566 名前:ホワイトベアー[sage] 投稿日:2023/02/01(水) 22:34:10 ID:om126166223132.28.openmobile.ne.jp [2/11]
日本大陸×ストパンネタ 幕間

西暦1941年3月12日 大日本帝国 北海道千歳市 千歳大演習場

「……こいつをどう見る?寺田」

「ギリギリ及第点と言ったところでしょうな。主力として戦闘正面を任せるには少々不安ですが、まあ、足を引っ張ることはないでしょう」

千歳大演習場、日本本土にあるなかでは最大規模の演習場にて行われている演習を見つながら投げのにかけられた日本陸軍第1機甲軍のトップを務める老人の問いかけに、参謀長として彼を支える寺田 雅雄陸軍少将が答えた。
現在、演習場では日本軍の最新鋭重陸戦戦闘脚である39式陸戦戦闘脚を装備した少女達 第25機甲師団第253機甲旅団戦闘団の陸戦ウィッチ達がネウロイを模した日本陸軍機甲教導旅団第11装甲騎兵連隊を相手にして実戦形式の演習を行っていた。

彼女達の戦術機動は教本通りのわかりやすいもので、その動きも生粋の戦車屋である彼ら2人からしたらとても褒められたものではなかった。
それでも、歩兵や戦車部隊、砲兵など他の第253機甲旅団戦闘団の部隊と協力することで対抗部隊である第11装甲騎兵連隊を相手に何とか渡り合えており、最低限ながら合格点を出せる程度の能力はあると彼ら2人に証明して見せていた。

「何とか間に合ってくれたか」

老人は孫と同年代の少女達を見ながら無意識のうちにそう呟いてしまう。
彼の率いる第1機甲軍は国連軍を中心として行なわれる予定のアフリカ解放を目的とした一大反抗作戦、『砂漠の剣』作戦に参加する部隊の一員として北アフリカへの派兵されることになっていた。

しかし、第25機甲師団は本国を失い日本に亡命してきた難民出身の人間が多数を占めている部隊で、現在第1機甲軍に編成しているの中ではもっとも練度が低い師団であった。
その中でも第253機甲旅団戦闘団に所属する陸戦ウィッチ達の練度はもっとも低いもので、老人は彼女たちを戦場に送り込むことに指揮官としては不安を抱かずにはいられなかったのだ。
だが、戦場に向うまでギリギリしか残っていないとは言え、最低限ながら実戦に耐えられるだけの能力を有していると証明して見せてくれたことで、10代の少女達を満足に動けないまま戦場に出すと言う老人にとっての最悪は避けることができた。

「しかし、いくら難民とは言え、我が軍でも子供を戦場に立たせることになるとは思いもしませんでした」

「私もだよ。いくらネウロイが強大な敵でウィッチがそれに対抗できる強力な存在とは言え、本来なら我々が命をかけて護らなければならない子供たちに武器を持たせて、戦場、それも最前線に立たせてしまうとは……寒い時代になったものだ」

憮然とした声色で発せられた寺田少将の言葉に老人も同意する。
彼らにしてみれば、今見せつけられているこの光景こそ自分達の無力さと不甲斐なさの証明であり、自分達が現実に惨めに敗北した証以外の何物でもなかった。

2人は何処か陰鬱な色が混じった目で、自分達が死地に追いやることになる少女達を見つめ続ける。
目の前で戦場に立つための訓練をしている少女達の次がいったい誰なのかを十分に理解していたがゆえに。

「例え地獄に落ちることになろうが、我が国の子供達を彼女らのようにしないためにもここで歯止めをかけるぞ」

「もちろんです。」

外道となり果てようが、帝国軍人としての矜持は変わらない。
如何なる姿に成り果てようと国民を、明日を生きる我らが子供達を護るという矜持だけは

567 名前:ホワイトベアー[sage] 投稿日:2023/02/01(水) 22:35:54 ID:om126166223132.28.openmobile.ne.jp [3/11]
1941年3月12日 大日本帝国 北海道千歳市 千歳陸軍基地 第25機甲師団

