4 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/02/18(土) 00:53:20 ID:softbank060146109143.bbtec.net [2/110]
憂鬱SRW 融合惑星 マブラヴ世界編SS「帳の降りた後に」
- C.E.世界 融合惑星 β世界 β世界主観1999年9月後半 日本列島 地球連合ネットワーク上
『そういえば……BETAはネクストを、というかコジマ粒子を模倣しないのでしょうか?』
その疑問は、帳作戦が終わり、リンクス間での任務完了報告(デブリーフィング)を行う中で、刹那がポロリと漏らした言葉だった。
帝国呼称「帳作戦」において遊撃戦力として大型のBETAの排除や戦場の火消しを担当した彼女は、期待通りの活躍をした。
米国の度重なる妨害や工作によって混迷する戦場を飛び回って事態の収拾を行い、戦場を円滑に進め切ったのだ。
勿論彼女だけの功績ではないにしても、文字通り戦場を飛び回りその戦闘力を見せつけた山猫の活躍は大きかったのだ。
そんな彼女は、戦場の中において、そしてBETAについて調べた中で一つの疑問を抱いていた。それが、冒頭の言葉であった。
BETAにはそれなりの学習能力がある、というのはこのβ世界から得た情報であり、連合でも実験で確かめられたこと。
光線級の登場などその最たる例であろうし、母艦級による後方浸透攻撃など人類の弱点を突いたと言えるだろう。
だが、BETAとの戦闘において用いられたMSやネクストに対しての対応策はまるで見られていない。
精々が光線級の数が増え、撃ち落そうと必死に照射してくるばかりであったのだ。
そして介入が始まってからそれなりの時間が経過し、対策を打ち出してくるであろう期間が過ぎても、それは変わらなかったのだ。
オペレーション・ジュピターでも結局のところ具体的な対策と言えるものは出現せず、刹那達リンクスは大いにその力をふるえたのだ。
『ああ、そのことですか』
その問いに答えたのは流星だ。
ネクストに限らないが、地球連合がゆする戦力を戦線投入するにあたって、
夢幻会が懸念したのがBETAの進化だ。
二次創作やキャラクターを増やしたい派生作品、あるいはソシャゲーではBETA側へのテコ入れの一環でよくあったこと。
また、二次創作においてもBETAがどの程度対応してくるかは常に議論の種になっていたことだ。
加えて、その知識を抜きにしても、地球連合はBETAのことを徹底して調べていた。その中で建てられた予測があったのだ。
『端的に言えば---憶測も含みますが---模倣する「元」がないのでしょうね』
『模倣する、「元」……?コジマ粒子など、ネクストはばらまいているではありませんか』
その指摘は尤もだ。
ネクストはプライマル・アーマーを筆頭に、推進剤の代わりに使い、あるいは慣性制御やコーティングなどで活用している。
その特性上、活動する戦場においてはコジマ粒子がかなりばらまかれることになる。
嘗てはそれが深刻な環境汚染を引き起こしたこともあるのであるが、まあ、それはさておき。
5 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/02/18(土) 00:54:00 ID:softbank060146109143.bbtec.net [3/110]
つまり、刹那が言いたいのは、模倣する先であるコジマ粒子があるならばBETAも取得してまねできるのでは?ということだ。
しかし、それに対して「元」がないという回答。これの意味するところとは。
『ええ、確かにコジマ粒子はネクストによってばらまかれます。
ですが、あくまで結果として生み出されたコジマ粒子を得られはしても、どのように作り出すかはわかっていないのでしょう』
『なるほど、言い方を変えれば人類にとってのG元素か』
『?ええっと……?』
タケミカヅチは流星の言葉に納得を作るが、刹那はそうではないようだ。
『おそらくBETAは、ネクストの驚異的な性能が未知の粒子によるものとは理解している可能性があります。
ですが、入手はできても、性質を調べることができても、どのように精製されるかはわかっていないのです』
『ああ、なるほど……』
流星の補足とタケミカヅチの例えで、刹那はようやく点と点が繋がったようだった。
『つまり、コジマ粒子の生成を行うベースマテリアルがなんであるか、あるいはコジマ粒子の精製手段が不明で、戦場で集めるしかないということですね?』
『ええ』
夢幻会はBETAというのは有機生命体型資源採掘装置でしかないと知っている。
あくまでも戦闘などを行っているつもりはなく、災害や脅威の排除としか認識していない。
そのために現地にいる個体を改造するなどして対応することはあっても、それには限界というものがあるという推測があるのだ。
ある種のプロテクト、あるいは本業である資源採掘に専念させるためのプロトコルがあるのではと。
無論、これは確証はないために伏せられ、夢幻会以外では仮説レベルの話でしか開示されていないことだ。
