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憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「鋼鉄の裁定 -あるいは天空神の見定め-」7.75
- C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月後半 18:38 朝鮮半島 南部海域 総旗艦「薬来」
凄乃皇とその直掩の部隊が戦闘を開始してからおおよそ1時間余りが経過した。
凄乃皇の主砲である胸部複列大型ビーム砲の一撃により、鉄原ハイヴははた目にもわかるほどに損傷を受けた。
モニュメントだけでなく、地下構造物も地面ごと吹っ飛ばされることにより崩壊し、振動や衝撃もあって恐ろしく打撃を受けたであろう。
加えて、ビームの照射による被害を鑑みれば、万単位でのBETAが蒸発して消えていったことは間違いなく、先制攻撃という意味でも大きな価値があった。
しかして、人類側は迂闊に前に出ることをよしとしなかった。
確かにまとまってハイヴのBETAを消し飛ばしたことは確かであるが、未だに継続してBETAが湧いて出てきているのだ。
蹂躙としか形用できないその凄乃皇の戦闘力を以て排除を続けてもなお、後続が湧き続けているのだ。
これではハイヴの内部にどれほどの数がいるのか分かったものではなく、迂闊に踏み込むことを抑止していた。
ハイヴの攻略、すなわちハイヴ最奥の反応炉の破壊を目的としている人類側としては、突入する前に可能な限りのBETAの漸減をしておきたいところなのだ。
これを好機とみているのは、二言目にはG弾という単語が出てきて、その場にいるほぼ全員から殺意を向けられる米国指揮官のみ。
日本帝国も大東亜連合軍も大洋連合軍も、いずれもが未だにハイヴ突入は早計と判断していたのであった。
すでに作戦開始から時間が経過しており、パイロットたちの交代や休息、あるいは機体の整備や補給などを行いながらの戦闘継続だ。
どうやっても疲労などは蓄積してしまうもので、限りあるパイロット達や衛士たちのほか、オペレーターたちも休息を挟ませている。
それは後方において指揮を執るHQや指揮官たち、あるいは参謀たちも同様だ。
戦闘をするよりもむしろカロリーなどを消費する彼らは、万全の体制の中で、しかし、プレッシャーと戦いながら指揮を続ける。
何しろ、G弾の使用を虎視眈々と狙い続けている米国という存在が後方にいるのだ。一瞬でも気を許せば、それが投入されてしまいかねない。
後方に構築されているピケットラインの人員には本当に頭が上がらない、そのように柴島は思っていた。
(鉄原ハイヴにおいて動きだと?)
そんな彼のところに、その報告が飛び込んできたのは、休息を終えて指揮所に戻る途上であった。
細かい情報をタブレット端末で受け取り、それの精査を行う。
「……これは」
それは、鉄原ハイヴ周辺空域を飛んでいる航空戦力からの映像だ。
複数方向から測距され、立体的に把握されたハイヴとその周辺の状況は、この1時間余りで大きく変化していた。
これは早急に精査し、話し合いをしなくてはならない。休憩室を出た柴島は、急ぎ足で指揮所に向かった。
298:弥次郎:2023/01/22(日) 23:53:09 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
参謀たちや他国の指揮官も交え、BETAの動きは議論されていた。
一言で言うならば、BETAは砲撃を受けて穴だらけとなり、体裁を失いつつある鉄原ハイヴを改造しつつある、ということ。
前線に膨大な数を吐き出しつつも、それと同じくらいの数の個体で何やら工事をせっせと進めているのだ。
母艦級から大量に小型種から大型種まで運搬して、明らかに土木工事を進めている。
「データ採取は?」
「順調に進んでいます!」
「各方面でのBETAの動きは、依然として継続中!」
そして、柴島が指揮所に入ってきたのはそんな大わらわの状況の真っただ中であった。
「状況は?」
「提督!」
「状況はすでに端末に送った通りです。
ですが、もっと大きいもので見ていただいた方がよろしいでしょうね」
オペレーターの操作で、一番大きなメインモニターに鉄原ハイヴを捉えたアップの映像が表示される。
「……なるほど、何かを作っている。そう評するしかないな」
ビーム砲の一撃を以て崩壊したモニュメント。メインシャフトが丸見えとなり、周辺も吹き飛ばされて無防備になっていたはずのハイヴ。
その、むき出しになっているメインシャフトの周辺がBETAによって覆いつくされつつあり、そこに何かが造成されつつあったのだ。
傍目には太い管のようなもの。母艦級とまではいかないものの、かなり太いものが地表で構築され、メインシャフト内部に落ちて行っている。
「だが、何を作っている?」
その問いかけは、分析官や参謀たちも共通で抱いた疑問だ。
BETAにとっての巣であるハイヴは、確かに重要な構造物であるのは確かだろう。
だが、そうだとしても戦闘中にわざわざ修繕をするものであろうか?
しかし、柴島たちが視線を向けた先、β世界から派遣されてきている指揮官や参謀たちも一様に首をかしげている。
そう、β世界のこれまでのハイヴ攻略においては、戦術機部隊をゲートから突入させることはまああったことだった。
しかし、同時にハイヴのモニュメントなどにわかりやすい被害を与えたことがないのだ。
凄乃皇の砲撃により大きく士気が上がったのも、それがこれまでの戦いの中に置いてなかった光景であったからに他ならないのだ。
つまり、現地の勢力にとっても未知の行動ということ。
今集められている情報だけで判断しなくてはならない、そういうことであった。
(いったいなんだ……?この状況下でなくてはならないモノを建造しているとでもいうのか?」
「提督、ハイヴの地下、メインシャフトの下層から高熱源反応が……」
「何?」
「また未検地の振動パターンも観測されています」
その報告に、柴島は妙な引っ掛かりを覚える。
つまり、最下層にある反応炉とその周辺でも何か工事をしていると、そういうことになる。
「……提督、これは?」
「少し待て……」
これまでに地球連合がBETAに対して行ったアクションを頭の中で反芻する。
BETAが人類の戦術や行動に対して対応策を練り出すのはおよそ2週間程度とされているのは連合内部でも有力な情報として知られている。
この光州ハイヴと鉄原ハイヴ攻略までの間に、連合は各所で行動を起こし、これまでβ世界では存在しない手で攻撃を繰り返した。
それらに対応するための何らかの方法が考案されていたとしても、決しておかしくはない時間が経過しているのは事実。
(だとするならば)
何かを仕掛けてくる可能性がある、ということ。
そして、BETAにとってはこれは初めての試みという可能性が高い。
なればどうするか?
「オペレーター、回線を開け」
その予感が外れていてほしいと願いながらも、万が一に備え、柴島は指示を出し始めた。
299:弥次郎:2023/01/22(日) 23:54:13 HOST:softbank060146109143.bbtec.net
以上、wiki転載はご自由に。
まあ、ちょっとした前振りです。
設定集は今日は無理でした。
最終更新:2023年01月24日 12:33