970:陣龍:2023/02/02(木) 20:20:21 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
『日本競馬の最新神話 ターフの亡霊・ゴーストウィニングの凱旋門賞レース記録【序】』
「ゴーストよ!今度は貴様の凱旋門賞のレースを見せて貰うぞ!」
「いや……練習しなよ、それか交流会見たいな親睦会とか」
「問題無い!練習は既に終わらせてある!親睦会はまたの機会で良い!!」
「そっちのトレーナーさんが色々諦めきってどんより曇天模様なんだけど」
「気にするでない!」
「するよ、普通に」
UMA時代の伝説のラストラン映像を公開処刑にてチームカノープスとチームスピカの面々に
解説付きで視聴された時から僅かに数時間後。強引にカノープスに加入した前世UMAな欧州ウマ娘、
ブリッツカイザーが早くもまた【我儘】を発揮していた。
「ははは……」
「南坂トレーナーさん、良いんですか?ついさっき流れに乗られてたこっちが言える話では無いかもですけど」
「えぇ……ありがとうございます、ゴーストさん。ですが大丈夫です、きっと、これが日常になると思いますから」
「……頑張って下さい」
二人の後ろでは、呆れと諦め顔が織り交ざった相方のレインボーロードによるヘッドロックにより、
ブリッツカイザーが何とも表現し辛い悲鳴をか細く絶叫しているのを華麗に流しつつ、
ゴーストは南坂トレを労うのであった。
「……で、なんでこのメンツになったんでしょうかねぇ」
「ゴーストちゃんの凱旋門賞……楽しみだべー!」
「ふふっ……そうですね。ほら、エルも落ち着きましょう?」
「くぅぅぅ……エルが一番最初に凱旋門賞の勝利馬に成れなかったのなら、勝利ウマ娘になる為にも……
ちょ、グラス!尻尾を引っ張らないで!?」
「コンドコソミルモンニ!!」
「テイオー……静かにしないと、また呼びますよ?(ピャ?)」
ぼやくゴーストの目線の先には、黄金世代の三名に帝王と名優。怪鳥と怪物二世に付いては、
偶然トレーニングが終わってスぺの所に来、件の話を知って参加希望した為に視聴する事になっている。
971:陣龍:2023/02/02(木) 20:22:13 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
「お姉ちゃん……だから課題忘れは無いか気を付けてないと行けなかったのに」
「課題の存在その物を忘れとったんなら、それ以前の話やなぁ……しかし、
なんでゴーストは何も恥ずかしがったりせんのや……」
「さぁ、待ちわびているぞ『ターフの亡霊』よ!早く余らにそのレースを走った時の心持ちを、
この場で言って聞かせて見せて見るが良い!」
「カイザー、いい加減にしないと今度はそのハナか耳か尻尾を捩じりますよ(フォア!?)」
「あっはははー……これネイチャさんが誘導して納めないと行けないの?」
そして元UMA四人衆と抑え役見たいな事になってるナイスネイチャらカノープスメンバー。
今現在この場に居ない不沈艦やダービーウマ娘女帝と緋色の女王、逃亡者や鉄の女等は、
それぞれ何時の間にか消えて居たり後輩との約束等の所要にて一足先に帰っている。
…約一名、有マ記念やトレーニングに頭一杯で課題その物の存在を忘れていて、
色々シャットダウンした顔つきのまま教室に早歩きで向かって行ったが。
「そっ、それでは映像を始めるゾ!」
「声が偉く上ずってるけど」
「ええい、その様な事は気にするでない!!」
相も変わらぬ雰囲気のまんまな『ターフの亡霊』の声を振り切り、先のカナリハヤイネンと同じく
映像をスタートさせるブリッツカイザー。レインボーロードの頭を悩ませる暴走気質も、
ゴーストウィニングの『適当さ』には形無しである。
「……お、出走前のゲートでの映像か」
「おぉぉ……えぇ!?一頭、なんか凄く暴れています!?」
「あぁ、その馬が『ライトニング号』。【エクリプスの再来】と称される英国馬で、その身体力と我が強い気性難が相まって、
歴史に残る希代かつ生粋の大逃げ馬」
「大逃げって事は……スズカさんみたいな馬?」
「戦法はそう。完成度と破壊力は遥かに『ライトニング号』の方が格上だけど」
「え゛」
尊敬する先輩の事を能力比較して事も無げに言ったゴーストの言葉に、サイレンススズカより早い大逃げ馬を想像できない
スペシャルウィークが変な声が出てしまう。
「ちゅーか……なんかその『ライトニング』とか言う馬、一頭に向かって食って掛かってえんか?やけど掛かられてる方は、
全く気にしても無いちゅーか……なんか、どっかで見た様な……」
