962:トゥ!ヘァ!:2023/04/12(水) 18:32:12 HOST:FL1-122-133-166-42.kng.mesh.ad.jp
日独戦勃発! もしも北米へのゲートが開いたら。


1941年初頭。ポーランド西部に突如謎の異空間が現れた。
後にゲートと呼ばれるようになるそれはなんとアメリカ合衆国と繋がっていたのである。

ポーランド西部に三か所ほど現れたそれは、それぞれ米五大湖付近、米南部、米東海岸地域に繋がっており、まさにアメリカの心臓部を突ける位置であった。

そして当時のポーランド西部はドイツの支配下である。
そんなドイツの支配下であるアドルフ・ヒトラーこと伍長はこの話を聞いてティンと来た。

「ソ連じゃなくこのままアメリカ攻めてもいいんじゃね?」と。

というわけで表向きはアメリカにはゲート通しての侵攻なんてしませんよと言いながら準備を進め、大凡一月事には北米に大挙して踏み入れた。

この時期のアメリカなんてのはようやくM3中戦車生産し始めて、M4なんてまだ存在もしていない時期で、陸軍の動員もほとんど行われていない時期だったため、独ソ戦のために準備を進めていたドイツ軍相手にほぼ一方的に蹴散らされ、五大湖、東海岸、南部と重要地域を次々と失陥。

元々白豪主義的思想が強い南部なんて挙ってハイルヒトラーと叫んでドイツ軍を歓迎したほどである。
あと当時アメリカで結構な人口を誇っていたドイツ系も挙ってドイツ軍を歓迎した。
更にはこれ幸いとメキシコまでがドイツに迎合してアメリカに宣戦布告。南方からの侵攻を始めた。

そして侵攻から一月も立つ頃にはワシントンDCも陥落し、アメリカはまともな反撃もできずに主要地域のほぼすべてを失陥。
ここに米合衆国はドイツの手に落ちたのであった。



…という急展開で一番慌てたのはどこかというと英国と日本である。
WW2でフランスが死んだばかりなのに、次はアメリカも死んだ。幸い米大西洋艦隊は挙って脱出し、イギリス本土へと合流したが、カナダも現在進行形でドイツに攻め込まれており、遠からず陥落は必須。
このままでは戦争継続すら危ういと英国は強い危機感を持っていた。


対して日本であるが、この世界の日本は英仏へ強いレンドリースを行いながらも戦争への参戦は慎重な中立状態であった。

まあ中国大陸ではドイツやソ連やアメリカが余計な支援をした結果中華民国やら中華人民共和国やら中華帝国やら面倒な連中が跋扈していたので、そちらを警戒していたというのもある。

しかし流石にアメリカにゲートが開いて、そこからドイツ軍が大挙してくるなんてことは想定外であり、米陥落の際には太平洋を挟んでドイツと睨み合いなんてのはごめんこうむりたいというのが正直なところであった。

というわけで日本は急遽艦隊を米国へ派遣。
半ば強引にハワイ、アラスカ、西海岸へ援軍(制圧)を派遣し、どうにかこうにかロッキー山脈以西の地域を確保することに成功。
おまけにカナダ西部もアラスカとの連結のため頑張って維持させた。

内心釈然としないが、ナチスよりはマシと考えた米国残存部隊は挙ってロッキー山脈以西へ終結。
同山脈付近を境界としてドイツの北米方面軍と睨み合いが発生することとなる。


さて。この時期の日本とドイツの関係は非常に悪いといえば悪いのだが、しかしとて両国とも正式な交戦状態にはなかった。

ドイツとて余計な敵は作りたくないし、日本とてドイツを殴るにしては準備のための時間が必要だったからだ。
しかし、その前提は北米が陥落したことにより消え去った。

既に米残党を有してロッキー山脈以西を要塞化する日本と他の北米大陸を支配するドイツでは激突は必須。
ということで1941年6月。奇しくも史実の独ソ戦が勃発したのと同じ日に正式に日本への宣戦布告が伝えられた。
ここに今後数年間続く独日戦が開始された。

