403 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/05/05(金) 21:55:17 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [97/261]
  • M48自動拳銃

 1930年代には合衆国の国軍、州兵の必要とされる拳銃は、ごく一部の儀礼用などを除いて全てが自動拳銃に統一されていた。
 主流となっていたのはカモミール銃器開発部門、ルーガー(後のスタームルガー)等の共同開発によるM37自動拳銃である。
 史実ルーガーP85/89をモチーフとしたショートリコイル作動方式、ダブルカラムマガジン、AFPBを含む多重セーフティ構造を採用。

 その上で軽金属、ステンレスのロストワックス加工を時代を先取りし導入することで、工数減少と必要強度確保の両立を達成。
 9ミリパラベラム弾を用いる自動拳銃としては完成度が高く安価であり、国軍と州兵。そして州警察でも多数が愛用された。
 しかし40年代以降。皮肉にも日米が率先して配備を行った防弾装備の普及が、些かの力不足を招いてしまった。

 無論、M37も9ミリパラベラム弾だけではなく45ACP弾。10ミリ中間弾などマルチキャリバーへの対応を行う余裕はあった。
 しかし元々が安価かつ大量に、信頼性の高い9ミリ拳銃を配備することが一義であり、自然と限界が生じた。
 特にケブラーを筆頭とする高分子防弾繊維は、パラベラムや45ACP程度は容易に阻止できてしまうことも、ネックと考えられた。


 それでも民間犯罪の対処などには十分役立ったM37系列であるが、軍用拳銃として考えた場合、今後の不安が生じた。
 防弾装備で身を固めたハードターゲットは小銃を用いてしまえば良いのは確かだが、サイドアームがまるで無力でも難点である。
 練度の高い将校、下士官などは同一箇所に二発、三発と叩き込むことも出来るが、それは一部で一般化すべきではない。

 そこへまず警察特殊部隊向けとして新型拳銃の開発の名乗りを上げたのが、スタームルガーを実質子会社としたカモミールであった。
 彼らはコルト、スミスアンドウェッソンなど老舗が強い銃器市場に、実用性を一義とする銃開発の天才を取り込み参入。
 M1小銃(AKM相当)、M14小銃(AK74M相当)、後に.277Fury弾への対応すら果たしたM16小銃(AK-12改)など、軍用突撃銃で名を挙げていた。

 時に欧州連合の大国であるソ連からスパイを疑われるレベルで、赤い技術を用いることに定評のあるカモミール。
 彼らが史実世界で無念を味わった兵器の復活として、今回選んだ銃はイジェメックの開発したヤリギン_MP443自動拳銃であった。
 この拳銃は手堅いショートリコイル作動方式、堅牢なフルスチール構造、防寒装備に適合したハンマー構造など手堅い「はず」であった。

404 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/05/05(金) 21:55:57 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [98/261]

 しかし実際はショートリコイルバレルの重心不適切による命中精度の低下、あろうことか部品規格化の不徹底で惨憺たる結果となった。
 仮にも80年代の発想と90年代の技術で作られた、21世紀の自動拳銃としてはあってはならない不具合である。
 そしてそれらを是正する余裕もなく実戦に投じられたこの拳銃も、カモミールはいつか日の目を見せるべき愛し子であった。

 元来堅実なコンセプトは踏襲しつつ、カモミールが得意とする低価格高品質なスチール、ルーガーの得意とするロストワックス製法の適用。
 そして命中精度を低下させたティルトバレル重心を、素材強度効率向上も含め電算機と職人の手により適宜修正。
 更には原型のMP443が運用を想定していた7N31等、強装薬高初速弾に合わせて複数のコンペンセイター、マズルブレーキも準備している。

 これは史実西側の自動拳銃。そしてこの世界の日本、合衆国、欧州連合などでは常識となった発想と技術で新しさは乏しい。
 一方でM1、M14といった突撃銃にはこの種の銃口制退器は不可欠で、カモミールは高い技術力とノウハウの蓄積を有していた。
 将来的にはM37と同様にマルチキャリバー化を、それも強装薬弾で行うことも視野に入れ、ハンドグリップも含めオプションも抜かりはなかった。


