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憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「鋼鉄の裁定 -あるいは天空神の見定め-」4.5



  • C.E.世界 融合惑星 β世界衛星軌道上 β世界主観1999年9月後半 15:12



 それは融合惑星の公転および自転運動に同期し、一定の宙域にとどまり続けていた。
 全長は1600m以上、全幅はおよそ500m、総重量は16550000tという巨体。
 それこそ、新マクロス級25番艦超大型可変万能ステルス宇宙攻撃空母「バトル・フロンティア」であった。
融合惑星に融合した惑星の内の一つに入植していたフロンティア船団の誇る巨大な超時空要塞の末裔。

 その艦艇の威容は目を凝らせば地上からでも目撃できただろう。
 そして、至近距離ではなおのこと圧倒されることは間違いない。
 展開しているβ世界においてはAL5の移民船を超えるスケールであり、単純な戦闘能力としても惑星表面を軽く焼き尽くせるものがある。
 さらに、バトル・フロンティアは何も単独でフラフラ浮遊しているのではない。当然のように随伴艦を多数引き連れていた。
グァンタナモ級宇宙空母、ウラガ級護衛宇宙空母、ノーザンプトン級ステルスフリゲート、その他巡洋艦なども含まれている。
フロンティア本国が惑星上にあるということ、そしてギャラクシー船団の保有していたバトル・ギャラクシーを鹵獲したこともあっての大盤振る舞いだ。

 彼らの役割は1つ。すなわち、β世界上において行われているハイヴ攻略作戦における、保険であった。
 即ち、規定時間までに攻略が進まなかった場合において、その艦載機やバトル・フロンティアによる対地攻撃で強引に解決する保険。
これによってG弾という次元兵器の乱用を阻止し、惑星だけでなく、宇宙の安全を確保する役目を担うのだ。
ただ、こちらは最終手段であって、現在のところ順調に進む作戦「オペレーション・ジュピター」においてはまだお呼びはかかっていない。
 よって、現在行っているのは、役割のもう一つ---不測の事態を阻止するための衛星軌道上の封鎖にあったのである。
具体的なことを言ってしまえば、アメリカ合衆国の戦力あるいは輸送機などが作戦エリアに突入することを阻止するのである。

 作戦発令前の時点から網を張って待ち構えていたフロンティア船団のバトル・フロンティア艦隊は、これまでに何度となく無粋な客人を阻止してきた。
補給コンテナであるとか、再突入型駆逐艦であるとか、はたまた戦術機カーゴの名目でアメリカから飛び立ってきたのである。
 しかし、国連軍の名前を出そうが何をしようが、作戦中にエリアへの進入はないし、それの撃沈ないし拿捕は許可されていた。
アメリカはハイヴ攻略の支援のためと何度か抗議をしてきたのであるが、国連の場において決まったことを破っておいて支援も何もあるまい。
当然、バトル・フロンティア艦隊の艦載機による拿捕、もしくは撃沈などが行われて随時処理が行われている。
 標的となっていたのは光州周辺、弾道軌道予測からすれば周辺に展開している艦隊にまでおよんでいた。
何をどう見ても輸送にかこつけた爆撃といってもいいかもしれない。むしろその可能性は高く、内部の調査でもそうだと証明されていた。
 つまり、質量弾として叩きこみ、ついでに爆薬によって妨害しようという魂胆であったのだ。

 そんなわけで、時折艦載機が飛んで行ったり、拿捕した輸送艦などを引っ張って戻ってきたりする艦載機を見ながらも、艦橋においては適度な緊張感が保たれていた。
ここでうっかり逃してしまい、現地での迎撃の範囲外に着弾すればそれだけで被害が発生することは間違いない。
宇宙から地上を攻撃するというのは、軽率に被害を出してしまうものであるからだ。
 それに、万が一にもG元素の反応のある---すなわちG弾の可能性のあるモノを取り逃がせば、何が起こるか分かったものではないのだ。

「艦長、オリオン小隊より報告です。
 確認された再突入型駆逐艦4隻、いずれもG元素反応なし、応答なし、生体反応なしのため現場の判断に手撃墜したと」
「うむ。何か影響は?」
「次元兵器の作用の痕跡はなし。破壊に伴い爆発が発生しデブリが発生しましたが、大気圏に突入。消失を確認したとのことです」