963:トゥ!ヘァ!:2023/04/12(水) 18:34:59 HOST:FL1-122-133-166-42.kng.mesh.ad.jp
〇1942年 日本某所 夢幻会 会合

「状況整理しましょう」

会合開始一番に発言したのは我らが嶋田さん。現在の日本国総理大臣である。
彼の発言から次々と報告が始まる。既に戦時なのだからさもありん。皆スムーズに説明を行う。


「北米戦線が始まり既に1年ですがどうにかドイツの猛攻を防いでいます。やはりロッキー山脈は偉大ですね」

「しかし平原の広がる西南部ではやはり損耗率が高いですね。
陣地化こそしていましたがドイツ及びメキシコからの攻撃に我が軍も米軍も手酷い打撃を食らっています」

「カナダ方面ですが、こちらもドイツ軍を中心とした攻撃が激化しています。
現状はどうにか支えていますが、装備で劣るカナダ軍の損耗率が上がり始めています」

「オーストラリアやニュージーランド、インドや東南アジアなどの英連邦諸国からの援軍は次々と到着していますが、問題はやはり装備ですね。
現在は我々が改めて提供した分もありますが、それでも戦線全体で十分な数を供給しきれていません。
各種兵器や装備の更なる増産が必要かと」


「中国方面ですが、アメリカ支援の中華民国がドイツ支援の中華帝国とソ連支援の人民共和国に分割、吸収されました。
現状中帝、中共は共に軽い睨み合いのみで終始してますが、中帝に関しては我が方が支援する満州に攻撃を仕掛けてきております」

「幸い戦況は一進一退ですが、ソ連やその傘下の中共の動きがわからないため出来れば早期に自体を解決するのが望ましいかと」


「欧州、アフリカ方面は完全にじり貧ですね。
アメリカが倒れたせいでイギリスが孤立しています。

我が国もアフリカ大陸周りで支援を届けていますが、如何せん遠すぎるため英国を支えきれるほどではありません。
このままでは英国が降伏するのも時間の問題でしょう」


「南米諸国の態度は一貫しませんね。太平洋側の国々は我が国を支持してますが、大西洋側の国々は言葉を濁しています。
イギリスがあのざまですからね。

中米は現状中立を表明していますが、まぁメキシコ経由でドイツに攻撃されたくはないが、立地的に我が国からも攻撃されやすい。
故の中立政策といったところでしょう。

反対にカリブ海諸国はドイツよりの態度ですね。我が国からの攻撃が早々届きにくいのと、ドイツ制圧下の米南部からの攻撃を恐れてのことでしょう」

「まとめますと中南米は大凡中立でカリブ海諸国がドイツよりです。
しかし国内ではいけ好かないアメリカを張り倒したドイツを支持する声も少なくないそうで、何かあれば一斉にドイツ側に傾く可能性が残っています」


「全体的に見通し悪し。最悪は我が国単独でドイツ陣営と渡りあう必要があるといった感じですか。
全くいい報告がないですね…」


会議を陰鬱な雰囲気が包む。
そんな中で急な一報が届く。

スペイン。近々枢軸側として参戦するという情報である。
また英本土においても厭戦感情の高まりから講和論が強まっており、議会でもドイツとの講和への傾きが決定的になっているというのだ。

そしてトドメにソ連においても枢軸側へ参戦しようとする動きがみられるというのだ。


ここに至って夢幻会はあることを決定した。
戦前からイギリスへの支援のための中継地としてスペインから租借していたカナリア諸島。
そこへ秘密裏に運び込んでいた原爆を用いて火山噴火と津波を起こす作戦。
憂鬱世界でも行った禁忌の計画こと衝号作戦の発令である。

