142:陣龍:2023/02/17(金) 20:42:59 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
『日本競馬の最新神話 ターフの亡霊・ゴーストウィニングの凱旋門賞レース記録【急】』


「で……ゴースト、分かったか?ウチがどうして嫌がったか」
「自分の事を放って盛り上がられたら疎外感凄いよね、分かったよ」
「そうそう、ウチの事をほっぽらかして…って、なんでやねん!」


 ハリウッドのアクション映画超大作を見終えたかの様な熱気と心地よい軽度の疲労感、
そしてその勢いのスタンディングオベーションと歓喜の声から暫くして、
興奮し切りな周囲を壁にもたれ掛かってボーっと眺めていたゴーストウィニング。
【本来の姿】を第三者視点から見ると言う感覚は、やはり如何にも不思議な物と感じていた。



『――――次回のG1レースは有馬記念での出走となるでしょうか?それとも来年度にもなるでしょうか?
どうでしょうか解説の……』
『――――そうですねぇ、やっぱり個人的には有馬記念で【ターフの亡霊】の雄姿を…』


「……そう言えばゴースト」
「どしたのカイザー」
「貴様、この凱旋門賞の後はウマ娘とのレースをやるまで何も出ていなかったな?どういう事だ?」
「……そう言えば、そうでしたね……」



 事この場に至っては地雷原ローラーしかしていないブリッツカイザー、
ふとした疑問と言う名の地雷をまた意図せず踏み抜く。しかも今回はブレーキ役のレインボーロードも
同じく疑問符を頭に浮かべていた。


「あー……確か、あの後……」

「ちょ!?」
「ケッ!?」
「あっ……」
「まっず……」


 若干渋い顔をして、額を握り拳で軽く数回叩きながら応えようとするゴーストウィニングに、
各々驚いたり焦ったりする日本出身ウマ娘達。この時の様子でレインボーロードが悪手を打った事を悟ったが、
口を開く前に事は動く。

143:陣龍:2023/02/17(金) 20:43:45 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

「ゴーストちゃん!!!」
「フォ!?え、ど、どうしたのスぺ?!」


 前触れも無く唐突に大声で叫んだスペシャルウィーク。そして驚きで変な声が出たゴーストウィニング。


「あ、え、えっと、えっと……そ、そろそろご飯とお風呂の時間だよね!?」
「えっ?」
「……そ、その通りデース!スぺちゃんの言う通り!トレーニング後ですから、汗を流してご飯を食べないとデース!!」
「えっ」
「……そうですねぇ。クールダウンだとするにしても、少し時間が過ぎていますね」
「いやでもグラス、説明…」
「はいはいはい!視聴覚室の片付けとか有るんだから、カイザー達に任せてゴーストは私らと一緒に行った行った!!」



 スペシャルウィーク、エルコンドルパサー、グラスワンダー、ナイスネイチャの捲し立てる様な【圧】に加え、
背中を押して来るスペシャルウィークに流されるがまま退室して行くゴーストウィニング。


「……もしかすれば、余はまたやってしまったか……?」
「やってしまったようですね……私も含めて……」


 明らかに誤魔化しに走る日本ウマ娘達を見て、漸く触れるべきではない話題で有る事を知った、転生欧州UMA勢であった。



「……まぁ、今の流れを見ても分かる通り、レースその物の事は兎も角、それ以後の事は触れんようにな」
「……理由を、聞いても良いか?」
「言って良いのかなぁ……」



 視聴覚室に置いてけぼりとなり、必然後始末をする事になる転生UMA勢、そして責任者の南坂トレーナー。
後始末と言っても、御菓子等を持ち込んだりせずただレース映像を視聴して居ただけなので、
軽い掃除とプロジェクターの片付け程度であるが。

144:陣龍:2023/02/17(金) 20:46:21 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

「……簡単に言えば、マスコミの取材攻勢が酷過ぎて思い出させたくもない、と言う事です」
「ちょ!?トレーナー!?」
「何れにしても、何時かは知る事です。ならば早い方が良いでしょう、カナリハヤイネンさん」
「ま、まぁ……それは、そやけど」