「食って掛かられてる方が私こと『ゴーストウィニング号』ね」
「……なんでそんなに無反応やったん、これ」
「そんな一々他の馬、それも三回くらいしか一緒に走っていない馬の事とか覚えてる訳無いでしょうに。
それより早く鞍上の所に行きたかったし、第一名前を知ったのは【この身体】になってからだよ?」
「それはおかしいぞ!余らはカナリハヤイネン達の事を強烈に意識し記憶していた!」
「……だから、こちとらサラブレッド種であって、UMA族じゃないんだってば」
972:陣龍:2023/02/02(木) 20:24:54 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
当事者の答えに全く納得していない元UMA族のカイザーに、自然と呆れ顔になるゴースト。
元々巨大化した大陸日本産のUMAがUMAと言われる様に、馬にしては妙に知能が高いのに対して、
種族は極普通のサラブレッド種でしかなかった【ゴーストウィニング号】の認知力や知能に関しては、
言っては何だがUMAとは比べるべくもなくレベルが低い。この点に関しては、
ブリッツカイザーの買い被りが過ぎるだろう。
それに、『ウマ娘化』した事による【後付け】の人間種的思考力等が付与されたとは言っても、
根本的な感性の本質は『サラブレッド』と余り変容して居ない。ほんわかと『ヒトを喜ばせたい』と言う、
馬時代から残る何とも純朴な気持ちに加え、自身の関係者以外の関心が概ね薄い『ゴーストウィニング号』そのままである。
過去のレースを見返し反省点探しやシミュレーションを行う事は有っても、
出走馬の細かい名前や出生の履歴等を調べ上げる等と言ったそれ以上を行う事は無い。
「此方のカイザーがご無礼を…悪気その物は無いのですので、ご容赦願います」
「オ゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙……」
「アッハイ……ネイチャ?」
「多分、これが様式美っぽいから気にしない方が良いよ……うん」
「アッハイ」
キャメルクラッチを相方に掛けられて発声された謎の言語をバックミュージックにした、
南坂トレーナーと一緒に頭を抱えるナイスネイチャの答えにそう言うしか無かったゴーストウィニング。
暴走役と加速燃料役ばかり追加されるカノープスに置ける貴重な常識人枠の二人の気苦労は早くもストップ高である。
「ゴーストちゃん、その『ライトニング』の隣で呆れたように視線を逸らしている馬が居ますが……」
「そっちが欧州最強の重戦車こと『ヴィクトワール号』だよ、グラス。戦法は典型的な差し馬だけど、
馬群のど真ん中を強行突破して抜け出す事には定評が有るとか何とか。その戦いぶりに反して、
普段は呑気に日向で草や花を食んで太って絞ってをやって過ごしているらしいけど」
「成程……」
「目の前の壁にも逃げずに正面対決、でも普段は呑気に食べて過ごしている……チラッ」
「……エールー?」
「ケ?!いや、エルは何も言ってないですヨ!?」
横目でチラ見された事を見逃さないグラスワンダーの覇気の微笑みに、冷や汗を垂れ流しつつ弁明するエルコンドルパサー。
直ぐ隣で容赦無く手慣れた様子で米神を両中指でグリグリしているレインボーロードと、
カニの如き泡を吹きだしそうなブリッツカイザーとは比べ物にならない平和さである。
973:陣龍:2023/02/02(木) 20:26:44 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
「……それで、その他の馬は……」
「あ、殆どこのレースで影響及ぼしていないし印象も大して覚えて無かったから他馬の紹介は飛ばすね」
「あ、そ、そうなんだ……」
度重なる相方からの『制止』を受け、意識と力を何処かに飛ばしてしまったブリッツカイザーの手から
何時の間にか取ったリモコンを操作するゴーストウィニングに押され、適当な返事だけを返すトリプルターボ。
実際問題、竹内騎手(当時)の事を何時か何処かで聞いた【タケウチアンジョー(竹内鞍上)】と言う
呼び名だと思って覚えるサラブレッド種の『ゴーストウィニング号』、他馬の走りや顔などの身体は兎も角、
それと人間が名付けていた各々の名前が一致する事は無い以上、
事細かに説明を求められても『分からない、知らない』としか言えないのだが。
「さて…ブリッツカイザー?そろそろ起きないと、凱旋門賞のレース映像を見れなくなってしまいますよ?」
「……ハッ!?……余、余は一体今まで何を……」
「エルコンドルパサーさん、もし宜しければ彼の有名な【エル式最強デスソース】を一瓶貰えますでしょうか?
