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憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「鋼鉄の裁定 -あるいは天空神の見定め-」5
- C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月後半 17:34 朝鮮半島 光州ハイヴ 北部
シロガネⅡから発艦したAL4の部隊は、同じく航空艦艇から発艦した戦術機部隊、そして輸送機に詰め込まれた通常戦力と共に陣地を形成し、備えていた。
朝鮮半島北部に存在する鉄原ハイヴからの増援が確認され、光州ハイヴに向かうのは想定内の事態であった。
そうであるからこそ、その為の戦力を用意していた、というわけである。
陣地形成にあたっては、地球連合が投入した大量の無人作業用MTなどが動員され、平らに均された大地を速やかに改造していく。
砲陣地に地雷原、光線級を警戒してダックインできるように掘られた塹壕、あるいは通信設備。
自走榴弾砲や自走迫撃砲、自走ロケット砲、戦車、そしてそれらの砲弾を輸送する輸送車両のスペースも着々と用意される。
加えて、母艦級という地下侵攻を主導すると思われる大型種に備えるため、対地ソナーの設置も急がれた。
地面の下にBETAが掘り進めた地下茎の位置は把握され、その上で陣地が形成されているが、それでも即席で作ってくるのが母艦級。
それに備える形で、母艦級にも打撃を与えられる砲撃型のMTも一定間隔で配置され、何時いかなる方向からきても良いように備えた。
そして、敷設された防衛線は何も一枚しかないわけではなかった。
むしろ、単純な構造とはいえ、複数が並行して造成が始まり、砲撃力を最大限生かし、立体的な投射でBETAを駆逐できるようにくみ上げたのだ。
それこそがBETAに対する強力なキリングゾーンである。想定される数が50万越えだ、備えておいて不足はない。
そうして形成されたキリングゾーンと陣地の間に陣取るのが戦術機部隊である。
戦術機達の陣取る陣地よりさらに先、大量の地雷が敷設されたエリアを抜け、砲撃によるキリングゾーンを抜けたBETAを迎え撃つのが彼らだ。
地雷原や砲撃による排除は、これまでβ世界の人類が経験した戦いの中でも有数の規模で行えるようにしてある。
さりとて、それらを突破してくることも前提に備え、準備を行わなくては、勝てる戦いも勝てなくなるのだ。
AL4部隊もこの戦列に加わっている。しかも、最前線、最も敵が集中するエリアに配置されていた。
これはAL4が自ら手を挙げた、というのが大きい。何しろ貴重な最前線でのデータ収集なのだから、安全なところに引きこもる意味はない。
XM3という新概念OSの導入とハードウェア、そして戦術機そのものの強化も行ったことにより、実戦での戦闘には十分耐えうると判断されていた。
加えて言うならば、跳躍者や受信者がほぼ全員であるA-01は、その練度が他の参加部隊を軽々と凌ぐレベルであったのもこれを後押ししている。
元々は訓練生だったものも多い、とはいうが、受信者や跳躍者となれば話は別であった。
そして、その配置を決定的なものとしたのは、AL4が送り出した形式番号HMFF-1000『凄乃皇』にあった。
AL4が
アメリカから接収し、地球連合が手を入れることで完成を見たこれは、まさしく戦略兵器であった。
通常の戦術機の何倍もある全高、全長、そして飛行能力。全身に配置された膨大な武装群。単独でハイヴに乗り込むことさえ可能な、動く要塞。
これに、なんとAL4の最高責任者ともいえる香月夕呼博士が自ら乗り込むという噂は、すでに参加する部隊や軍の間では常識となっていた。
それだけ自らが手掛けたというそれに自信があるのか。それとも全く別の思惑があるというのか。
様々な憶測を呼んだのは確か。さりとて、それが好意的に噂に流れたのは、偏に跳躍者や受信者の存在があった。
並行世界において、同じ名前の戦略航空機動要塞が前線に投入されハイヴ攻略を為した情報を知る者がいたのだ。
彼らは言う、あれこそが人類の希望となるのだと。先駆けとなり、未来を切り開いていくのだと。
危険を自ら引き受け、立ち向かう気概があるのだと、証明していると好意的に受け取ったのだ。
後方に引きこもり、ただひたすらにG弾の使用を叫ぶ国よりもよほど信用が置けると、そう噂された。