 言い淀む日本出身転生UMAを他所に、溜息を吐き、物憂げな顔色で説明を始める南坂トレーナー。


「凱旋門賞の勝利は、日本競馬界にとって極めて大きな事でした。これまでずっと求めて止まなかった栄誉を、
とうとう日本競馬が勝ち取った。しかもその馬は、非主流血統どころか最早化石扱いの血統による馬。
正しく、偉業と言うより他有りません」
「うむ」
「当然、日本競馬協会はお祝いムード一色で、過去のオグリキャップやディープインパクト旋風よ再びと、
日本各地や全国放送での宣伝広報を行う準備を整えていました」
「当然だろう」
「……そう言う思惑も段取りも全部無視して、目の前の【ネタ】に飛び付いた日本メディアの無法な行為で、
彼の『ゴーストウィニング号』は三ヶ月程度はあらゆる雑音や光源照射と言う【自称取材】を受け続けた為に、
レースに出れる調子を失ったのですよ」
「!?」


 衝撃の事実に固まるブリッツカイザー、そして頭を抱えるレインボーロード。本来競走馬と言うのは相当繊細な生き物で、
大声やら突然の発光、接近等は多大なストレスを与える事から御法度であり、
その事は取材でも見学でも関係無く厩務員らの指示に従うのが絶対原則である。が、
【報道の自由】を盾にした日本メディアはそんな原則等知った事では無く、アポなしでのファームへの突撃取材や、
厩務員等ファーム関係者用駐車場への無断専横駐車、路上駐車による道路交通の阻害、照明機材による夜間の照射、
無許可ドローン空撮等々、兎に角無法者その物の【押し込み取材】が長期間続けられた。
牧場関係者からの度重なる拒否、また通報を受けた警察からの警告も無しのつぶて所か【報道の自由の侵害】と笠に着て、
暖簾に腕押しの有様であった。

 当然、このファームに属する競走馬全頭の出走予定のレースはキャンセルされ、また凱旋門賞の勝利記念の式典出席も、
まるで道路を封鎖するかの如く羅列されるメディア関係者の様々な車両が邪魔をして、馬運車が道路を通るには危うく、
加えて一般車に乗った芸能人の取材とでも勘違いしてるのか、取材陣が馬運車だろうが何だろうが関係無く、
囲み取材の勢いで押し寄せて来るので、出るに出られなかった。馬が最優先で人が飛び出ようが轢いても構わん等と揶揄される事も有るが、
群衆とまでは行かずとも人混みの【壁】を強行突破は出来る筈も無かった。因みに当然ながら、
メディア側の報道に置いてはこう言った無法行為は全く流されず、取材を拒絶するファーム側や警察側、
また苦言を呈したJRAが無体で卑劣で非常識であるかのように垂れ流してばかりである。

 結果、メディア側が【飽きる】までの数ヵ月、ファーム内の競走馬は皆尽く放牧も大して行えない様な状態に事実上閉じ込められ、
比較的ストレスダメージが軽度だった『ゴーストウィニング号』でも暫く外の【喧しさ】から逃れるべく馬房内に引き籠ったり、
或いは念願のダートG1に出走予定だった『ゴーストウィニング号』の同期の馬は、ストレスの余りに暴れて骨折して引退を余儀なくされる等、
極めて大きな爪痕が残された。不幸中の幸いとして予後不良に追い込まれた馬こそ出なかったが、
損害の大きさは億単位のカネ如きで済むような話では無かった。が、この件に関してメディア側は無反応所か
【管理不足の責任転嫁】【明白な証拠も無き八つ当たり】等と言ってのけて賠償拒否以前に自己正当化の報道を羅列し、
裁判沙汰に。この頃も既に賠償命令が下されるも不当判決として逆訴訟や支払いに抵抗する等の大事になっているが、
零細や非主流ネットメディアは兎も角、主要な報道社では全く裁判の内容を報道して居ない為、
ネット民は兎も角世間一般や興味の薄い人間には全く知られて居ない事である。刑事罰に関しても、
詳細は語らずアリバイ作りの真夜中10秒報道だけである。

145:陣龍:2023/02/17(金) 20:48:10 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

