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683:奥羽人:2023/03/22(水) 12:32:45 HOST:sp49-109-5-59.smd01.spmode.ne.jp
「どうすっかなぁ……コレ」

21世紀を迎えて少し。
この時、日本という存在は過去の所業の報いを受けることとなった。

「棄てるにしても勿体無いというか、面倒というか……」

彼の目の前の書類には、セキュリティクリアランスで言えば最上級レベルの国家機密が記されている。
その内容は、かつて世界を恐怖の渦に陥れかけた終末の化身。

“待機中/廃棄待ち核弾頭 52000発”

それは、冷戦時代の遺産。
かつて超大国として政経軍全面で競い合わなければならない米ソとの、ある意味強制参加の仕方ない競争によって積み上げられた和製核弾頭。
その数、残り5万発以上。

力を見せなければならない時代だったとはいえ、よくもまあ、こんなに沢山作ったものである。

しかし、冷戦が終わってもう暫く経ち、日本もそろそろ核軍縮に着手しようと決意。
緊張緩和のポージングとして参加した新START(新戦略兵器削減条約)によって、日本の持つ核兵器は米露と同程度の実戦配備2000発、備蓄3000発の計5000発まで制限されたのだった。

その結果として、全盛期(6万発弱)から維持し続けていた戦略・戦術核弾頭の殆どを、不良債権として抱え込む結果となった。
下は100t級の歩兵用戦術核砲弾から、上は10Mt級の大型戦略核弾頭まで。バリエーションは豊かである。

「ウランもプルトニウムも、気軽に売る訳にはいかないし……発電用とするにしても、確か民間発電もそろそろ核融合炉に切り替えていけそうって会合で言ってたしな……」

「では、原子力ロケットなどは、どうでしょう?」

しかし、ここ日本の中枢にて横の繋がりと広がりはかなりのもので、悩んでいればそこに新たな提案を持ってくる者もいる。

「ロケット?」

「はい。原子力ロケットです」

彼らから、シンプルに纏められた簡単な小冊子を手渡される。
読み終わったら適切に破棄しろ、との注釈付きのやつだった。

「現状を鑑みて、“昭”号計画の主目標はその大部分が達成されたと判断しました。なので、我々は次なる大目標、“令”号計画を順次始動させていこうと考えております」

その計画書には、大まかな今後のタイムラインが記されている。
それによると、今を宇宙進出時代最初期とし、進出基盤の早期建造と2020~30年代まで火星圏以内と一部アステロイドベルトの広域な開発を実行。
2200年代を目処に本格的な他惑星進出と宇宙移民に移行するという壮大な計画だった。

「なるほど、この最初期に使うつもりなのが……」

「はい。原子力ロケットになります」

小冊子には、建造予定のロケットの概略図も乗っていた。
詳しい数値は専門家ではない為わからなかったが、それでも従来の化学ロケットよりも速く、強い……と強調されていることは十分理解できた。

「概念自体は他国でも数十年前からあります。表向きのワークホースとしては最適でしょう」

おそらく、自分の知らないところではもっと凄いロケットなりなんなりが作られているのだろうが……夢幻会の経験から言うと、テクニカルハラスメントはやりすぎた場合、それはそれで面倒な事になる場合も多い。
他国が必死に追い付こうとして予想できない行動に出ることが結構あるのだ。
昭号計画がほぼ達成されたとはいえ、まだまだ気を使う場面は多い。

まぁ、その制限も徐々に弱めていくつもりなのだろうが。

684:奥羽人:2023/03/22(水) 12:34:02 HOST:sp49-109-5-59.smd01.spmode.ne.jp
「先ずは宇宙で採掘した資源を使ってモニュメントを作ります。それを東京や大阪に打ち立てて、宣言するのです……『宇宙は直ぐそこにあるぞ』と」

彼は語調を高めて語る。
その姿には、強い純粋さを感じることができる。

「随分と楽しそうだな」

「えぇ、楽しいですよ……」

そう答えた彼の目は、ほんの一瞬だけ深い、深い漆黒の、人間とは思えないような色に見えた気がした。




近似世界 2011年
夢幻会 “令”号計画の端緒


「……北米の非人類共に急かされる必要のない宇宙開拓です。楽しくない筈がありません」


────“怪物と戦う者は、自らも怪物にならぬよう注意せよ。 深淵を覗く時、深淵もまた此方を覗いているのだから”

685:奥羽人:2023/03/22(水) 12:37:07 HOST:sp49-109-5-59.smd01.spmode.ne.jp
以上となります。
戦後もずっと相容れないヤバい存在と闘わなきゃいけない世界って怖いですよね。

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最終更新:2023年05月05日 23:53