557 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/05/21(日) 22:44:13 ID:softbank060146109143.bbtec.net [71/144]

憂鬱SRW 未来編 エグゼシナリオSS 「第二回N1グランプリ前日譚inコーゲン・シティ」



  • C.E.地球 大洋連合領 コーゲン・シティ 白鷺区 大鳥家邸宅


 大鳥重工CEOにして、一家の長である大鳥ゆうじは、家のリビングで娘の大鳥こはくと対峙していた。
 テーブルを挟んで向かい合う親子の間には大鳥重工のエンブレムが刻まれたケースが置いてある。
 対峙しているとはいっても、だいぶ気楽なものであった。シミュレーション空間内で親子水入らずの戦いをするくらい、二人の関係は良好だからだ。
 そして、切り出したのはゆうじだった。

「さて、こはく。待たせてしまったが、例の件でいよいよ準備ができた」
「N1グランプリのこと?」

 それは先だってのことだ。N1グランプリの開催が決定・通知され、広く参加者の募集が開始された。
 前回の大会ではトラブルも起こったのであるが、ともあれ、第二回が開催されることになったのである。

「そうだ。レギュレーションの見直しで、ネットナビアバターでの参加が認められることになった。
 あくまでもネットナビとオペレーターの両者の力を合わせて競い合うという趣旨だったからな」
「だからこそナビを持っていないと駄目だったんだよね」

 こはくはゆうじの言葉に頷いた。
 実際、前回のN1グランプリに参加するというのはこはくも検討していたことだった。
コーゲン・シティのシミュレーション上でのトラブルを解決したこはくは、そのままの勢いで参加をしようと計画したのだ。
 しかし、こはくのネットバトラーとしての能力は高いとは言えず、またアバターでの参加はレギュレーションに合わなかったため見送ったのだ。
理由としてはその他にも、大鳥重工の機密プログラムである「エグゼブレイカー」や自立ナビの「アーカーシャ」が持ち出せなかったこともある。
 とはいえ、それは前回までの話だ。レギュレーションが更新されたことにより、ネットナビアバターでの参加が解禁されることになった。
 加えて、前回のこはくのおねだりを受け、ゆうじが準備を行ったことも状況を変えたのだ。
 それが、今こはくの前で開封されたケースの中に収められているPETとなって表れた。

「これが、エクサPETリンカージョン。IPCのレギュレーションに合わせつつ、ネットナビアバターに対応。
 さらに……簡易版であるがエグゼブレイカーとアーカーシャをインストールしている」
「ほんと!?」
「ああ。機密に関わるところを可能な限り避けて、尚且つ問題がないように設計した」

 早速PETに手を伸ばす娘を一旦制止し、ゆうじは説明を続ける。

「とはいえ、オリジナルデータをそのまま持ち出すわけじゃない。
 あくまでも外に持ち出せるように対策を施した、いわばコピー品だ。
 オリジナルより劣るし、ネット環境に負荷を与えないように無茶ができるわけじゃない」
「えー…それじゃあ、いつも通りとはいかないの?」

 だが、それは織り込み済みだった。
 ゆうじがアーカーシャの名を呼ぶと、PETからウィンドウが立ち上がり、アーカーシャの姿が映し出される。

『このボディは新規製造だけど、これまで通りよろしく』
「このPETにインストールされているのはアーカーシャ本体とリンクした…あー、パーティーバトルシステムの応用のアバターだ」
「???」
「パーティーバトルシステムは科学省で研究されていたシステムでな、ナビの戦闘データだけを複数引き連れて行動するシステムだ。
 ただ、通常オペレーターとナビで一対一の関係であるところを、一対複数にする関係上、オペレーターの負担が大きく……」
「???」

 専門的な説明に思わず突っ込んでしまうゆうじだったが、当然ながらこはくには理解しえないことだった。

『ゆうじ、こはくがオーバーヒートしている』
「おっと、ついつい……すまない、こはく」
「とりあえず、ここにいるアーカーシャとコーゲン・シティの電脳にいるアーカーシャはリンクしているってこと?」
『そういうこと。こはくが一人だと不安だから、私もついていくことにした』
「機密もちょっとは含まれているからな、アーカーシャをつけることにした」

558 自分:弥次郎[sage] 投稿日:2023/05/21(日) 22:45:04 ID:softbank060146109143.bbtec.net [72/144]


 そっか、とこはくは納得を作る。
 なんだかんだ言って、自分はコーゲン・シティの秘密に触れてしまっている人間なのだ。
このコーゲン・シティの内側ならばともかく、外側に行くにあたっては、色々と差しさわりがあるということ。
その解決のために、ゆうじは我儘をかなえるため奔走してくれたのだ。アーカーシャも、その為なのだろう。

「ありがとね、パパ」
「そういわれるだけで報われた気がするよ。
 そうそう、もうひとつこのアーカーシャ・アバターには機能がある。
 以前の事件で偶発的に誕生した『サフェドシーア』への変身機能だ」

 その言葉で、すぐにこはくはピンときた。

「あれのこと?熱斗君のナビのロックマンがやっていた、ソウルユニゾンみたいなの?」
「ああ、原理的にはアレに近い。
 ヒューゴの奴がデータをとっていたみたいでな、それを基に任意で変身できるようにしてみた。
 あの時ほど出鱈目はできないが、それでも強力な武器になるはずだ」

 何しろ、と前置きして言う。

「大鳥重工のPRというか、宣伝でもあるからな。
 こはくには大鳥重工を代表して頑張ってほしい」
「OK!任せてよ!」
「応援には行けないが、こっちでみもりと一緒に見守るつもりだ。
 強敵揃いだろうが、こはくなら大丈夫と信じているぞ」
『アーカーシャも期待する、頑張って』
「ありがと、パパ!アーカーシャ!」

 感謝を伝えたところで、ふとこはくは周囲を見渡す。

「……なんだか、ヒューゴに覗かれているような気がする」
「いや、まさか……でも、あいつも心配性だからな。ハハハ」

 この時、本体がコーゲン・シティの電脳にいるアーカーシャはヒューゴの悪態という名の言い訳を聞いていたが、黙っていることにした。
 アーカーシャは空気が読めるいい子なのだ。

「とりあえず、慣らしはしておいてくれ。
 予選敗退なんてことになるのは父さんとしても悲しい。娘の晴れ姿、楽しみだからな」
「うん、わかった。
 あ、そうだ。パパ、熱斗君にこのことはなしてもいいかな?」
「彼に?……そうか、彼も参加するだろうしな。強力なライバルになるぞ?」
「そこはどんとこい!」

 斯くして、N1グランプリに念願かなって大鳥こはくは参加することになったのであった。
 この後に彼女から送られたメールを見て、秋原町の少年が大いに盛り上がったのは言うまでもないことだった。

『で……この話はどう落ちをつけるんだよ』

 アーカーシャも交えて親子で盛り上がっていちゃいちゃしだし、一人放置されることにあったヒューゴは、げんなりとしながら電脳コーヒーを傾けるのだった。

559 名前:弥次郎[sage] 投稿日:2023/05/21(日) 22:46:07 ID:softbank060146109143.bbtec.net [73/144]

以上、wiki転載はご自由に。
エグゼ7(仮)の前日譚って感じですねぇ
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最終更新:2023年06月08日 21:46