「聞いた? 北アフリカで反撃作戦が決定したらしいよ」

私は所定の訓練を終え、基地内に設けられた喫茶店で少し前までは満足に食べることができなかった生クリームたっぷりのイチゴのショートケーキに舌鼓を打ちながら、ようやく読めるようになった日本語で書かれた小説を読み進めていた。
そうであるからこそ、私はその声が私に向けて放たれたものであったことに気づくことができなかった。

「ねぇ、レイラ 聞いてる?」

耳元で自分の名前を呼ばれたことでようやく私に話されていたことに気づくことができた。
声のした方向に目線を向けるのとほぼ同時に、断りもなく一人の少女が席にいきなり座る。

「…聞いてる。それにその話は朝からニュースで放送しているでしょ」

読んでいた小説に栞を差して閉じる。
彼女はマリーヤ・ユジュニア陸軍軍曹、私と同じ時期に日本軍に志願し、同期として同じ陸軍教育隊を卒業した親友で、今では同じ陸戦魔導兵小隊に所属する仲だ。

「なんだ残念……
 私達の国外派兵もこれに関連している……のかなぁ」

「この時期に海外派兵が行われるなんてそれ以外にないでしょ。それに”私達“が送り込まれる場所だから過酷な場所になるでしょうね」

私達が所属する第25機甲師団はネウロイ大戦勃発後に開始された日本軍の大軍拡によって新設された機甲師団の1つで、その編成は3個機甲旅団戦闘団、1個機甲砲兵旅団、1個戦闘航空旅団、1個後方支援旅団と日本陸軍の機甲師団としてはポピュラーなものであった。

しかし、第25機甲師団、いや大戦後に新設された師団の大半には大戦前から存在していた機甲師団にはない大きな違いがあった。
それはわたし達を含めて所属している兵士や下士官の大半が難民出身だということだ。

無論、将校クラスは日本人が大半を占めているが、それでも政治的には純粋な日本人達で編成された部隊よりも遥かに前線に投入しやすい部隊であることは想像しやすいだろう。

「ハァ、日本軍に志願した以上は覚悟はしていたけど……よりにもよって初陣が激戦間違いなしな作戦がになるとはね」

マリーヤが溜息をつきながらそうぼやく。
全く持って同感だ。
私達は陸戦ウィッチで、地上を走り回りネウロイを撃破するのが陸戦ウィッチに求められる役割であることは百も承知だが、どうにも戦場に出るということについては良い気がしない。

568 名前:ホワイトベアー[sage] 投稿日:2023/02/01(水) 22:36:30 ID:om126166223132.28.openmobile.ne.jp [4/11]
「今回の作戦が成功すれば次は欧州だし、母なる大地をネウロイから取り戻して故郷に帰れると思えば多少はやる気が出るんじゃない?」

「……むしろやる気がさらに下がったよ。逆に聞くけどレイラはそれでやる気が出るの?」

「いや、まったく
 そもそも仮にオラーシャからネウロイの脅威がなくなったとしても私は日本に骨を埋めるつもりだし」

私の心にも思ってないアドバイスに対するカウンターとして放たれたマリーヤの問いかけに、私は肩をすくめて即答した。

難民キャンプで生活をしていた頃は帰郷の念は絶えずあったし、ネウロイの脅威がなくなった後はオラーシャの復興に関わることを夢に見てた。
今でも故郷が懐かしくないと言えば嘘になる。

しかし、日本軍に入隊して、日本の生活水準に慣れてしまった今では、難民キャンプで生活をしている人々には申し訳ないがいくら麗しきの故国と言えど命をかけてまでネウロイの脅威から開放したいとは思えなくなっていた。

もし仮に命令がくだったのなら命をかけて欧州の解放に従事するだろう。

だが、故国の奪還は難民である私の家族がこの国で生活できる根拠がなくなる可能性をはらんでいる。
せめて私が無事に退役して、家族に日本での永住許可が降りるまではネウロイの占領下であり続けて欲しいとすら心の何処かで思ってしまうほどだ。