746:弥次郎:2023/01/09(月) 20:24:16 HOST:softbank060146109143.bbtec.net


 そうか、と何度目かのため息をジャン・リュック・タルコフスキー准将はついた。
 そして、遅滞なく周辺索敵もし、帰投するように指示を出した。
 この融合惑星β世界の軌道上に居座ってからというもの、中々に油断ならない時間が続いている。

(まったく、どういうものかわかってもいない次元兵器の投入を積極的に推進するとは……)

 何度目かの悪態を胸中で吐き出す。
 マクロス世界の出身者として、艦長であるタルコフスキーは次元兵器がどういうものであるかをよく理解している。
どういう作用があり、どういう影響があり、その後にどんなことが起こってしまうかまでも、学んでいるのだ。
軍人だからというのもあるが、過去に起こった事件などから得られた教訓からもはや常識化しているところもある。
そうであるがゆえに、フロンティア船団はオブザーバーであるにしても、G弾の使用に強烈に反対したのだ。

 それを受けても現地の国家---何の因果か、アメリカ合衆国---は影響はないと自信ありげに証言し、フロンティア政府の外交官を絶句させた。
その根拠となったのは国内において行われたG弾の使用実験の結果であったのだが、フロンティア政府からすれば情報が足りていないどころではなかった。
 そして、ようやっと理解したのである。

『こいつら、自分たちが時空間に影響を及ぼす兵器を作ってしまったことを全く理解していない!』

 かつて、人類が核兵器というものを作り出したときと似たようなものだ、と地球連合と共に納得した。
 彼らからすれば、威力の大きな、ちょっと不思議な効果があるだけの爆弾にすぎないのだと。
 核兵器だって、その影響力がどういうものであるか判明するまで時間を要したが、それを差し引きしてもまずいのではないかと。
無知とはある意味無敵の存在なのだと、その時改めて思い知ったのである。
 最も、この事実に関してはフロンティア船団の一般市民には明かされていない。明かしてしまえば、否が応でもβ世界アメリカを焼かねばならない。
フロンティア船団の人々は、主観的にはほんの少し前に大きな危機を乗り越えたばかりであるのだ。
そんな状況においてこんな劇物たる情報を放り込めば、もうはや暴動で収まるレベルではないだろう。

「はぁ……」

 思わず心労のため息が出る。
 何が悲しくて、BETAというコミュニケーションの成立しない外敵より、同じ人間相手に精神をすり減らさなくてはならないのか。
その思いは、艦長のタルコフスキーだけではなく、この作戦に参加しているすべての人間に共通していた。
そりゃあ、自分たちの先祖だって統合政府と反統合政府で真っ二つに割れていたこともあるが、それでも幾多の困難には時には種族を超えて協力した。
 その何分の一でもいいから、協調というものを理解して実行に移してほしいものだと、切に願った。

 そして、再び哨戒艦から、衛星軌道に飛んでくる物体を補足したとの連絡が入る。
 性懲りもなく、また攻撃を行おうというのか。送り出すのだって血税を使っているであろうに、送り出している側は何を考えているのだろうか。
まあ、大方情報統制をされているのだろうとは思うが、同情する。自分達だってそれを喰らったことが直近であるのだし。

「該当宙域担当の空母から艦載機を出せ……ん?」

 指示を出した直後、続けて報告が上がる。
 なんと反応の数がどんどん増えていくのだ。これまでさんざん打ち上げられてきたのを抑えてきたのに、まだおかわりがあるようだ。
 もはやため息すらおっくうになり、指示だけだして、艦長席に身を沈める。早くこの無味乾燥な作戦が終わってほしいと、そう願いながら。

747:弥次郎:2023/01/09(月) 20:25:13 HOST:softbank060146109143.bbtec.net

以上、wiki転載はご自由に。
アメリカの現場の兵士さんたち作業員さんたちはハイヴ攻略だ!と頑張っています
なお、打ち上げの中身やその軌道がどういうふうになるか、そもそも支援が必要でないことすら教えられていない模様。

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最終更新:2023年01月24日 10:41