125 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/03/02(木) 22:55:18 ID:softbank060146109143.bbtec.net [10/89]

憂鬱SRW アポカリプス 星暦恒星戦役編SS「錆銀の国」0




 現地時間にして星暦2147年8月9日を以て、オペレーション・ブル・ブレイクは完遂された。
この作戦の成功は各国にとって一方面が完全に開放された、という大変喜ばしいニュースとなった。
四方をレギオンに包囲されている状態だった国が、一つでも戦線を恒常的に開放できたというのは、犠牲を減らし、戦力を浮かせる要因となるのだから。

 しかし、同時に、それはある種のデッドラインでもあった。
 即ち、サンマグノリア共和国との問題を解決する時間が来たということである。
 これまでは各国がサンマグノリア共和国において起こったことや起きたことを把握はできていた。
その反応については言うまでもないことであり、即座にサンマグノリア共和国への対処や宣戦布告などに動きかねなかった。
 だが、それはなされず、延期になっていた。
 なぜか?それは図らずもレギオンの包囲によって守られているサンマグノリア共和国へたどり着くことが難しかったためだ。
敵陣突破と言う手を取るか、あるいは連合の手を借りるというのもあったが、ことは星暦惑星の問題だ、面子的にも自力が望ましかった。
その問題を解決できたのがオペレーション・ブル・ブレイクであり、国家間を結んでいた鉄道を利用することによって大戦力を動かせるようになったのである。

 加えて、戦力の不足というのがあった。
 サンマグノリア共和国の現行の領土はグラン・ミュールの内部という、元々の領土から見れば狭い範囲ではある。
それでも、グランミュール内の人口は数千万人はおり、尚且つ面積としても馬鹿にならない範囲が壁の内側なのだ。
生半可な戦力で制圧することは難しく、レギオンと相対しながらではねん出が難しかったのだ。
これに関しても、作戦の成功により余剰の戦力が生まれたことと、各国が戦力を出し合うことにより、解決のめどが立った。

 そして、これが最大の原因でもあったのだが、各国の世論がそろそろ抑えられる理由を無くしたことにあった。
 これは語るまでもないだろう。各国世論は地球連合経由で知ったサンマグノリア共和国のあれこれに沸騰していたのだ。
本来あった歴史の流れと異なり、レギオンに侵略を受けて滅亡しかけというわけでもなく、サンマグノリア共和国は未だ健在。
 そうであるがゆえに、責任やら謝罪・賠償・その他追及などを行うのをためらう理由など全くなかったのだ。
ただでさえエイティシックスという問題を地球連合が対応しているというのも、各国にとっては焦りとなった。
他所から来た勢力に対処を丸投げしたままでは面子の問題にかかわるのだ、と。

 ついでに言えば、開戦以来、祖国であるサンマグノリア共和国との連絡が途絶えていたサンマグノリア共和国国民の問題もあった。
何もサンマグノリア共和国国民は共和国にしかいないわけがない。仕事・旅行・留学あるいはその他要因で他国へ移住したり滞在していた人だっていた。
そんな人たちが、ようやく手に入れた祖国の情報を吟味した時、何が起こるのかに関しては、これも言う必要はないだろう。
なまじ同じ国の民であるからこそ、その反応は激烈なモノであったとだけは言っておこう。

126 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/03/02(木) 22:55:56 ID:softbank060146109143.bbtec.net [11/89]

 そういうわけもあり、前述の条件が解消された直後から、抑えられていた世論が再び沸騰したのである。
 ついに状況は整ったのだから、と。
 各国首脳部にしても、その声は無視しえなかった。
 政治形態などに際などはあれども、各国は国民の声をないがしろにしたり、弾圧するなどはできないことだった。
 だから、以前から対共和国戦に向けた準備は進められていたのだ。国民のガス抜きも兼ねてそれは適宜公表されており、意見が沸騰しすぎるのを防いでいた。
 そこに来てのオペレーション・ブル・ブレイクの成功と各国との物理的なつながりの回復である。もはやためらう理由はなかった。

 ついでに言えば、連合から届けられた別の情報を基に、以前から準備を整えていた「それ」を決行に映すことを決断したのだった。
未だにオペレーション・ブル・ブレイクの後片付けなどがある中であっても、さらに軍事行動を選ばせた理由。
それは星暦惑星から見た外宇宙にて「宇宙怪獣」が確認されたということであった。
正確に言うなれば、それは生命体の探索を行うと目される「偵察」の群れであり、即座に地球連合宇宙軍により撃滅された。
 しかし、撃滅はされたとしても、そこに宇宙怪獣を倒す何者かがいるということは伝わっているであろうことはほぼ間違いない。
 元より宇宙怪獣は未知の手段を以て生命体を発見し、膨大な距離を飛び越えて襲い掛かってくる埒外の怪獣だ。
この星暦恒星系から見た外宇宙というのは、宇宙怪獣という尺度で見れば、それこそ一息に飛び越えられる距離でしかない。
それこそ、星暦惑星そのものを、そこにいる生命体を探知された可能性は十分にあった。