今すぐと言う訳では無く、夕食の時でも」
「え?ん-……Esta bien(良いですよ・スペイン語)!でも、エルでも舌が痺れる位ですケド」
「ええ、構いません。ありがとうございますね」
「……ちょ、ちょっと待たれよ、レインボーロード。そのデスソースを一体誰に使う気か?余か!?余なのか!?」
「静かにしていないと今日の夕食はデスソースパンとデスソーススープにデスソースドリンクですよ」
「」(一瞬で席に戻り不動の静寂化)
「ゴースト!!ハヤクハヤクミセテミセテー!!」
「……テイオーさん、落ち着いていないとまた主治医が来ますよ?」
「ピャッ?」
「……テイオーちゃん、何時も通りだなぁ」
「ふふっ…そっちも、何時も楽しそうですね、スぺちゃん」
外野の観客席で一部が騒がしくなったり急に静かに成ったりしつつも、それはそれとして出走直前まで加速させるゴーストウィニング。
普通は感慨深げになったりしそうなものであるが、当時の『ゴーストウィニング号』の記憶としては
竹内騎手の指示や係員の誘導に従って直ぐにゲート入りしていた事と、ゲート入りしてから走る事に集中していた事も有って、
余り強い記憶は無かった。加速中の映像で、一部の馬がゲート難を発揮して暫くもたついていた事を今知った程である。
『――――今、係員が多数押し込めてなんとかゲート入りが完了しました』
「おっ……始まるデース!」
「日本初……そして非欧州馬初の偉業、凱旋門賞の勝利馬」
「どんなレースなんだろう……楽しみー!」
「……なんや、今更やが『見ん方が良かった』とか思いそうな予感がして来たで、トリー」
「もう今更だよ、カナ」
「――――」(小さい身振り手振りで意思疎通)
「……静かにと言っても、一切合切口を開かないと言う事では無いんですが」
「~~~♪」
「全く……子供なんですから、テイオーは」
「……ネイチャさん、後でこの映像は取り込んでおきますよ」
「トレーナー……ありがとう」
様々な、単に楽しみにしているウマ娘や、先の物と同等・或いはそれ以上の【劇物】の予感を感じたウマ娘に、
兎も角【好敵手】の情報を油断なく得ようとするウマ娘。各々の混在するこの視聴覚室にて。
『――――凱旋門賞、今スタートです!!』
――――現代日本競馬の、最も新しい【神話】が誕生した瞬間を『学ぶ』事になる。
974:陣龍:2023/02/02(木) 20:28:44 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
|д゚) 視聴に至る流れと直前まで入れたので、残りは凱旋門賞レースの情景とその後の2Part編成になるかと(予定は未定)
|д゚) 因みに課題その物の存在を忘れた件については自身の実体験(夏休みの自由研究)
最終更新:2023年06月27日 18:48