「加えて、ゴーストウィニングさんが、競走馬からウマ娘へと生まれ変わった事はご存じですか?」
「う、うむ……その事は、欧州でも良かれ悪しかれ、相応に」
「神の奇跡か、それとも詐称か。一時は話題になりました。何時しか興味が薄れたのか、話に上がる事は有りませんでしたが」
「単純に、欧州にもウマ娘達がそこそこ出て来て大騒動になったからやないか…?」


 微妙に呆れたように呟くカナリハヤイネン。そこらのアイドルを鼻で笑う容姿端麗にして、ホモサピエンスを圧倒する身体力、
尚且つ善性に優れた良き【隣人】であるウマ娘。キリスト教圏である欧州としては、倫理観や常識の根底にあるキリスト教からは
適合しない存在が出現した事に対し、その手の宗教観念等は兎にも角にもいい加減な日本とは桁違いの政治的爆弾となったのは当然であった。
その為宗教界も政治界もそれぞれ頭をぶつけあう勢いでの会合や会談、会議を連日連夜引っ切り無しに繰り返した挙句に、
最終的に『綺麗で可愛くて良い娘がちょっと増えた事如きに何の問題有るってんだゴラァ!?
何なら【天使】認定して祝福してやろうじゃねぇかオラァァアン!!(意訳)』と、徹夜七日目明けで頭が煮えたとあるイタリア人バチカン司教による
身も蓋も無い開き直り発言にて、市民権や国籍付与、一部公共施設や道路、法制度の改正と言う穏当な対応に終わった。

 また日本でも一部起こった様に、欧州でもウマ娘と言う【希少価値】を利用しての意図的な差別問題提起(創作)を、
当事者置き去りで一方的かつ大声で主張し当たり散らし、そしてその事を差別廃止の為の差別化させる法制度化を強行しようとする
何時もの団体や夢想的理想的主義者が表立って策動するも、ブリッツカイザーらの実家の様な上流階層、
市井でウマ娘の善性を知った民衆の激怒、そして当の欧州ウマ娘らの困惑からの抗議で極めて不毛な対立が引き起こされているが、
此処では割愛する。

 一つ言えるのは、暫くしたら所謂LGBT問題を声高に拡大、誘発、続発させて全く反省せず更に火種の放火を続けていた団体や主義者が、
欧州ウマ娘協会の所有するウマ娘達用のレース場へ抗議活動と称して侵入、破壊と妨害を目論み、
結果レース中のウマ娘を意図的に妨害する等への危害行為・殺害未遂による実刑判決や数兆ユーロを遥かに超える賠償命令が
全員に叩き付けられ、醜く足掻き続けて爆散する事である。



「競走馬からウマ娘へ…それも、死亡した馬がウマ娘と言う【人間】になる。それはとても不可思議で奇跡的な話です」
「うむ、そうだな」
「そしてそうであれば、他者と言うのは一体どうしてそうなったのか?その事を聞きたがると言うのは普通です」
「……気にはなるだろうが、聞いては成らんだろう」
「普通はそうですが、此方のメディアは普通では無かったようです」
「ヨーロッパにも、パパラッチの様な存在は居りますものね……」


 尚、日本メディアはある意味パパラッチより斜め上を行った。

146:陣龍:2023/02/17(金) 20:50:24 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

「…幸いな事に、ウマ娘になって日も浅かった事、そして比較的遠目で且つ車内で有った事から
ゴーストウィニングさんには認識されませんでしたが、会見後に出口に勝手に集まっていたメディアの中に、
大きなタブレット端末にあの馬運車の事故映像を映して見せ付け、生まれ変わりの事を聞き出そうとした者が居ました」
「…………は?」
「付き添いで同乗していた『花舞 神流』さんが直ぐにゴーストウィニングさんの気を引いた為に気付かなかったそうですが、
それでも過去の事を深く穿り返すと、何が切欠であの無惨な事件の記憶が引き出されかねません」