ドイツにとって天祐と思われた、ゲートの出現であったが、それこそがドイツを地獄のどん底に叩き落す切っ掛けとなったのだ。

964:トゥ!ヘァ!:2023/04/12(水) 18:35:59 HOST:FL1-122-133-166-42.kng.mesh.ad.jp
〇年表

  • 1939年 WW2開戦

  • 1940年 パリ陥落

  • 1941年初頭 ドイツ制圧下のポーランド西部にゲート出現。数は三つ。接続先は北米五大湖、南部、東海岸。

  • 1941年2月 ドイツ軍ゲートを通して米本土になだれ込む。米独戦開始。

  • 1941年4月 ドイツ軍が米国内の重要地域及びカナダ東部の過半を制圧。米軍は散り散りとなりながらも西部方面へ退却を開始。
同時期メキシコが枢軸側で参戦。米国西部になだれ込む。

  • 1941年5月 日本の援軍が北米西海岸に到着。侵攻していたメキシコ軍を蹴散らし、西南部に防御陣地を構築し始める。

  • 1941年6月 ロッキー山脈を境に日独の睨み合いが発生。同月中にドイツにより正式な宣戦布告が届き、日独戦開幕。

  • 1942年6月 北米戦線はロッキー山脈前後で停滞。中国戦線はドイツ支援の中華帝国が日本支援の満州を攻撃開始。

同時期英本土では議会が講和に強く傾く。スペインは枢軸側参戦の意思を固める。ソ連が満州侵攻の兆候を見せ始める。

1942年7月 大西洋カナリア諸島にて大噴火発生。それに伴う地震、津波も起きる。
スペイン被災。参戦取りやめ。フランス被災。ドイツが支援に掛かり切りになる。
イギリス被災。一旦被災地復興に力を注ぐことを決定。

北米大陸東海岸被災。同地域に駐留していたドイツ軍に致命的な被害が発生。
カリブ海諸国被災。国家崩壊多数。南米大西洋側諸国被災。国家機能マヒ。

1942年7月 日米加豪+αにより大反撃開始。東海岸被災で混乱するドイツ軍の隙をつき、グレートプレーンズ地帯を打通。
そのまま北米東部に流れ込み、9月までには同地域の開放にも成功する。

1942年9月 ゲートを巡り日独軍衝突続く。ドイツ側もゲート周辺及びポーランドを要塞化し、徹底抗戦の構え。

同時期にカナダの解放達成。メキシコ侵攻作戦開始。11月にはメキシコ降伏。

1942年11月 カナリア諸島における噴火と津波による気候変動により世界中を例年以上の寒冷化が襲う。
ソ連などでは凍死者が続出。ソ連は一旦参戦計画を取りやめ、国民の保護へリソースを回す。

1943年初頭 欧州では変わらず寒冷気候が続き、春の収穫が絶望的との試算がみられる。
英国にて交戦を続けるか、講和するかで再び議会が荒れる。

1943年一月 パナマ運河経由で英本土に日本からの支援が届き始める。
このため継戦派が息を吹き返し始めた。

1943年2月 日本がアジア方面での攻勢を開始。中華帝国は多少善戦したが多勢に無勢であり、4月までには中帝の主要地域及び主力部隊の殲滅完了。5月に講和。

1943年4月 春になっても気温が上がらず凍死者が続くソ連において春どころか夏の収穫も絶望的との推測が広まる。

同時期にソ連は日本と密約を締結。
日本から防寒着、燃料、食料の提供を条件にドイツへの攻撃を行うことを決めさせる。

1943年6月 未だ気温が上がり切らない欧州においてソ連がドイツに宣戦布告。
奇襲的攻撃によりポーランド方面のドイツ軍は対応が後手に回る。
同時期に北米ゲートに向けて日米軍も攻勢を開始。
ソ連軍からの奇襲で混乱するドイツ軍陣地を突破し、ポーランド西部にて日米軍とソ連軍が合流。
両軍司令官が握手を交わす写真は有名である。

1943年 9月 ソ連からの奇襲から立ち直ったドイツ軍がドイツ東部で強固な防衛網を引き、日米ソ連合軍を押しとどめる驚異的な善戦を続ける。

同時期に英本土及び大西洋から大規模上陸作戦ことノルマンディー上陸作戦が発令。
フランスに多数の連合軍が上陸し始め、ドイツは両面作戦を強いられることとなる。

965:トゥ!ヘァ!:2023/04/12(水) 18:37:16 HOST:FL1-122-133-166-42.kng.mesh.ad.jp
1943年10月 各国を想定以上の大寒波が襲う。連合軍、枢軸軍問わず戦闘が停止され、長い冬を耐えることとなる。

