820 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/02/05(日) 00:56:09 ID:softbank060146109143.bbtec.net [55/81]
憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「鋼鉄の裁定 -あるいは天空神の見定め-」8.5
- C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月後半 18:49 朝鮮半島 鉄原ハイヴ南方およそ200㎞地点 シロガネⅡ格納庫
AL4直轄部隊のA-01及びその随伴部隊は、母艦であるシロガネⅡの格納庫へと順次収まり、補給や整備を受けていた。
直掩となるザンジバル級などを引き連れて合流したシロガネにSFSで戻っての突貫作業だ。故にこそ、格納庫内は大わらわであった。
何しろ、A-01は凄乃皇を筆頭に、パーフェクト・ジオングにガーリオン、戦術機である浜風、さらにナインボール・インレイらで構成されている。
その総数はβ世界の主観で言うならば大隊規模でしかない。しかし、戦術機だけでなく、多様な戦力の混成故にそれは単純比較できなかった。
当然のことながらそれらの整備補給が並行して行われるということは、それだけの人員が動き、また作業が行われるということ。
まして、超巨大なHMFFたる凄乃皇や40mという全高を持つパーフェクト・ジオングなどがいるのだ、その整備や補給点検に費やされる人員は馬鹿にならない。
そこに動員されているのは何も人間だけではない。作業用のロボットやシステマティックなメンテナンス設備も含まれている。
人がこなす以上のペースで作業を行い、サクサクと点検などのタスクをこなしていく。その技術力の高さも窺えた。
そしてさらに驚愕すべきは、それらを収容してもなお、さらに戦力が運搬できるというシロガネⅡの母艦能力であった。
A-01が戦場から一時離脱した分、鉄原ハイヴから沸きだすBETAの排除のためにリオンが投入されたのだが、これらもシロガネⅡの艦載機だ。
一個大隊が出撃していったのに混雑しなかったと言えば、どれほどかは言うまでもないであろう。
そういうものとして作られたのだから連合としては当然であるが、β世界側の主観ではそうとは言えない。
そして、僚艦のザンジバルからも続けてMSなどが出撃、膨大な数を叩きつけてくるBETAを高い火力による殲滅で圧倒しつつ、光州ハイヴへの到達を阻止し続けていた。
先ほどまでのA-01による戦闘が高い個の力であるならば、こちらは数と安定した質による暴力であった。
一点物という高級戦力が強いのは当たり前ではあるが、それらを数を揃えて普及させるという観点で見ると、それは国力の高さの証明となるのだ。
事実として、先ほどからBETAが鉄原ハイヴから出現するペースと数はあまり変化していないにもかかわらず、戦線は維持されている。
いや、維持されているどころか、A-01が一旦母艦に戻ってからバトンタッチして、その後50㎞も前線を押し上げていたのだ。
これによって光州ハイヴへ向かうBETAは大部分が阻止されていることも考えれば、どれほどのモノか言うまでもない。
さて、そんな状況の戦場において、シロガネの格納庫に内設されているブリーフィングルームに、A-01らは再びそろっていた。
そして、ブリーフィングを取り仕切る夕呼は、平時ならばとんでもない任務を言い渡した。
「さて、これよりA-01を含むシロガネⅡ艦載機部隊は鉄原ハイヴに突入するわ。
目的としては、現在BETAが建設中の要塞砲に分類される光線級の排除、およびハイヴ内部の調査になるわ。
最終的にはハイヴ最奥の反応炉の破壊が目標となるわ。これはヴォールク連隊を超える名誉になるわよ」
そりゃそうだ、と誰もが頷いた。
ハイヴ突入が行われたのはミンスクハイヴ攻略を目的としたパレオロゴス作戦、ポパールハイヴ攻略を目的としたスワラージ作戦がある。
さらにここには主観的には曖昧ではあるが横浜ハイヴ攻略作戦において部隊が突入したことは記録に残っている。