「私もそのつもりだからねぇ」

男連中はどうだが知らないが、私の知る限りにおいて似たような考えのウィッチは極めて多い。
もし仮に現役中にネウロイ大戦が終わり、故国と日本の戦争が勃発したとしたら日本軍人として戦争に従事するだろうと冗談めかして言うウィッチすらいるほどに、私達にとって日本での生活は魅力的なものであった。

しばしの沈黙が私達の間に流れる。
沈黙を破ったのはマリーヤの深いため息であった

「まあ、今ここで私達があれこれ考えても仕方がないし。今はここのスイーツを楽しみましょう」

再度ため息をついたマリーヤの口元にケーキの一部をフォークで持っていく。
軍人であり、難民でもある私達に選択肢なんてあってないようなものだ。
ならば、あれこれ考えて目の前のスイーツを不味くするよりも、今は何も考えずに目の前のスイーツを楽しんだ方が余程有意義だろう。

「それもそうね……」

マリーヤはそう言うとパクリとケーキを食べる。

不意に窓から差し込んだ日差しが二人を包む。
それは春の訪れを感じさせるどこか柔らかな光だった。

569 名前:ホワイトベアー[sage] 投稿日:2023/02/01(水) 22:37:50 ID:om126166223132.28.openmobile.ne.jp [5/11]
※1
彼女達は魔力量が所属国の兵役基準に達しておらず、所属国では徴兵されることはなかった。
しかし、フルスペックのエーテル・魔力転換システムを搭載し陸戦戦闘脚を使う日本ではウィッチの戦力化に個人の魔力量はそこまで重要ではなかったために日本軍に志願できた。

オリジナルウィッチ紹介

マリーヤ・ユジュニア
所属:大日本帝国陸軍
階級:軍曹
兵科:陸戦魔導兵
年齢:15歳
国籍:オラーシャ

1939年に勃発したネウロイ大戦によって国土を追われ、日本の難民キャンプに家族とともに流れついたオラーシャ系難民の1人。

家族構成は母親と弟が1人、妹が2人。
父親は東アジア戦役時に徴兵され戦死。

軍への志願動機は家族を難民キャンプから出して普通の生活を送らせるため。
当時の日本軍は使い勝手のいい戦力を求めて永住許可や志願兵の家族への公営住宅の提供、条件付きながら国民健康保険等への加入許可などを餌に国内の難民達から兵力を集めており、ウィッチの場合はさらに多くの特権が認められていたため母親の反対を押し切って帝国陸軍に志願した。

父親が東アジア戦役で戦死した影響もあってオラーシャ時代は比較的貧しい生活を送っていたが、ウィッチと言うこともあって日本陸軍入隊後はオラーシャ時代とは比べものにならないほどの収入を得ている(リアル日本換算で基本給だけで学年約500万円これに賞与や各種手当がつく)が、給料は最低限の分を除いて家族への仕送りと弟妹が進学した時の学費として貯金をしている。

軍に入隊後は千歳陸軍訓練校に訓練兵として入学、その際に(DATA EXPUNGED)の(DATA EXPUNGED)として(DATA EXPUNGED)

現在では帝国陸軍第25機甲師団第253機甲旅団戦闘団隷下第180装甲陸戦魔導兵大隊第1中隊第3小隊に所属している。

570 名前:ホワイトベアー[sage] 投稿日:2023/02/01(水) 22:38:41 ID:om126166223132.28.openmobile.ne.jp [6/11]
以上、『砂漠の剣』作戦前の一幕となります。wikiへの転載はOKです。




わ、私はウィッチ同士のキャキャウフフな百合を書こうと思った……思ったんだ……

嗚呼、ゴース、あるいはゴレム
我が祈りが聞こえぬか
我に瞳を授けたまえ
我の脳に瞳を授け、稚拙な文才と高二病を克させたまえ
やがてこそ、舌を噛み、語り明かそう
明かし語ろう…
ウィッチ同士のキャキャウフフな百合の物語を!

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最終更新:2023年05月19日 20:17