588 名前:モントゴメリー[] 投稿日:2023/05/19(金) 20:48:46 ID:116-64-135-196.rev.home.ne.jp [56/123]
——Fourchette du Diable(FoDi、悪魔の分岐路)——
Fourchette du Diable(悪魔の分岐路、略称FoDi)とは、フランス連邦共和国(FFR)において開発された新素材である。
「エントロピー増大に逆らう」能力を持つという、宇宙の法則に逆らう正に革命的な材料であり、登場直後から物質の分離やエネルギーの回収、生物の行動の制御など幅広い分野で活用されている。
具体的には、外部から加えられた力の左右方向を見分け一方向にのみ変形するというゲル状の物体である。
FFRが誇る化学陣は、水中に分散した酸化グラフェンのナノシートに磁場を加え全てのナノシートを斜めに配向させた後、あらかじめ水中に溶解させておいたモノマーと架橋剤を重合することでこの新素材を合成した。
このゲルに上から横方向に力を加えると、左向きの力に対してはナノシートがたわみ、ゲルは容易に変形する一方、右向きの力に対してはナノシートがたわまず、ゲルは強固に抵抗する。
この左右の力に対する硬さには67倍もの差があり、ゲルはあたかも「中心から左右どちらかにしか振れない振り子」のような動きを見せるのである。
左または右から加えられた刺激に対し、刺激の方向によって異なる反応を示すことを「極性」という。
電気や磁気、光の刺激に対して極性を示す材料は長年にわたり研究され、いつくかは実用化されている。しかし、力に対する極性を示す材料は全く考えられてこなかった。
FFRの化学者たちはそこに目を付けたのである。
「誰も試みたことがない」というのは「不可能」と同義語ではない。
道がないのであれば切り拓いて進めばいい。そこに『特許』という我々を阻む障害はない。
フランス人に、「我らが指揮官」隷下の将兵に不可能という言葉は似合わない———!!
この新素材ゲルに水平の振動を与えると、左右非対称に振動し、ゲルの上に置いた水滴は必ず右方向に移動する。
また円柱を押し当てると押し当てられた部分のひずみも左右非対称となり、上から鉄球などを落とすと必ず右方向に弾む。
それに留まらず、20匹の線虫をゲルの上に置く実験ではすべての線虫が右方向に移動して最後は右端に達した。
すなわち生物の移動すら制御可能なのである。
(単純に進みやすい方向に進んでいるだけであるが)
この新素材ゲルはFourchette du Diable(悪魔の分岐路)と名付けられた。
エントロピーに抗うという特性を「マックスウェルの悪魔」に重ねたのである。
FoDiはその特性を活かし、様々な業界に革新をもたらした。
スポーツ用品では力を望んだ方向に伝達する運動靴が発売され、細胞の遊走や分化を制御する次世代型培養システムにも応用され細胞の大量生産がより安価で可能となった。
さらに、今まで捨てるしかなかった「振動」というエネルギーを回収することが可能となりモーターの発電効率が上昇することになる。
それのみならず、道路や公共施設など人通りが多い地点に埋め込めば人間が歩く際に発生する振動を電力に変換することも可能である。
今度、その他の方面にもさらに活用されることは間違いない——。
589 名前:モントゴメリー[sage] 投稿日:2023/05/19(金) 20:49:20 ID:116-64-135-196.rev.home.ne.jp [57/123]
以上です。
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「力学極性ゲル」
人類はとうとう、マックスウェルの悪魔を生み出したのかもしれません。
本文に書いた以外にも活用法はありますが、それは次の作品で登場させましょう。
最終更新:2023年06月23日 20:05