そんな衛士や兵士、あるいは後方要員たちの希望と羨望を集めながらも、凄乃皇は割り当てられたエリアへと到着。
護衛となる戦術機を主軸とする部隊とともに展開し、その時に備えていたのであった。
904:弥次郎:2023/01/11(水) 22:55:52 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
- β世界主観1999年9月後半 17:54 朝鮮半島 光州ハイヴ北部 防衛ライン
夕闇が近づく中において、しかし、防衛ラインは緊張に包まれていた。
設営された投光器が暗闇を払い、戦闘エリアとなる一帯をまるで昼間のように照らし出しているのだ。
鉄原ハイヴを発したBETAの群れの内、最も移動速度の速い突撃級を主体とした群れが、漸減を担う航空機部隊により捕捉され交戦が開始されたためだ。
β世界では駆逐されて久しい航空機、しかもそれが人型へと変形可能な可変戦闘機とあれば驚いたことであろう。
フロンティア政府から派遣されてきたその部隊は、適度にBETAの数を減らしにかかっていた。
相手は飛行もできない種であり、レーザー級も決して脅威たりえない。だからこそ、一方的と言える攻撃を叩き込んでいた。
対するBETAは今のところ光線級による劇劇に徹していた。レーザーの効かない航空機に対し、未だBETAは有効な手を生み出せていないのか。
しかし、展開しているVFによる漸減はある程度にとどめられていた。
まだ先遣となる突撃級が主体であり、もっと優先すべきは要塞級などといった大型種などであるためだ。
突撃級などの見知った種を見逃しても、後方では安全に処理できる---その信頼故の行動だった。
『気味が悪いほど押し寄せてくるな、こいつらは……』
フロンティア船団のパイロットの一人が、ナイトメアプラスのコクピットで思わず漏らす。
おぞましく、気持ち悪い外見だ。思わず拒否反応を示してしまいそうな、そんな姿をしている。
この手の宇宙生物が必ずしも外見上人の感性に合うとは限らないと知っているから抑えきれているが、これを見続ける兵士たちの負担は如何ばかりかと思う。
ずっと見ているだけでもゲシュタルト崩壊を起こしてしまいそうだし、あまりの数に酔ってしまいそうだ。
まあ、これでもゼントラーディやバジュラなどと比較すれば非常にかわいいものであるのも確か。
『全くですね、隊長』
『ああ……今でこそ俺たちは弱いと判断しているが、現地の年号に合わせて考えれば恐ろしい相手だしな』
西暦1999年7月に南アタリア島に落下した異星人の宇宙戦艦に端を発し、宇宙人との戦いに備え始めたのが自分達の祖先。
宇宙戦艦から得られた技術は、当時の人類を飛躍的に進歩させ、人間同士の戦争も激化させた。
だが、それらを得る前にBETAとぶつかっていたら?こちらの世界の人類同様に苦戦したことは想像だに難くない。
『こいつらが来なかったのは幸運でしたね……』
『逆に言えば、今のタイミングでなかったら大惨事ということだな……と、時間だな』
時計を見れば、いよいよ地上部隊の動きが始まる時間だ。
『各機に通達、これより地上部隊から攻撃が開始される。予定高度まで上昇、観測を開始せよ』
ナイトメアプラスなどが上昇していった頃、BETAの先頭集団はいよいよ予定されていたラインに突入を開始した。
最初は、地雷原による盛大な歓迎を受け始める。
何重にも敷かれたそれを、突撃級はよけない。知らぬとばかりに突撃し、爆破によって吹き飛ばされる。
一見無駄死にであるが、後続がさらに突っ込むことによって、さらに地雷が爆発し、撃破と引き換えに処理されていく。
膨大な数のBETAが、その数に任せて膨大な地雷を一つ一つ潰していくのだ。設置できた数には限界があり、やがては尽きる。
その時にこそ、BETAの群れの本体が突破してくることになる。
第二に歓迎を開始したのは、通常兵器を含む砲撃部隊による長距離攻撃だ。
ビーム、レーザー、実弾、ミサイル、ロケット、砲弾その他さまざまなものが、一斉に放たれていく。
数を減らしながらも前進してきた突撃級や要撃級などの群れを、一方的な火力によって駆逐していくのだ。
まだ最大火力を発揮しているわけではないが、それでもBETAの数は着実に減っていた。
前衛の突撃級らは数を十分の一程度にまで減らしており、中衛となる要撃級、戦車級、光線級が数を増してくる。
いけるか、と現地の兵士たちは思う。これだけの火力を叩きつければBETAでも、と。
さりとて、同時に思う。まだ前衛を削った程度だとも。