 そして意外なようだが軍用銃市場でも大手となりつつあるカモミールのイメージに反して、この新型拳銃は各州警察のSWATにまず売り込まれた。
 拳銃とは警察官にとっては相棒に等しいが、軍隊においてはサイドアーム。脇役に準ずるもので優先順位は当然低い。
 またM37のマルチキャリバー対応による一定の大口径弾への対応から、軍内部で無理な高貫通拳銃は必要なのかと疑問視されてもいた。

 故にカモミール・スタームルガーは社内仮称「ペネトレーター」と呼ばれる新型拳銃を、やはり新型弾薬とともに州警察SWATに試供。
 重量こそ930グラムとM37中期型の850グラムに比して重く、全長もやや長いが堅牢性、命中精度、貫通力は全くの好評を博した。
 やや大柄な銃本体も高練度の特殊部隊が扱うには問題はなく、何よりロストワックス加工などが功を奏し安価でもあった。

 その性能と価格。試供品という市場開拓故の手厚いアフターケアからロサンゼルス、テキサス、ニューヨークなどの警察特殊部隊が採用を決定。
 第二次欧州大戦以降、件数の増大が止まらない銃器犯罪対策への回答の一つとして、多くの犯罪者の無力化に成功することになる。
 「ペネトレーター」は各警察ごとに様々な名前で採用され、高い評価が広まっていくが、こうなると面白くないのは合衆国連邦軍であった。

405 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/05/05(金) 21:56:31 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [99/261]
 一般兵科向けの自衛用拳銃ならばまだしも空挺や海兵隊。ネイビーシールズ等の能力もプライドも高い部隊より、警察官が上等な拳銃を使っている。
 何故うちに最初に売り込まなかった?というクレームに等しい問い合わせに対し、社内ベンチャー故に確証が今ひとつでしたとカモミールは頭を下げた。
 しかしそういった気位の高いエリート兵科部隊に「うちにも寄越せ」と言わしめることこそ、軍正式採用拳銃を勝ち取る戦略の一つであった。

 銃で独立を勝ち取った国の軍隊らしく陸軍、海軍、空軍、海兵隊。果ては武勲高い常備師団を持つ州兵からも大量の試供品購入要請が殺到。
 何れも低コスト、大量生産を得意とするカモミールとスタームルガーであるが、なればこそ品質管理は徹底し、今回はなおさら念を入れていた。
 あえて特殊品質のものを弾き、徹底して規格化された標準品質のものを各カスタマーへ販売したのである。初期ロットながら総数は1000挺を超えたという。

 そしてその反応は、特に各州警察からの要望に応じ初期不良を解消していただけに、サイドアームに向けるものとしては非常に良好なものであった。
 やや大柄とはいえ未だに多数の合衆国人が愛用するコルトガバメントよりは余程軽く、短く、装填弾数も18発と当時の水準を超えている。
 当初、拳銃で強装薬高初速弾を用いることに懐疑的だった向きも、銃本体の強度と各種制退器の相乗効果による高精度に意見を変えた。


 まず陸軍空挺、海兵隊、ネイビーシールズ、空軍コンバットレスキュー、州兵常備師団等が本自動拳銃を仮採用として「XM48」の名前で採用。
 インドシナ紛争にて屋内戦闘では未だに自動拳銃も有用な戦訓に基づき、分隊のポイントマンなど軽装で飛び込む兵に配備。
 生中な防弾チョッキなら有効射程で十分貫通可能で、18発もの装填が行なえ、必要十分な命中精度(更には消炎効果)は頼もしい1挺となった。

 その上で合衆国国防省も本自動拳銃に本格的に着目。一般兵科部隊への配備も可能なよう、軽量化などを行えるかカモミールに打診。
 軍用兵器以前にまず民需産業で急速に発達を遂げていた高分子素材をフレームに、つまりポリマーフレーム化で可能であると返答。
 ポリマーに十分な柔軟性と靭性を持たせ、コアパーツを高品質スチールで強度を。制退器改良で反動抑制を維持した改良試作品を提出。