 宇宙猫ブリッツカイザー、此処に生誕。尚同名のウマ娘が現れた事に対する発表はJURAの手回しにて、
協会指定施設のこれまた指定、指名したスポーツ紙の競馬記者、ウマ娘記者、
そして最早こう言う事では恒例となった某動画関係者のみが、発表の場にて軽くとは言え取材する事を認められ、
殆どの主流メディアは入室すら拒否された。その為に、【報道の自由の侵害】に対する猛抗議に加えて
施設の外野に集って少しでも【取材】せんべく囲もうと目論み敢え無く失敗。その時の強引なやり口が生放送で流され、
そしてトレセン生徒にも余りにも取材者の非常識な行為が見られていたたが故に、
先程のスペシャルウィーク等の様に可能な限りの【保護】をしようと自主的に動く事になった。


「承知しました……カイザー」
「……はっ!?あ、あぁ、承知した。余も、ゴーストウィニングを傷付けてしまう事は本意では無い……
この事は全て、仕舞って置こう」
「ありがとうございます」



 自らの不用意な言葉がどんな誘爆を引き起こしかねなかったか分かって宇宙猫になるブリッツカイザー、
それを修正するレインボーロード。独断の暴走や自分勝手は問題だが、不味い事を不味い事だと素直に理解して
引き下がれる点は、間違い無く美点だと思う、南坂トレーナーだった。




「……全部仕舞って解決出来るのなら、良かったのですけどね」
「え?どうしたんですか、南坂トレーナー?」
「いえ、そう言えばブリッツカイザーさんとレインボーロードさんの入部希望届を然るべき所に出されたのかが気になりまして」
「……あら、そう言えば出して居ませんでしたわ」
「……明日、明日提出で構わないか?」
「大丈夫ですよ、今日の事は体験入部と言う事にして置きましょう」
「恩に着るぞ南坂トレーナー!必ず出すから暫し待たれよ!!」 



 そう言うなり視聴覚室から出て廊下を走って行くブリッツカイザー、そして呆れた溜息と共に小走りで追うレインボーロード。
道中風紀委員のバンブーメモリーに疾走するブリッツカイザーが発見され、その場で叱られるブリッツカイザーの図が見られるまで、
残り5分の事であった。




「……本当に、全部仕舞って解決出来るのなら、最善でした」


 視界から新しいチームカノープスのメンバーが居なくなってから、南坂トレーナーは独白する。


「【掘る】以前に、ほんの少し調べただけで溢れ出る、余りにも無造作かつ無法な報道の数々。報道側の物だけ削除して全てを黙殺し、
情報拡散の責は一切取らず、刑事罰の事も流さず。確かに、自身の『愛バ』の事を心配するのも大事でしょうが、それ以上に……」


 そこで口をつぐみ、視聴覚室の窓から外を見遣る南坂トレーナー。極めて特殊過ぎる存在にして生い立ちであるウマ娘、
ゴーストウィニングがトレセン学園に入学する際、親として面通りした『花舞神流』と言うネットネームを持つ『飯崎鈴夏』は、
一通り挨拶した後に、態々南坂トレーナーにレジェンドホース杯のナイスネイチャの事を理由に、
もう一度『よろしくお願いいたします』と頭を下げて来た。その事に、その雰囲気に何処か違和感を感じて
南坂トレーナーが少し調べてみれば、頭痛を感じたくもなる不快な情報が次々湧いて来た。それは、
競走馬である『ゴーストウィニング号』のみならず、馬主である『飯崎鈴夏』の事も。

147:陣龍:2023/02/17(金) 20:52:41 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp

 【『飯崎鈴夏』。東北の沿岸部某県某所出身。中学二年生、自身は学校で父は勤務中で
一人自宅に居た専業主婦の母親を、刑務所収監志望者によるガソリン放火により犠牲になる。
尚『死亡者が一人かつ殺意はなかった』と認定した裁判官により二度無期懲役判決となり、
現在も最高裁にて審議中。高校一年生、東日本大震災により会社員の父親が津波にて行方不明となり、
現在に至るも遺体、遺品その全てが未発見。血縁者は現在東北某所の古武術道場を経営する
祖父母のみにて未婚独身。高校卒業後より投資家兼動画配信者として活動を開始、
現在資産は推定にて約10億円前後、都内某所に居住。】