 以前から地球連合が警告していたそれが、ついに指呼の距離にまで迫ってきている。
 うかうかしていれば、惑星ごと滅ぼされるかもしれない。
 それを理解したからこそ、そのことで有耶無耶になることを避けるべく、急ぐことになったのである。
宇宙怪獣が攻めてきてこの惑星が破壊されてしまうと、証拠隠滅になってしまうことでもあるから。
出来るだけ早期にサンマグノリア共和国の問題を「最終的解決」をしないまでも、苛烈に解決することはほぼ確定。
しかも迅速かつ正確に、という注文付きでもあるのだから、なおのこと厄介な話だ。

 それは各国もエクソダスしなければならない、という事情も加わっているのである。
 宇宙怪獣が侵攻してきた時に備えたエクソダスは既に開始されてはいる、けれど、いざとなるまで動かせないモノも多い。
人やモノだけではない。建物であるとか、生物や環境といったものも、移住先の惑星に持ち込んでおきたいものだ。
それらを収拾し、準備し、送り出す。考えるだけでも気が遠くなる作業であり、時間と労力を要するものだ。
 すでに各国にはエクソダスのための専用の移民船団が到着しつつあり、有事に備えた準備はなされている。

127 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/03/02(木) 22:56:38 ID:softbank060146109143.bbtec.net [12/89]

 長々と語ったが、ともあれ、宇宙怪獣が来る前に諸般の問題の解決をしなくてはならないのだった。
サンマグノリア共和国の制圧、首脳部および犯罪者の捕縛、裁判、さらに賠償などを行わせるなど、下手をしなくても年単位のことを巻きで。
 すでに罪状などについてはおおよその所整理が完了していた。
 大まかな括りで言えば「人道に対する罪」。
 内情としては、数えきれないほどに細かいものだ。

  • 有色種と差別する人種への国家をあげての「大量虐殺(ジェノサイド)」
  • 同じく有色種とされる人種への「差別および迫害」
  • 人権のはく奪に伴い、「合法的」と称されて実行された幾多の「犯罪」
  • エイティシックスと呼称した人種の「強制動員」
  • 上記に追従した「少年兵の動員の罪」
  • 在サンマグノリア共和国の各国資産の「収奪」
  • レギオンへの「利敵行為」
  • 被験者の同意などもない非合法的且つ倫理に反する「人体実験」の数々の実施

 ここに挙げていけば際限がないほどの罪が重なっていた。
 被告人はサンマグノリア共和国の現在の国民のほぼすべてが該当し、特に首脳部や実行役などの罪は非常に重いことは確定済みだった。
 なまじ、地球連合の行っていた諜報活動や非合法活動により、その容疑者や関係者などがリストアップされ、罪状も記録にある限り開示されていたのだ。
これらを実際に裁判にかけ、刑罰を下さなければ、それは他国にとっては永遠に許されぬ罪となることは確定だ。
何しろこれは、人が人である限り見過ごしてはならない類いの、おぞましいという言葉も生温い悪行だからだ。

 かといって、各国が同じように暴走して同じ轍を踏むことは避けねばならず、地球連合は中立という立ち位置から、それを諫める立場になった。
決して心情的にサンマグノリア共和国の味方はできないのであるが、かといって弁護の許されない裁判もまた問題がある。
相手が如何に堕ちた、堕落し、腐敗したものであるとはいえ、同じようなふるまいをすることは厳に避けねばならない。
 ある意味で、地球連合は泥をかぶることを是とした。星暦惑星の国々の理性が、その一線を超えないことを願いつつも。

 斯くして、現地時間の星暦2147年8月12日には最寄りの三国---ギアーデ連邦、ロア=グレキア連合王国、ヴァルト盟約同盟---から進駐軍が出発。
元はレギオンとのコンテクスト・エリアであり、現在はセントラル・エリアと呼ばれる地域を突破し、サンマグノリア共和国へ到着。
地球連合軍が敷設していたFOBなどを通過し、そのまま旧サンマグノリア共和国領へと突入した。
事前の準備などもあったとはいえ、神速の進軍により3日と経たずにグラン・ミュールの包囲を完了。
 そして、8月16日を以て、星暦惑星上のすべての国家から最後通牒を通達。
 然る後に宣戦布告を行い、グラン・ミュールの内部への突入を開始することとなった。

 後のことであるが、グラン・ミュールの内部へ突入し、内部を制圧し、各国の軍政下におかれたサンマグノリア共和国を見て、とある人物が言葉を残した。

「その国は、彼らの言うところの白系種による純白の国ではなく、むしろ酷く錆びつき、醜くなった銀の国だった」

 その言葉が代表例として残されたほど、グラン・ミュール内部のサンマグノリア共和国が異様なモノだったというのは、言うまでもないだろう。
 ともあれ、各国は内部に踏み込んでソレを目撃することになったのだ。穢れのないと称する、地獄すら生温い白の世界を。

128 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2023/03/02(木) 22:57:12 ID:softbank060146109143.bbtec.net [13/89]

以上、wiki転載はご自由に。
というわけで、サンマグノリア共和国制圧の話をお送りします。
多分、4,5話くらい+証言録という形になるかなと思います。
地の分主体かもですが、よろしくお願いします
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最終更新:2023年07月09日 21:14