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銀河連合日本×神崎島ネタSS ネタ サセボ異界紀行二十冊目
side:客船サン・ルイ芸術品管理担当官
サン・ルイは我らFFRの国威と芸術を見せるために企画された大日本帝国に滞在中のティ連国民を対象としたツアー参加者を含む多数の乗客を乗せ、
東亜細亜クルーズ中でエスト・デ・パリに入港予定であった。
そこへ大統領から入港を早めることは出来ないかと連絡が来たのが昨日のこと。
当初は船長始め運行会社上層部も難色を示していたのであるがその後に続く言葉に上は顔色を喜色に変えると、
乗客であるティ連国民の了解も得てその心臓由来の俊足を以て未だ誰にも破れざる青いリボンを靡かせサン・ルイはエスト・デ・パリに入港したのである。
その際のティ連国民の顔、水上船でこれほどの速度が出るのかという驚きはオセアンの下へ転属しようとも色褪せぬサン・ルイの栄光である。
そのサン・ルイの船内、停泊する埠頭より台座にしっかりと固定され木箱で厳重に梱包された貨物が大型物資搬入口より搬入されている。
その数三つ、電子制御されミリ単位どころかマイクロ以下の単位での制御可能な芸術品輸送専用に作られたフォークリフトのフォーク上のパレットにそれはあった。
グラスに入ったワインすら零すこと無く移動させる程の技能を持つオペレーターの手によりパレットが移動させられる。
それにその場の者達は安堵するが輸送を手掛ける者達が隙を見せることはない。
「後5サンチ…そのまま真っすぐ…。」
軽PSを着た乗員がフォークの微調整を補佐、神業ともいえる職人芸より寸分の狂いもなく貨物は所定の場所に衝撃無く置かれた。
その貨物の梱包がFFRが誇る芸術品輸送専門スタッフの手により解かれていく。
そしてそれは姿を顕した。
「これが『共和国の死』、『国民を導く我らが指揮官』そして『甲板の誓い』か…。」
これがエスト・デ・パリへの入港が急がれた理由の一つ。
我らFFRへの日本の女神の贈り物、特に最後の『甲板の誓い』は我ら常人の知らぬ真なるFFR神話を示したと国民の間でも話題沸騰中だ。
既に国宝への指定が議会で決定しており管理及び保護の為に芸術品専門スタッフを多数有し海をゆくFFR国立美術館の異名を持つ本船への搬入が決定したのだ。
美術品、その中でも絵画を専門とする者達が女神金剛の描いた絵に近づくと鑑定と調査を開始した。
「どうかね?」
「とても同じ人物が短時間で描いたものとは思えません…。
こちらの『共和国の死』は寓意やシンボル的なものに満ちた宗教画とも象徴主義とも見受けられますが…。
『民衆を導く我らが指揮官』はロマン主義的な所も見受けられますが我らFFR国民から見た我らが指揮官の御影という印象派にも見えます。
『甲板の誓い』に至っては神話である筈なのに実に写実的…まるでその現場を目撃した様な気すらします…。」
まるで現場を見ていたかのよう…その言葉に私は一つの結論に達する。
「ともすればその現場を見ていたのかもしれんぞ。」
「と言いますと…?」
「我らが指揮官は幾つも国で幾つもの名も姿も持っていらっしゃる…フランス州ならば聖母、王妃、聖女、
アフリカ州ならばノンモやオニャンコポン…日本の女神がその時に異なる姿で見ていても不思議ではあるまい…。」
「しかし女神金剛はその時既に地上に艦の姿でいた筈…。」
「我らが指揮官がその御身を現世と霧の向こうに分けているのだ。同じ女神が出来ぬ筈はあるまい?」
「成る程…。」
絵画専門スタッフは私の言葉に納得したようだった。
腕の多目的情報端末に目をやるとサン・ルイが入港を急いだもう一つの理由の時間が迫っているのが分かる。
「さあ皆急いでくれ!この船(サン・ルイ)に我らが指揮官がもうじき乗船される時間だ。
FFR客船で初めて我らが指揮官を迎える栄誉を賜ったのだ。
その時にこの絵がなかったでは末代や兄弟達の恥ぞ!!」
その言葉に全員が頷きその動きを早めた。
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side:ダンスホールボーイ
サン・ルイが誇る楽団の奏でる緩やかな音色に合わせて舞うその姿に誰もが虜となる。
我らスタッフも我らが指揮官への敬愛と鋼の自制心がなければ見入っていたことだろう。
音楽に合わせ刻まれる軽やかなステップに合わせ艶やかに翻るダズル迷彩のワンピースの裾。
それが例えなき程に魅力的なのだ。
現在、サン・ルイのダンスホールの中心でマフタン大統領を相手に見事なvalse lente(スローワルツ)を踊るのは本日の主役、
我らが指揮官にして我がFFRが誇る戦列艦、全てに勝る母『リシュリュー』その人である。
我がサン・ルイはブルー・リボンだけでなくFFRの豪華客船として初めて我らが指揮官を迎え饗す栄誉を賜ったのだ。
「美しく、見事なダンスだ。容姿も凄まじいな…あれがキミ達の創造主…いやファーダ『指揮官』かね…?」
「Oui、Monsieur。その通りであります。あの御方こそ我らFFRが奉じる戦艦リシュリューです。」
