134:弥次郎:2023/01/21(土) 22:47:37 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「鋼鉄の裁定 -あるいは天空神の見定め-」7.5
- C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月後半 17:53 朝鮮半島 鉄原ハイヴ南方およそ250㎞地点
凄乃皇から一定の距離を置き、展開しているのは直掩部隊である。
戦術機とMSそしてACからなるその部隊の役割は、名目としては凄乃皇の直掩を行い、細かいBETAの排除を行うということになっている。
いや、なっていたというべきか。言うまでもないことであるが凄乃皇は近距離においても高い火力を発揮可能だ。
それどころか近接格闘戦さえも可能な全距離対応型の航空要塞である。言うなれば戦場における究極のスタンドアロンだ。
(わぁ……)
前回の凄乃皇のことを覚えているだけに、武は今の凄乃皇暴れっぷりがどれほど頭がおかしいことか理解している。
凄乃皇の剛腕が振るわれるたび、巨大なビームソードが地形ごと大型のBETAを粉砕する。母艦級や要塞級が容易く切断されているのだ。
自分だって要塞級を長刀でバッサバッサと切っていた---そしてそれが常人からは頭がおかしいと評された---ので言う資格はないかもしれない。
けれど、これだけは口に出して言いたい。どうして凄乃皇に戦術機と同じような格闘戦ができる能力を与えたのだと。
しかも、だ。それが戦術機より明らかに上というのは何とも理解したくない。
格闘戦において必要な俊敏性や運動性、旋回性、そして制動性も、全てを備えている。
慣性制御がされていなかったら中にいるパイロットがどうやっても死んでいるな動き、といえばわかりやすいであろうか。
無論、凄乃皇が前回とはまるで違うものだというのは聞かされていたのだが、そうであっても理解を身体が拒むというか。
(なんだかなぁ)
しかも、それが00ユニットによる操縦ではなく、補助も入っているとはいえ、それがあの香月博士---AL4の最高権力者となればなおさら。
『どうしたの武ちゃん?』
「ああ、いや……」
『まだまだ来るから頑張らないと』
「そうだな」
そんな自分を呼ぶのは、00ユニットを晴れて卒業、ファンタズマ・ビーイングとなったこの世界の幼馴染SKである。
本来であるならば、00ユニットとして凄乃皇に搭載され、ハイヴへの突入およびBETAとの接触を行う彼女は、元気にMSでBETAを排除している。
そう、MSである。
『はい、そこぉ!』
かわいらしい彼女の声とともに、ビームの嵐が突撃級などの群れをまとめて焼き払った。
それを為したのは、彼女が搭載されているパーフェクトジオングの腕部のビーム砲である。
戦術機とはまるで違う、地球連合が主力として採用している機動兵器MSの一種で、全高が40mという巨体を俊敏に動かす、動く理不尽。
そしてこれの怖いところが、遠隔誘導攻撃端末というものを配備していることにある。
本体から分離した砲塔が自在に空を飛び回り、本体からの指示を受けて攻撃を行うという。
従来の、機動兵器が搭載したり携行する火器とは異なって射角や指向の方向性を問わないためにまさしく自在に動く火砲ということだ。
実際、先ほどBETAを排除したのも、これの応用だ。腕部から分離したものと、背中から射出されたものにより、立体的に包囲。
まさしく檻のような火力包囲に置くことで逃げ場も何もない状態に追い込んで焼き尽くしたのだ。
「すごくなれたな」
『うん、どこに置けばいいかが一瞬でわかるし、火力もすごいの!』
無邪気に喜べる幼馴染の適応力に喜べばいいのか、それとも悲しめばいいのか。
135:弥次郎:2023/01/21(土) 22:48:29 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
ただ、彼女のパーフェクトジオングの火力は非常にありがたいのも事実だ。
今武をはじめとしたA-01が運用しているのはF-15をベースにした「陽炎」をさらに回収した「浜風」。