『BETAもネクストに群がってきて、あるいは捕まえようとしている動きは戦場で何度か見たな。
あれもコジマ粒子の発生源を得ようとした結果か……』
『そういえばそうね。届きもしないのに足元に群がってきて、しょうがないから対処したのを覚えているわ』
日本において反攻作戦に参加したタケミカヅチと黒子御前には思い当たることがあった。
コンピューターなどに強く惹かれるという特性のBETAにしては、いやに執拗に攻撃や包囲を受けた記憶があるのだ。
まあ、その程度であるならば容易く排除できたので、結局は成功していないであろう。
そも、BETA程度の弱い相手に対してネクストが負けるなどよほどの間抜けでなければありえないのだが。
『BETAは恐らくですが、コジマ粒子を調べ、それを生み出す方法を知りたがっている可能性があります。
ですが、それは現段階ではうまくいっていない、あるいはそれができない状況にあると推測されます』
だからと言って油断はできない、と流星は付け加えた。
『これはMSにも通じることではありますが、動力源、あるいは炉心の構造がわかるようなものがBETAに回収されると恐らく危惧されたことが起こるでしょう。
コジマ技術を用いた戦力が早々に負けることはない。けれど、絶対ということはない。
BETAが余計な知恵や力を付けないためにも、ここは徹底してもらいたいと思います』
『承りましてよ』
ようやく刹那は納得できた。まあ、寄ってくるBETAは軒並みチェストせよ、というものであったが。
ただ、それをおくびにも出さない程度には、刹那は体裁を取り繕う常識はあった。
6 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/02/18(土) 00:54:49 ID:softbank060146109143.bbtec.net [4/110]
『あとは、そうですね。BETAはG元素に合わせているため、それ以外への適応力がないというのも推測されています。
今でこそコジマ粒子は安全性を確保していますが、本来は分子レベルでの破壊能を持つ危険粒子ですしね』
『……そうでしたわ。コジマ粒子は根本的に危険でしたものね』
『先人の苦労や濫用からの復興……それを経て、コジマは危険だけれど安全に管理し活用できるものになったに過ぎない。
本当に研究者たちには頭が上がらんな』
『全くですよねぇ……』
特に日企連世界の虚憶を引き継ぐ面子は感慨深く吐き出す。
第二次リンクス戦争に勝った後は、それにかなり苦心したのだ。
戦争経済に費やしていたリソースを、戦災復興や戦後秩序構築に振り分け、そして余剰と技術を注いでもなお苦労したそれ。
この世界において速やかに対応できたのはその時の苦労と経験を引き継いでいるからだ。
そうでなければ、欧州やアフリカなど未だに不毛の地であり、人が生活できない状況が続いていたであろう。
ともあれ、である。
『分子破壊能という特性を制御できないうちは、BETAも早々に模倣して使うということはできないでしょう。
ですが、我々がうっかりヒントになるようなものや何らかの影響BETAに与えてしまうと、どうなるか分かったものではありません』
『そこは要注意か』
実際、電磁投射砲の試射とそのモジュールユニットがBETAに回収されたことは、BETAに多大な影響を与えた。
それこそ、乾坤一擲の桜花作戦が危うく失敗しかねない事態につながりかけた程度には、影響を与えたのだ。
そこら辺の危うさに関しては、TEに詳しい人員からβ世界介入にあたってかなり真剣に報告されている。
人類にとっての刃であり牙であるかもしれないが、扱いを間違えばこちらを向いてもおかしくないのだ。
『今回はそのようなことはなかった……ですが、今後はどうなるかはわかりません。
改めてですが、参加するリンクスの皆さんは気を付けてください』
『了解』
『ラジャー』
『承知』
リンクスたちがそれぞれ返答を送ってくるのに満足し、流星は次の議題へと話題を移す。
『では次に、インドにあるハイヴ攻略計画について……』
山猫たちの会議は続く。
軽い言葉で、戯れでもすべてを焼き尽くし得る候補者たちが、BETAを滅ぼす算段を立てる。
BETAにとっても、BETAと長らく対峙してきたこの世界の人々にとっても、それは恐ろしいものであっただろう。
そんなふうに扱うほどに、自分たちの世界は軽く、また相手は力を有しているのかと。
7 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2023/02/18(土) 00:55:35 ID:softbank060146109143.bbtec.net [5/110]
以上、wiki転載はご自由に。
BETAはコジマを模倣できないの?という問いに対する答えみたいなSSでした。
G元素特化、尚且つプロトコルやプログラミング、更には融通の利かなさで無理ってことにしています。
悪しからず。ではおやすみなさいませ。
最終更新:2023年05月14日 19:22