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憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「鋼鉄の裁定 -あるいは天空神の見定め-」6
- C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月後半 17:34 朝鮮半島 光州ハイヴ 北部
凄乃皇の主砲たる胸部複列大型ビーム砲の最大出力は、夕呼も述べたようにMAP兵器の一種と言える。
ブラックホールエンジンという半永久機関から抽出されたエネルギーを、その巨体に積まれたキャパシタに蓄え、ビーム兵器をドライブさせる。
一国さえも余裕で賄うであろうその大電力を惜しみなく使い、そのビームは形成されたのだ。
「てぇーーーー!」
その号砲と共に、トリガーは引かれた。
初めに生じたのは、一瞬の空白。絶大なエネルギーを持つビームが出現する間際の、一瞬の静寂だ。
続けて、そのビームがコンマ以下の時間で一瞬で突き抜けた。重力収束式のそれは、大気圏内での減衰や外逸の要素を跳ねのけ、命ずるままに直進した。
ビームが着弾したのは、凄乃皇から見てBETAの集団の左側----ではなく、そのはるか先、なんと鉄原ハイヴの左側だった。
距離にしておよそ20㎞ほど着弾点は離れていたが、それでも衝撃と振動、そして発生した防風は地面を大いに揺らす。
一見するならば大外れ、BETAを排除するにしても、ハイヴを砲撃するにしても、直撃弾を得ていないのである。
直径にして100mはあるごん太ビームであるにしても、その影響範囲は熱量などを入れてもそこまでカバーしきれない。
さりとて、コクピット内の夕呼は不敵な笑みを浮かべていた。
「ピアティフ中尉、回頭開始。このまま薙ぎ払いなさい!」
「了解!」
そして、ピアティフの操作で凄乃皇はビームを照射したまま時計回りに旋回していく。
ゆっくりと、照射によって入念にビームを撃ち込み、地下まで深く掘られたハイヴとその横坑(ドリフト)を破壊していくのだ。
そう、夕呼は何も考え無しにビームを撃たせたのではない。露払いも兼ね、ハイヴ周辺の横坑とそこにいるBETAも焼き払う算段をたてていたのだ。
「くっ……」
ビームの衝撃を殺しながらも、凄乃皇の旋回は続く。
地面をめくりあげるというか蒸発させ、さらには地下に潜んでいた大量のBETAも消し飛ばす。
それは射線上に出現してこちらに肉薄してきていた母艦級とそれに続いている群れも同様だ。
地面や岩盤とは異なり、一瞬の拮抗さえ許されることがなく、一瞬でビームの熱量により蒸発して消え去った。
如何に戦艦の艦砲射撃にも耐える母艦級と言えども、それだけの熱量に耐えきれることはできなかったのであった。
そして、ビームの根本よりのところでBETAの群れの大多数が蒸発したころ、先端部分はついにハイヴへと突き刺さった。
「いけえええええぇぇぇぇぇ!」
フェイズ4の鉄原ハイヴには、高さが300m程の地表構造物が存在している。
言うまでもないことだが、地表構造物(モニュメント)の先端には孔(ベント)があり、その下には直径200mもの主縦坑(メインシャフト)がある。
だが、人類がそれを観測したのは、ヴォールクデータの採取されたパレオロゴス作戦、あるいはAL3の参加したスワラージ作戦のみ。
残るはヴォールクデータの中で再現された仮想のハイヴの中でしか目撃してきたことのないものだった。
「さあ、その腸(はらわた)、そろそろ見せなさいよ!」
そして、夕呼が発した言葉の通り、地面ごとハイヴはえぐられた。
薙ぎ払われた、と言ってもいいかもしれないほどだ。地表構造物の下半分が消し飛んで、ついでに地面も大量の土などが蒸発して、その内をさらけ出したのだ。
もはや吹き飛ばすというよりは、超高熱の物体をそのまま叩きつけたようなものであり、破壊するというよりは蒸発させるに近い。
しかもその熱量は拮抗さえ許さないのだ。母艦級だろうが要塞級であろうが、BETAでも地形でも、何もかもを一瞬で飲み込む。
「……くっ!」
それでもなお、ビームの照射は続いた。
