして、ニールが望んだ真の増援は、音速を遥かに超え、飛んできていた。

『こちら、エイト・ホーネット。米艦隊を補足。これより救援に入る』

 圧縮されたコジマ粒子を後方に噴射するOBで急速に接近するそれ。
 GA系列のネクストらしからぬ、ややスマートで機動性を重視したと思われる設計が窺えるパーツ。
 そして、その中量二脚のネクストはGAらしい重火器に身を固め、戦闘態勢に入っていた。
 海上で目立つ、黒を主軸に黄色をサブに添えたカラーリングのそのネクストは、OBを解除しないままに、戦闘エリアに突っ込んだ。

『いくぞ……!』

 その言葉とともに、ホーネットの操るネクスト『ブラック・キャバルリィ』はその名の如く、その力を振るい始めたのだった。

『ターゲット補足……結構いるな』

 まず真っ先に狙うのは母艦級だ、とホーネットは自らに指示を出す。
 数が多いことと、米艦隊に母艦級を撃破するだけの火力や兵装がないこともあり、未だに包囲されている状態だった。
 無論水中用MS達が水中から攻撃を加えて黙らせているのであるが、それでも包囲されて危険であることに変わりはない。

『……』

 無言で肩部にある武装ハンガーから、最早鈍器に近い大型ランスを引き抜く。
 レーザーによる切断力の強化に加え、それ自体が頑強な素材で作られていて、尚且つテスラドライブ内蔵の一品。
生憎と格闘兵装以外の機能は盛り込まれてはいないのであるが、それだけシンプルかつ信頼のおける武装となっている。
 そして、速度のままに母艦級に突っ込んでいく。
 槍の切っ先には、T・ドットアレイによるフィールドを形成し、機体全体が一つの刃として猛烈に距離を貪っていき---

『吶喊!』

 OBによる速力を、ネクスト本体と武装に搭載されたテスラドライブにより強化した、まさしく必殺のチャージ。

『……!』

 一瞬だ。母艦級と真正面から、すなわち口部から一直線に飛び込んだブラック・キャバルリィは、一瞬で貫通した。
その威力は、頑強なはずの母艦級の身体をバナナの皮をむくようにして切り裂き、突き抜けていった。
勢いあまって海中に飛び込んでしまったのだが、すぐさま海上へと浮上してくる。

334:弥次郎:2023/01/06(金) 00:45:01 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

『まずは一体……!』

 突撃を喰らった母艦級は、絶命したのかそのまま海中へと没していく。
 それだけでなく、突撃の余波によって切り裂かれた部分から海水がなだれ込んだことで、自重を支えきれなくなって、大樹が倒れるかのようであった。
 それを後方のカメラでとらえつつ、ブラック・キャバルリィは次の母艦級へと突撃していく。
 海面ギリギリのところを飛行し、一閃。今度は胴体に大穴が空いてしまい、同じく母艦級は崩れ落ちた。
 さらに一閃し、続けざまに2体の母艦級を海中へと沈めることに成功した。

(これで包囲の一角は崩した……あとは艦隊の真ん中か)

 これまで吹かしっぱなしだったOBを解除。そのままQTで方向転換し、QBの連発で次の標的を目指す。
 淀みのない動作でターゲティングするのは、陣形を組んでいる艦隊の中に生えている母艦級だ。
 迂闊に倒すと、そのまま艦艇の上に倒れ込むので、ちょっとした手加減が必要だ。
 大型ランスをハンガーに預け、構えるのは大型ガトリングガン。ビームと実弾の両方を発射するタイプの2連装型だ。
GAらしさに新技術を盛り込んだこれと左手のライフルを構え、飛び込んでいく。

『いけ……!』

 放たれた弾丸は、次々と母艦級を上るBETAごと母艦級をハチの巣にしていく。
 ネクストの速度で母艦級の周囲を飛び回りながらの、まさしく駆逐。逃げ出す余裕もなくBETAの排除を進めて、口部へと到達する。
そこからは現在進行形でBETAの群れが吐き出されていて、醜悪な外見のそれが顔をのぞかせている。
 だが、あまりにも間抜けで、遅すぎた。早すぎるネクストの中から見れば、もうスローモーションのように見える。
無言のままにガトリングガンとライフルで銃弾を叩き込み、あふれ出るそれを内側へと追い落とす。
完全に上部をとったポジションからの集中砲火で、内部のBETAは大方駆除されてしまう。

『とどめ』

 そして、立ち上がるのは背部のグレネードランチャーだ。
 信管設定を時限式に設定し、照準を母艦級の内部へ。
 遅滞なく、3連射。発射されたのはAFなども想定した強力な炸裂弾。重力と炸薬による加速を以て、母艦級の内部を突き進み---炸裂した。

「うぉぉ!?」

 そして、その炸裂を、比較的近距離にいたセオドア・ルーズベルトの艦橋のニールは間近で目撃した。
 こちらの攻撃を全くと言っていいほど受け付けなかった強大なBETAが散々撃たれ、爆発する様を見せつけられたのだ。

「一体、なにが……」

 救援が来たのか。
 見上げた先、そこには戦術機とは違う、人の形を模した機械の巨人が浮かんでいた。
 単眼の、赤い光を称えた瞳でこちらを見下ろすそれは、まさに神話の存在かのようであった。
 戦術機とは明らかに違う、まさにふわりと雲のように。
 武骨な兵器であるはずなのに、優雅ささえも感じる浮遊を続けて、光の膜につつまれている姿は、最早この世のモノとは思えなくて---

『こちら、グローバル・アーマメンツ所属のリンクス「エイト・ホーネット」。
 そちらの艦隊の救援の命を受けて駆け付けた。待たせてしまったようだが、無事だろうか?』

 外部スピーカーから随分と若い男性の声が聞こえてきても、ニールは、そしてセオドア・ルーズベルトの艦橋要員は、幻想的なそれに捕らわれたままであった。

335:弥次郎:2023/01/06(金) 00:46:26 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
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最終更新:2023年08月28日 22:14