前回自分が考案して開発してもらったOSであるXM3を試験搭載し、さらにそれに追従できる機体構造を持った試作機だ。
OSのプレゼンテーションという役割を担っているがために、OS以外は基本的には既存の戦術機の域を超えてはいない。
如何に操縦に追従できるといっても、所詮は戦術機。中の衛士が腕前が良いとはいえ、何時までもBETAと戦えるとは限らないのだ。
「おかげで助かっているから、喜ぶべき、なんだよな……」
『?』
そう、今も通信を行いながらビームを全方位に放ち、的確かつ効率的にBETAを排除しているパーフェクトジオングがいるからこそ、A-01は生きている。
搭載火力は既存の戦術機と変わりがないわけで、その点、ビーム兵器というものでフォローしてくれるパーフェクトジオングの存在は大きいのだ。
『白銀臨時少尉!散開しての各機の判断でBETA排除とは命じたけれど、怠けていいとは許可していない!』
「了解!」
しかし、割って入ったA-01の教官神宮司まりも軍曹の声に、反射で返答。
一時中断してしまっていた動きを継続した。いや、正確には止まっていたわけではないのだが、よりエンジンに火を入れるのだ。
「よし、行くぞ……」
意識を冷たく集中させる。
武の乗る浜風は、かつてと同じく長刀の二刀流。地球連合製の長刀は、同じように作ったというが、重量が軽く、それでいて威力に優れる。
だからであろうか、武御雷よりも出力などで劣っている浜風でも十全に武の操縦に追従してくれるのだ。
瞬発的な加速で前に。光線級にロックされた警報を受け取り、同時に照射までの残り時間を確認。
時間にすれば数秒もないその時間であったが、それは武にとっては十分だった。
まっすぐ前に、要塞級目がけて上昇も含めて前進していたそれを、レーザー照射と合わせて急降下へ変更。
エンジンカット寸前にして、そこから直後に出力を上げて下へ上昇、そのまま推力を真横に。
「……!」
思った通り、光線級のレーザーは上空に飛んでいった場合にいたであろう未来位置を通り過ぎて行った。
光線は一瞬間で目視できただけでも11本。重光線級のそれも混じっていたようだ。
BETAも前衛中衛後衛の区別なく、入り乱れてA-01と凄乃皇との戦闘を行っているためだ。
(だから要塞級も……!)
地面を低高度で、しかし、突撃級や要撃級などに飛びつかれない高度を維持し、這うようにして懐に飛び込む。
相手の動きは遅い。こちらから見ればスローモーションだ。ここまでは変化していないようである。
そして、長刀で切り込む。どこにどのような角度で刃を入れるかなど、目をつむってもできる。
浜風は武の入力した動作に従い、迅速に切り分けを行う。手ごたえはある。何度となくやった感覚が伝わってくる。
「次!」
だが、一体を膾にしただけ。
巨大な人工物であり、飛行物であり、段違いのスペックを持つ凄乃皇を狙うBETAはまだまだいる。
当然ながら、要塞級だって押し寄せてきているのだ。A-01の前で自分に任せてくれといった手前、手を抜くわけにはいかない。
「遅いッ……!」
続けて接近してくる二体目の要塞級に一瞬で肉薄。
伸びてくる触手と足を回避しつつ、進路上の小型種に74式可動兵装担架システムにマウントした突撃砲を放って進路を形成。
そして、結果を生み出す。大地へと落下していく、要塞級だった肉片の塊。それに特に感慨を覚えることはない。
ここは戦場、死がそこら中に満ちている世界。
その先に、活路を、勝利を見出すことこそ本願。
「やってみせるさ!」
跳躍者たる白銀武は、今度こそ、という思いと共に、次のBETAに躍りかかる。
BETAが人並みの感性や表現方法を持ち合わせていたら、こういうであろう。
悪魔だ、と。
136:弥次郎:2023/01/21(土) 22:49:14 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
申し訳程度に原作主人公とヒロインの活躍。
パーフェクトジオングの設定はオイオイネー(こいついっつもオイオイネーしてるな)
最終更新:2023年01月24日 12:32