まだ半分ほどしか焼き尽くしていない、残り半分も同じように消し飛ばすのだ。
まだだ、まだ焼き足りないのだ。もっともっと、この機体は生贄を求めている。破壊をぶつけられるBETAを。
489:弥次郎:2023/01/16(月) 22:40:21 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
ゆっくりとした回頭に合わせてビームは横に向かう。生き残っていたBETAの群れが必死に回避しようとしているが、多くが敢え無く飲まれた。
そも、ビームそのものだけでなく、そのビームによる熱量や衝撃などでも十分によほどのBETAでなければ殺傷しうる威力があるのだ。
結果として、ビームの先端部はハイヴの西側に着弾してから横へとスライドし、おおよそ40㎞を横断。
その過程においてその射角に収まっていたすべての物体を文字通り消し飛ばしたのであった。
正確には予備照射されたビームと徐々に減衰して納まったビームによりもう少し被害は増えているのだが、些事であろう。
「照射、終了です」
「ふぅ……最ッ高ね……!」
「これが、凄乃皇の力……」
重力収束されたビーム砲は、半ばビームサーベルに等しい。
だが、そうであるとしても、とんでもないものであった。
凄乃皇の陣取ったのは光州ハイヴ北部の旧全州付近。標的となった鉄原ハイヴまで、直線距離にしておよそ300㎞はあり、その幅は40㎞に及ぶ。
たった一度の砲撃でそれだけの距離と範囲が焼き払われたのだ。そこに存在していたBETA、ハイヴもまとめて、たった一撃で。
人は見た、人類が夢見た光景を。
兵士は見た、巨大な力の塊が、絶望を象徴するような光景を塗りつぶすのを。
「ハイヴが……砕けた」
その言葉を口にしたのは、一体誰だったか。
とある世界線において同じ言葉をつぶやいた安倍大佐か。
それとも、その砲撃を側面から見たニール・ジャクソン少将か。
はたまた、戦場にいた衛士の一人だったのだろうか。
だが、それはどうでもよいことだろう。
重要なことは、ハイヴが、フェイズ4というステージにあった巨大なハイヴが脆くも消し飛んだこと。
見えないはずのメインシャフトやドリフトなどの地下構造物の中身が丸見えとなり、存在していたBETAが消え失せたこと。
そして、ついにBETAの牙城の一つを攻略できるであろうこと。さらにその先の---人類の勝利を見出したことだった。
『--------------!』
「--------------!」
『--------------!』
『--------------!』
『--------------!』
「--------------!」
一瞬の静寂。
そして、数瞬を開けて、今度こそ歓声があらゆるところで生まれ、飽和した。
それはシミュレーターを何度も経験していたピアティフも同じだったようだ。
(まあ、そうなるわよねぇ)
だが、一言感想を吐き出した夕呼はすぐに冷静さを取り戻した。
武曰く、00ユニットの拡張システムとして完成した凄乃皇は、ML機関によるラザフォード場による防御力のついでで荷電粒子砲を得ていた。
それによって甲21号作戦において、ハイヴとその途上にいるBETAの群れをまとまって吹っ飛ばしたのだという。
その時の反応はどうだったのかは言うまでもないし、実際今目の前に広がっているような状態だったのだろう。
490:弥次郎:2023/01/16(月) 22:40:56 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
まあ、夕呼とて人の子だ。
今の光景を生み出したことに興奮を覚えないと言えば嘘になるのも事実。
だが、この程度で喜んでいてはいけないのだ。
「ほら、ピアティフ、今ので終わりじゃないわよ。
社、ビーム砲のチェックが完了したら、次の準備をして頂戴」
「了解。ドライバーキャノンの準備、開始します」
「近接火器も忘れないでね」
「次……ですか?」
冷静に次なる火器---最大出力を放出後はどうしてもCTを挟む手法を補う400㎜ドライバーキャノンの準備にかかる社。
しかして、ピアティフはそうはいかなかった。
