401:モントゴメリー:2023/03/15(水) 22:52:41 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
FFRの社会インフラ④——FeLuZn(空気亜鉛電池)——
FeLuZnとは、フランス連邦共和国(FFR)において21世紀初頭に開発された「革命的な」蓄電池である。
構造的には「空気亜鉛電池」に属する。
PlaFaViPを開発することでFFRはOCUのリチウムイオン電池に対抗することが可能となった。
しかし、鉛蓄電池はおそらくここが進化の終着駅である一方、リチウムイオン電池はまだまだ改善の余地を残していた。
そして蓄電池の需要、特に大容量へのそれは世界中で高まり続けていた。
このままではジリ貧となり、結局はOCUに技術的敗北を喫してしまう。
——リチウムイオン電池より大容量で、より安価な蓄電池を開発すべし
政府より指示を受けたFFRの技術者たちは当然頭を抱えた。
PlaFaViPの開発だけでも十分逆転ホームラン級の偉業であるのに、それから10年とたたずにそれを超えろと言われたのだから当たり前であるが。
しかし、彼らも「我らが指揮官」の兵士たちである。諦観という感情は彼らの胸中には存在していない。
不屈の精神で頭を上げた彼らが注目したのが「空気電池」である。
空気電池とは、正極活物質として空気中の酸素を、負極活物質として金属を用いる電池の総称であり、この金属に亜鉛を用いるのが空気亜鉛電池である。
より具体的に言うと、充電時は酸化亜鉛(ZnO)が亜鉛に化学変化する際に電子を蓄え、放電時は空気中の酸素と亜鉛が結合して再び酸化亜鉛になる際に蓄えていた電子を放出するのである。
空気亜鉛電池そのものは特に新しい発明ではない。
20世紀初頭に「フランス人の」フェリーによって発明され、電話交換機や気象観測用ブイなど長期間連続使用される機材の電源として用いられた。
20世紀中ごろからは補聴器用のボタン型電池が主流である。
しかし、これらは一次電池(使い捨て)であり、充電して繰り返し使える二次電池への応用は困難を極めた。
最大の関門は「寿命の短さ」である。
空気亜鉛電池は放電すると、負極材料の亜鉛が電解質中に溶け出す。そして充電時には、この溶解した亜鉛が電流分布の不均一性により負極以外で析出してしまうのである。
これにより電池内に樹枝状晶(デンドライト)が形成される。
そしてこれが空気と接触することで短絡(ショート)が生じてしまうのである。
そのため、数回充放電しただけで使用不能となってしまう。
それに対してFFR化学陣が繰り出した解決法は、伝導性セラミックスの活用である。
これを用いて正極と負極を絶縁し、溶解した亜鉛は通さずに水酸化物だけを選択的に通すのである。
これによりデンドライトと空気との接触を物理的に抑止し、短絡を防止するのだ。
「我らが指揮官」の御衣を編むために延々と練り上げた材料工学の勝利である。
こうして空気亜鉛電池の実用化への道は切り開かれたのだ。
そしてその成果は絶大であった。
402:モントゴメリー:2023/03/15(水) 22:54:00 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
空気亜鉛電池の最大の特徴にして利点は容量の大きさである。
理論上の貯蔵可能エネルギーは1kg当たりおよそ1300Wh。
これは、OCUが(テクニカル・ハラスメントも兼ねて)開発した結果、世界中で開発競争が起こっている電気自動車に使用されているリチウムイオン電池の13倍に匹敵する。
(電気自動車に使用されているリチウムイオン電池の主流は100Wh/kgである)
さらに、亜鉛という安価な原料を使うことにより製造コストの大幅な削減にも成功した。
試算であるが、リチウムイオン電池と比較して1/10から1/15程度に抑えられている。
また、PlaFaViPでもそうであったが安定性の高さもあげられる。
(ただし、これはむしろ「リチウムイオン電池の安定性が低い」と表現するべき事象である)
無論、欠点も存在する。
名前の通り動作には「空気(酸素)」が必要なので、高高度や山岳部などでは出力が低下する。
もちろん、宇宙空間では使用不能だ。
対策としては空気(酸化剤)を組み込むことが挙げられるが、その場合、重量当たりの貯蔵可能エネルギーは低下する。
(それでも約1000Wh/kgにはなる)
また、出力電圧が低く、かつエネルギー効率が悪いという問題もある。
空気亜鉛電池は放電時の理論電圧が1.65Vであり、リチウムイオン電池の3.7Vに対して劣っている。
また、正極の反応、つまり酸素から水酸化物を生成する反応が負極の反応よりも遅いので、実質的には1.25Vが限界だとされている。
このため、充電時には1.65V以上の電圧が必要であるが、放電時は1.25Vの電圧しか取り出せないという現象が発生してしまう。
されど電圧の低さに関しては複数の電池を直列につなぐことで補えるので、設計の工夫で克服できる問題でもある。
こうして開発された充電式空気亜鉛電池はFeLuZnと命名された。
空気亜鉛電池を発明したフェリー(Ferry)と亜鉛の電解法を発見したルトランジェ(Lutringer)、そして亜鉛の元素記号のZnを組み合わせた名前である。
FeLuZnが登場した結果、FFRは民間・軍事共に更なる飛躍を果たすのである。
403:モントゴメリー:2023/03/15(水) 22:54:32 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
以上です。
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鉛蓄電池を極めたので、次は亜鉛電池を極めました!!
これが実用化されれば、まさに「革命的」でございます。
電気自動車や再生可能エネルギーの利用なども大きく前進することでしょう。
(逆に言うと、本気で電気自動車普及させたいんだったら、これくらいやらないと、ね……)
最終更新:2023年05月03日 20:50