だが、逆に言えば長いBETAとの戦いの中において突入できたケースはたったの3度。詳細なデータ採取ができたのがたったの3回にすぎないのだ。
それだけBETAの巣であるハイヴに突入することが危険であり、尚且つそのために膨大な戦力を用意しなければならないということでもある。
そもそも、だ。この巨大な航空戦艦で接近して突入するということ自体が前代未聞なのである。
ヴォールク連隊を超える名誉とは言うものの、前提条件が違いすぎるのではと誰もが思う程度には、状況が違いすぎる。
821 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/02/05(日) 00:57:01 ID:softbank060146109143.bbtec.net [56/81]
「戦力配置は……まあ、口で言うより図で示した方がいいわね」
夕呼の操作で次のスライドがモニター表示された。
「ここが鉄原ハイヴ…で、そこからおよそ200㎞の地点にこの艦隊はいるわ。
ベルリオーズ、ハスラー・ワン、Aの3名の率いる部隊が先に降下、発見されている門から突入予定よ。
これはメインシャフトに通じることが地形走査によって判明しているから、いずれは合流できるはず。
そして、A-01本隊は凄乃皇と共にハイヴ直上までシロガネⅡで接近、そのまま飛び降りて突入するわ」
スライドは説明に合わせるように表示された戦力を移動させ、ハイヴの内部へと浸透していく様を移している。
「現在、このメインシャフトにはBETAが何らかの工事を行っているのが確認されている。
それを直近で観察及びデータ採取を行い、然る後に破壊するわ。
そして、メインホールに到着後、反応炉の破壊---いわゆる頭脳級の排除を行うわ」
作戦としては非常にシンプル。
戦力をいくつかのルートに分散させ、そのままハイヴに突入させ、反応炉を破壊するというものだ。
ただし、と夕呼は付け加える。
「地球連合が言うところのISA戦術を今回の突入作戦では採用するわ。
母艦能力を持つ戦艦で一気に敵陣を突破、然る後に艦載機で最重要目標のみをピンポイントで撃破することにより、相手の首を落とす。
人間同士の戦争で言えば斬首戦術っていうものになるわね」
ふざけた物よね、と付け加えられた感想が、夕呼だけでなくβ世界におけるISA戦術への感想でもあった。
質の高い少数部隊を一点に集めて、敵の群れを突破させ、重要目標を排除する。説明されれば、まあ、分からなくもない作戦ではある。
だが、リスクや危険性が高いどころの話ではないのだ。
確かに、膨大な群れや数を全部相手にするのではなく、手薄なところを突けば損耗を最小限にして突破ができる。
高速で突っ走ってしまえば包囲されて多勢に無勢でどうにもならない状況を回避できる。
そして敵の中枢---この場合ハイヴの反応炉---を破壊できればBETAは即座に離脱を開始するため安全確保につながるのも事実。
(けれど、それは夢想論)
そう、これははっきり言ってしまえば、そうなればいいな、という願望が大きい。
そうなればいいが、かといって常にそのようにはならないのが常だというのがまぎれもない事実なのだ。
こんな夢想な戦術が通用し、ハイヴが攻略できるならば、ここまで人類は追い詰められていない。
(と、否定したいんだけど……)
そう、これは否定できない。
何しろ、これを地球連合は何度となく採用し、実際に成功させてきた実績を持つのだ。
それも、宇宙の運命だとか人類の存亡だとかそういうのをかけた、そんな何度も行われた外敵との戦争においてである。
実際に成功させてきた国や軍隊が言うと説得力が違う。そして、その為の戦力まで融通されているのだから、無理とは言いづらいのだ。
(そして、こいつらもやる気だし)
822 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/02/05(日) 00:57:46 ID:softbank060146109143.bbtec.net [57/81]