1944年初頭 ドイツ軍が大反抗作戦を開始。戦況の決定的な逆転こそ防いだが、東部戦線連合軍はポーランド国境線まで押し返され、西部方面では戦場がフランス内にまで押し返された。

1944年2月 戦況の逆転と国民の厭戦感情を考え、日本軍が原爆を投下。
ドイツのミュンヘンが標的となり消滅する。
しかしドイツはこれに対して強く批判を行い、化学兵器による報復を行う。
東部戦線、西部戦線において報復のガス攻撃により連合軍に被害が続出。
また英本土にも攻撃が届き、民間に少なくない被害が出る。

1944年2月。ドイツのガス報復に対して日本も再度報復を決意。
フランクフルト、ニュルンベルク、ハノーファー、ハンブルク、キール、ドレスデン、ライプツィヒ、ブレーメンに原爆投下。
非常に多くの都市が吹き飛んだが、これは日本が衝号の結果起きた異常気象による寒冷化及び食糧事情悪化を見越し、戦争を早期に終結させようとしたため。


1944年3月 ヒトラーはこの状況でも継戦を叫んだが、これ以上はドイツが持たないと判断した軍部がクーデーターを敢行。
しかし親衛隊に阻止され、ベルリン及びその周辺でドイツ軍同士の同士討ちが始まる。

1944年3月 ドイツ軍の同士討ちを見て東部戦線の連合軍が攻勢開始。
争い合うドイツ軍を両方とも殴り倒しながらベルリンに入場。ヒトラーを始めとする上層部を捕縛。

1944年4月 ドイツに臨時政権樹立。そのまま降伏し、WW2は終結した。



戦後。世界の寒冷化と食糧難に対応するための国際組織が樹立され、各国は異常気象と向き合っていくこととなる。

イタリアなどの枢軸国の多くは国の存続が許されたが、ドイツは毒ガス攻撃の件も相まって存続を許されず、いくつもの国に分割されることとなった。

中国大陸方面では中華帝国が消滅し、人民共和国の天下かと思われたが、寒冷化で余力をなくしたソ連からの支援がなくなり、中共は急速にその勢力を萎ませていくこととなる。

中国では主だった軍閥が消滅したことにより、小勢力同士の小競り合いが続く紛争地帯となり、世界寒冷化と食料不足から他国も手を出す余裕がなくなったため、この紛争状態が数十年続いていくこととなる。

緑の革命により食糧事情の強い日本が強い影響力を持つようになるが、その実態は長引く寒冷化で疲弊するソ連、長らく続いた戦争で疲弊する英国、本土が戦場になったために力をなくした米仏などの疲弊する各国を日本が支える体制となった。

その後欧米では今後同じ災害が起きた時の対処として内陸部または植民地などへの移民が加速。
また寒冷化の影響を受けにくい赤道ラインの国々への投資と食料増加政策の促進が進められるようになる。


1970年代。寒冷化がひと段落してきた時期となり、復興してきたアメリカ、ソ連などが徐々に勢いを取り戻していく中で、相変わらず日本は強い影響力を保持していた。

以降の時代で米ソやほかの国々の戦争や冷戦が勃発するのか、日本はそれにどう巻き込まれていくのかは、現状誰にもわからないままである。

966:トゥ!ヘァ!:2023/04/12(水) 18:38:21 HOST:FL1-122-133-166-42.kng.mesh.ad.jp
投下終了

コンセプトは二つ。

アメリカが主戦場になったら?というのと、ゲートが日本以外の国々を結んだら?です。

アメリカが成り上がったのってやっぱり本土が戦場にならなかったのが大きいんじゃと思ったから書いてみた作品ですね。

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最終更新:2023年05月06日 00:08