698:モントゴメリー:2023/03/22(水) 23:50:38 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
漆黒世界SS——受け継がれる脅威——

「目標を視認、各員準備はいいか」

時は20世紀も後半、所は北半球のどこか、深夜の事。
山奥に建てられた掘っ立て小屋の群れを包囲するように展開する一団があった。
彼らは大日本帝国の特殊部隊である。
そして彼らが囲む建物は、人類の敵——漆黒の合衆国——の意志を受け継ぐ集団の秘密工場であるのだ。
諜報活動の結果この場所を突き止めた彼らは、人類の敵を抹殺すべくやって来たのである。
指揮官は油断こそしていないが、状況を楽観視していた。
事前情報によれば、ここをアジトにしている集団は数百名程度の小集団。保有する武器もたかが知れている。
悪天候によりヘリの援護は取りやめになったが、軽装甲車で十分お釣りが来るだろう——。

「突入」

指揮官の号令の下、人類の剣たちは闇を切り裂くべく吶喊を開始する。
完全な奇襲となったそれは戦闘と呼べるものではなく、「駆除」と呼ぶべき作業であった。
しかし、最奥の建物から出てきた「それ」により状況は一変する。

「隊長、戦車です。3名やられました」

部下よりの報告を受け、指揮官は内心で舌打ちした。
ここにいる可能性があることはわかっていたが、この程度の零細組織ですら保有していたか。

「それ」……M7/T-50戦車は幾度もなく人類の前に立ちふさがって来た相手だ。
あの戦争中は補助戦車としてどの戦場にも現れた。
「町工場でも作れる」と言われた生産性は脅威の一言だった。
その脅威は戦後でも健在であり、ある意味では戦争中よりも厄介となった。
漆黒の合衆国の意志を継いだ者たちにとって、この戦車は非常に頼りとなったのである。
トラクターやバス、果ては乗用車の部品すら流用して製造が可能だったので世界中の地下組織はM7/T-50戦車を作り、各々でアレンジを加えていった。
今回の敵は、大砲が入手できなかったのか機関砲を装備している。

「落ち着け、対戦車班前進。奴の息の根を止めろ」

当然、遭遇回数が多いと言うことは対処法も用意されるというもの。
特殊部隊側も携帯式対戦車火器を持参し、もしもの時に備えていた。
M7/T-50の装甲は最大でも50㎜。随伴歩兵を掃除してから落ち着いて対処すれば何の問題もない。
対戦車班は熟練の動作で機動し、目標へロケット弾を放つ。
それは狙いたがわず命中し、M7は停止……しなかった。

「何!?」

指揮官はここにきて初めて動揺する。他の隊員も浮足立った。
M7/T-50戦車は何事も無かったように動き回り、周囲に銃弾の雨を浴びせる。

「まさか…複合装甲だと!?」

そのまさかである。
この組織は確かに零細組織ではあったが、とある大きな組織の傘下だったのである。
そして、その上部組織はガラス繊維式複合装甲を生産できる設備を有していた。
さらに、M7/T-50戦車は複合装甲を装備できる発展性を持っていたのである。
(重量バランスが保てていたら、大抵の装備は載る)

翌日、定時連絡が無いことを不審に思った司令部が出した偵察隊が見たものは、特殊部隊員たちの変わり果てた姿と、破壊された軽装甲車。
そして何処かへと続いていく履帯の跡であった……。

699:モントゴメリー:2023/03/22(水) 23:52:53 HOST:116-64-135-196.rev.home.ne.jp
以上です。
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「会いに行ける戦車」こと庶民派戦車M7/T-50ちゃんでございます。
前にもチラッと書きましたが、この子は漆黒ミームがある所には必ず現れます。
「人類の敵機甲部隊スターターキット」でございます。
どんな組織も彼女を土台として成長するのです。

M7/T-50ちゃん「マスター(漆黒合衆国ちゃん)からの最後ミッション、それを果たすまで私は止まりません。何年かかっても『お父様』の前へとたどり着いてみせます…!!」

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最終更新:2023年05月03日 20:55