324 :ひゅうが:2012/03/04(日) 19:10:43
ネタ――ある映画
その映画は、あまりに突拍子もなかった。
19XX年。アリゾナのとある町。
何かの拍子に足踏みミシンがカタカタと揺れ始め、円筒形の物体が飛び出す。
それはみるみるうちに巨大化すると、ドラムを横倒しにしたように地面に降り立ち火を噴きながら町を爆走する。
人を追いかけ始める「それ」。カウボーイハットを被った保安官が立ち向かうも、「食われて」しまう。
さらに同時期に動き出した人食い「それ」の同族が町にあふれ、駐留日本軍やなぜかいるナチのスパイもろとも町を蹂躙し始めた――
アタック・オブ・キラーボビン
それがこの映画の名前だった。
1970年代というカリフォルニア共和国の発展期にあたり、鬱屈していた米国人のゆがんだユーモアが生み出したこの映画は、当初は「英国の盾」ことジャイアント・パンジャンドラムを揶揄するかのような描写に御用評論家たちの評価は芳しくなかった。
西部劇時代(1940年代末、西海岸開拓の歴史を美化すべく国策として大量生産されていた)から映画を撮り続けている監督はそれを喜んだ。
何しろ揶揄自体が目的なのだ。
彼の鬱屈した感情は、ハースト系新聞社の宣伝映画「日英軍がドイツが発掘してしまった古のい禍と戦い、カリフォルニア軍の助けでこれに勝利する」というオーダーを見事に昇華させてしまったのだった。
だが、すぐに彼のニヤニヤは渋面に変わる。
当の英国人自体が気にしていないどころか、腹を抱えて笑い出したのだ。
対空火炎放射器を地上に向けて発射したり、怪しげな博士が登場し「女王陛下!歩けます!!」と叫んだりするのはもちろん、暇していたらしい現地部隊が全面協力したソードフィッシュ編隊が空爆するシーン(あとブラックバーン・ロックが背面飛行で機銃掃射)などを見せられ、
とどめとばかりに実物のジャイアントパンジャンドラムの大群が荒野を疾走する映像が出てきたために英国面に火がついたらしい。
また、暗に揶揄された日本人は最新の特撮技術を駆使してリメイクまでしてしまう始末。
監督いわく
「やってらんねー。」とのことである。
このあまりにアホらしい映画は、だがそのアホらしさゆえに大いに受けた。
国策映画のような芸術性が高く真面目なものばかり見せられていた欧州人やカリフォルニア人に加え、娯楽には目がない上にありきたりなものに飽きていた日本人にも。
こうして、「アタック・オブ・キラーボビン」は伝説になったのだった。
なお、制作XX周年記念として昨年(20XX年)最新作「アタック・オブ・キラースシ」が公開されたのは記憶に新しい
最終更新:2012年03月05日 23:01