 …本来やってはならない筈の、犯罪者でも何でもない一般人の経歴や過去を、
度々当人が取材・情報発信拒否を行って尚、【お涙頂戴物語】として編集して全国放送、報道。
抗議も拒否も『日本初・非欧州初の凱旋門賞勝利馬主であるから』との一点張りで芸能人扱いにして、
メディアは尽く『飯崎鈴夏』の過去や個人情報を垂れ流した。コレだけでも神経を逆撫でると言うのに、
テレビ界隈は無遠慮に当人の過去を基にしたテレビドラマを制作すると事後報告で既成事実化をするに及んだ。
後にこのドラマは訴訟で潰されたが、内部者と名乗る存在が言うには、
インフルエンサーとして活躍する彼女が目障りだった等と言う話が有るが、
ただネタに無造作に食いついただけなのか、それとも精神的苦痛で抹消する気だったのかは、不明である。



「……【此方側】のマスメディアは、全く以て常識外れの無法行為、不法侵入等も【報道の自由】を掲げていれば
全て無罪放免と成らねばならないと自負している。生半可な警告では、抑止する事も不可能でしょう」


――――念の為に、【話】を通しておきましょう。何事も無く、無駄に終わる事を願うばかりです……



 数ヵ月後、異世界からウマ娘、もとい『おウマさん』と艦娘が神の気紛れにて現れ、
そして府中上空に『良く分からないモノ』がトレセン学園上空を覆った後。
とある理事の息子がハッキングして流出させた情報を元にトレセン学園に押し寄せた大手メディア勢が見た物は、
『時間的に通報されていたとしても、到着していない居ない筈の警察官が既に多数到着してバリケードを設営している』光景であった。

 その為に直後【異界化】したトレセン学園への侵入者を極限まで激減させる事に成功したのだが、
本来如何に過去の『ゴーストウィニング号』の惨劇の記憶が鮮明とは言え、
異常な程に早くトレセン学園への多人数の警察官派遣、しかも自衛隊にも頭を下げて援軍を借り受けると言う、
本来ある筈の組織対立を考えると驚天動地の行動に警察が出れたのかは、事件後も不明なままである。
一番は本来最も注意するべきはずのメディアが、一般ネット民も違和感を抱いたその事にも気付けないレベルだったので、
一言も取材もしなかったからであるが。

148:陣龍:2023/02/17(金) 20:53:49 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp




「……もう、何年も経つのかなぁ」


 都内某所。それなりに値を張る小さな一軒家を一括購入した、年齢に似つかわしくない家主が自宅で、
ベッドに横になりながら、誰にともなく呟いていた。既に配信も終え、投資稼業でも何時も通りに稼いだうら若き女性、
『花舞神流』こと『飯崎鈴夏』である。


「……ゴーストは帰って来た。理不尽に奪われた。でも、神様の気紛れで帰って来れた」

 当時のJRAが大々的に売り出す予定が、メディアがやらかしたせいで売り出す機会を逸し、
『ゴーストウィニング号』の復帰と併せて売り出しに入った直後に彼の【事故】にて死亡すると言う悪夢で
八割以上が倉庫に山積みのままと言う、『ゴーストウィニング号』のぬいぐるみ(全長二メートル)を抱きつつ、彼女は呟く。


「……これ以上を望んだって、無駄。これ以上の幸運を望んだら、きっと『ゴーストウィニング』も、
おじいちゃんも、おばあちゃんも、居なくなっちゃう」


 でも、と彼女は呟く。意味のない事だと分かりつつも、それでも呟いてしまう。


「……お父さん……お母さん……会いたいよ……」


――――メディアによって【古傷】を抉られ、更に【深く刺し直された】彼女の【悪夢】は、未だ終わっていない。

149:陣龍:2023/02/17(金) 20:58:30 HOST:124-241-072-209.pool.fctv.ne.jp
|д゚) 以上となります。何だか馬主が事情を構成したらとんでもない闇深案件の塊になってしまった(愕然)

|д゚) 因みに年若い女性(二十歳前半未満)が馬主業と言う大赤字一直線な博打とか突っ込んだのも、
    動画の事云々と言うより内心の奥深くに小さく有る破滅願望とも又違う、既にこの世に居ない両親への思慕が根源だったりする。

|д゚) …やっぱり闇深案件じゃ無いか()

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最終更新:2023年07月02日 17:33