この説明を受けたA-01の面子は、全く悲観していない。
これから全体未聞の方法というか戦術で、危険極まりないハイヴに突入するというのに、強い意志を向けてきているのだ。
新兵にありがちな万能感や蛮勇な気質ではない。やれるのだという自信に裏打ちされたものだった。
それもそうである。A-01は大洋連合からの派遣戦力と共に、という条件付きながらも、膨大な数のBETAを、数万単位のそれを捌いて戦線をずっと支えていたのだ。
それがどれだけ異常なことか、これまでのBETAとの戦いにおける損耗率だとかを参考にすれば素人でもわかる。
それに、つい先日まで訓練部隊にいた連中まで、まるで歴戦の衛士の顔をしているのがわかる。
これもまた、白銀武による因果流入の結果であろうというのは夕呼の仮説だ。
加えて、地球連合から派遣されてきた教官達に先進的な戦術や操縦技術を教えられ、鍛えられたことで、教官だったまりもさえ歯牙にもかけなくなった。
いや、まりも自身も強くなっていたはずであるが、教官を飛び越えるようになってしまったのだ。
子飼いの戦力が強くなったことを喜ぶべきであるのか、はたまた訳の分からない事態になっていることを悲しむべきか。
ともあれ、である。
「言うまでもないことだけど、これは特攻作戦なんてものじゃない。
勝算もあるし、計画もあるし、無茶とかそういうものではない。
ちゃんと全員帰還するところまでが任務よ」
自分も含めて、と心の中で付け加える。
「確かにあんたらは強い。
けど、たかだかハイヴ1個と釣り合うものじゃないわ。ハイヴを落としたけど命も落とした、じゃ割に合わない。
だって、まだハイヴは山ほど残っている。BETAだって、数えるのも面倒なくらいにね。
つまり、途方もなく先は長いのよ」
だからこそ、ここで躓くなど問題外なのだ。ハイヴを一つ二つ潰した程度で喜ぶのは甘い考えだ。
ハイヴを一つ残らず潰し、星の数のように存在するBETAを駆逐し、ようやくBETAとの戦いは終わるのだ。
そして、今度はBETAが再びやってきた時に、あるいはBETA以外の侵略者に備えなくてはならない。
珍しく感情的だ、と自分を分析し、その上で夕呼は〆の言葉を発する。
「勝ってきなさい。勝つのよ、いえ、勝つことは確定事項。
それ以上の戦果を挙げてきなさい!」
「了解!」
その言葉に、A-01は一斉に返答。それを以てブリーフィングの終了とし、各員が乗機へと向かっていく。
夕呼もまた同様だ。自分自身が戦術機ではないにしろ、ハイヴという場所に飛び込むのだから。
(まぁ、地球連合から見れば鉄火場でも何でもない場所なんでしょうけどねぇ)
ただ、油断はならない。
BETAがこれまでの行動パターンとはまるで違うことをしてくることはほぼ確定だ。
あの要塞砲型の光線級の時点でもすでに変化しているのだから、他の所でも何か未知のことをしてくることは確か。
鬼が出るか蛇が出るか。まあ、BETAが出てくるのは確定であるが、どんなものが出てくるか。
ともあれ、今作戦において重要な役目を果たすことがAL4の、ひいては自分の今後に関わってくるのだ。
手を抜く理由など存在しないし、らしくもなく全力をぶつけることになりそうである。
そんな思惑のある夕呼を乗せ、シロガネⅡはいよいよ鉄原ハイヴという戦場へと飛び込むべく、加速を開始したのだった。
823 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2023/02/05(日) 00:59:40 ID:softbank060146109143.bbtec.net [58/81]
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このまま寝ます、おやすみなさい。
感想返信は起きてからやります。
私事ですがデススト、クリアしました…
ああ、クリアしてしまったと、そう思えます。
DS2が来る前に!と思っていたのですが、いざクリアしてしまうと、喪失感がやばいです。
ああ、もう言葉が足りない…
最終更新:2023年05月14日 19:09