82 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/01/29(日) 10:02:12 ID:softbank060146109143.bbtec.net [11/81]
憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「鋼鉄の裁定 -あるいは天空神の見定め-」8.25
- C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月後半 17:43 朝鮮半島 鉄原ハイヴ南方およそ250㎞地点
赤い機体が、独特の「9」という数字を配置したエンブレムのACが、戦場を飛び回っていた。
そう、ナインボール・インレイ。とある惑星から回収されたAIとその機体データを基に開発したAC。
とある世界において、秩序を破壊し均衡を崩すものを排除するために作られたオンリーワンの機体。
それの模造---というには些か別物にまで発展しているAC---が、人類に敵対的な生物であるBETAと戦闘をしているのだ。
『-----』
パイロットであるハスラー・ワンはAIだ。
そうであるがゆえに限界点というのもあるのだが、殊更にこれほどの軍勢と戦うにあたり、人間ではないパイロットは有効であった。
つまり、永遠と続く戦いに飽きることもせず集中力も切らさず、感情にも振り回されず、常に一定のパフォーマンスを発揮し続けるのである。
相手が同じようなBETAであり、尚且つ膨大な数を叩きつけてくるという意味では、相性は良すぎるほどだ。
『排除する』
専用のレーザーライフルで纏めてBETAを薙ぎ払い、もう一方の腕にあるライフルで突撃級をまとめて貫通させ絶命させる。
回避運動とともに繰り出したレーザーブレードで取り付こうとするBETAを寸断、発生したブレード光波だけで数十m先の個体まで切り裂く。
さらにはその高速移動の余波だけでも雑多なBETA---特に小型な兵士級や闘士級や戦車級---を文字通り轢き殺す。
要塞級がのそのそ迫ってくれば、グレネードランチャーから発射された砲弾が直撃し、木っ端みじんに粉砕する。
それらは戦術機以上の速度・精密度・反応性を以てなされていく。
当たり前のように対処が決定し、当たり前のように処理されていく。
さながら、それはビリヤードのナインボールのごとし、だ。
ブレイクショットを打ち、飛び散った玉を淡々と処理をしていき、全てを納まるべきポケットへ納める動き。
しかもそれは一切相手に反撃の余地を残さないランナウト(RUNOUT)。まさにBETAに何もさせないままに、圧倒していっている。
『-----』
しかして、ナインボールを操るハスラー・ワンは、繰り返しになるがAIだ。
感情や自己判断能力はあるにしても、AIであるがゆえにそれらを抑制することができる。
だからこそ、浮かれることも油断することもなく、ひたすらに戦う。
しかし、ハスラー・ワンはやりにくさを感じていた。
それは、自己が載せられているACについてであった。
性能についてではない。記憶に残っている限りにおいて、ハイエンドノーマルACとしてのスペックは決して劣っていない。
熾天使にやや劣るとはいえども、その性能などに関しては優秀そのもの。元々ライブラリに保存されていたモノを再現したこともあり、納まりも良い。
ただ一つ、BETAとの戦闘において殲滅力に欠けている、という点でやりにくさを感じていた。
そう、BETAとの戦いは、基本的には少数対圧倒的大多数という状況下において行われる。
その状況下において求められるものというのは、手数であり、あるいは多を一度に焼き払う大火力に他ならない。
83 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/01/29(日) 10:03:00 ID:softbank060146109143.bbtec.net [12/81]
実際、インレイのアセンブリは汎用的であっても、その火力は決して低くはなかった。
高出力のハイレーザーライフルにグレネードランチャー、合間を埋めるアサルトライフル、数を展開できるイクシード・オービットなどだ。
実際に戦場に出場してからというもの、インレイでの撃破数は当然であるが戦術機の浜風らを凌ぐものであった。
そうでなければおかしいというか、ハスラー・ワンの怠慢に他ならないわけでもあるが、ともかくそれだけ撃破しているのだ。
AL4の部隊であるA-01の面々がこの最前線という言葉も生温い鉄火場において浜風でデータ収集できているのもハスラー・ワンらの援護のあってのことだ。
しかし、そうだとしてもハスラー・ワンはやりにくさを覚える。
恐らくではあるが、A-01の御守役というかカバーを務めている他のパイロットたちも同様だろうと推測している。
前述のように、ナインボール・インレイは極めて汎用的なアセンブリである。
ここで疑問が出る。なぜ、汎用的なのか?火力特化や殲滅力特化というアセンブリになぜしていないのか?
答えは単純だ。
このナインボール・インレイ、あるいはファンタズマ・ビーイングのAやC、そしてリンクスのベルリオーズの役割が関係してた。
彼らはA-01への教官役という役目を負い、日々の訓練を付けていた。
この戦場においては、いざというときのフォロー役であり、あるいは現場指揮官という役目を負っている。
だが、A-01には明かされていない、裏の仕事もある。
即ち、万が一に備えた対人戦闘への対処である。
AL4とAL5の対立は、そのまま地球連合と米国との対立に≒といっても過言ではない。
この帳作戦でさえも、米国は前準備の段階から散々妨害を仕掛け、進行中においても妨害を仕掛けている。
そして、AL4直轄部隊などを直接狙うということも、地球連合では十分に想定できるものであったのだ。
戦場において、撃破されてしまうなどというのは往々にしてあることであり、証拠の隠滅もやろうと思えばできてしまう。
BETAが戦術機の残骸を回収しているというのもあって、隠滅には困らない。
まして米国にはステルスを売りとしたF-22ラプターの存在がある。対人戦を第一義としているこれならば、とAL4は警戒していたのだ。
最も、それがβ世界限定のインチキステルスであり、光学的にも姿を消せる連合からすればステルスと呼ぶことさえおこがましいのであるが。
その種がOSにあり、尚且つ戦術機限定という中途半端なそれに半ば呆れながらも、連合はそのバックドアを叩き潰しているのであるが。
故にこそ、あくまで保険という意味合いが強いアセンブリなのである。
火力特化・殲滅特化でも戦術機を相手にして圧倒するなどそれこそ赤子の手をひねる様なモノ。
さりとて、それをやりすぎてはA-01の仕事を奪ってしまうし、本当に来た場合に手加減がしにくいのも面倒な話なのである。
『続行する』
友軍以外の戦術機の反応は周囲にはない。IFFに応答しない不明機なども確認されず、衛星軌道上からの投下も今のところない。
だから、BETA殲滅を続行する。
いざというときの汚れ仕事を、BETAと戦うことに真摯な若人たちにさせないために備えつつも、そんな彼らをフォローするためにも。
そして、次なる標的めがけ、深紅のナインボール・インレイは飛翔した。
84 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/01/29(日) 10:03:58 ID:softbank060146109143.bbtec.net [13/81]
以上、wiki転載はご自由に。
どこかに入れておきたかった、ナインボール・インレイの話でした。
実はこの光州ハイヴ攻略の話、以前に6~10話くらいで終わらすみたいなことをほざいていたんですよ…
いまじゃ倍以上投下していますね(白目
書きたいことが増えたから是非もなし…
最終更新:2023年05月14日 19:00