感嘆の溜息を吐き自分に質問する壮年らしきMonsieur(男性)…落ち着いた面持ちの星の王子様の問に答える。
星の王子様が創造主…神ではなく指揮官と言い換えたことに対し好感が持てた。
我らが指揮官は女神であらせられるがその前に我らFFRの総指揮官であらせられる。
つまりは星の王子様はそこの所をしっかりと認識しているとういうことだ。
日々皮肉と嫌味に満ちているあの二枚舌魔女騎士団(イギリス人)、
過労を美徳とし働きすぎキリシタンサン・キュロット(アメリカ人)共は見習うべきであろう。
浅はかさは愚かしい…。
「しかし良きものを見せて頂いた…これは私が因果の彼方へ流れ去ろうとも忘れることはないだろう…。」
どの様な比喩かは分からないが我らが指揮官を称賛しているのだけは間違いあるまい。
そしてMonsieurは腰を上げると私に注文しお代を置いていく。
「先程の見事なダンスのお礼に貴方方のファーダ総指揮官とファーダ指揮官代理に今一番良いものを差し上げて欲しい。」
「Oui……ん…?Monsieur、お待ち下さい!お代が多いのでお釣りをお持ちしますので少々お待ちを!」
「いやそれで丁度だよ。残りは君たちへの祝いエチルアルコールの分だ。飲める時になったらみんなで祝いの一杯でも飲んでくれ給え。」
そう言うとウィンクし星の王子様はその場を後にする。
私は無意識にその後姿に敬礼を送っていた。
既に楽団の奏でる音はなく我らが指揮官のダンスは終わりを告げていた。
拍手が一人、また一人と広まりダンスホールは万雷の喝采に包まれた。
しかし我らが指揮官はそれらに一礼すると楽団の指揮者の所へ赴くと徐に紙の束をを取り出され指揮者に渡すと何かを話された。
驚く指揮者はその紙を急ぎ楽団の奏者達に配る。
するとざわめきが楽団に広がるが指揮者が指揮台へと戻り咳をすると途端に静まりかえり皆楽器に手を伸ばす。
宛ら【指揮官に率いられた軍】の如く…そしてダンスホールの中心に我らが指揮官が立たれスタンドマイクが持ってこられる。
マイクを少し叩き音を確認すると楽団が音を奏で我らが指揮官はその唇より如何なる鳥の囀りより美しい声を発せられる。
『地獄はもうないと信じたかった…だが我らにとって最悪の日は突然に…。.』
この歌は…!!
side:エス
ダンスホールの中央ではファーダリシュリューが『心臓を捧げよ』を歌唱している。
我々は現在ファーダマフタンのご厚意で上海もといエスト・デ・パリに停泊中の豪華客船サン・ルイに乗船している。
というのもファーダマフタンはどうもファーダリシュリューは終戦後に霧の向こうに渡ったと思っているようで現在のFFRを見て欲しいようである。
というか実際に見聞きしたことを初代FFR大統領やペダン元帥…そして霧の向こうに渡った先達に伝えて欲しいとファーダに願っていた。
134:635:2023/02/17(金) 07:14:08 HOST:119-171-248-234.rev.home.ne.jp
あくまで見聞きしたことからの予想だが初代FFR大統領や元帥そして提督はこの世界のフランスという国の未来について憂慮していたようで、
ファーダマフタンとしてはファーダリシュリュー、いや霧の向こうの我らが指揮官に現在のFFRを見てもらうことで彼らに安心して戦って欲しいようである。
…まあ彼らも島にいるので伝えることは出来るのだがあっちの提督除く彼らがこのフランス(FFR)見てどんな顔するかについては同情を禁じえない。
相当頭抱えるだろう…信仰については初代さんが主因であることだし…。
そしてファーダが歌ってる理由であるがまあ余興である。
我々の世界のアニメの歌がこの世界ではなんと大昔から存在し歌い継がれているとか…。
そして進撃の巨人の歌である『心臓を捧げよ』はなんとフランス製だというではないか。ほんとに驚きである。
さてファーダの歌う歌にティ連諸国民は皆聞き入っているがFFR国民だけは違った。皆直立不動である。
先程までファーダリシュリューのワルツですら反応しなかったスタッフですら直立不動でファーダの方を向く。
そして歌が佳境に入るとファーダの声に合わせ皆口開く。
『Donne-moi ton coeur ! Offrez vos coeurs ! Offrez vos c?urs !』
「「「「Donne-moi ton coeur ! Offrez vos coeurs ! Offrez vos c?urs !」」」」
ティ連諸国民も唖然としている。
そらFFR国民が皆心臓を捧げよ!と力の限り叫んでいるのである。かくいう私も驚きを禁じえない。
一体如何なることか…この世界の地球人らが驚いていないところを見るとこれがこっちのデフォなのか…。
なお私とファーダがこの世界のソウルソングというべき鉄血歌とかいうもどう見てもアニソンな存在知ったのこの後のことである。
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以上になります。転載はご自由にどうぞ
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最終更新:2023年07月02日 17:16