 今度は一般兵科部隊でも多数が試験運用され、実に100グラム近く軽量化され、常装弾と強装弾双方に準備された制退器の反動抑制。
 毎秒600メートルに達する高初速弾を用いた際の有効射程、威力の大きさ。ポリマーフレーム採用により更に低下したコスト。
 特に陸軍と海兵隊からは「採用しない理由がない」と称賛され、最終的にM37の後継としてM48の名称で正式採用を勝ち取った。

406 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/05/05(金) 21:57:02 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [100/261]
 正式採用以降。配備兵科や軍種に合わせたカスタマイズや改良型。サードパーティも巻き込んだアクセサリーの開発もコンスタントに継続された。
 特にインドシナ紛争で見せたフランス外人部隊の精強さから、照準を容易にするレイルシステムと各種照準モジュールは事実上、常備品となった。
 あるいは後方兵種や予備役兵。一般警察官向けに装弾数や銃身長を若干削減し、コンパクト化したM48Cも相当数が生産されている。

 そしてカモミールとスタームルガーが半ば予想した通り、諸外国においても高貫通拳銃の配備や戦闘防弾装備の発達は急速に進んだ。
 なればこそ初期のフルスチールモデルの段階で、強装薬高初速弾のマルチキャリバー化への発達余裕を見越し、ポリマーフレームモデルにも継承したのである。
 軍、法執行機関から要望を受けたカモミール・スタームルガーは7N31の系譜を素直に大口径化し、貫通力と運動エネルギーを増大させた10ミリ普通徹甲弾。

 加えて本来ならば小銃、機関銃に用いるようなSLAP_戦車砲のAPDSに近い構造の、装弾筒に包まれた高速徹甲弾さえ開発してのけた。
 普通徹甲弾の大口径化はまだしも拳銃にSLAPはかつてならば過剰どころではないが、今や戦闘防弾装備は小銃普通弾にさえ耐久。
 やがては強化外骨格の延長線上であるアーマードスーツの姿も見え始めた状況では、必要十分ではあっても過剰と言えない時代が到来していた。


 流石に一般兵科部隊向けは普通徹甲弾を大口径化したM48A5、改良型ポリマーフレームモデルへの更新に留まっている。
 その一方で上述した高練度部隊。今や合衆国だけでなくM48のカスタマーとなったハワイ条約機構参加国のそれには、M48A5が生産販売されている。
 一節には日本が口火を切った自動人形技術の軍事転用、後の軍用自動人形の無力化も視野に入れていたとされるが、定かではない。

 上に述べた通り堅牢な構造、少ない部品点数、貫通力を含めた必要十分な性能、そして安価さはM48に大きな市場を獲得させている。
 同時代に日本、オーストリア帝国、欧州連合など銃器大国において、同種拳銃多数が開発される中、M48は互角以上に市場でも渡り合ったのだ。
 アメリカ本国、そしてハワイ条約機構の過半数でM48シリーズは広く採用され、今なおサードパーティを中心としたカスタムモデルが生まれ続けている。

 かくして多数の国家の軍、警察で多くのカスタマーから信頼を勝ち得たM48だが、意外なことに民間市場においては販売されていない。
 これは史実のスタームルガー製自動銃が、安価かつ高性能なことから犯罪に多用された教訓に基づいており、個人自衛用販売は非対応である。
 そちらについては弾薬を常装弾専用に限定し、後には生体認証チップも追加したシビリアン用がM66として市販されている。

407 名前:戦車の人[sage] 投稿日:2023/05/05(金) 21:59:50 ID:61-24-203-31.rev.home.ne.jp [101/261]
以上にございます。
恐らくお気づきのようにフルスチールモデルがMP443、ポリマーフレームモデルがMP446のリファインモデルです。
調べてみると本当、堅実なコンセプトなんです。ソ連の遺産を食いつぶしたロシアの工業力が無惨なだけで。

スタームルガーを参加させたのは私の趣味です。
あのメーカーの実用性第一、お値段以上の性能、ロストワックスによる工数減少が好みでして。

SLAPはやり過ぎたかなあ…とも思いましたが、日米枢軸世界のパワードスーツ開発事情。
あるいは.277Furyへの対応も始まっている戦闘防弾装備から、思い切ってやってみました。
勿論弾芯がタングステンなので特殊部隊向けになりますが。

長々と続いてしまい恐縮です。
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最終更新:2023年06月23日 20:02