そして、対地ソナーらが一斉に警報をよこしてきた。何かはわかる。
『母艦級がくるぞぉー!』
そして、言葉通りのBETAが地面を割って出現した。
905:弥次郎:2023/01/11(水) 22:57:17 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
- 光州ハイヴ北部 防衛線 HMFF-1000『凄乃皇』 コクピットブロック内
「おーおー、元気いっぱいじゃない」
母艦級が地面を割って大量に、それこそ数十体出現するのを、コクピットのシートにいた夕呼は悠然と眺めていた。
大規模侵攻時に初めて確認された新種のBETA、それが母艦級。
最も、彼女にとっては武からオリジナルハイヴにおいて遭遇したと聞いていたから、別段驚きではなかった。
考えれば当然のことだ。資源を求めているBETAが地面を掘り進める母艦の役割を果たすこの種類をオリジナルハイヴ以外でも使っていることは。
しかも、今確認されたのはなん十体という数であった。口の中からさらにBETAを吐き出し、掘り進めた地下茎からもBETAを導き出す。
トンネルボーリングマシンと輸送車をミックスしたような、そんなBETA。前線にいざ現れた時、前線に動揺が走るのが夕呼にもわかった。
「香月博士」
「大佐と呼びなさい、ピアティフ中尉。一応、ここは戦場であたしも衛士の一人なんだから。
さて、どれくらい湧いてきたのかしら?」
秘書であり同時に部下の技術者のオペレーターに、夕呼は悠然と問いかける。
「観測できただけでも母艦級67体。それに付随し、最低でも40万のBETAが出現しています」
「想定以上ね……大規模侵攻で吐き出して、それでもまだ在庫は余っているとは驚きだわ」
けれど、その数は夕呼を脅かすには少なすぎた。
「各部隊に通達。これより凄乃皇は迎撃を開始すると。射線上からの退避と砲撃の中断を通達して。
社、まずは主砲で挨拶するわよ」
「了解しました」
「了解です、大佐」
そして、操縦士であり砲撃手を兼ねる霞の操作で、凄乃皇はその内部構造を動かし始めた。
それを補助して機体制御を担い、ついでに航法士を兼ねるのはピアティフであり、それらに指示を出すのが夕呼という体制。
最もBETAとの戦闘においては、もっと距離が迫った場合においては、夕呼はデータ収集に注力することになるのだが。
「ブラックホールエンジン、正常に動作中。エネルギー供給問題なし、胸部主砲に充填開始」
「凄乃皇、規定高度まで上昇中。テスラドライブ稼働状況ヨシ、出力安定しています」
「姿勢制御は?」
「問題ありません、全て正常値!」
「ビーム粒子加速は順調、出力上昇は順調です」
「蓄電状況にも問題はなし、いい感じね」
初手の挨拶となるのは、胸部複列大型ビーム砲だ。
本来の設計においては荷電粒子砲を搭載していた箇所に、代わりのように突っ込まれたのがこの大口径のビーム砲。
しかもそれは、戦術級であった荷電粒子砲のスペックを大きく上回る。具体的且つ端的に言ってしまえば---
「Mass Amplitude Preemptive-strike Weapon(大量広域先制攻撃兵器)、通称をMAP兵器、だったかしら?
その一つであるこの主砲の力、見せてやるわよぉ!G弾なんて目じゃないレベルのこれをね!」
ちょっと夕呼はテンションハイになっていた。これの威力はシミュレーターで何度となく体験して、すでにその威力に病みつきになっていたのだ。
ついでに言えば、BETAの群れが出現した時からアメリカ軍からきていた司令官が散々G弾を使えと喚いていて、ストレスをためていたのもある。
故にこそ、ちょっと彼女は普段の仮面を脱ぎ捨てて、柄にもなく叫びたくなったのだ。
「エネルギー充填、120%!」
「テスラドライブによる仮想砲身の展開およびライフリング完了!慣性制御、問題なし!」
「いけます!」
「てぇーーーー!」
霞の手がコンソールから生えてきた操縦桿を握り、夕呼の言葉とともにそのトリガーを、引いた。
そして、凄乃皇はその長大な仮想砲身から極太のビームを、一気に吐き出したのだった。
906:弥次郎:2023/01/11(水) 22:58:03 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
もっと射撃シーンは盛りたかったのですが、妥協しました。
今日はこのまま寝ます。
感想返信は今宵は無理ですので悪しからず。
おやすみなさいませ。
最終更新:2023年01月24日 10:44