まあ、無理もないか、と夕呼はため息を飲み込んだ。
これだけの大打撃をBETAに与えたというのは、直接的にわかりやすいのは初めてなのだから。
無論、欧州においてはリヨンハイヴが攻略されているので厳密には最初ではないにしても、この極東においては初となるのだ。
その先駆けとなる一撃を見て、最早勝ったのではと思ってしまうのも当然ではある。
「そ、次よ。
BETAだって馬鹿じゃない。今の砲撃でハイヴが深刻な打撃を受けて、数を消し飛ばされたのは理解したはず。
だとしたら、次は何をしてくるかしら?」
「……ッ!反撃ですね」
「そういうこと。
この飛行物体であり、尚且つ高性能コンピューターの集まりであり、脅威となる攻撃をした凄乃皇。
BETAが今度は大挙して迫ってくるでしょうね。それこそ、鉄原ハイヴを空にする勢いでね」
自分のコクピットシートでコンソールを操作し、前方に索敵をかけてみれば、一発だ。
「ほら、うじゃうじゃとまだ湧いてくる」
吹き飛ばした直後だというのに、まだBETAは沸いてきた。
メインシャフトをさらけ出すように半壊以上の損害を受けたハイヴから、あるいは無事だったゲートから、再び湧き出してくる。
その動きを上空からとらえているAWACSからの情報をデータリンクで受け取れば、その進路がどこを向いているかはわかるというもの。
「ほら、凄乃皇目がけて突撃してきたわ」
「わかりました……まだ作戦は終わっていない、そういうことですね?」
「そういうことよ。
社、ドライバーキャノンで先制砲撃を開始して。大雑把でもいいから数を減らすの。
ピアティフ中尉、直掩のA-01とそのほかの部隊、それに航空艦隊に迎撃態勢を整えさせて頂戴。相手も本気で潰しにかかってくるわ」
だからこそ、と夕呼は続ける。
「この機体を前に押し出して、BETAを引き付けるのよ。
そうすれば直掩部隊がその横っ腹を突くことができる。
この機体にはMAP兵器はまだあるんだから、大群が来ても捌くことは容易いわ・
ほら、急ぐ!」
「はい!」
「あと、余計な称賛の通信はカットしていいわ。こちとらここからが鉄火場だっていうのに……!」
確かに、と通信管制も兼ねるピアティフの所にはひっきりなしに通信が飛び込んでくるのがわかる。
あの一撃を見た友軍からの称賛の声であろうことは想像だに難くない。自分だってさっきまで喜んでいたのだから。
(けど、まだ本命はここから……)
そう、まだ光州ハイヴは包囲して籠っているBETAを引きずり出している段階だし、鉄原ハイヴもまだ攻略を始めたばかり。
本格的にこの半島を奪還するには、二つあるハイヴを攻略し、BETAの掃討を完了させなくてはならないのだ。
その先にある人類の勝利まで、あとどれくらいだ?そのことを考えれば、すぐに冷静さが戻ってきた。
両手で頬を張って、改めてピアティフは自分の仕事に戻ることにした。
人類の反抗は、まだまだこれからなのだと自分を強く戒めながら。
491:弥次郎:2023/01/16(月) 22:41:29 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
ざっくり吹っ飛ばした範囲を計算しますと、
300㎞(全州から鉄原ハイヴまでおおよそ)×40㎞(ハイヴの東西20㎞)÷2=6000平方キロメートル
となります。
面積としては史実フランスよりちょっと広い範囲が吹っ飛びましたね。
総キル数に関しては……まあ100万は固いでしょうなぁ
けれど、まだまだこれからが本番です。
さて、反撃ですよ。
SSもまだまだ続きますので、続きをお楽しみに。
あとどれくらいで終わるかなぁ……
597:弥次郎:2023/01/17(火) 18:49:47 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
すっごい今更ですがミスがありました。
転載時には修正をお願いします。
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ナンバリングをミスするとはお恥ずかしい…
慣れないことをやるからこうなるんだよなぁ…(白目
最終更新:2023年01月24日 12:24